「多面的」と「多角的」、どちらの言葉を使うべきか迷った経験はありませんか?
この2つの言葉の最大の違いは、「対象が持っている性質」なのか「アプローチする側の視点」なのかという点。
実は、ビジネスシーンにおいてこのニュアンスを間違えると、相手に意図が正しく伝わらないリスクがあります。
この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的なイメージから具体的な使い分けまでスッキリと理解でき、企画書やプレゼンでもう迷うことはなくなるでしょう。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「多面的」と「多角的」の最も重要な違い
多面的は「物事そのものが持つ多くの側面や性質」を表し、多角的は「様々な視点や立場から物事を見るアプローチ」を表します。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の核心的な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けの基準はバッチリです。
| 項目 | 多面的 | 多角的 |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 対象そのものが持っている様々な性質や側面のこと | 様々な方向や立場から物事にアプローチすること |
| 焦点の当たり方 | 「対象物」に焦点が当たっている | 「見る側(主体)」に焦点が当たっている |
| 視点のイメージ | 内側から外へ広がる多様性(サイコロの面) | 外側から内へ向かう多様性(カメラの角度) |
| よく使われる表現 | 多面的な魅力、多面的な機能 | 多角的な視点、多角経営 |
表を見るとわかる通り、「多面的」は観察される側の状態であり、「多角的」は観察する側の行動という違いがあります。
似ているようで、実は言葉の矢印の向きが全く逆なのです。
このイメージを持っておくと、その後の理解がグッと深まるはずですよ。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「面」は平らな表面や顔そのものを表し、「角」は方向や視点を表します。この漢字の持つ元々の意味が、そのまま言葉のニュアンスの違いに直結しているのです。
それぞれの漢字の成り立ちを紐解くと、なぜこれほどまでにニュアンスが違うのかがハッキリと見えてきます。
言葉の語源を知ることは、正しい使い分けの最短ルートですよね。
「面」は対象の持っている「顔」
「多面的」の「面」という漢字は、平らな表面や、顔そのものを意味します。
例えば、サイコロには6つの「面」がありますよね。
これは、サイコロという一つの物体が元々持っている性質であり、見る人がいなくても存在する事実です。
つまり、「多面的」とは、その物事自体が複雑で多様な要素を内包している状態を指しています。
「角」は対象を捉える「方向」
一方、「多角的」の「角」という漢字は、角度や方向、隅といった意味を持っています。
テレビの撮影で、「様々な角度からカメラを回す」という表現をイメージしてみてください。
対象物は一つでも、それを下から撮るか、上から撮るか、斜めから撮るかによって見え方は変わります。
このように、「多角的」とは、対象物に立ち向かう側が、いくつもの立ち位置や切り口を変えてアプローチすることを意味しているのです。
具体的な例文で使い方をマスターする
商品の機能や人物の魅力を語る時は「多面的」を使い、戦略を立てたり市場を分析したりする能動的なアプローチには「多角的」を使うのが一般的です。
ここからは、ビジネスの現場でどのように使い分けるべきか、具体的な例文を使って解説します。
状況に合わせた使い分けをマスターして、説得力のある文章を目指しましょう。
「多面的」の正しい使い方と例文
対象そのものが持つ多様性を表現したい場面で使います。
- この新しいスマートウォッチは、健康管理から決済まで多面的な機能を備えている。
- 彼女は優秀なエンジニアであると同時に、優れたデザイナーでもあるという多面的な魅力の持ち主だ。
- 現代の消費者のニーズは複雑化し、多面的になっている。
このように、「対象のポテンシャルの高さ」を語る際に適していますね。
「多角的」の正しい使い方と例文
自分たちがどう動くか、どう考えるかという行動の多様性を表現したい場面で使います。
- 競合のシェアを奪うためには、SNS、広告、PRといった多角的なアプローチが必要だ。
- あの企業はリスクヘッジのために、不動産や飲食など多角的に事業を展開している。
- 問題の根本原因を探るため、部署の垣根を越えて多角的な視点で議論を交わした。
「視点」「アプローチ」「展開」といった能動的な言葉とセットで使われることが多いのが特徴です。
よくあるNGな使い方
では、少し違和感のあるNG例も見てみましょう。
✕「市場を多面的な視点で分析する。」
これはよくある誤用です。
視点(見る角度)を複数持つことは、観察者のアプローチであるため「多角的な視点」とするのが自然な日本語です。
「多面的」と「多角的」の違いを学術的に解説
言語学やマーケティング理論において、多面的な理解(対象の性質の把握)と多角的なアプローチ(視点の多様化)は、問題解決のプロセスにおいて明確に区別して扱われます。
少し専門的な視点からも、この2つの言葉の違いを深掘りしてみましょう。
マーケティングの第一線では、この違いを意識することが戦略の成否を分けると言っても過言ではありません。
たとえば、顧客のインサイト(深層心理)を理解するプロセスを考えてみましょう。
一人の顧客は「会社員」であり「親」であり「趣味を楽しむ個人」でもあります。これが顧客の多面的な性質です。
しかし、その顧客の悩みを解決する商品を開発するためには、経済学、心理学、社会学といった多角的な視点からの分析が欠かせません。
言葉の正しい意味や定義については、文化庁のウェブサイトや国語施策に関する情報でも、文脈に応じた適切な言葉の選択が推奨されています。
「対象を深く知ること(多面的)」と、「様々な武器を使って切り込むこと(多角的)」。
この二つの歯車が噛み合って初めて、真に価値のあるビジネスモデルが生まれるのです。
僕が企画会議で「多角的」な視点を忘れて失敗した体験談
僕自身、かつて新商品のプロモーションを担当した際に、この言葉の違いを身をもって痛感した出来事があります。
当時、僕は新発売となるエナジードリンクのマーケティングを任されていました。
ターゲットとなる20代ビジネスパーソンのライフスタイルを深く掘り下げ、彼らが抱えるストレスや自己実現の願望を「多面的」に捉えた完璧なコンセプトを作ったと自負していたのです。
徹夜で仕上げた企画書を手に、自信満々で臨んだ役員会議。
しかし、事業部長から飛んできたのは、予想外に厳しい言葉でした。
「顧客のペルソナが精緻に描かれているのはよく分かった。でも、売り場の棚割りはどうする?競合の価格戦略への対抗策は?流通の視点がすっぽり抜けているじゃないか」
僕はその瞬間、ハッとしました。
顧客という一つの対象を深く掘り下げることには成功していましたが、市場全体を俯瞰し、様々な方向から考える「多角的」な視点が完全に欠け落ちていたのです。
「多面的」な顧客理解は、あくまでビジネスの出発点に過ぎない。
それを実際の売上に繋げるためには、流通、競合、トレンドといった「多角的」なアプローチが不可欠なのだと、冷や汗とともに学んだ強烈な教訓です。
この失敗以来、僕は企画を立てる際、「対象を多面的に見れているか?」と同時に、「自分のアプローチは多角的か?」と必ず二度自問するようにしています。
「多面的」と「多角的」に関するよくある質問
ここでは、多くの方が疑問に感じるポイントをQ&A形式でわかりやすくお答えします。
Q. 自己PRの文章で使う場合、どちらの言葉が良いですか?
アピールしたい内容によって使い分けましょう。自分自身が持つ多様なスキルや幅広い経験をアピールしたいなら「多面的な強み」が適しています。一方で、様々な角度から物事を考えられる柔軟な思考力や問題解決力をアピールしたいなら「多角的な視点から分析できます」とするのが効果的です。
Q. 「多角経営」という言葉はありますが、「多面経営」と言わないのはなぜですか?
経営は企業が行う「アプローチ」だからです。既存の事業領域にとらわれず、不動産やITなど様々な方向(角度)に進出して事業を展開していく能動的な行動であるため、「多角」という言葉が使われます。
Q. 英語に翻訳すると、どう違いが出ますか?
「多面的」は対象の性質を表すため「multifaceted(多くの面を持つ)」などがよく使われます。一方、「多角的」は視点やアプローチを表すため「from multiple angles(複数の角度から)」や「diversified(多様化された)」といった表現が適しています。
「多面的」と「多角的」の違いのまとめ
今回の解説で、二つの言葉の違いがはっきりと頭の中で整理されたはずです。
最後にもう一度、重要なポイントをおさらいしておきましょう。
- 多面的:物事そのものが持っている多様な性質や側面のこと(対象に焦点)。
- 多角的:様々な視点や立場から物事にアプローチすること(行動に焦点)。
- 核心的な違い:「対象の状態」を表すか、「観察者の視点の置き方」を表すか。
ビジネスの現場では、言葉のわずかなニュアンスの違いが、企画の説得力やコミュニケーションの質を大きく左右します。
対象の深い理解を示すのか、戦略の幅広さを示すのか。
状況に応じて、ぜひ自信を持って使い分けてみてくださいね。
言葉の正しい意味を知ることは、思考をクリアにするための第一歩です。
他にもビジネスシーンで迷いやすい用語を知りたい方は、こちらのマーケティング用語の使い分けまとめ記事もぜひチェックしてみてください。
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