「伺う」と「参る」の違いとは?意味と敬語の種類を解説

「明日の件で伺ってもよろしいでしょうか?」「後ほど、そちらへ参ります」

ビジネスシーンで頻繁に使われる「伺う」と「参る」。どちらも相手への敬意を示す謙譲語ですが、意味や使い方の違いを正しく理解できていますか?

「あれ、この場合はどっちを使うんだっけ…?」と、ふと迷ってしまう瞬間、ありますよね。実はこの二つの言葉、「聞く・尋ねる・訪れる」意味か、「行く・来る」意味か、そして敬語の種類(謙譲語Ⅰか謙譲語Ⅱ/丁重語か)で明確に使い分ける必要があるんです。

この記事を読めば、「伺う」と「参る」それぞれの核心的な意味から、敬語の分類に基づいた正確な使い分け、具体的な例文、さらにはよくある間違いまで、スッキリと理解できます。もう敬語で迷うことなく、自信を持ってコミュニケーションできるようになりますよ。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「伺う」と「参る」の最も重要な違い

【要点】

「伺う」は「聞く・尋ねる・訪問する」の謙譲語Ⅰで、常に動作の対象への敬意を示します。「参る」は「行く・来る」の謙譲語Ⅰまたは謙譲語Ⅱ(丁重語)で、相手先への敬意を示す場合と、聞き手への丁重さを示す場合があります。

まず結論から。「伺う」と「参る」の最も重要な違いを一覧表にまとめました。このポイントを押さえれば、使い分けの基本はバッチリです。

項目 伺う(うかがう) 参る(まいる)
元の動詞 聞く、尋ねる、訪問する 行く、来る
敬語の種類 謙譲語Ⅰ 謙譲語Ⅰ / 謙譲語Ⅱ(丁重語)
敬意の対象 動作が向かう相手(話を聞く相手、尋ねる相手、訪問先の相手) 【謙譲語Ⅰ】動作が向かう相手(行く先、来る元の相手)
【謙譲語Ⅱ】話の聞き手
主な使い方 相手に何かを聞いたり、相手の元を訪れたりする自分の動作をへりくだる。 相手の所へ行ったり、相手の所から来たりする自分の動作をへりくだる(謙譲語Ⅰ)。
自分の「行く」「来る」動作を聞き手に対して丁重に述べる(謙譲語Ⅱ)。
例文 ご意見を伺いたいです。(聞く)
受付で伺ってください。(尋ねる)
明日、御社へ伺います。(訪問する)
【謙譲語Ⅰ】先生のお宅へ参ります。(行く)
ただいま社長が参ります。(来る)
【謙譲語Ⅱ】私がそちらへ参ります。(行く)
明日、本社から担当者が参ります。(来る)

一番大きな違いは、元の動詞の意味と、「参る」が謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)の二つの顔を持つ点ですね。

「伺う」は常に、自分が何かを聞いたり、尋ねたり、訪問したりする相手への敬意を表します。

一方、「参る」は、行く先や来る元の相手への敬意を示す場合(謙譲語Ⅰ)と、単に自分の「行く」「来る」という動作を聞き手に対して丁寧に伝えたい場合(謙譲語Ⅱ/丁重語)の両方で使われる、少しトリッキーな言葉なんです。

この敬語の種類の違いについては、後ほど詳しく解説しますね。

なぜ違う?言葉の成り立ちからイメージを掴む

【要点】

「伺う」は相手の様子や意向をうかがい知ろうとする行為、「参る」は尊い場所へ行く、または単に移動するという行為が元になっています。成り立ちから、「伺う」の相手への配慮、「参る」の移動という基本動作の違いが見えてきます。

この二つの言葉がなぜ異なる意味と用法を持つのか、その成り立ちを探ると、それぞれの言葉が持つ根本的なイメージが少し見えてきますよ。

「伺う」の成り立ち:「司(うかがう)」から

「伺う」の「伺」という漢字は、「人(にんべん)」と「司」から成り立っています。「司」は、もともと「物事を注意深く見る」「つかさどる」といった意味を持つ字で、「様子をうかがう」「そっとのぞき見る」という意味にも使われました。

つまり、「伺う」は、人の様子や相手の意向などを、こちらから注意深く見たり聞いたりして知ろうとする行為が元々のイメージにあると考えられます。そこから、相手の意向を「尋ねる」、相手の話を「聞く」、相手の元へ「訪れる」といった意味へと派生していったのでしょう。相手への配慮や敬意が自然と含まれるニュアンスが感じられますね。

「参る」の成り立ち:「参(まいる)」から

「参る」は、もともと「参」という漢字が使われていました。「参」は、「まいる」「さんかする」などの意味を持ち、神仏や高貴な人のもとへ「行く」ことを表す言葉でした。「宮参り」「墓参り」などにその名残がありますね。

この尊い場所へ「行く」という意味から、相手を敬ってその場所へ「行く」、あるいは相手のところから「来る」という謙譲の意味が生まれました。さらに、単に自分の「行く」「来る」という動作を丁重に表現する用法(丁重語)へと広がっていきました。

「伺う」が相手の意向を探るようなニュアンスを含むのに対し、「参る」はあくまで「行く・来る」という移動の動作が基本にある、という違いが成り立ちからも見て取れます。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

相手の話を聞くのは「伺う」、相手の会社へ行くのは「伺う」または「参る」。自分の上司が来ることを相手に伝えるのは「参る」(謙譲語Ⅱ/丁重語)。「ご意見が参りたい」や「受付で参ってください」は誤用です。

言葉の違いをしっかり身につけるには、具体的な例文で確認するのが一番です。ビジネスシーン、日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

誰への敬意を示すのか、元の動詞は何かを意識すると分かりやすいですよ。

【OK例文:伺う】

  • 部長のご意見を伺いたいのですが、お時間よろしいでしょうか。(聞く)
  • 詳しい内容につきましては、担当者に直接伺っていただけますでしょうか。(尋ねる)
  • 明日の午後3時に、貴社へ伺います。(訪問する)
  • 先日伺った件について、追加でご確認したい事項がございます。(聞いた件/訪問した件)

【OK例文:参る】

  • 本日は社長の代理で私が参りました。(来る – 謙譲語Ⅰ/Ⅱ)
  • 後ほど資料をお持ちして参ります。(行く – 謙譲語Ⅰ/Ⅱ)
  • ただいま担当者が参りますので、少々お待ちください。(来る – 謙譲語Ⅱ/丁重語 – 社内の人間の動作を聞き手に丁重に伝えている)
  • 来週月曜日に、〇〇様のお宅へ参ります。(行く – 謙譲語Ⅰ – 訪問先への敬意)

特に注意したいのは、「参る」の謙譲語Ⅱ(丁重語)としての使い方ですね。社内の上司など、身内の「来る」「行く」動作を、社外の人など聞き手に対して丁重に述べる場合に「参る」を使います。この場合、動作の対象(上司)を高めているわけではなく、あくまで聞き手への配慮から丁重な言葉を選んでいるのです。

日常会話での使い分け

日常会話では、「伺う」は比較的使われますが、「参る」は少し改まった響きになります。

【OK例文:伺う】

  • 先生に明日の予定を伺ってきます。(尋ねる)
  • お話を伺えて光栄です。(聞く)
  • 近いうちに一度、ご挨拶に伺います。(訪問する)

【OK例文:参る】

  • (親戚の家に行く際に)叔父さんの家には、明日参ります。(行く – 謙譲語Ⅰ/Ⅱ)
  • (友人に自分の予定を伝える際に)今からそっちへ参ります。(行く – 謙譲語Ⅱ/丁重語)
  • お墓参りに行きました。(行く)

日常会話では、「参る」を謙譲語Ⅱ(丁重語)として使う場面は、「今から行きます」を丁寧に言う「今から参ります」くらいかもしれませんね。「お墓参り」のように熟語として定着している使い方も多くあります。

これはNG!間違えやすい使い方

元の動詞の意味を考えると、なぜ間違いなのかが分かります。

  • 【NG】皆様のご意見が参りたいです。
  • 【OK】皆様のご意見を伺いたいです。(聞きたい)

意見は「聞く」ものなので、「伺う」を使います。「参る」は「行く・来る」の意味なので使えません。

  • 【NG】ご不明な点は、受付で参ってください。
  • 【OK】ご不明な点は、受付で伺ってください。(尋ねてください)

受付で「尋ねる」ので、「伺う」を使います。「参る」だと「受付へ行く」になってしまいます。

  • 【NG】(自分の上司の動作を社外の人に伝える際に)部長がそちらへ伺います。
  • 【OK】(自分の上司の動作を社外の人に伝える際に)部長がそちらへ参ります。(謙譲語Ⅱ/丁重語)

これはよくある間違いです。「伺う」は自分(または身内)が相手に何かを聞いたり尋ねたり訪問したりする場合に使う謙譲語Ⅰです。この場合、社内の上司(身内)が社外の相手(聞き手)の所へ「行く」動作なので、謙譲語Ⅱ(丁重語)の「参る」を使うのが適切です。

【応用編】似ている言葉「訪ねる」「聞く」「行く」「来る」の敬語表現

【要点】

「伺う」「参る」以外にも、動作や敬意の対象に応じて様々な敬語表現があります。「訪ねる」なら「お訪ねする」、「聞く」なら「お聞きする」、「行く」「来る」なら「まいる」や尊敬語の「いらっしゃる」など、文脈に合わせて使い分けることが大切です。

「伺う」と「参る」以外にも、「訪ねる」「聞く」「行く」「来る」といった動作には、様々な敬語表現があります。それぞれのニュアンスと使い分けを見てみましょう。

  • 訪ねる(訪問する)
    • 謙譲語Ⅰ: 伺う、お訪ねする、参上する
    • 尊敬語: いらっしゃる、おいでになる、お越しになる、お訪ねになる
    • 丁寧語: 訪ねます
  • 聞く
    • 謙譲語Ⅰ: 伺う、お聞きする、拝聴する
    • 尊敬語: お聞きになる
    • 丁寧語: 聞きます
  • 尋ねる
    • 謙譲語Ⅰ: 伺う、お尋ねする
    • 尊敬語: お尋ねになる
    • 丁寧語: 尋ねます
  • 行く
    • 謙譲語Ⅰ: 伺う(訪問する場合)、参る、参上する
    • 謙譲語Ⅱ(丁重語): 参る
    • 尊敬語: いらっしゃる、おいでになる、お越しになる
    • 丁寧語: 行きます
  • 来る
    • 謙譲語Ⅰ: 参る
    • 謙譲語Ⅱ(丁重語): 参る
    • 尊敬語: いらっしゃる、おいでになる、お越しになる、見えられる(「見える」の尊敬語)
    • 丁寧語: 来ます

こうして見ると、たくさんの表現がありますね。

例えば、「訪問する」場合、「伺います」と「お訪ねします」はどちらも謙譲語Ⅰですが、「伺います」の方がより一般的なビジネスシーンで使われ、「お訪ねします」は少し丁寧な印象を与えるかもしれません。「参上します」はさらにへりくだった、やや改まった表現です。

「聞く」の場合も、「伺います」と「お聞きします」は似ていますが、「伺う」の方がややフォーマルな場面で使われる傾向があります。「拝聴する」は「謹んで聞く」という意味で、講演会などで使う非常に改まった表現です。

「行く」「来る」の「参る」と「伺う」は、行く先(訪問先)が敬意の対象となる場合はどちらも謙譲語Ⅰとして使えますが、「伺う」は「(様子をうかがいに)行く」というニュアンスを含むことがあります。一方、「参る」は謙譲語Ⅱ(丁重語)としても使えるため、より汎用性が高いと言えるかもしれません。

どの表現を選ぶかは、相手との関係性、場面のフォーマルさ、そして自分が伝えたいニュアンスによって使い分けることが大切ですね。

「伺う」と「参る」の違いを敬語の種類から解説

【要点】

「伺う」は常に謙譲語Ⅰで、動作の対象(聞く相手、訪問先など)を高めます。「参る」は、行く先・来る元を高める謙譲語Ⅰの場合と、単に自分の移動を聞き手に対して丁重に述べる謙譲語Ⅱ(丁重語)の場合があります。この違いが使い分けの鍵です。

「伺う」と「参る」の使い分けを理解する上で、敬語の種類、特に謙譲語の分類を知ることが非常に重要です。少し専門的になりますが、ここを理解すると混乱が少なくなりますよ。

敬語の基本:尊敬語・謙譲語・丁寧語

まず、敬語は大きく分けて「尊敬語」「謙譲語」「丁寧語」の3種類(または5種類に分類)があります。

  • 尊敬語:相手(または第三者)の動作・状態などを高めて、その人への敬意を表す言葉。(例:いらっしゃる、おっしゃる、ご覧になる)
  • 謙譲語:自分(または身内)の動作などをへりくだって、動作が向かう相手や聞き手への敬意を表す言葉。(例:伺う、申し上げる、拝見する)
  • 丁寧語:言葉遣いを丁寧にして、聞き手への敬意を表す言葉。(例:です、ます、ございます)

謙譲語Ⅰと謙譲語Ⅱ(丁重語)の違い

ここで重要なのが、謙譲語の内部での分類です。文化庁の『敬語の指針』(平成19年)では、謙譲語をさらに「謙譲語Ⅰ」と「謙譲語Ⅱ(丁重語)」の二つに分けています。

  • 謙譲語Ⅰ:自分側の動作・ものごとなどを、それが向かう先の相手を高めることで、間接的に相手への敬意を表す言葉。
  • 謙譲語Ⅱ(丁重語):自分側の動作・ものごとなどを、話や文章の相手(聞き手・読み手)に対して丁重に述べることで敬意を表す言葉。

具体例で見てみましょう。

  • 「先生に申し上げる」:「申し上げる」は謙譲語Ⅰ。動作が向かう先である「先生」を高めています。
  • 「私が申します」:「申します」は謙譲語Ⅱ(丁重語)。「言う」という自分の動作を聞き手に対して丁重に述べています。動作が向かう先の相手(この文脈では特にいない)を高めているわけではありません。

この違い、なんとなく掴んでいただけたでしょうか? 謙譲語Ⅰは「相手を持ち上げる」イメージ、謙譲語Ⅱ(丁重語)は「自分を丁重に見せる」イメージとも言えます。

「伺う」は謙譲語Ⅰ、「参る」は謙譲語ⅠにもⅡにもなる

この分類を踏まえて、「伺う」と「参る」を見てみましょう。

  • 「伺う」:「聞く」「尋ねる」「訪問する」の謙譲語Ⅰです。常に、話を聞く相手、尋ねる相手、訪問先の相手を高めます。
  • 「参る」:「行く」「来る」の謙譲語Ⅰでもあり、謙譲語Ⅱ(丁重語)でもあります。
    • 【謙譲語Ⅰとして】「先生のお宅へ参る」「お客様の元から参りました」のように、行く先や来る元の相手を高める場合。
    • 【謙譲語Ⅱ(丁重語)として】「私がそちらへ参ります」「ただいま担当者が参ります」のように、自分の(または身内の)「行く」「来る」動作を聞き手に対して丁重に述べる場合。

「参る」が両方の性質を持っているという点が、使い分けを難しく感じる原因の一つかもしれませんね。特に、身内の動作を社外の人に伝える際に「担当者が参ります」のように謙譲語Ⅱ(丁重語)として使う用法は、ビジネス敬語として非常に重要です。

この敬語の分類を理解しておけば、「伺う」と「参る」の使い分けで迷うことが格段に減るはずです。

僕が「伺う」と「参る」を勘違いして冷や汗をかいた話

敬語って本当に難しいですよね…。特に謙譲語ⅠとⅡの区別なんて、意識しないとすぐに間違えてしまいます。僕も新人時代、この「伺う」と「参る」の使い分けで大失敗し、電話口で冷や汗をかいた経験があるんです。

配属されたばかりの頃、先輩から「取引先の〇〇部長に、明日の会議に出席されるか電話で確認してくれる?」と頼まれました。緊張しながらも電話をかけ、受付の方に取り次いでもらい、いざ部長ご本人と話す場面に。

そして僕は、練習した通りにこう言ってしまったのです。

「明日の会議の件でございますが、〇〇部長は伺いますでしょうか?」

一瞬の間があって、電話の向こうの部長が少し怪訝そうな声で「…え?私が誰かに何かを聞きに行くと?」とおっしゃいました。

その瞬間、僕は自分の間違いに気づいて、顔からサッと血の気が引きました。「伺う」は「聞く」とか「訪ねる」の謙譲語Ⅰ!相手である部長の動作(来る)に対して使う言葉じゃない! 部長が「来るかどうか」を丁重に尋ねたつもりだったのに、全く意味が通じていなかったのです。

慌てて「申し訳ございません! 明日の会議にいらっしゃいますでしょうか?」と言い直しましたが、もう後の祭り。電話を切った後、自分の敬語の知識のなさに愕然とし、冷や汗が止まりませんでした。

後で先輩に報告すると、「あー、やっちゃったね。『伺う』じゃなくて、相手の動作だから尊敬語の『いらっしゃる』か、もし自分の上司のことを聞くなら丁重語の『参る』を使って『部長は明日参られますか?』って聞くこともあるけど、相手本人には普通使わないな。敬語は難しいよな」と苦笑いされました。

この失敗を通じて、言葉の意味だけでなく、誰の動作で、誰への敬意なのかを常に意識しないと、とんでもない勘違いを生むということを痛感しました。特に「伺う」と「参る」は意味も敬語の種類も違うので、混同するとコミュニケーションが成り立たなくなる可能性があるんですよね。あの時の冷や汗は、今でも忘れられません。

「伺う」と「参る」に関するよくある質問

Q1: 「明日伺います」と「明日参ります」、どちらを使うべきですか?

A1: どちらも使うことができますが、ニュアンスが異なります。「明日伺います」は訪問先への敬意を示す謙譲語Ⅰです。「明日参ります」も訪問先への敬意を示す謙譲語Ⅰとして使えますが、聞き手に対して丁重に「行きます」と伝える謙譲語Ⅱ(丁重語)としても使われます。ビジネスシーンで相手先へ訪問することを伝える場合は、どちらを使っても一般的に問題ありませんが、「伺います」の方が「訪問する」意味合いがより直接的かもしれません。

Q2: 「お伺いします」や「お伺いいたします」は二重敬語ですか?

A2: 「伺う」自体が謙譲語なので、接頭語「お」をつける「お伺いする」は、本来は二重敬語にあたります。しかし、「お伺いする」は習慣として広く使われ、定着しているため、一般的には問題ないとされています。文化庁の『敬語の指針』でも、習慣として定着している二重敬語の例として挙げられています。ただし、「お伺いいたします」の「いたす」も謙譲語なので、これは避けた方がより丁寧でしょう。「お伺いします」または「伺います」を使うのが無難です。

Q3: 相手の予定を聞くときに「ご都合いかがでしょうか?」と尋ねるのは「伺う」ことになりますか?

A3: はい、相手の都合や意向を「尋ねる」という意味合いで「伺う」ことになります。したがって、「ご都合を伺ってもよろしいでしょうか?」や、より丁寧に「ご都合をお伺いしてもよろしいでしょうか?」と言うことができます。「ご都合いかがでしょうか?」は、そのものを婉曲的に尋ねる表現ですね。

「伺う」と「参る」の違いのまとめ

「伺う」と「参る」、二つの謙譲語の違いについて、ご理解が深まったでしょうか?

最後に、この記事の重要なポイントを簡潔にまとめておきますね。

  1. 意味の違い:「伺う」は「聞く・尋ねる・訪問する」、「参る」は「行く・来る」。
  2. 敬語の種類の違い:「伺う」は常に謙譲語Ⅰ(相手への敬意)。「参る」は謙譲語Ⅰ(相手先への敬意)と謙譲語Ⅱ/丁重語(聞き手への丁重さ)の両方で使われる。
  3. 使い分けの基本:動作の内容(聞く/訪ねる vs 行く/来る)と、敬意の対象(動作の相手 vs 聞き手)で判断する。
  4. 身内の動作:社外の人などに身内(例:上司)の「行く・来る」を伝える場合は、謙譲語Ⅱ(丁重語)の「参る」を使うのが適切(例:「部長が参ります」)。
  5. 迷ったら確認:敬語の種類(謙譲語Ⅰ・Ⅱ)を意識すると、より正確な使い分けができる。

特に「参る」が二つの敬語の顔を持つ点は、少しややこしいかもしれませんが、ここをしっかり押さえることが、正しい使い分けの鍵となりますね。

敬語は相手への敬意を表す大切なツールです。今回の学びを活かして、自信を持って「伺う」と「参る」を使いこなし、円滑なコミュニケーションを築いていきましょう。敬語についてさらに詳しく知りたい場合は、敬語の違いをまとめたページも参考になるかもしれません。