「制作」と「作成」、どちらを使えばいいのか迷うことってありますよね。
この二つの言葉は似ていますが、芸術性や創造性が伴うか、それとも計画や書類作りが中心かで使い分けるのが基本です。
この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的なイメージから具体的な使い分け、さらには似ている言葉「製作」との違いまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「制作」と「作成」の最も重要な違い
基本的には芸術作品や映像など創造性が高いものは「制作」、書類や計画など事務的なものは「作成」と覚えるのが簡単です。ただし、文脈によっては判断が難しい場合もあります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
項目 | 制作 | 作成 |
---|---|---|
中心的な意味 | 芸術作品や映像・番組など、創造性や技術を伴って創り出すこと | 書類・文書・計画など、一定の形式や手順に沿って形にすること |
対象の例 | 映画、音楽、絵画、彫刻、ウェブサイト、番組、広告 | 企画書、報告書、契約書、見積書、議事録、資料、リスト |
ニュアンス | 芸術性、創造性、専門技術、オリジナリティ | 事務的、計画的、手順通り、形にする |
迷った時の判断 | 「芸術作品か?」「専門技術が必要か?」 | 「書類や計画か?」「手順に沿って作るものか?」 |
一番大切なポイントは、「制作」はクリエイティブな響き、「作成」は事務的な響きを持つということですね。
映画や音楽のような芸術性の高いものには「制作」がしっくりきますし、企画書や報告書のような書類には「作成」が自然に聞こえるでしょう。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「制作」の「制」は、材料に手を加えて形を整え“創り出す”イメージです。一方、「作成」の「作」は、手を動かして何かを“こしらえる”という基本的な動作を表すイメージを持つと、ニュアンスの違いが分かりやすくなります。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
言葉の根っこを知ると、丸暗記しなくても感覚的に使い分けられるようになりますよね。
「制作」の成り立ち:「制」が表す“形を整え創り出す”イメージ
「制」という漢字は、「きまり」や「しくみ」といった意味の他に、「材料に手を加えて形を整える」「こしらえる」「つくる」といった意味を持っています。
特に「製」という字(衣+制)が衣服を作ることを表すように、一定の技術や工夫をもって、新しいものを創り出すというニュアンスが強いんですね。
「制度」や「製品」といった言葉からも、単に作るだけでなく、形を整えたり、一定の基準を満たしたりするイメージが感じられるでしょう。
つまり、「制作」とは、技術や創造性を駆使して、価値のあるものを生み出すという状態を表している、と考えると分かりやすいですね。
「作成」の成り立ち:「作」が表す“手を動かしこしらえる”イメージ
一方、「作」という漢字は、「人が手を動かして何かをこしらえる」という、ものづくりの基本的な動作を表しています。
「作業」や「工作」といった言葉を思い浮かべると、そのイメージが掴みやすいでしょう。
芸術性や高度な技術というよりは、計画や手順に従って、具体的な形にするというニュアンスが強い漢字です。
このことから、「作成」には、書類や計画など、定められた形式や内容に基づいて形にするという事務的な響きが含まれるんですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
映画やウェブサイトのデザインは創造性が求められる「制作」、会議の議事録や見積書は手順に沿って作る「作成」と使い分けるのが基本です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
どんなものを作るのか、その性質を考えると使い分けは簡単ですよ。
ビジネスシーンでの使い分け
仕事で使う場面を想像してみましょう。
【OK例文:制作】
- クライアント向けのプロモーション映像を制作する。
- 新しいウェブサイトのデザイン制作を外部に委託した。
- 広告キャンペーンで使用するバナー広告を制作中です。
- 社内報に掲載する記事の取材・制作を担当する。
- 製品カタログの制作スケジュールを立てる。
映像やウェブデザイン、広告など、クリエイティブな要素や専門技術が関わる場合に「制作」が使われることが多いですね。
【OK例文:作成】
- 次回の会議で使用する資料を作成してください。
- プロジェクトの企画書を作成し、部長に提出した。
- 顧客への見積書を急いで作成します。
- 先日の打ち合わせの議事録を作成し、関係者に共有しました。
- 新しい顧客リストを作成する。
書類や文書、リストなど、事務的な作業や計画に基づいて形にする場合に「作成」が適しています。
企画書も、創造性はありますが、「書類」としての側面が強いため「作成」が一般的ですね。
日常会話での使い分け
日常会話でも、基本的な考え方は同じです。
【OK例文:制作】
- 子どもの夏休みの工作の制作を手伝った。(創造性を伴う工作)
- 友人の結婚式で流すお祝いムービーを制作している。
- 趣味でオリジナルの楽曲を制作しています。
【OK例文:作成】
- 旅行のしおりを作成した。
- 町内会イベントの参加者名簿を作成する。
- 引っ越しのためのやることリストを作成している。
ただし、日常会話では厳密に使い分けず、「作る」という言葉で代用することも多いでしょう。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることが多いですが、厳密にはどちらか一方がより自然、という使い方を見てみましょう。
- 【△】会議資料を制作する。(「作成」の方が一般的)
- 【OK】会議資料を作成する。
会議資料は通常、定型的なフォーマットに従って作られることが多いため、「制作」だと少し大げさに聞こえるかもしれませんね。ただし、デザイン性の高いプレゼン資料などは「制作」という場合もあります。
- 【△】映画を作成する。(「制作」の方が一般的)
- 【OK】映画を制作する。
映画は芸術性や多くの専門技術が結集するため、「作成」ではそのニュアンスが十分に伝わらないでしょう。「映画製作」という言葉もありますが、これは後述します。
【応用編】似ている言葉「製作」との違いは?
「製作」は、「制作」とほぼ同じ意味で使われますが、特に映画や番組、または道具や機械など実用的な物を作る場合によく用いられます。「作成」とは異なり、こちらも創造性や技術を伴うニュアンスがあります。
「制作」「作成」と非常によく似た言葉に「製作」があります。
これも混乱しやすいですよね。
結論から言うと、「製作」は「制作」とほぼ同じ意味で使われることが多いですが、使われる対象に少し傾向があります。
【「製作」がよく使われる対象】
- 映画、演劇、テレビ・ラジオ番組
- 道具、機械、家具などの実用的な物品
「映画製作」「番組製作」のように、メディアコンテンツの分野で特によく使われますね。
また、「機械を製作する」「家具を製作する」のように、道具や機械など、より実用的で規模の大きな物を作る際にも「製作」が選ばれることがあります。
「制作」との使い分けは曖昧な部分も多く、文脈によってどちらも使える場合が少なくありません。
例えば、「ウェブサイト制作」も「ウェブサイト製作」もどちらも使われます。
強いて言えば、「制作」の方がよりアートやデザイン寄り、「製作」の方がより工業製品やメディアコンテンツ寄りのニュアンスを持つ、と考えると少し整理しやすいかもしれません。
いずれにせよ、「製作」も「作成」とは違い、創造性や専門技術を伴うニュアンスを持つ言葉です。
「制作」と「作成」の違いを国語学的に解説
国語学的には、「制作」は芸術的・創造的なプロセスを、「作成」は計画的・事務的なプロセスを指す傾向が強いとされます。しかし、両者の境界は曖昧であり、特に「計画書」など中間的な対象物においては、どちらの語も用いられ得ます。言葉の選択は、対象物の性質だけでなく、話し手の意図や文脈にも左右されます。
もう少し専門的な視点から、「制作」と「作成」の違いを見てみましょう。
国語辞典などの定義を参照すると、やはりそのニュアンスの違いが強調されていますね。
例えば、『デジタル大辞泉』(小学館)では、
- 制作:芸術作品などを作ること。「映画を―する」「粘土で―する」
- 作成:書類・計画などを作ること。「書類を―する」「議案を―する」
と、対象物によって明確に使い分けられています。
一方で、『明鏡国語辞典』(大修館書店)では、もう少し踏み込んで解説されています。
- 制作:番組・映画・芸術作品など、ある程度の規模と創造性のあるものを作り出す場合に用いる。「美術品を制作する」「卒業制作」
- 作成:計画・書類などを作り上げる場合に用いる。「企画書を作成する」「戸籍を作成する」
ここで注目したいのは、「制作」における「ある程度の規模と創造性」という点ですね。
単に形にするだけでなく、作り手の意図や工夫、技術が込められている場合に「制作」が使われやすいと言えるでしょう。
一方の「作成」は、主に書類や計画など、一定のフォーマットや目的に沿って作り上げる事務的な行為を指すことが多いようです。
しかし、言葉の境界は常に変化し、曖昧さも伴います。
例えば、「計画書」は「作成」が一般的ですが、非常に独創的で大規模なプロジェクト計画であれば、「計画書を制作する」という表現も全くないわけではありません。
最終的には、どちらのニュアンスをより強調したいかという話し手の意図によって、言葉が選択される側面もあると言えるでしょう。
僕が「作成」と書いて恥をかいた、あの日の企画書
実は僕も、この「制作」と「作成」の使い分けで、顔から火が出るような経験をしたことがあるんです。
あれは忘れもしない、社会人2年目の秋でした。
当時、僕は小さな広告代理店で働いていて、初めて大きなコンペの企画書を任されたんです。
徹夜続きで、まさに心血を注いで作り上げた渾身の企画書。
斬新なアイデアと、自分なりに工夫を凝らした構成。
「これはもう『制作』と呼ぶにふさわしい!」と、当時の僕は本気で思っていました。
そして、自信満々で提出した企画書の表紙には、大きく「企画書制作」と書いてしまったのです…。
数日後、部長に呼ばれました。
「この企画書、内容は面白い。ただ…」と前置きがあった後、部長は苦笑いしながら言いました。
「普通、企画書は『作成』って言うんだよ。『制作』だと、なんだか芸術作品みたいで、ちょっと違和感があるかな」
その瞬間、僕は自分の思い込みと知識不足を突きつけられ、本当に恥ずかしくなりました。
企画書という「書類」を作ったにも関わらず、自分の込めた熱意だけで「制作」という言葉を選んでしまった。
この経験から、言葉は、自分の気持ちだけでなく、その言葉が一般的にどう使われているか、客観的な視点で選ぶ必要があるのだと痛感しましたね。
それ以来、言葉を選ぶときは、辞書を引いたり、似たような文脈での使われ方を調べたりするようになりました。
あの時の恥ずかしさが、今の僕の言葉選びの慎重さに繋がっているのかもしれません。
「制作」と「作成」に関するよくある質問
結局、企画書は「制作」「作成」どっちが正しいの?
一般的には「作成」が使われます。企画書は書類の一種であり、計画に基づいて形にするという事務的な側面が強いためです。ただし、非常にデザイン性が高かったり、映像などを伴う大規模な企画プレゼンテーション資料全体を指す場合など、文脈によっては「制作」という言葉が使われる可能性もゼロではありません。
ウェブサイトは「制作」「作成」どっち?
一般的には「ウェブサイト制作」が使われます。ウェブサイト作りには、デザインやコーディングといった専門技術、そしてクリエイティブな要素が不可欠だからです。「作成」を使うと、単にテンプレートに情報を入力しただけのような、少し簡易的な印象を与える可能性があります。
料理のレシピは「制作」「作成」どっち?
通常は「レシピ作成」が使われます。レシピは料理の手順を記した文書であり、「書類作成」に近いニュアンスがあるためです。もし、レシピ本全体や、料理紹介の映像コンテンツなどを指す場合は「制作」という言葉が使われることもあります。
「制作」と「作成」の違いのまとめ
「制作」と「作成」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- ニュアンスで使い分け:芸術性・創造性・技術が伴うものは「制作」、書類・計画など事務的なものは「作成」。
- 対象物で判断:映画や音楽、ウェブサイトは「制作」、企画書や報告書、リストは「作成」が一般的。
- 漢字のイメージが鍵:「制」は“形を整え創り出す”、「作」は“手を動かしこしらえる”イメージ。
- 「製作」との違い:「製作」は「制作」とほぼ同義だが、映画・番組や実用的な物品によく使われる。
言葉の背景にある漢字のイメージや、一般的な使われ方を意識することで、より自然で的確な言葉選びができるようになります。
これからは自信を持って、「制作」と「作成」を使い分けていきましょう。