「下記」と「以下」、どちらを使うべきか迷った経験はありませんか?
ビジネス文書やメールでよく使われるこれらの言葉ですが、その違いを正確に理解しているでしょうか。
以下の記事を読めば、「下記」と「以下」の核心的な意味の違いから、具体的な使い分け、さらには「上記」や「以降」といった類語との区別まで、もう迷うことなく自信を持って使いこなせるようになりますよ。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「下記」と「以下」の最も重要な違い
基本的には「下記」が特定の箇所を指し示すのに対し、「以下」はその地点を含むそれより後(下)の範囲全体を示すと覚えるのが簡単です。ビジネス文書などでは、この違いを意識することが大切ですね。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いは、指し示すものが「特定の箇所」か「範囲全体」かという点にあります。
以下の表に、その違いをまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリでしょう。
項目 | 下記 | 以下 |
---|---|---|
中心的な意味 | すぐ後に(下に)記された特定の箇所 | その地点を含む、それより後(下)の範囲全体 |
指し示すもの | 特定の情報、リスト、項目など | 文章の続き、数値の範囲、程度のレベルなど |
ニュアンス | 「ここを見てください」という指示 | 「ここから先」「これより下」という範囲指定 |
使い方 | 箇条書きや詳細説明の導入に使う | 文章の続きを示したり、基準値からの範囲を示す |
つまり、「下記」はピンポイントで「ここ!」と指し示すイメージ、「以下」は「ここから先全部」と範囲を示すイメージを持つと分かりやすいですね。
ビジネス文書など、正確さが求められる場面では、この違いをしっかり意識して使い分けることが大切ですよ。
なぜ違う?言葉の由来からイメージを掴む
「下記」は文字通り「下に記す(しるす)」ことを意味し、特定の記述箇所を指します。「以下」は「以」が「~より」という起点を、「下」が物理的な位置や程度を示すため、「ある基準点から下の範囲」を表します。
なぜこの二つの言葉に意味の違いが生まれるのか、それぞれの言葉の成り立ちを探ると、そのイメージがより深く理解できますね。
「下記」の由来:「下に記す」という直接的な意味
「下記」は、「下(した・しも)」と「記(しるす)」という漢字の組み合わせです。
これは文字通り、「下に書き記したもの」や「次に記述する箇所」を直接的に指し示しています。
文章中で「詳細は下記をご覧ください」とあれば、読み手はすぐ後に続く具体的な記述内容に注目しますよね。
まさに、特定の情報をピンポイントで示すための言葉と言えるでしょう。
「以下」の由来:「それより下」という範囲を示す意味
一方、「以下」は「以(もって)」と「下(した・しも)」の組み合わせです。
「以」という漢字には、「~をもって」「~より」といった意味があり、ある地点を起点とすることを示します。
そして「下」は、物理的な位置だけでなく、程度や数量が低いことも意味しますね。
つまり、「以下」はある基準となる点を含んで、そこから下の範囲全体を示す言葉なんです。
「これ以下」「50点以下」といった使い方を思い浮かべると、「範囲」のイメージが掴みやすいのではないでしょうか。
このように言葉の成り立ちを知ると、単なる暗記ではなく、それぞれの言葉が持つ本来のニュアンスを感覚的に理解できるようになりますね。
具体的な例文で使い方をマスターする
会議の議題リストは「下記」、報告書の続きは「以下」、価格が基準より低い場合は「以下」のように、示す対象が「特定のリスト・項目」か「それ以降の文章全体・範囲」かで使い分けます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーンと日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
ビジネス文書やメールでは、情報を正確に伝えるために「下記」と「以下」の使い分けが特に重要になりますね。
【OK例文:下記】(特定の項目やリストを示す場合)
- 本日の会議の議題は下記の通りです。
- お申込みに必要な書類は下記3点となります。
- ご質問への回答は、下記をご参照ください。
- 下記の点にご注意の上、お手続きをお願いいたします。
これらの例文では、「下記」が具体的な議題リスト、書類リスト、回答箇所、注意点を指し示していますね。
【OK例文:以下】(文章の続きや範囲を示す場合)
- 詳細につきましては、以下に説明いたします。
- 調査結果の概要は以下の通りです。
- 本契約の有効期間は、署名の日から1年間とし、それ以下の期間での解約は原則認められません。
- 評価基準を満たさない場合、すなわち総合評価が70点以下の場合は、再研修の対象となります。
- (書類の最後に)以下余白
「以下に説明いたします」「以下の通りです」は、その後に続く文章全体を指しています。
また、「それ以下の期間」「70点以下」は、時間や点数の範囲を示していますね。「以下余白」も、「ここから下は余白です」という範囲を示す定型表現です。
うーん、こうして見ると、ビジネスシーンでは意識して使い分ける場面が多そうですね。
日常会話での使い分け
日常会話では、ビジネスシーンほど厳密に使い分ける必要はないかもしれませんが、基本的な考え方は同じです。
【OK例文:下記】
- 今日の買い物リストは下記の通りだよ。
- 旅行の持ち物は、下記を参考に準備してください。
【OK例文:以下】
- 今日の話はここまで。以下、次回のミーティングで話しましょう。
- 気温が10度以下になったら、暖房をつけようか。
日常会話では、より口語的な「この後」「これより下」といった表現を使うことが多いかもしれませんね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味が通じないわけではありませんが、本来の意味からすると少し不自然に聞こえる使い方を見てみましょう。
- 【NG】本件に関する詳細は、下記に記載の通りです。(「下記に記載の通り」は冗長。「以下に記載の通り」または「下記の通り」が適切)
- 【NG】参加資格は、18歳下記の方とさせていただきます。(年齢の範囲を示す場合は「以下」が適切)
- 【NG】資料の続きは下記をご覧ください。(特定の項目ではなく、文章の続きを示す場合は「以下」が適切)
特に、「下記に記載の通り」はよく見かける表現ですが、「下に記された通り」となり、意味が重複しています。
細かいことかもしれませんが、こうした点に気をつけると、より洗練された文章になりますね。
【応用編】似ている言葉「上記」「以降」との違いは?
「上記」「以上」は「下記」「以下」の対義語で、それぞれ「前に記された特定の箇所」「ある基準点を含むそれより上(前)の範囲全体」を示します。「以降」は「ある時点より後」の時間的な範囲を示し、「以下」が示す位置や程度の範囲とは異なります。
「下記」「以下」とセットで覚えておきたいのが、その対義語や似た意味を持つ言葉ですね。
「上記」「以上」「以降」との違いを理解すると、さらに表現の幅が広がりますよ。
「上記」「以上」との違い
「上記(じょうき)」と「以上(いじょう)」は、それぞれ「下記」と「以下」の反対の意味を持つ言葉です。
言葉 | 意味 | 対義語 |
---|---|---|
上記 | 前に(上に)記された特定の箇所 | 下記 |
以上 | その地点を含む、それより前(上)の範囲全体、数量・程度が基準より多いこと | 以下 |
- 【例文:上記】上記の件について、ご回答をお願いいたします。
- 【例文:以上】詳細については、第3章以上の部分をご参照ください。
- 【例文:以上】気温が30度以上になったら、冷房を強くしましょう。
- 【例文:以上】本日の報告は以上です。
「上記」は「下記」と同じく特定の箇所を指し、「以上」は「以下」と同じく範囲を示します。
「以上です」という終わり方も、「これより前の部分で終わりです」という範囲を示しているんですね。
なるほど、セットで覚えると分かりやすいですね!
「以降」との違い
「以降(いこう)」も「以下」と混同しやすい言葉ですが、これは主に時間的な起点とその後の範囲を示す言葉です。
言葉 | 意味 | 主に示す対象 |
---|---|---|
以下 | その地点を含む、それより後(下)の範囲全体 | 位置、程度、数量 |
以降 | ある時点を含み、それより後の時間 | 時間 |
- 【例文:以降】来週以降、スケジュールが空いております。
- 【例文:以降】明治時代以降、日本の近代化は急速に進んだ。
- 【例文:以下】彼の能力は平均以下だ。(程度)
- 【例文:以下】詳細は以下の通りです。(位置)
「以下」が位置や程度、数量の範囲を示すのに対し、「以降」は時間的な範囲を示す、と覚えておくと良いでしょう。
「下記」と「以下」の違いを公用文の観点から解説
公用文では、分かりやすさを重視し、「下記」で特定の箇所を、「以下」でそれより後(下)の範囲を示すという基本的な使い分けが推奨されます。「以下」は数量や程度を示す場合にも用いられますが、誤解を招かないよう文脈に注意が必要です。
公的な文書、いわゆる公用文では、「下記」と「以下」はどのように使い分けられているのでしょうか。
文化庁の「公用文作成の考え方(建議)」(令和4年)などを参考にすると、やはり分かりやすさが最も重視されていることが分かりますね。
基本的な考え方としては、これまで見てきた通りです。
- 下記:すぐ後に続く特定の事項を示す場合に用いる。(例:「理由は下記のとおりです。」)
- 以下:場所や位置関係を示す場合(例:「以下、〇〇と呼ぶ。」)や、数量・程度を示す場合(例:「50パーセント以下」)に用いる。
特に注意が必要なのは、「以下」の使い方でしょう。
数量や程度を示す場合に「以下」を使うと、その基準点を含むのか含まないのか、誤解を招く可能性がないか、文脈を考慮する必要があります。
例えば、「18歳以下」はその年齢を含みますが、「平均以下」は平均値そのものを含まないニュアンスで使われることもありますよね。
公用文では、こうした曖昧さを避け、誰が読んでも同じ意味に解釈できるよう、言葉を慎重に選ぶ必要がある、ということでしょう。
もし公用文のルールについて詳しく知りたい場合は、文化庁のウェブサイトで関連資料を確認してみることをお勧めします。
「下記」と「以下」で迷った僕の失敗談
僕も新人の頃、「下記」と「以下」の使い分けで恥ずかしい思いをした経験があります。
初めて取引先に提出する報告書を作成していた時のことです。
報告書の途中で、参照してほしい補足資料のリストを箇条書きで示そうとしました。
その導入部分で、「詳細なデータについては、以下をご参照ください」と書いてしまったんですね。
自分の中では、「ここから下に書くリストを見てください」というつもりでした。
しかし、報告書をレビューしてくれた先輩から、「この『以下』だと、この文章の後に続く本文全体を指しているようにも読めるよ。
リストを具体的に示したいなら、『下記』を使った方が誤解がないんじゃないかな?」と指摘されたんです。
確かに、読み返してみると、僕が意図した「リスト」だけでなく、その後に続く考察部分まで含めて「以下」と捉えられてしまう可能性がありました。
もしそのまま提出していたら、取引先の方を混乱させてしまったかもしれません。
この経験から、言葉が持つ本来の意味だけでなく、文脈の中でどう読まれる可能性があるか、常に読み手の視点で考えることの重要性を痛感しましたね。
それ以来、特にビジネス文書では、「下記」でピンポイントに指示し、「以下」で文章の続きや範囲を示す、という使い分けを強く意識するようになりました。
ちょっとした言葉の違いですが、相手に与える印象や誤解のリスクを考えると、おろそかにできないな、と今でも思います。
「下記」と「以下」に関するよくある質問
箇条書きで項目を列挙する場合は「下記」「以下」どちらですか?
箇条書きで具体的な項目リストを示す場合は、特定の箇所を指す「下記」を使うのが一般的です。「下記の通り」「下記参照」のように使いますね。
メールの最後に署名を書く場合は「下記」「以下」どちらを使いますか?
署名は特定の情報ブロックなので「下記」を使うことも可能ですが、慣習的には「以下」を使うことは少ないです。通常は特に「下記」や「以下」をつけずに署名を書くか、あるいは「署名」と明記することが多いでしょう。
「以下省略」と「下記参照」はどう違いますか?
「以下省略」は、「ここから先の記述は省略します」という意味で、範囲を示しています。「下記参照」は、「すぐ下に記した特定の箇所を参照してください」という意味で、特定の箇所を示していますね。
「下記」と「以下」の違いのまとめ
「下記」と「以下」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 指すものが違う:「下記」はすぐ後(下)の特定の箇所、「以下」はある地点を含むそれより後(下)の範囲全体。
- イメージで覚える:「下記」はピンポイント指示、「以下」は範囲指定。
- 公用文でも基本は同じ:分かりやすさを重視し、特定の箇所は「下記」、範囲は「以下」と使い分ける。
- 類語との違いも意識:「上記」「以上」は対義語、「以降」は時間的な範囲を示す。
言葉の意味を正しく理解し、文脈に合わせて使い分けることで、あなたの文章はより正確で分かりやすくなるはずです。
これからは自信を持って、「下記」と「以下」を使いこなしていきましょう。