「降りる」と「下りる」、どちらも「おりる」と読みますが、どう使い分ければいいか迷うこと、ありますよね。
基本的には、乗り物か場所か、具体的な移動か抽象的な状況かで使い分けます。
この記事を読めば、それぞれの言葉のニュアンス、漢字の成り立ち、具体的な使い分けから公的なルールまでスッキリ理解でき、もう迷うことはありません!
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「降りる」と「下りる」の最も重要な違い
基本的には乗り物からは「降りる」、場所の移動は「下りる」と覚えるのが簡単です。ただし、「下りる」は常用漢字のため、公用文などでは「下りる」が使われる場面もあります。迷ったら文脈で判断しましょう。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
項目 | 降りる | 下りる |
---|---|---|
基本的な意味 | 乗り物などから出る 高い地位・役職から退く 霜・露・幕などが現れる・閉じる |
高い所から低い所へ移動する 許可・命令などが出る 鍵がかかる |
対象・状況 | 乗り物(電車、バス、船、飛行機など) 役職・地位(主役、社長など) 自然現象(霜、露、霧など) 舞台など(幕、とばりなど) |
場所の移動(山、階段、坂道など) 指示・決定(許可、命令、判決など) 施錠(鍵、かんぬきなど) |
ニュアンス | 特定の範囲・空間から外へ出る 役割から離れる 上から覆うように現れる |
物理的な上下移動 上位から下位へ伝達される 固定・施錠される |
現代での使われ方 | 乗り物や役職など特定の状況で使われる。 | 物理的な移動で広く使われる。常用漢字のため公用文などで推奨される場合もある。 |
迷ったら、乗り物関係は「降りる」、物理的な場所の移動は「下りる」と覚えておくと、多くの場面で対応できますね。
ただし、どちらも使う場合や例外もあるので、漢字のイメージを掴んでおくと、より正確に使い分けられますよ。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「降」は神聖なものが天から地上へ、人が高い所から低い所へ移動するイメージです。「下」は基準線より物理的に低い位置へ移動するイメージを持つと、使い分けが分かりやすくなります。
なぜこの二つの言葉に意味の違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「降りる」の成り立ち:「降」が表す“上から下への移動全般”のイメージ
「降」という漢字は、もともと神様などが天から地上へやってくる、神聖なものが上から下へ移動する様子を表していました。
雨や雪が「降る」という使い方にも、その名残がありますね。
そこから転じて、人が高い場所から低い場所へ移動すること全般や、乗り物という閉じた空間から外へ出ることも「降りる」と表現するようになったんです。
また、「降参」や「投降」のように、相手に屈するという意味も持ちます。
特定の場所・役割・状態から離れる、あるいは上から下へ移動する広い意味を持つのが「降」のイメージですね。
「下りる」の成り立ち:「下」が表す“物理的な上下移動”のイメージ
一方、「下」という漢字は、基準となる線よりも低い位置を示す象形文字が元になっています。
非常にシンプルに、物理的な「うえ⇔した」の関係を表しているんですね。
そのため、「下りる」は主に具体的な場所を、高いところから低いところへ物理的に移動するという意味で使われます。
また、命令や許可などが上位の存在から下位の存在へ伝達される様子や、鍵などが物理的に下がることで施錠される様子も「下りる」と表現します。
漢字のイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになりますね!
具体的な例文で使い方をマスターする
バスを「降りる」、役職を「降りる」、霜が「降りる」。階段を「下りる」、許可が「下りる」、鍵が「下りる」。具体的な場面で使い分ける練習をしましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
それぞれの漢字が使われる典型的な場面と、ビジネス・日常での使い分け、間違いやすいNG例を見ていきましょう。
乗り物から「おりる」場合:「降りる」が基本
電車、バス、タクシー、船、飛行機、エレベーター、エスカレーターなど、乗り物や昇降装置から外に出る場合は基本的に「降りる」を使います。
- 次の駅で電車を降りる。
- バス停でバスを降りる。
- 船酔いがひどいので、船を降りて休みたい。
- 飛行機を降りたら、すぐに連絡します。
- 3階でエレベーターを降りてください。
乗り物という閉じた空間から「出る」というニュアンスですね。
場所を「おりる」場合:「下りる」が基本、「降りる」も使う
山、階段、坂道、はしごなど、物理的に高い場所から低い場所へ移動する場合は、基本的に「下りる」を使います。
- 山道を下りる。
- 急いで階段を下りる。
- 自転車で坂道を下りるのは気持ちがいい。
- 屋根から梯子(はしご)を使って下りる。
ただし、「山をおりる」のように、「山頂から麓へ」という物理的な移動だけでなく、「登山をやめる」「山での活動から離れる」というニュアンスを含む場合は「山を降りる」と書くこともあります。
文脈によって使い分けが必要な場合もあるんですね。
役職や地位から「おりる」場合:「降りる」を使う
主役、社長、担当など、就いていた役職や地位から退く、退任する場合は「降りる」を使います。
- 主役の座を降りる。
- 体調不良のため、社長の職を降りることになった。
- 今回のプロジェクト担当を降りさせてください。
- 彼は自ら第一線を降りた。
その役割・立場から「離れる」というイメージですね。
霜・露・幕などが「おりる」場合:「降りる」を使う
霜、露、霧、雪などが上空から地上付近に現れる場合や、舞台の幕、夜のとばりなどが上から閉じるように下がる場合は「降りる」を使います。
- 寒い朝、庭に霜が降りていた。
- 草の葉に露が降りている。
- 濃い霧が降りて視界が悪い。
- 舞台の幕が降りると、拍手が鳴り響いた。
- 夜のとばりが降りる。
上から地上や舞台を覆うように現れたり、閉まったりするイメージです。
雪の場合は「降る」が一般的ですが、「雪が降りてあたり一面銀世界だ」のように使うこともあります。
許可・命令・決定などが「おりる」場合:「下りる」を使う
政府や上司など、上位の組織や人物から許可、命令、指示、判決などが下位へ伝えられる、発令される場合は「下りる」を使います。
- ようやく開発の許可が下りた。
- 部長から指示が下りたので、すぐに対応します。
- 裁判所から判決が下りた。
- 政府から緊急事態宣言が下りた。
- ローン審査の結果、融資が下りることになった。
「上意下達」のように、上から下へ伝わるイメージですね。
鍵などが「おりる」場合:「下りる」を使う
鍵、かんぬき、シャッターなどが物理的に下がって施錠されたり、閉まったりする場合は「下りる」を使います。
- ドアに鍵が下りている。
- 門にかんぬきが下りているのを確認する。
- 閉店後、店のシャッターが下りた。
物理的に「下」の位置に移動して固定されるイメージです。
【使い分け】ビジネスシーンでの例文
ビジネスシーンでは、状況に応じて使い分けが求められますね。
【OK例文:降りる】
- 出張先で新幹線を降りる。
- 今回のプロジェクトリーダーを降りさせていただきます。
- 役員を降りて、後進に道を譲る。
【OK例文:下りる】
- 本社から新しい方針が下りてきました。
- 予算の承認が下りたので、計画を実行に移しましょう。
- 非常階段を使って1階まで下りる。
- 終業後、オフィスの鍵が下りているか確認する。
【使い分け】日常会話での例文
日常会話でも、基本的な使い分けは同じです。
【OK例文:降りる】
- バス停を間違えて降りてしまった。
- 今朝は車のフロントガラスに霜が降りていた。
- あの俳優は、スキャンダルで主役を降りたらしい。
【OK例文:下りる】
- 駅の階段を下りる。
- 山のロッジまで歩いて下りる。
- 親から留学の許可が下りた!
- 寝る前に玄関の鍵が下りているか確認する。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることが多いですが、一般的な使い方とは異なる例を見てみましょう。
- 【NG寄り】山頂から歩いて麓(ふもと)に降りる。
- 【OK】山頂から歩いて麓に下りる。
物理的な場所の移動なので「下りる」が一般的ですね。「登山活動から離れる」ニュアンスなら「降りる」も使えますが、単なる移動なら「下りる」が自然です。
- 【NG】ようやく上司から企画の許可が降りた。
- 【OK】ようやく上司から企画の許可が下りた。
許可や命令は、上位から下位へ伝達されるので「下りる」を使いましょう。
- 【NG】バス停でバスを下りる。
- 【OK】バス停でバスを降りる。
乗り物から外へ出る場合は「降りる」が基本ですね。たまに「バスを下りる」という人もいますが、「降りる」の方が一般的です。
「降りる」と「下りる」の違いを国語的に解説
「降りる」は乗り物や役職など特定の範囲からの離脱や、自然現象などの出現を表すことが多いです。「下りる」は物理的な上下移動や、上位から下位への指示・決定の伝達、施錠などを表します。常用漢字表ではどちらも「おりる」とされていますが、文脈で使い分けるのが一般的です。
もう少し学術的な視点から「降りる」と「下りる」の違いを見てみましょう。
国語学的には、「降りる」は特定の空間や状態からの「離脱」に焦点が当たりやすく、「下りる」は「上下方向への物理的な移動」や「上位から下位への作用」に焦点が当たりやすい、と整理できます。
例えば、「電車を降りる」は「電車内」という空間からの離脱、「役職を降りる」は「役職」という状態からの離脱です。
一方、「階段を下りる」は上下の物理移動、「許可が下りる」は上位(許可権者)から下位(申請者)への作用(決定の伝達)、「鍵が下りる」は物理的に鍵が下がる作用(施錠)を表します。
自然現象(霜が降りる、幕が降りる)は少し特殊で、「上」から現れる、あるいは覆うように閉じる様子を表し、「降」の字の元々のイメージに近い使い方と言えるでしょう。
ちなみに、文化庁が定める「常用漢字表」では、「降」の訓読みとして「おりる」があり、「下」の訓読みとしても「おりる」が認められています。
つまり、公的な文書などでは、どちらの漢字を使っても間違いではありませんが、一般的にはこれまで説明してきたような意味合いで使い分けられています。
どちらを使うべきか厳密なルールがないため、文脈に合わせてより自然な方を選ぶのが良いでしょう。
例えば、文化庁のウェブサイトなどでも、文脈に応じて「降りる」「下りる」の両方が使われています。
詳しくは文化庁のウェブサイトなどでご確認いただけます。
僕が電車で「下ります!」と言ってしまった恥ずかしい話
僕も若い頃、この「降りる」と「下りる」で恥ずかしい思いをしたことがあるんです。
大学に入りたての頃、慣れない満員電車での通学に必死でした。
ある日、目的の駅に着き、ドア付近で固まっている人たちをかき分けようと、つい焦って大きな声で言ってしまったんです。
「すみません、下ります!」
周りの乗客が一瞬、キョトンとした顔で僕を見ました。
そして、近くにいた年配の女性が、クスッと笑いながら優しく教えてくれたんです。
「坊や、電車は『降りる』って言うのよ。『下りる』は階段とか坂道ね」
その瞬間、顔から火が出るほど恥ずかしかったですね…。
「下りる」は物理的に高いところから低いところへ、というイメージが強かったので、ホームに移動するのも「下りる」でいいだろう、と勝手に思い込んでいたんです。
でも、乗り物から出るのが「降りる」という基本的な使い分けを、その時初めて身をもって学びました。
言葉は、基本的なルールを知っているだけでなく、実際の場面でどう使われているかを意識することが大切だ、とその時の恥ずかしさとともに痛感しましたね。
それ以来、似たような言葉に出会うと、「これはどっちが自然かな?」と少し立ち止まって考えるクセがついたように思います。
「降りる」と「下りる」に関するよくある質問
乗り物以外で「降りる」を使うのはどんな時ですか?
役職や地位から退く場合(例:「社長を降りる」)、担当や役割から外れる場合(例:「プロジェクトを降りる」)、霜や露、幕などが現れたり閉じたりする場合(例:「霜が降りる」「幕が降りる」)などに使います。
「幕がおりる」は「降りる」「下りる」どちらですか?
一般的には「幕が降りる」と書きます。上から下へ閉じるように下がる様子を表します。ただし、「幕が下りる」と書いても間違いではありません。
迷ったらどちらを使えばいいですか?
乗り物から出る場合は「降りる」、物理的に高い場所から低い場所へ移動する場合は「下りる」を基本としましょう。許可や命令、鍵の場合は「下りる」です。役職や自然現象は「降りる」です。それでも迷う場合は、ひらがなで「おりる」と書くのも一つの方法です。
「降りる」と「下りる」の違いのまとめ
「降りる」と「下りる」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は対象で使い分け:乗り物・役職・自然現象などは「降りる」、場所の移動・許可命令・鍵などは「下りる」。
- 漢字のイメージが鍵:「降」は上から下への移動全般や離脱、「下」は物理的な上下移動や上位から下位への作用。
- 迷ったら基本に立ち返る:乗り物なら「降りる」、場所なら「下りる」。それでも迷ったらひらがなもOK。
言葉の背景にある漢字のイメージを掴むと、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。