「ニート」と「ひきこもり」の違いとは?定義・年齢・状態を比較解説

「ニート」と「ひきこもり」、ニュースや日常会話で耳にする機会は多いですが、その違いを正確に説明できますか?

実はこの二つの言葉、指し示す「状態」や「年齢層」が明確に異なります

この記事を読めば、「ニート」と「ひきこもり」それぞれの意味、公的な定義、具体的な使い分けがスッキリ理解でき、もう混同することはありません。

言葉の背景を知ることで、より深く社会的な課題への理解も進むでしょう。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「ニート」と「ひきこもり」の最も重要な違い

【要点】

「ニート」は主に就学・就労・職業訓練をしていない15~34歳の若者を指すのに対し、「ひきこもり」は6か月以上家庭にとどまり社会参加を避けている状態を指し、年齢制限はありません。ニートは活動状況、ひきこもりは社会との関わり方が定義の軸です。

まず結論として、「ニート」と「ひきこもり」の最も重要な違いを表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な区別はバッチリですね。

項目 ニート(NEET) ひきこもり
中心的な意味 就学・就労・職業訓練(Education, Employment, Training)のいずれも行っていない状態 様々な要因で社会参加を避け、6か月以上家庭にとどまっている状態
定義の基軸 活動状況(教育・雇用・訓練を受けているか) 社会的参加の状況(家庭にとどまっている期間)
対象年齢 15歳~34歳(厚生労働省定義) 年齢不問
状態の具体例 家事手伝いも通学もせず、求職活動も職業訓練もしていない若者(外出する場合もある) 就労や就学、友人との交流などを避け、長期間自宅(多くは自室)で過ごしている人
背景・要因 労働市場の問題、個人の状況など多様 人間関係、病気、職場不適応、複合的な要因など様々
重なり ニートの状態であり、かつひきこもりの状態である場合もある ひきこもりの状態であり、かつニートの定義に当てはまる場合もある

大切なのは、ニートは「活動状況」に、ひきこもりは「社会との関わり方」に焦点が当たっているという点でしょう。

ニートだからといって必ずしも家に閉じこもっているわけではなく、友人と遊びに出かけたりすることはあります。

一方、ひきこもりは、その理由はどうあれ、社会的な接点を避け、家で過ごす時間が極端に長い状態を指しますね。

なぜ違う?言葉の成り立ちや背景からイメージを掴む

【要点】

「ニート」は英国で生まれた若者の就労・就学状況を示す行政的な分類用語です。一方、「ひきこもり」は日本で社会問題として認識され始めた、長期にわたる社会的孤立状態を指す言葉で、その背景はより複雑です。

なぜこの二つの言葉が異なる意味を持つようになったのか、それぞれの成り立ちを知ると、より深く理解できますよ。

「ニート」の成り立ち:英国発祥の若年層の状況を示す言葉

「ニート(NEET)」は、”Not in Education, Employment or Training” の頭文字をとった略語です。

これは1990年代末にイギリスで、若年層(当初は16~18歳)の社会的な状況を把握し、支援策を考えるために作られた比較的新しい言葉なんですね。

つまり、もともとは行政的な分類や統計上のカテゴリーとしての意味合いが強い言葉だったわけです。

日本にこの概念が入ってきたのは2000年代初頭で、若者の就労問題が注目される中で広まりました。

ポイントは、ニートという言葉自体は、本人の労働意欲や社会との関わり方の度合いを直接示すものではない、ということです。

「ひきこもり」の成り立ち:日本特有の社会的な状態を表す言葉

一方、「ひきこもり」は、日本で生まれた言葉とされています。

1970年代頃から、不登校の子供たちがそのまま成人し、社会に出られずに家に閉じこもるケースが精神科医などの間で注目され始めました。

そして1990年代後半から2000年代にかけて、これが個人の問題だけでなく、社会的な課題として広く認識されるようになり、「ひきこもり」という言葉が定着していったんですね。

ニートが比較的客観的な「状態」を示すのに対し、ひきこもりは長期にわたる自宅への閉じこもりと社会からの孤立という、より深刻で複雑な背景を持つ状態を指すニュアンスがあります。

その原因も、いじめ、受験失敗、就職活動の挫折、職場の人間関係、病気など、非常に多岐にわたります。

正直、僕も以前はこの二つをかなり曖昧に使っていました…

でも、成り立ちを知ると、ニートが「今、何をしているか(していないか)」、ひきこもりが「社会とどう関わっているか(いないか)」という視点の違いが見えてきますよね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「ニート」は、学校にも行かず、働きもせず、職業訓練も受けていない若者について使うのが基本です(例:大学卒業後、就職せず家で過ごす弟)。「ひきこもり」は、理由を問わず長期間家から出ず、人との交流を避けている状態に使います(例:人間関係の悩みで退職し、数年自室にこもる友人)。

言葉の違いは、具体的な使い方を見るとよりはっきりします。

ビジネスシーンというよりは、社会的な文脈や日常会話で使われることが多いですね。

「ニート」を使う場面(OK例文)

厚生労働省の定義である「15~34歳」「非労働力」「家事・通学をしていない」を意識すると分かりやすいでしょう。

  • 大学卒業後、就職活動もせず家で過ごしている弟は、いわゆるニートの状態だ。
  • 政府はニート支援策として、若者向けの職業訓練プログラムを拡充した。
  • 彼はアルバイトもせず、学校にも通っていないが、家で資格取得の勉強をしている場合は、厳密にはニートの定義から外れる。(※職業能力開発に類すると解釈される場合があるため)

注意点として、35歳以上の人や、主婦(主夫)、求職活動中の人、病気療養中の人などは、定義上ニートには含まれません。

「ひきこもり」を使う場面(OK例文)

「6か月以上」「家庭にとどまり続けている」「社会的参加を避けている」状態を指します。

  • 彼は中学生の頃のいじめが原因で不登校になり、もう10年以上ひきこもりの状態が続いている。
  • 職場の人間関係に悩み退職した友人が、ここ数年ひきこもりがちで心配だ。
  • 高齢の親がひきこもりの子供の将来を案じている、いわゆる「8050問題」が深刻化している。
  • 彼女は病気の治療のため一時的に外出できないが、友人とは連絡を取っており、ひきこもりとは少し違う。

ひきこもりは、その背景に精神疾患が関わっている場合もあれば、そうでない場合もあります。

また、完全に家から一歩も出ない状態だけを指すわけではなく、コンビニなど近所への短時間の外出はする人も含まれることがありますね。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が混同されやすい言葉なので、注意したい使い方を見てみましょう。

  • 【NG】定年退職後、特に何もせず家で過ごしている父はニートだ。

    【OK】定年退職後、特に何もせず家で過ごしている父は、悠々自適の生活を送っている。(ニートは34歳まで)

  • 【NG】彼は一日中ゲームばかりしているニートで、全く外に出ない。

    【OK】彼は一日中ゲームばかりしており、いわゆるニートの状態だ。さらに、ここ数か月は全く外に出ず、ひきこもりがちだ。(外に出ない点は「ひきこもり」の特徴)

  • 【NG】うつ病で会社を休職し、自宅療養中の彼はひきこもりになってしまった。

    【OK】うつ病で会社を休職し、自宅療養中の彼は、今は外出を控えている。(精神疾患の治療による自宅療養は、ひきこもりの定義とは区別されることが多い)

特に、「ニート=外に出ない人」というイメージは誤解されやすいポイントですね。

ニートでも活動的な人はいますし、逆にひきこもりの人がニートの定義(年齢など)に当てはまらないこともあります。

言葉を使う際は、その人の状況を正確に理解しようとする姿勢が大切だと、改めて感じます。

「ニート」と「ひきこもり」の違いを公的な定義から解説

【要点】

厚生労働省は「ニート」を15~34歳の非労働力人口のうち家事も通学もしていない者、「ひきこもり」を6か月以上家庭にとどまり社会参加を回避している状態(年齢不問)と定義しています。定義の基軸(活動状況か、社会的参加か)と年齢の有無が明確な違いです。

より正確な理解のために、公的な機関である厚生労働省がどのように定義しているかを見てみましょう。

これが、言葉の使い分けを考える上での最も信頼できる基準となりますね。

厚生労働省による「ニート」の定義

厚生労働省の様々な報告書やウェブサイトでは、ニート(若年無業者)を以下のように定義・説明しています。

「15~34歳の非労働力人口(※)のうち、家事も通学もしていない者」

(※)非労働力人口とは、15歳以上人口のうち、就業者(仕事をしている人)と完全失業者(仕事を探している人)を除いた人々を指します。

つまり、学校に行っておらず、仕事もしておらず(仕事を探してもおらず)、家事も主にしていない、15歳から34歳までの人が「ニート」に該当するわけですね。

ここで重要なのは、この定義には本人の働く意思があるかどうかは含まれていない点です。

働きたいけれど仕事が見つからない人も、働く意思がない人も、この定義上は区別されません。

厚生労働省による「ひきこもり」の定義

一方、ひきこもりについては、厚生労働省は以下のように定義しています。

「様々な要因の結果として社会的参加(就学、就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的には6か月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態を指す現象概念」

ポイントは以下の通りです。

  • 原因は様々:特定の病気や障害だけが原因ではありません。
  • 社会的参加の回避:学校や職場に行かない、友人と会わないなど、社会との接点を避けている状態です。
  • 期間:原則として「6か月以上」という期間が目安とされています。
  • 場所:概ね「家庭にとどまり続けている」状態です。自室からほとんど出ない場合もあれば、家の中では動ける場合、近所のコンビニなどには行ける場合など、程度は様々です。
  • 年齢不問:ニートと違い、年齢の区切りはありません。

また、統合失調症などの精神病圏の疾患が第一の原因と考えられる場合は、通常「ひきこもり」の定義からは除外されることが多いですが、明確な線引きは難しい場合もあります。

「状態」と「年齢」が大きな違い

こうして公的な定義を比較すると、違いは明らかですね。

ニート「活動状況」(教育・雇用・訓練を受けているか否か)と「年齢(15~34歳)」で定義される。

ひきこもり「社会的参加の状況」(6か月以上家庭にとどまる)で定義され、「年齢は問わない」

この二つの軸をしっかり理解しておけば、混同することは少なくなるはずです。

社会的な課題を議論する際には、こうした公的な定義に基づいて言葉を使うことが、誤解を防ぎ、建設的な対話を進める上で非常に重要だと感じます。

僕が「ニート」と「ひきこもり」を混同して気まずかった話

僕も以前、この二つの言葉を混同して、少し気まずい思いをした経験があります。

数年前、大学時代の友人数人と久しぶりに集まった時のことです。

近況報告をする中で、ある共通の友人A君の話題になりました。

A君は大学卒業後、就職せずに実家で暮らしており、時々オンラインゲームで繋がるくらいで、他の友人たちもほとんど会えていない状況でした。

それを聞いた僕は、「へえ、Aはまだニートやってるのか。もう30過ぎたのにな。そろそろ外に出ないとまずいよな」と、つい口にしてしまったんです。

その場の空気が一瞬、微妙に凍りつきました。

すると、A君と比較的連絡を取り合っていた別の友人B君が、少し言いにくそうに教えてくれました。

「いや、Aはさ、卒業後に就職した会社でちょっと精神的に参っちゃって…。それで退職してから、もう何年もほとんど家から出られない状態なんだよ。ニートっていうか…、まあ、ひきこもりに近い感じかな。本人も悩んでるみたいでさ」

僕はハッとしました。

A君の状況をよく知りもせずに、「働いていない若者=ニート」と短絡的に結びつけ、さらに「外に出ない」という勝手なイメージまで加えて、無神経な言葉を発してしまったのです。

B君の話を聞いて、A君が単に「働いていない」のではなく、もっと複雑で深刻な事情を抱えている可能性を知り、自分の浅はかさが恥ずかしくなりました。

「ニート」も「ひきこもり」も、その言葉が指す状態の背景には、一人ひとり異なる事情や困難があります。

この経験から、言葉の定義を正しく理解することはもちろん、その言葉で人を安易にカテゴライズしたり、状況を知らずにレッテル貼りしたりすることの危うさを痛感しました。

それ以来、こうした言葉を使う際には、より慎重になるように心がけています。

「ニート」と「ひきこもり」に関するよくある質問

「ニート」と「ひきこもり」は同じ意味ですか?

いいえ、違います。「ニート」は主に15歳から34歳で、就学・就労・職業訓練をしていない状態を指します。一方、「ひきこもり」は年齢に関係なく、6か月以上家庭にとどまり社会参加を避けている状態を指します。活動状況と社会との関わり方、年齢制限の有無が主な違いです。

「ニート」は何歳までを指しますか?

厚生労働省の定義では、15歳から34歳までとされています。ただし、日常会話などでは、もう少し広い年齢層(例えば30代後半など)を含めて使われる場合もありますが、厳密な定義とは異なります。

「ひきこもり」はずっと家の中にいる状態のことですか?

原則として6か月以上にわたり家庭にとどまっている状態を指しますが、必ずしも「一歩も外に出ない」状態だけを意味するわけではありません。近所のコンビニへの買い物など、限定的な外出はする人も含まれることがあります。重要なのは、就学や就労、友人との交流といった「社会的参加」を避けている点です。

両方の状態に当てはまる人もいますか?

はい、います。例えば、25歳で学校にも行かず、仕事もしておらず(ニートの定義に合致)、かつ半年以上ほとんど家から出ずに人との交流も避けている(ひきこもりの定義にも合致)という人は、両方の状態に当てはまると言えます。

「ニート」と「ひきこもり」の違いのまとめ

「ニート」と「ひきこもり」の違い、ご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 定義の軸が違う:「ニート」は就学・就労・職業訓練の状況、「ひきこもり」は社会参加の状況(6か月以上家庭にとどまる)で定義される。
  2. 年齢制限が違う:「ニート」は原則15~34歳、「ひきこもり」は年齢不問
  3. 状態も違う:「ニート」は必ずしも家に閉じこもっているわけではないが、「ひきこもり」は家庭にとどまる状態が基本。
  4. 言葉の背景:「ニート」は英国発祥の行政的分類、「ひきこもり」は日本の社会問題から生まれた言葉。
  5. 安易な使用は避ける:どちらの言葉も、その背景には個人の複雑な事情があるため、レッテル貼りにならないよう慎重に使う必要がある。

これらの言葉は、単なるラベルではなく、その背後にある社会的な課題や個人の困難を示唆しています。

正確な意味を理解し、適切に使い分けることが、より良いコミュニケーションと社会への理解につながるはずです。