「領収書」と「受領書」、ビジネスシーンでどちらを使うべきか迷ったことはありませんか?
似ているようで、実は対象や法的な意味合いが少し異なるこの二つの書類。
この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的な意味から具体的な使い分け、さらには印紙税の有無といった法的観点までスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「領収書」と「受領書」の最も重要な違い
「領収書」は主に金銭を受け取った証明であり、「受領書」は金銭や物品を受け取った事実を伝える通知です。金銭のやり取りでは「領収書」、物品の受け渡し確認などでは「受領書」が使われることが多いと覚えておくと分かりやすいでしょう。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
項目 | 領収書 | 受領書 |
---|---|---|
中心的な意味 | 金銭または有価証券を受け取ったことの証明 | 金銭または物品を受け取ったことの通知・確認 |
主な対象 | 金銭、有価証券 | 金銭、物品、書類など |
法的効力 | 金銭受領の強い証明力を持つ。二重請求防止や経費精算の証憑となる。民法上、支払者は受取人に発行を請求できる。 | 受け取った事実を通知する意味合いが強い。法的な発行義務はない。 |
印紙税 | 5万円以上の金銭または有価証券の受取書は課税対象(条件あり) | 原則として不要(ただし「領収書」と記載したり、金銭受領の証明とみなされる場合は課税対象) |
発行タイミング | 金銭の受領と同時またはその後 | 物品・金銭の受領と同時またはその後 |
最も大きな違いは、「領収書」が金銭受領の法的な証明書としての性格が強いのに対し、「受領書」は物品を含む受け取りの事実を通知・確認する意味合いが強い点ですね。
特に印紙税の有無は、実務上注意が必要なポイントでしょう。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「領」はしっかり“受け取る”、「収」は“自分のものにする”という意味合いを持ちます。一方、「受」は“受け止める”、「領」も“受け取る”ですが、「受領」は受け取った事実を相手に伝えるニュアンスが強まります。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのでしょうか?
それぞれの漢字が持つ意味を紐解くと、その理由がより深く理解できますよ。
「領収書」の成り立ち:「領」が示す“受け取る”という核心
「領」という漢字には、「受け取る」「自分のものとする」「治める」といった意味があります。
一方、「収」は「取り入れる」「集める」「自分のものにする」という意味を持っていますね。
この二つが合わさることで、「領収書」は、提供された金銭などを確かに自分の支配下に受け入れたという事実を証明する、強い意味合いを持つことがわかります。
お金をしっかりと受け取り、それを自分の管理下に置いたことを示す証明書、というイメージですね。
「受領書」の成り立ち:「受」が示す“受け止める”ニュアンス
「受」という漢字は、「差し出されたものを自分のところに引き寄せる」「受け止める」という意味合いが基本です。
「領」は前述の通り「受け取る」ですが、「受領」という熟語になると、「金銭や物品などを受け取ること」を意味し、特に受け取った事実を相手に伝えるというニュアンスが強まります。
つまり、「受領書」は、差し出されたものを確かに受け止めた、という事実を伝える通知書のようなイメージを持つと、領収書との違いが掴みやすいでしょう。
「確かに受け取りましたよ」という確認の意味合いが強いわけですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
代金の支払いには「領収書」、納品物の受け取り確認には「受領書」が一般的に使われます。ただし、受領書に「領収書」と書くと印紙税の対象になる可能性があるので注意が必要です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーンと日常シーン、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
何を「受け取った」のか、その目的は何かを意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:領収書】
- 商品の代金として、現金10万円を確かに領収いたしました。(領収書の発行)
- 経費精算のため、タクシー代の領収書を提出してください。
- クレジットカード払いの場合でも、領収書の発行は可能です。
【OK例文:受領書】
- 納品いただいた商品(パソコン10台)を確かに受領いたしました。(受領書の発行)
- 契約書原本を受領しましたので、ご報告いたします。
- 先日お送りした見積書は受領いただけましたでしょうか?
このように、金銭の受け渡しを証明する場合は「領収書」、物品や書類の受け取りを確認・通知する場合は「受領書」が主に使われますね。
ただし、取引先への支払いを証明するために「受領書」というタイトルで発行する場合でも、但し書きに「〇〇代金として」などと記載すると、実質的に金銭の受取書とみなされ、5万円以上であれば印紙税が必要になることがあるので注意が必要です。
日常シーンでの使い分け
日常会話でも、基本的な考え方は同じです。
【OK例文:領収書】
- 家賃を手渡しで支払い、大家さんから領収書をもらった。
- 確定申告で医療費控除を受けるために、病院の領収書を保管している。
【OK例文:受領書】
- 宅配便の荷物を受け取り、配達員にサインをして受領書(伝票の控え)を受け取った。
- 書留郵便を受け取った際に、受領印を押した。
日常では、「受領書」という言葉自体をあまり意識しないかもしれませんが、宅配便の受け取りなどはまさに「受領」の場面ですね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることも多いですが、厳密には使い分けが望ましい例を見てみましょう。
- 【△】商品の納品時に、代金と引き換えに受領書を発行した。
- 【OK】商品の納品時に、代金と引き換えに領収書を発行した。
この場合、主目的は代金を受け取った証明ですので、「領収書」がより適切です。
もし、物品の受け取りと代金の受け取りの両方を一枚で示したい場合は、「領収書兼受領書」といったタイトルにすることもありますね。
【応用編】似ている言葉「レシート」との違いは?
「レシート」は購入内容(品名、単価、数量、日時など)が詳細に記載された明細書です。「領収書」は金銭受領の証明に特化しており、宛名や但し書きが記載されることが多い点で異なります。ただし、レシートも法的には領収書として認められる場合があります。
「領収書」とよく似たものに「レシート」がありますね。
スーパーやコンビニで受け取る、あの細長い紙です。
これも違いを押さえておくと、さらに理解が深まりますよ。
「レシート」は、英語の “receipt” が語源で、購入した商品の明細が記載された書類です。
いつ、どこで、何を、いくつ、いくらで購入したかが詳細に記録されています。
一方、「領収書」は、金銭を受け取った事実を証明することに主眼が置かれています。
そのため、宛名(支払者の氏名や会社名)や但し書き(「〇〇代として」など)が記載されることが一般的です。
レシートには通常、宛名は記載されませんよね。
ただし、法的には、レシートも領収書として認められるケースが多いです。
取引年月日、金額、発行者名などが記載されていれば、税務上も証憑として有効とされることが一般的です。
経費精算などで「領収書が必要」と言われた場合でも、レシートで代用できることが多いのはこのためですね。
ただし、会社によっては「宛名付きの領収書」を必須としている場合もあるので、確認が必要です。
「領収書」と「受領書」の違いを法的観点から解説
民法上、支払者は受取人に「領収書」の発行を請求できますが、「受領書」には発行義務がありません。また、印紙税法上、5万円以上の金銭等を受け取った場合に発行する「領収書」は課税文書ですが、「受領書」は原則非課税です。電子帳簿保存法では、どちらも電子データで保存が可能です。
「領収書」と「受領書」は、法律的な観点からも違いがあります。
少し専門的になりますが、ビジネスシーンでは重要なポイントですので、押さえておきましょう。
金銭の受領証明と印紙税
民法第486条では、「弁済(支払い)をする者は、弁済と引換えに、弁済を受領する者に対して受取証書(領収書)の交付を請求することができる」と定められています。
つまり、お金を支払った人は、受け取った人に対して領収書の発行を求める権利があるということです。
一方、「受領書」にはこのような法的な発行義務はありません。
また、印紙税法では、「金銭又は有価証券の受取書」は課税文書とされています。
具体的には、記載された受取金額が5万円以上の場合、収入印紙を貼付する必要があります(非課税文書に該当する場合を除く)。
「領収書」は、この「金銭又は有価証券の受取書」に該当するため、5万円以上であれば原則として印紙が必要です。
「受領書」は、物品の受け取りを示す場合など、金銭の受領証明でなければ原則として印紙は不要です。
ただし、先述の通り、「受領書」というタイトルでも、実質的に金銭の受取書と判断される内容(例:「〇〇代金として確かに受領いたしました」)であれば、課税対象となるため注意が必要ですね。
物品の受領証明
物品を受け取った際に発行される「受領書」は、主に納品が完了したことの証拠として機能します。
これにより、後々「受け取った」「受け取っていない」というトラブルを防ぐことができます。
特に企業間の取引では、納品書とセットで受領書(または受領印を押した納品書の控え)が交わされるのが一般的です。
電子帳簿保存法における扱い
近年、ペーパーレス化が進み、領収書や受領書も電子データ(PDFなど)でやり取りされるケースが増えています。
電子帳簿保存法では、一定の要件を満たせば、これらの書類を電子データのまま保存することが認められています。
紙で受け取った場合でも、スキャンして電子データとして保存することが可能です。
領収書も受領書も、国税関係書類として扱われる場合があり、適切な保存が求められます。
法改正も頻繁に行われる分野ですので、常に最新の情報を確認するようにしましょう。
詳しくは国税庁のウェブサイトなどでご確認いただけます。
僕が「受領書」と書いて冷や汗をかいた新人時代の失敗談
僕も新人時代、この「領収書」と「受領書」の使い分けで、ちょっとした(いや、かなり恥ずかしい)失敗をしたことがあるんです。
それは、初めて一人でクライアントの会社に請求書を届けに行った時のことでした。
経理部の受付で請求書を手渡し、代わりに「受領印」を押してもらう、という簡単な手続きのはずでした。
しかし、当時の僕は「何か書類を受け取ってもらわなければ!」という思い込みが強く、受付の方にこう言ってしまったのです。
「請求書をお持ちしました。こちらに『受領書』をお願いします!」
受付の方は一瞬キョトンとした顔をされましたが、すぐに状況を察してくださり、「はい、こちらに受領印を押しますね」と、持参した請求書の控えにポンと日付印を押してくれました。
その瞬間、僕は自分の間違いに気づき、顔から火が出るほど恥ずかしくなりました。
「受領書」は、こちらが何かを受け取った際に発行したり、相手に発行を依頼したりするもの。
請求書を渡す側が「受領書をお願いします」というのは、確かにおかしいですよね。
正しくは「受領印をお願いします」あるいは「受領のサインをお願いします」でした。
幸い、受付の方はベテランで、僕の間違いを笑うでもなく、淡々と対応してくださいましたが、会社に戻る道すがら、自分の知識不足と勘違いにひどく落ち込んだのを覚えています。
この経験から、言葉の意味だけでなく、その書類がどのような場面で、誰から誰へ渡されるものなのか、その「流れ」を理解することが大切だと痛感しました。
たかが書類の名前、されど書類の名前。
ビジネスの基本を疎かにしてはいけない、という教訓になった出来事です。
「領収書」と「受領書」に関するよくある質問
領収書と受領書、どちらがより正式な書類ですか?
どちらも取引の証拠となる書類ですが、法的な観点(民法上の発行請求権、印紙税法上の扱い)から見ると、「領収書」の方が金銭受領の証明書としてより強い意味合いを持ちます。
受領書に収入印紙は必要ですか?
原則として不要です。ただし、タイトルが「受領書」であっても、内容が「〇〇代金として確かに受領しました」のように金銭の受領事実を証明するものであり、かつ受取金額が5万円以上であれば、印紙税の課税対象となります。
メールで送られてきたPDFの領収書や受領書は有効ですか?
はい、有効です。電子帳簿保存法の要件に従って適切に保存すれば、紙の書類と同様に扱われます。ただし、改ざん防止などの措置が講じられていることが重要です。
「領収書」と「受領書」の違いのまとめ
「領収書」と「受領書」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 証明 vs 通知:「領収書」は金銭受領の証明、「受領書」は金銭や物品受領の通知・確認が主な役割。
- 対象の違い:「領収書」は主に金銭、「受領書」は金銭・物品・書類など幅広く使われる。
- 法的効力:「領収書」は民法で発行請求権があり、強い証明力を持つ。「受領書」に発行義務はない。
- 印紙税:5万円以上の金銭等の「領収書」は課税対象。「受領書」は原則非課税(例外あり)。
- レシートとの違い:「レシート」は購入明細、「領収書」は金銭受領の証明に特化(宛名等)。
これらの違いを理解し、ビジネスシーンに合わせて的確に使い分けることで、よりスムーズで正確なコミュニケーションが可能になります。
これからは自信を持って、適切な書類を発行・受領していきましょう。