教えるプロ!「講師」と「教師」の明確な違いと使い分け方

「〇〇先生は、来月から講師として大学で教えるらしい」「教師を目指して勉強中です」

どちらも「教える人」を指す言葉として使われる「講師(こうし)」と「教師(きょうし)」。でも、この二つの言葉には明確な違いがあることをご存知ですか?

「学校の先生はどっち?」「セミナーで話す人は?」など、使い分けに迷う場面もあるかもしれませんね。実は、教える内容、働く場所、そして必要な資格に違いがあるんです。この記事を読めば、「講師」と「教師」それぞれの意味やニュアンス、具体的な使い分け、さらには「教授」や「教員」といった関連語との違いまで、スッキリ理解できます。もう迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「講師」と「教師」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「教師」は主に小・中・高校などで教員免許を持って教育活動を行う人を指します。一方、「講師」は大学、専門学校、塾、セミナーなどで特定の専門知識や技術を教える人を指し、必ずしも教員免許は必要ありません。「教師」は学校教育、「講師」はより広範な教育・講演活動と覚えるのが簡単です。

まず、結論からお伝えしますね。

「講師」と「教師」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 講師(こうし) 教師(きょうし)
中心的な意味 特定の専門分野の知識や技術を講義・講演する人 学校などで生徒・児童の学業や人格形成を教え導く人
主な働く場所 大学、高等専門学校、専門学校、予備校、塾、企業研修、セミナー、講演会など。 主に小学校、中学校、高等学校、特別支援学校など。
必要な資格 必須ではない場合が多い(専門知識・経験が重視される)。大学等の常勤講師は博士号などが必要な場合も。 原則として教員免許状が必須
役割・ニュアンス 専門知識・スキルの伝達、講演。一時的・非常勤の場合も多い。 教科指導に加え、生活指導や進路指導など、人格形成にも関わる。常勤のイメージが強い。
法令上の区分 大学設置基準や専門学校設置基準等で職位として規定。 教育職員免許法などで規定される「教諭」がこれに近い(「教師」自体は一般的な呼称)。
英語 Lecturer, Instructor, Speaker Teacher (primarily K-12)

一番分かりやすい違いは、「教師」が主に免許を必要とする学校(小中高)の先生を指すのに対し、「講師」は大学や塾、セミナーなど、より広い場面で専門的な内容を教える人を指すという点ですね。

大学にも「講師」という職位がありますが、これは小中高の「教師(教諭)」とは異なる位置づけになります。

なぜ違う?言葉の意味と成り立ちからイメージを掴む

【要点】

「講師」の「講」は物事の意味を説き明かすこと、「師」は手本となる人。専門知識を解説するイメージです。「教師」の「教」は教え導くこと、「師」は手本となる人。学問だけでなく、人としてのあり方も含めて指導するイメージです。

なぜこの二つの言葉が異なる意味合いで使われるのか、それぞれの漢字が持つ意味や言葉の成り立ちを見ていくと、その違いがより深く理解できますよ。

「講師」の意味:特定の知識や技術を教える人

「講師」の「講」という漢字は、「講義(こうぎ)」や「講演(こうえん)」という言葉に使われるように、物事の意味や道理を詳しく説き明かす、説明するといった意味を持っています。

「師」は、「師匠(ししょう)」や「師範(しはん)」のように、学問や技術・芸能などを教える人、手本となる人を意味します。

この二つが組み合わさることで、「講師」とは、特定の専門分野について、その知識や技術を講義・講演する形で教える人、という意味合いが強くなります。専門的な内容を分かりやすく解説する、というイメージですね。

「教師」の意味:学校などで学業や人格形成を指導する人

一方、「教師」の「教」という漢字は、「教える(おしえる)」「教え導く」という意味です。「教育(きょういく)」や「指導(しどう)」に使われますね。

「師」は「講師」と同じく、教え導く人、手本となる人を意味します。

「教」と「師」が組み合わさることで、「教師」とは、単に知識や技術を教えるだけでなく、生徒や児童の学業全般、さらには道徳や生活態度なども含めて、人として成長するように教え導く役割を持つ人を指すニュアンスが強くなります。学校教育の場で、子供たちの成長を総合的にサポートする存在、というイメージが強いでしょう。

成り立ちから見ても、「講師」は専門知識の伝達、「教師」はより広範な教育・指導、という役割の違いが見えてきますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「大学で非常勤講師を務める」「セミナー講師を依頼する」のように、特定の専門分野を教える場合は「講師」。「小学校の教師になるのが夢だった」「熱心な教師の指導」のように、学校教育に関わる場合は「教師」を使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

どのような場面で「講師」と「教師」が使われるのか、見ていきましょう。

「講師」を使う場面

大学、専門学校、塾、企業研修、セミナー、講演会などで、専門的な知識や技術を教える人を指すときに使います。非常勤や一時的な役割を指すことも多いです。

  • 彼は大学で経済学の講師(常勤または非常勤の職位)を務めている。
  • 資格取得のため、専門学校の講師から指導を受けた。
  • 有名な作家が、特別講師として講演会に招かれた。
  • 新人研修の外部講師を依頼する。
  • 彼女は人気の料理教室で講師をしている。
  • 予備校の人気講師の授業は、いつも満席だ。

特定のスキルや知識を教える専門家、というニュアンスで使われていますね。

「教師」を使う場面

主に小学校、中学校、高等学校などの学校で、生徒や児童の教育に携わる人を指すときに使います。教員免許を持っていることが前提となることが多いです。

  • 彼は長年、中学校の数学教師として教鞭をとってきた。
  • 教師になるためには、教員免許が必要だ。
  • 生徒一人ひとりに向き合う、熱心な教師だった。
  • 教師の仕事は、教科を教えるだけではない。
  • 彼女は小学校教師になるという夢を叶えた。
  • 反面教師(=悪い見本として教訓を与えてくれる人や事例)という言葉もある。

学校教育の現場で、子供たちの成長を指導・サポートする役割、というイメージですね。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が通じないわけではありませんが、一般的ではない、あるいは誤解を招く可能性のある使い方を見てみましょう。

  • 【△】小学校の講師になるのが夢だった。
  • 【OK】小学校の教師(教諭)になるのが夢だった。

小学校で正規に教える職は一般的に「教師」または「教諭」と呼ばれます。小学校にも「講師」(常勤講師や非常勤講師)という職種は存在しますが、これは教員免許を持つ人が、教諭の代替や補助として、あるいは特定の期間や時間だけ教える場合などを指すことが多く、「教師(教諭)」とは区別されます。単に「小学校の先生」を指す場合は「教師」の方が自然です。

  • 【△】セミナーで話す教師を募集しています。
  • 【OK】セミナーで話す講師を募集しています。

セミナーや講演会で専門的な内容を話す人は「講師」と呼ぶのが一般的です。「教師」は学校の先生というイメージが強いため、この文脈では不自然に聞こえます。

  • 【△】大学教師の〇〇先生。
  • 【OK】大学講師(または教授、准教授など)の〇〇先生。
  • 【OK】大学教員の〇〇先生。

大学で教える人の一般的な呼称として「教師」はあまり使いません。職位に応じて「教授」「准教授」「講師」などと呼ぶか、総称として「教員」を使うのが普通です。(詳細は次項で説明します)

【応用編】似ている言葉「教授」「教員」との違いは?

【要点】

「教授」は大学や高等専門学校における最上位の職階。「講師」はその下の職階の一つです。「教員」は学校(幼小中高大など)で教育に携わる職員の総称で、「教師」(主に小中高の教諭)や大学の「教授」「講師」なども含みます。

「講師」「教師」と関連して、「教授(きょうじゅ)」や「教員(きょういん)」という言葉もよく使われますね。これらの違いも整理しておきましょう。

「教授」との違い

教授は、主に大学や高等専門学校(高専)における教員の職階(ランク)の一つで、通常は最上位にあたります。教育だけでなく、自身の専門分野における高度な研究活動も重要な職務となります。教授になるには、博士号の取得や豊富な研究業績などが求められるのが一般的です。

大学における講師も職階の一つですが、教授や准教授の下位に位置づけられます(助教の上、という位置づけが多い)。常勤の講師と、外部から招かれる非常勤の講師がいます。

つまり、「教授」と「講師」は、主に大学などの高等教育機関における職階の違いを表す言葉です。「教師」は通常、大学の教員を指す言葉としては使いません。

「教員」との違い

教員は、学校(幼稚園、小学校、中学校、高校、大学、専門学校など)で教育に携わる職員の総称です。非常に広い範囲を指す言葉ですね。

小・中・高校の「教師」(法律上の「教諭」など)も教員に含まれますし、大学の「教授」「准教授」「講師」「助教」などもすべて教員に含まれます。養護教諭(保健室の先生)や栄養教諭なども教員です。

つまり、「教員」という大きなカテゴリーの中に、「教師(教諭)」や「講師」、「教授」といった具体的な職種や職位が含まれる、という関係性になります。「学校の先生」を広く指したい場合には「教員」という言葉が便利です。

「講師」と「教師」の違いを教育制度・資格の視点から解説

【要点】

日本の教育制度上、「教師」として小・中・高校で正規に教えるためには、原則として教育職員免許法に基づく「教員免許状」が必要です。一方、「講師」は、大学設置基準などで職位として定められていますが、教員免許が必須でない場合が多く、塾やセミナーなど学校教育法に基づかない場でも広く使われます。

日本の教育制度や資格の観点から見ると、「講師」と「教師」の違いはより明確になります。

「教師」、特に公立・私立の小学校、中学校、高等学校で正規の教員として働く場合、教育職員免許法に基づき、担当する学校種や教科に応じた教員免許状の取得が原則として必須です。法律上の職名は「教諭(きょうゆ)」や「助教諭」などとなり、「教師」はその一般的な呼称と言えます。彼らは教科指導だけでなく、学級経営、生徒指導、進路指導など、児童・生徒の成長に幅広く関わる役割を担います。

学校には「常勤講師」や「非常勤講師」という立場の教員もいます。これらの講師も教員免許を持っていることが一般的ですが、任期が定められていたり、担当する授業時間が限られていたりするなど、正規の「教諭」とは雇用形態や職務範囲が異なる場合があります(例えば、教諭の産休代替や、特定の専門科目のみを担当するなど)。

一方、「講師」という言葉は、より広い文脈で使われます。大学や高等専門学校では、「教授」「准教授」に次ぐ職位として学校教育法や大学設置基準などで定められています。大学の講師になるために教員免許は必須ではありませんが、通常は博士号の取得やそれに準ずる研究業績などが求められます。

また、専門学校、予備校、学習塾、企業の研修、地域のセミナー、カルチャースクールなどで特定の知識やスキルを教える人も「講師」と呼ばれます。これらの場合、特定の資格(教員免許など)は必須ではなく、その分野における専門性や経験、指導力が重視されます。

このように、働く場所が学校教育法で定められた「学校」であるか、教育職員免許法に基づく免許が必要か、といった制度的な違いが、「教師(教諭)」と「講師」を区別する重要なポイントとなるのです。

僕が予備校の先生を「教師」と呼んでしまった体験談

僕が高校生で予備校に通っていた頃の話です。当時、熱心に指導してくれる人気の英語の先生がいました。授業は分かりやすく、質問にも丁寧に対応してくれる、まさに「先生」と呼ぶにふさわしい方でした。

ある日、学校の友人と予備校の話になったとき、僕はその先生のことを話しました。

「予備校の〇〇先生、本当にすごいんだよ。あの教師のおかげで英語の成績がめっちゃ上がったんだ!」

すると、友人は少し不思議そうな顔をして言いました。

「え、予備校の先生って『教師』じゃなくて『講師』って呼ぶんじゃないの? 学校の先生が『教師』でしょ?」

僕は一瞬、言葉に詰まりました。確かに、予備校の先生方の紹介欄には「〇〇講師」と書かれていた気がします。でも、僕にとっては学校の先生と同じように尊敬できる「教える人」だったので、何の疑問も持たずに「教師」という言葉を使っていました。

友人に指摘されて初めて、「教師」と「講師」の使い分けがあるのかもしれない、と意識しました。その時は「まあ、どっちでもいいじゃん、伝わるんだから」と少し意地になってしまいましたが、後で調べてみて、友人の言う通り、予備校や塾の先生は一般的に「講師」と呼ばれることを知りました。

学校の「教師」が持つ、免許に裏打ちされた公的な立場や、生活指導なども含めた広い役割と、予備校の「講師」が持つ、特定の教科やスキルに特化した専門性というニュアンスの違い。それを理解していなかったのです。

もちろん、予備校の講師の方々が生徒の成長を願って熱心に指導されていることに変わりはありません。しかし、社会的な役割や立場を示す言葉には、それぞれ固有の背景や定義があるのだと学びました。相手に対する敬意を払う意味でも、その場にふさわしい適切な言葉を選ぶことが大切なのだと、少し恥ずかしい思いと共に感じた出来事でした。

「講師」と「教師」に関するよくある質問

大学の先生は「講師」?「教師」?

大学で教える人は、一般的に「教員」と呼ばれ、その職位(ランク)によって「教授」「准教授」「講師」「助教」などと区別されます。「教師」という呼称は通常使いません。したがって、大学の先生を指して「講師」と言うことはありますが、それは職位の一つを指している場合が多いです。

非常勤の先生はどちらにあたりますか?

働く場所によります。大学や専門学校、塾などで非常勤として教えている場合は「非常勤講師」と呼ばれるのが一般的です。小・中・高校で、正規の教諭(教師)の代替や特定の時間だけ教える場合も「非常勤講師」と呼ばれることが多いです(この場合、通常は教員免許が必要です)。

セミナーなどで教える人はどちらですか?

企業研修、地域のセミナー、カルチャースクールなどで特定の専門知識やスキルを教える人は、一般的に「講師」と呼ばれます。必要な資格は特に定められておらず、その分野での実績や経験が重視されます。

「講師」と「教師」の違いのまとめ

「講師」と「教師」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 核心的な違い:「教師」は主に小中高の学校で教える人(要免許)、「講師」は大学・塾・セミナー等で専門分野を教える人(免許不要な場合多)。
  2. 役割:「教師」は教科+人格形成、「講師」は専門知識・技術の伝達が中心。
  3. 働く場所:「教師」は学校、「講師」は学校、塾、企業、地域など多様。
  4. 資格:「教師」は教員免許が原則必須、「講師」は必須でないことが多い。
  5. 関連語:「教授」は大学等の上位職階、「教員」は学校等で教える人の総称(教師・講師・教授などを含む)。

どちらも「教える」という尊い役割を担っていますが、その立場や役割、働く場所には違いがあります。この違いを理解することで、ニュースや会話の中でこれらの言葉が出てきたときに、より正確に状況を把握できるようになりますね。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、社会・関係の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。