「倹約」と「節約」はどう違う?無駄を省く二つの言葉の意味

「倹約家なあの人」「食費を節約する」…。

どちらもお金や物を大切にし、無駄遣いを避けるという意味で使われる「倹約(けんやく)」と「節約(せつやく)」。日常生活でもよく耳にする言葉ですが、その違いを意識して使っていますか?

「どちらも似たような意味でしょ?」と思いがちですが、実はこの二つの言葉、生活態度全体を指すのか、具体的な行動を指すのかという点で、ニュアンスが異なるんです。この記事を読めば、「倹約」と「節約」それぞれの意味や漢字の成り立ち、具体的な使い分け、さらには「質素」との違いまでスッキリ理解できます。もう迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「倹約」と「節約」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「倹約」はお金や物の無駄遣いをしない生活態度や心構えを指し、「節約」は費用や資源(電気、水、時間など)の無駄を省き、切り詰める具体的な行動を指します。「倹約」はあり方、「節約」はやり方と覚えるのが簡単です。

まず、結論からお伝えしますね。

「倹約」と「節約」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 倹約(けんやく) 節約(せつやく)
中心的な意味 費用を切り詰め、無駄遣いをしないこと。質素にすること。 無駄な部分を省いて切り詰めること。
焦点 生活態度・心構え・あり方。お金や物全般に対する姿勢。 具体的な行動・やり方。特定の費用や資源の消費を抑える行為。
対象 お金、物、生活全般。 費用(食費、光熱費など)、資源(電気、水、ガス、時間など)。
ニュアンス 質素、堅実、始末が良い。美徳とされることが多い。必要なものにはお金を使う。 切り詰める、我慢する、効率化する。具体的な方法論
使われ方 「倹約家」「倹約に努める」「倹約な生活」 「食費を節約する」「電気代を節約する」「時間の節約」
英語 Thrift, Frugality, Economy Saving, Cutting down on, Economizing

一番大切なポイントは、「倹約」が生活全体の”スタイル”や”考え方”を指すのに対し、「節約」は電気をこまめに消す、安い食材を買うといった”具体的なアクション”を指すことが多い、という点ですね。

「倹約家」という人物評はあっても、「節約家」とはあまり言わないのは、このニュアンスの違いがあるからです。

なぜ違う?言葉の意味と漢字の成り立ちからイメージを掴む

【要点】

「倹約」の「倹」は費用を切り詰める、つつましいという意味。「約」も引き締める、つづめるという意味を持ち、無駄遣いをしない態度を示します。「節約」の「節」はふしめ、区切り、適度なところで止めるという意味。「約」は同様につづめる意味。特定の費用や量を区切って減らす行動を示します。

なぜこの二つの「無駄を省く」言葉に違いが生まれるのか、それぞれの漢字が持つ意味や言葉の成り立ちを見ていくと、その理由がより深く理解できますよ。

「倹約」の意味:お金や物の無駄遣いを慎む生活態度

「倹約」の「倹」という漢字は、「(費用を)切り詰める」「(生活などが)つつましい」「質素」といった意味を持っています。「勤倹(きんけん)」という言葉にも使われますね。度が過ぎないように控えめにする、というニュアンスが含まれています。

「約」は、「約束(やくそく)」の「約」ですが、ここでは「引き締める」「短くする」「つづめる」といった意味で使われています。「要約(ようやく)」や「簡約(かんやく)」と同じ用法です。

この二つの漢字が組み合わさることで、「倹約」とは、生活全般において、費用や物の消費を引き締め、無駄遣いをしないように努める、つつましい態度や心構えそのものを指すようになりました。「必要なものと不要なものを見極め、無駄な支出はしない」という、計画的で賢いお金や物の使い方、というイメージですね。

「節約」の意味:無駄な費用や資源を切り詰める具体的な行動

一方、「節約」の「節」という漢字は、竹などの「ふし(節目)」を意味します。そこから、「区切り」「ほどあい」「適度なところで止める」「切り詰める」といった意味が生まれました。「節度(せつど)」や「調節(ちょうせつ)」、「節制(せっせい)」といった言葉に使われますね。

「約」は「倹約」と同じく、「引き締める」「つづめる」という意味です。

この組み合わせから、「節約」とは、特定の費用項目(食費、光熱費など)や、資源(電気、水、時間など)の消費量に節目を設け、無駄な部分を省いて切り詰める、具体的な行動を指すようになりました。「電気をこまめに消す」「安いスーパーを探す」「時間を有効に使う」といった、一つ一つの具体的な工夫や努力のイメージが強い言葉です。

成り立ちから見ても、「倹約」は生活全体の姿勢、「節約」は個々の具体的なアクション、という違いが見えてきますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「彼は倹約家で、無駄なものには一切お金を使わない」のように生活態度を表す場合は「倹約」。「光熱費を節約するために、こまめに電気を消す」のように具体的な行動を表す場合は「節約」を使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

どのような場面で「倹約」と「節約」が使われるのか、見ていきましょう。

「倹約」を使う場面

お金や物の使い方に関する、その人の生活態度や心構え、性質を表すときに使います。

  • 彼は若いのによくできた倹約家だ。
  • 祖母は倹約を美徳として、物を大切にする人だった。
  • 将来のために、倹約に努める必要がある。
  • 会社の経費削減のため、全社員に倹約を呼びかけた。
  • 倹約な生活を送ることで、心の豊かさを得られることもある。

「~家」「~に努める」「~な生活」のように、人やそのあり方、態度と結びつきやすいですね。

「節約」を使う場面

特定の費用や資源の消費を抑えるための、具体的な行動や方法について述べるときに使います。

  • 今月は食費を節約するために、自炊を心がけている。
  • 電気代を節約するため、使わない家電のコンセントを抜いている。
  • 時間の節約のため、通勤ルートを見直した。
  • コピー用紙の無駄遣いをなくし、経費を節約する。
  • 様々な節約術を試して、家計簿をつけている。
  • 水道代の節約になるシャワーヘッドを購入した。

「~を節約する」「~の節約」のように、具体的な対象(食費、電気代、時間など)と結びついて使われます。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が通じないわけではありませんが、一般的ではない、あるいはニュアンスが少しずれる使い方を見てみましょう。

  • 【△】彼はとても節約な人だ。
  • 【OK】彼はとても倹約な(または「倹約家な」)人だ。
  • 【OK】彼はとても節約を心がけている人だ。

「節約」は具体的な行動を指すため、「節約な人」という表現は一般的ではありません。生活態度を表すなら「倹約」が適切です。「節約」を使いたい場合は、「節約を心がけている」「節約家」のように言う方が自然です。

  • 【△】時間の倹約のために、新しいツールを導入した。
  • 【OK】時間の節約のために、新しいツールを導入した。

時間という特定の資源の消費を抑える行動なので、「節約」がより適切です。「倹約」は生活態度全般を指すニュアンスが強いため、「時間の倹約」という表現はあまり一般的ではありません。

【応用編】似ている言葉「質素」との違いは?

【要点】

「質素(しっそ)」は、飾り気がなく、つつましい生活態度や様子を指します。「倹約」と非常に似ていますが、「質素」は必ずしも金銭的な側面に限定されず、服装や食事、住まいなどが贅沢でなくシンプルであることを表す場合にも使われます。

「倹約」と意味が近い言葉に「質素(しっそ)」がありますね。この違いも理解しておきましょう。

「質素」とは、飾り気がなく、つつましいこと、贅沢でないことを意味します。「質」には「飾り気がない、素朴」という意味があり、「素」も「ありのまま、飾らない」という意味を持ちます。

これは「倹約」と非常に似ており、どちらも無駄な贅沢をせず、つつましい生活を送る態度を表します。実際に「質素倹約」という四字熟語もある通り、しばしば同じ文脈で使われます。

  • 質素な食事を好む。(=贅沢でない、シンプルな食事)
  • 彼は質素な身なりをしている。(=飾り気のない服装)
  • 質素な暮らしの中に幸せを見出す。

あえて違いを挙げるならば、「倹約」が特に金銭や物の消費における無駄遣いをしない点に焦点があるのに対し、「質素」はより広く、生活全体のあり方、見た目、内容などが飾り気がなくシンプルであることを指すニュアンスがあります。

例えば、お金持ちであっても、あえて華美な生活を好まずシンプルな暮らしを送っている場合、それは「倹約」というより「質素」と表現する方がしっくりくるかもしれません。「倹約」は経済的な側面に、「質素」は生活様式全体のシンプルさに、より重点があると言えるでしょう。

「倹約」と「節約」の違いを家計・ライフプランの視点から解説

【要点】

家計管理やライフプランニングにおいて、「節約」は日々の支出を削減するための具体的なテクニック(例:格安SIM利用、ポイント活用)を指します。一方、「倹約」は、収入と支出のバランスを考え、将来のために無駄遣いをしないという長期的な視点や価値観(例:身の丈に合った生活)を指します。健全な家計のためには、両方の視点が重要です。

家計管理や将来設計(ライフプランニング)という視点から見ると、「倹約」と「節約」はそれぞれ異なる、しかしどちらも重要な意味を持っています。

「節約」は、家計における具体的な支出削減策として捉えられます。例えば、

  • 食費を節約するために、週に一度まとめ買いをする。
  • 光熱費を節約するために、LED電球に替えたり、断熱対策をする。
  • 通信費を節約するために、格安SIMに乗り換える。
  • ポイントをうまく活用して、日用品費を節約する。

といった、具体的なテクニックや行動が「節約術」として語られます。これは、日々のキャッシュフローを改善し、短期的な支出をコントロールするために不可欠なスキルです。

一方、「倹約」は、より長期的で、価値観に基づいたお金との付き合い方に関わってきます。単に支出を切り詰めるだけでなく、

  • 自分の収入に見合った生活(身の丈に合った生活)を送る。
  • 衝動買いをせず、本当に必要なものか、長く使えるものかを見極めて購入する。
  • 見栄や人との比較のためにお金を使わない。
  • 将来の目標(住宅購入、教育資金、老後資金など)のために、計画的にお金を貯蓄・投資する。

といった、お金に対する考え方や生活全体の姿勢が「倹約」の精神と言えるでしょう。これは、目先の損得だけでなく、長期的な視点で資産形成や人生設計を考える上で重要な基盤となります。

ファイナンシャルプランニング(FP)の観点からは、効果的な家計管理のためには、「節約」という具体的なテクニックと、「倹約」という長期的な視点や価値観の両方が大切になります。どちらか一方だけでは、無理が生じたり、長続きしなかったりする可能性があるからです。

例えば、節約ばかりを意識して過度に我慢を強いると、ストレスが溜まって長続きしません。逆に、倹約の精神があっても、具体的な節約行動が伴わなければ、なかなかお金は貯まりません。両者のバランスを取りながら、自分に合った無理のない方法で家計を管理していくことが、豊かな人生を送るための鍵と言えるでしょう。

祖母の教えと僕の勘違い:「倹約」と「節約」の体験談

僕の亡くなった祖母は、昔の人らしく、とても「倹約家」でした。しかし、子供の頃の僕は、その祖母の姿を単なる「ケチ」や「節約好き」だと勘違いしていた時期があります。

祖母の家に行くと、いつも部屋の電気は必要最低限しかついていませんでした。「もったいないから」と言って、テレビもあまり見ません。服は繕って長く着るし、食べ物も絶対に無駄にしませんでした。当時の僕は、「なんでそんなに我慢するんだろう? もっと新しいものを買ったり、好きなことをすればいいのに」と、子供心に不思議に思っていました。まさに「節約」に励んでいるように見えたのです。

ある時、僕が欲しかった少し高価な本について話すと、祖母は意外にも「そんなに読みたいなら、お小遣いを貯めて買いなさい。本当に価値があると思うものには、ちゃんとお金を使いなさいよ」と言いました。そして、「でも、つまらない漫画やお菓子にすぐお金を使うのは、ただの無駄遣いだよ」と付け加えました。

僕はその時、ハッとしました。祖母は、単にお金を使わないように我慢していた(節約していた)わけではなかったのです。何が無駄で、何に価値があるのかを自分なりに見極め、大切だと思うことにはお金を使い、そうでないことには使わない。それが祖母の「倹約」という生き方だったのだと気づきました。

電気を消すのも、服を繕うのも、食べ物を無駄にしないのも、単なる「節約」行動ではなく、「物を大切にする」「無駄をしない」という祖母の価値観、つまり「倹約」の精神の表れだったのです。

この経験から、「倹約」は単なるお金の節約術ではなく、もっと深い、生き方や価値観に関わる言葉なのだと学びました。そして、「節約」はその「倹約」という価値観を実現するための一つの具体的な手段なのだと。

今でも、何か大きな買い物をするときには、「これは本当に自分にとって価値があるだろうか?」と自問自答します。それは、祖母が教えてくれた「倹約」の精神が、僕の中に息づいているからかもしれません。

「倹約」と「節約」に関するよくある質問

どちらが良い・悪いということはありますか?

一概にどちらが良い・悪いということはありません。「倹約」は伝統的に美徳とされることが多いですが、度を越すと「ケチ」と見られることもあります。「節約」は家計改善などに有効な具体的な行動ですが、我慢を伴う場合もあり、やりすぎると生活の質を下げてしまう可能性もあります。どちらもバランスが大切です。

貯金をする上で大切なのはどちらですか?

どちらも大切です。「倹約」の精神(無駄遣いをしない、計画的にお金を使うという心構え)を持ちつつ、「節約」という具体的な行動(支出の見直し、固定費削減など)を実践することが、効果的に貯金を進める上で重要になります。

英語で「倹約」と「節約」はどう表現しますか?

「倹約」は生活態度や性質を表す “thrift”“frugality”、あるいは単に “economy” などが使われます(例:live in frugality 倹約して暮らす)。「節約」は具体的な行動を表す “saving”“cutting down on”“economizing” などが使われます(例:save on electricity 電気代を節約する)。文脈によって使い分けが必要です。

「倹約」と「節約」の違いのまとめ

「倹約」と「節約」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 核心的な違い:「倹約」は生活態度・心構え、「節約」は具体的な行動
  2. 焦点:「倹約」はあり方(無駄遣いしない)、「節約」はやり方(費用や資源を切り詰める)。
  3. ニュアンス:「倹約」は美徳・堅実、「節約」は切り詰め・効率化
  4. 漢字の意味:「倹」はつつましい、「約」はつづめる。「節」は区切る、「約」はつづめる。
  5. 類語:「質素」は飾り気のないシンプルな生活様式。
  6. 家計管理:「倹約」は長期的視点、「節約」は短期的テクニック。両方のバランスが重要。

どちらの言葉も私たちの生活に深く関わっています。その違いを理解することで、自分のお金の使い方や生活態度を客観的に見つめ直すきっかけになるかもしれませんね。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、生活・行動の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。