「会う」と「逢う」の違いは対象への気持ち?意味と使い分け

「会う」と「逢う」、どちらも「あう」と読むけれど、その違いってなんだろう?と考えたことはありませんか。

実はこの二つの言葉、対象となる相手や状況、そして込められた感情によって使い分けるのが基本なんです。

この記事を読めば、それぞれの言葉のニュアンス、漢字の成り立ちから具体的な使い分け、さらには文化的な背景までスッキリ理解でき、もう迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「会う」と「逢う」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、一般的な対面なら「会う」、情緒的・運命的な出会いなら「逢う」と覚えるのが分かりやすいでしょう。ただし、「逢う」は常用漢字ではないため、公的な文書やビジネスシーンでは「会う」を使うのが一般的です。迷ったら「会う」を選べばまず間違いありません。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 会う 逢う
中心的な意味 人と人が対面すること(一般的) 偶然に出会うこと、特に思い慕う相手と会うこと
対象・状況 友人、同僚、取引先など(広範囲) 恋しい人、運命的な相手、好ましくない出来事など(限定的・情緒的)
ニュアンス 客観的、日常的、予定された対面 情緒的、運命的、偶然、待ち望んだ対面
常用漢字 常用漢字 常用漢字ではない(表外字)
現代での使われ方 広く一般的に使用。公用文やビジネス文書ではこちら。 小説や詩、歌詞などで情緒的な表現として使われることが多い。

一番大切なポイントは、迷ったら「会う」を選んでおけば、まず問題ないということですね。

「会う」は常用漢字であり、あらゆる場面で使うことができます。

一方、「逢う」は常用漢字ではないため、公的な文書やビジネスメールなどでは使用を避けるのが無難でしょう。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「会う」の「会」は、蓋つきの鍋に物が集まる様子から“人が集まる”一般的なイメージです。一方、「逢う」の「逢」は、しんにょう(道)を含み、“思いがけず道でばったり出くわす”ような特別なイメージを持つと、ニュアンスの違いが分かりやすくなります。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「会う」の成り立ち:「人が集まる」一般的なイメージ

「会」という漢字は、象形文字では蓋(△)のある鍋(曰)の中に物が入っている形(曰の中の横線)を表しています。

物が一箇所に集まる様子から、「あつまる」「あわせる」といった意味が生まれました。

そこから転じて、人が集まること、顔を合わせることを「会う」と表現するようになったんですね。

人が集まる、顔を合わせるという、比較的客観的で一般的な状況を表すのが「会う」の基本的なイメージです。

「逢う」の成り立ち:「思いがけず出くわす」特別なイメージ

一方、「逢」という漢字は、「しんにょう(辶)」と「夆」から成り立っています。

「しんにょう」は道を行くことを意味します。

「夆」は向かい合う二人の人(夂とヰ)の間に草(丰)が生えている様子を示し、「向かいあう」「出あう」という意味を持ちます。

つまり、「逢」は道で思いがけず人とばったり出くわす、巡りあうという情景を表しているんですね。

この成り立ちから、「逢う」には偶然性や運命性、そして特に思い慕う相手との出会いといった、情緒的で特別なニュアンスが含まれるようになったと考えられます。

また、「災難に逢う」のように、好ましくない出来事に遭遇する意味でも使われるのは、この「思いがけず出くわす」という語源に由来するのでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

友達との約束は一般的な「会う」、恋人との待ち合わせや運命的な再会は情緒的な「逢う」と使い分けるのが基本です。ただし、ビジネスシーンでは「会う」を使うのが無難でしょう。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

ビジネスシーンでは、基本的に常用漢字である「会う」を使用するのが一般的です。

「逢う」を使うと、やや詩的・個人的な印象を与えかねないため、避けた方が良いでしょう。

【OK例文:会う】

  • 明日の10時に、会議室で田中様と会う予定です。
  • 先日、展示会で偶然、大学時代の友人に会いました
  • 来週、クライアントとの打ち合わせで担当者に会います

【NG例文:逢う】

  • 【△】出張先で、思いがけず恩師に逢いました。(間違いではないが、「会いました」の方が一般的)
  • 【NG】明日の会議で、部長に逢います。(不自然な表現)

日常会話での使い分け

日常会話では、状況や感情に応じて使い分けられます。

ただし、「逢う」を使うのは、やや改まった表現や、情緒的なニュアンスを込めたい場合に限られることが多いですね。

【OK例文:会う】

  • 週末、友達とカフェで会う約束をしている。
  • 駅でばったり、隣の家の鈴木さんに会った
  • 久しぶりに、高校の同級生たちと会うことになった。

【OK例文:逢う】

  • 七夕の夜、織姫と彦星は天の川で逢うことができる。
  • 遠距離恋愛中の恋人と、1ヶ月ぶりに逢う日が待ち遠しい。
  • 旅先で、思いもよらぬ素晴らしい景色に逢えた
  • 彼は、不幸な事故に逢ってしまった。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が全く通じなくなることは少ないですが、違和感のある使い方を見てみましょう。

  • 【NG】毎朝、通勤電車で同じ人に逢う
  • 【OK】毎朝、通勤電車で同じ人に会う

毎日繰り返される日常的な出来事なので、「会う」が適切です。「逢う」を使うと、毎朝運命的な出会いを繰り返しているようで、少し大げさに聞こえてしまいますよね。

  • 【NG】医者に逢って、診察してもらった。
  • 【OK】医者に会って、診察してもらった。

医者との対面は、通常、情緒的なものではないため、「会う」が自然です。

「会う」と「逢う」の違いを文化的な視点から解説

【要点】

「逢う」は常用漢字外ですが、古くから和歌などで男女の逢瀬や運命的な出会いを表現する言葉として使われ、日本人の情緒的な感性と深く結びついてきました。現代でも、その特別なニュアンスは文学や歌詞などで大切にされています。

「逢う」は常用漢字ではありませんが、なぜ現代でも詩や歌詞などで使われ続けるのでしょうか?

そこには、日本語の持つ豊かな情緒表現の文化が関係していると考えられます。

古くは万葉集や古今和歌集などの和歌の中で、「逢う」は特に男女が密かに会うこと(逢瀬)や、待ち望んだ相手との出会いを表す言葉として頻繁に用いられてきました。

例えば、「人目を避けて逢う」「夢の中で逢う」といった表現には、単に顔を合わせる以上の、切なさや情熱、運命的な結びつきといった深い感情が込められています。

このような背景から、「逢う」という言葉は、日本人にとって特別な、情緒的な響きを持つ言葉として定着してきたのでしょう。

現代の公用文などでは「会う」に統一される傾向にありますが、文学作品や音楽の世界で「逢う」が使われるのは、その言葉が持つ独特のロマンチックな響きや、運命的なニュアンスを表現したいという作者の意図があるからだと言えますね。

ちなみに、文化庁のウェブサイトでも常用漢字に関する情報が公開されていますので、興味のある方は確認してみると良いでしょう。

参考:文化庁 | 国語施策・日本語教育 | 国語施策情報 | 内閣告示・内閣訓令 | 常用漢字表(平成22年内閣告示第2号)

僕が「逢う」と書いて赤面した、あの日の思い出

僕も新人ライター時代、「会う」と「逢う」の使い分けで、ちょっと恥ずかしい思いをした経験があるんです。

ある企業の社長インタビュー記事を担当した時のこと。

その社長は、若き日に偶然出会った恩師の言葉に感銘を受け、起業を決意したというドラマチックな経歴の持ち主でした。

僕はその運命的なエピソードに感動し、「これは『逢う』を使うべきだ!」と確信して、原稿に「恩師との運命的な逢いが、彼の人生を変えた」と書いたんです。

自分では情緒的で良い表現だ、と自信満々でした。

しかし、校正担当の先輩デスクから赤字でこう指摘されました。

「企業の公式な記事で『逢う』を使うのは一般的ではない。『会う』に修正してください。気持ちは分かるけど、ビジネス文書としての正確性を優先しましょう。」

僕は顔がカッと熱くなるのを感じました。

言葉の持つ情緒的なニュアンスに引きずられ、TPOをわきまえた言葉選びができていなかったんですね。

「会う」が持つ客観性・普遍性と、「逢う」が持つ主観性・限定性。

その違いを頭ではなく、体験として理解した瞬間でした。

この経験から、言葉を選ぶときは、伝えたい内容だけでなく、それがどのような文脈で、誰に向けて書かれるのかを常に意識することの大切さを学びました。

それ以来、辞書的な意味だけでなく、言葉が使われるシーンまで想像するクセがついたように思います。

「会う」と「逢う」に関するよくある質問

「会う」と「逢う」、結局どちらを使えばいいですか?

一般的な場面、特にビジネス文書や公的な文章では、常用漢字である「会う」を使用するのが最も無難で間違いありません。「逢う」は情緒的な表現をしたい場合に限定して使うのが良いでしょう。

「災難にあう」は「会う」「逢う」どっちですか?

「災難に逢う」と書くのが伝統的な表記です。「逢う」には「好ましくない出来事に偶然出くわす」という意味も含まれるためです。ただし、「逢う」が常用漢字ではないため、「災難に遭う」と「遭う」を使うことが現在では一般的です。「災難に会う」と書くこともありますが、「遭う」や「逢う」の方がより意味合いが明確になります。

なぜ「逢う」は常用漢字ではないのですか?

常用漢字は、法令、公用文書、新聞、雑誌、放送など、一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安として定められています。「逢」は、日常的に広く使われる漢字とは見なされなかったため、常用漢字には含まれませんでした。しかし、文学的な表現などでは今でも使われています。

「会う」と「逢う」の違いのまとめ

「会う」と「逢う」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は使い分け:一般的な対面は「会う」、情緒的・運命的な出会いは「逢う」。
  2. 迷ったら「会う」:「会う」は常用漢字で、公的な場面でも日常会話でも広く使える。
  3. 漢字のイメージが鍵:「会」は“人が集まる”、「逢」は“思いがけず出くわす”イメージ。
  4. 「逢う」はTPOを意識:常用漢字ではないため、ビジネス文書などでは避け、文学的な表現などで効果的に使う。

言葉の背景にある漢字のイメージや文化的なニュアンスを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになりますよね。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んで、あなたの表現をより豊かなものにしていきましょう。