英語で「今」「現在」と言いたいとき、「currently」と「now」、どちらを使うべきか迷ったことはありませんか?
どちらも似た意味を持つだけに、使い分けが難しいと感じる方も多いかもしれませんね。
実はこの二つの言葉、「now」が「今この瞬間」を強く指すのに対し、「currently」はもう少し幅のある「現時点では」「目下」といったニュアンスで使い分けることができるんです。また、フォーマルさの度合いにも違いがあります。
この記事を読めば、「currently」と「now」それぞれの言葉が持つ核心的なイメージから、具体的な使い分け、似た表現との違いまでスッキリ理解できます。もう、どちらを使うべきか迷うことはありません。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「currently」と「now」の最も重要な違い
「now」は「今この瞬間」を指す最も直接的で一般的な言葉です。一方、「currently」は「現時点では」「目下」「当面は」といった、少し幅のある期間や状況における「現在」を表し、ややフォーマルな響きを持ちます。多くの場合、置き換え可能ですが、フォーマルさや強調したいニュアンスで使い分けます。
まず、結論として「currently」と「now」の最も重要な違いを表にまとめました。
項目 | currently | now |
---|---|---|
中心的な意味 | 現時点では、目下、当面は | 今、たった今、現在 |
時間的な幅 | 比較的幅のある期間(最近、ここしばらく)も含む。 | 主に「今この瞬間」を指すが、文脈により幅を持つことも。 |
フォーマル度 | ややフォーマル。書き言葉で好まれる傾向。 | 一般的。話し言葉、書き言葉問わず広く使われる。 |
ニュアンス | 状況が一時的である可能性を示唆することも。「現在のところは」 | 直接的で強い「今」。過去との対比で使われることも。 |
日本語訳の例 | 現在、目下、今のところ、現行では | 今、たった今、すぐに、現在 |
一番のポイントは、「now」が最も基本的で直接的な「今」を表すのに対し、「currently」は少し改まった響きで、「今のところは」という少し幅のある現在の状況を示す、という点です。
ビジネス文書やニュース記事などでは「currently」が好まれる傾向がありますが、日常会話では「now」を使う方が自然な場合が多いでしょう。
なぜ違う?言葉の成り立ちからイメージを掴む
「currently」の元となる「current」はラテン語の「currere(走る、流れる)」に由来し、時間の“流れ”の中にある“現在”というイメージです。「now」はゲルマン祖語に由来し、他の時点と比較されない、直接的な“今”という強い指示性がイメージされます。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、それぞれの言葉の成り立ちを探ると、その核心的なイメージが見えてきますよ。
「currently」の成り立ち:「current」が表す“流れ”の中の「現在」
「currently」は、「current」という形容詞・名詞から派生した副詞です。「current」の語源は、ラテン語の動詞「currere(クレレ)」に遡ります。これは「走る」「流れる」という意味を持つ言葉です。
川の流れ(current)や電流(electric current)のように、絶えず移り変わる「流れ」の中のある一点、あるいはある程度の期間を指すのが「current」の基本的なイメージです。「現在の」「通用している」「流行の」といった意味合いに繋がっていますね。
このことから、「currently」は、過去から未来へと続く時間の流れの中における「現時点」という、少し幅を持った、あるいは文脈に依存した「現在」を示すニュアンスを持つようになったと考えられます。
「now」の成り立ち:直接的な“今この瞬間”
一方、「now」は、ゲルマン祖語の「*nu」に由来する非常に古い言葉です。これは「今」という時点を直接的に示す言葉でした。多くのゲルマン語派の言語(ドイツ語の”nun”、オランダ語の”nu”など)に同系の言葉が存在します。
特別な比喩や間接的な意味合いを含まず、話し手がいる「まさにその時」を指し示す、シンプルで力強い言葉です。「過去」や「未来」といった他の時点との対比なしに、「今」そのものを直接的に捉えるイメージですね。
この直接性が、「now」が日常会話で最も頻繁に使われる理由の一つと言えるでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネス報告で「現在のステータス」を示すなら「currently」(例: We are currently developing a new system.)。日常会話で「今何してる?」と聞くなら「now」(例: What are you doing now?)。「now」は緊急性、「currently」は継続中の状況を表しやすいです。
言葉の違いをしっかり掴むには、具体的な例文で確認するのが一番です。
ビジネスシーンと日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
報告書やメール、プレゼンテーションなど、フォーマルさが求められる場面では「currently」が好まれる傾向があります。
【OK例文:currently】
- We are currently reviewing your proposal. (現在、あなたの提案を検討中です。)
- The system is currently unavailable due to maintenance. (メンテナンスのため、システムは現在利用できません。)
- She is currently working as a project manager. (彼女は現在、プロジェクトマネージャーとして働いています。)
- The product is currently out of stock. (その製品は現在在庫切れです。)
「現在の状況」や「目下のところ」といったニュアンスで、進行中の状態や一時的な状況を説明するのに適していますね。
【OK例文:now】
- Please submit the report now. (今すぐレポートを提出してください。)
- The meeting will start now. (会議は今始まります。)
- I understand the situation now. (今、状況が理解できました。)
- We need to make a decision now. (私たちは今、決断を下す必要があります。)
「now」は、「たった今」「すぐに」といった即時性や緊急性を強調したい場合や、状況の変化(以前は違ったが、今はこうだ)を示す場合に効果的です。
日常会話での使い分け
日常会話では「now」が圧倒的に多く使われます。「currently」を使うと、少し硬い印象になることがあります。
【OK例文:currently】(少し硬い表現)
- I am currently looking for a new apartment. (今のところ、新しいアパートを探しています。)
- He is currently traveling in Europe. (彼は現在ヨーロッパを旅行中です。)
【OK例文:now】
- What are you doing now? (今、何してるの?)
- I’m busy now. Can I call you back later? (今、忙しいんだ。後でかけ直してもいい?)
- It’s raining now. (今、雨が降っているよ。)
- Let’s go now! (さあ、行こう!)
- Are you ready now? (もう準備できた?)
日常的な状況や行動について話すときは、「now」を使うのが自然ですね。「currently」は、自己紹介で「現在〇〇に住んでいます/働いています」のように、改まった状況で使われることがあります。
これはNG!間違えやすい使い方
文法的に間違いではなくても、不自然に聞こえる使い方です。
- 【△/NG】(電話で)Sorry, I am currently having dinner.
- 【OK】(電話で)Sorry, I am having dinner now. / Sorry, I am having dinner at the moment.
「今まさに食事中」という瞬間的な状況を伝えるには、「currently」は少し不自然で硬く聞こえます。「now」や「at the moment」を使う方が一般的です。
- 【△/NG】Push this button currently!
- 【OK】Push this button now!
「今すぐ押して!」という指示には、即時性を強調する「now」が適切です。「currently」にはそのような強い指示のニュアンスはありません。
- 【△/NG】(状況が変わったことを受けて)Ah, I see currently.
- 【OK】(状況が変わったことを受けて)Ah, I see now.
「今(やっと)わかった」という認識の変化を示す場合は、「now」が自然です。「currently」は現在の継続的な状態を示すため、この文脈には合いません。
【応用編】似ている言葉「presently」「at the moment」との違いは?
「presently」は「まもなく、やがて」(未来)の意味が主ですが、(特に米語で)「現在」の意味でも使われます。「at the moment」は「ちょうど今」「今のところは」という意味で、「now」や「currently」と近いですが、より口語的です。
「currently」や「now」と似た意味で使われる表現に「presently」や「at the moment」があります。これらのニュアンスの違いも知っておくと、表現の幅が広がります。
- presently:この単語は注意が必要です。元々は「まもなく、やがて (soon)」という未来を表す意味が主でした(特にイギリス英語)。しかし、現代では(特にアメリカ英語で)「現在 (currently, now)」という意味でも使われます。どちらの意味かは文脈で判断する必要がありますが、誤解を避けるためには、「現在」の意味では「currently」や「now」を使う方が無難かもしれません。
(例:He will arrive presently. 彼はまもなく到着するだろう。)
(例:She is presently working overseas. 彼女は現在海外で働いている。) - at the moment:「ちょうど今」「今のところは」という意味で、「now」や「currently」と非常に近い表現です。「now」よりも少しだけ時間の幅(ここしばらく)を含むニュアンスがあり、「currently」よりも口語的で、日常会話でよく使われます。
(例:Sorry, she is out at the moment. すみません、彼女はちょうど今外出しております。)
(例:We are not hiring at the moment. 今のところ、採用は行っておりません。)
まとめると、フォーマルさの度合いはおおよそ Currently > Presently (現在の意味) > Now > At the moment となり、時間的な幅の広さは Currently ≧ At the moment > Now といったイメージでしょうか。「Presently」の二つの意味には特に注意が必要ですね。
「currently」と「now」の違いを英語の辞書・文法から解説
英語の辞書では、「currently」は「at the present time」、「now」は「at the present time or moment」と定義され、後者がより瞬間的な意味合いを含むことが示唆されます。文法的には、どちらも現在形または現在進行形と共に使われますが、「currently」は状態動詞(live, work, beなど)との相性が良く、「now」は動作動詞(do, go, startなど)との相性が良い傾向があります。
「currently」と「now」の違いについて、英語の辞書や文法的な観点から見てみましょう。
多くの英英辞典では、以下のように定義されています。
- currently: at the present time (例: Cambridge Dictionary)
- now: at the present time or moment (例: Cambridge Dictionary)
定義上は非常に似ていますが、「now」の説明に “or moment” (または瞬間)が含まれていることから、「now」がより「今この瞬間」を指し示すニュアンスが強いことがうかがえます。「currently」は単に「現在の時に」という、より一般的な時間軸を示しています。
文法的な観点からは、どちらも現在を表す副詞であり、通常、現在形または現在進行形の文で使われます。文中の位置は比較的自由ですが、文頭、動詞の前、文末などに置かれることが多いです。
動詞との相性を見ると、以下のような傾向があります。
- currently:状態動詞(live, work, be, have, know など、ある程度の期間継続する状態を表す動詞)と共に使われることが多いです。「現在~している状態だ」というニュアンスに合っています。
(例:He currently lives in London.) - now:動作動詞(do, go, start, eat, rain など、瞬間的または短い期間の動作を表す動詞)と共に使われることが多いです。「今(まさに)~している」というニュアンスに合っています。
(例:It’s raining now.)
もちろん、これは絶対的なルールではなく、「I currently need your help.」や「I know the answer now.」のように、逆の組み合わせも可能です。しかし、言葉の持つ基本的なニュアンスとして、このような傾向があることを知っておくと、より自然な英語表現を選ぶ助けになりますね。
僕がプレゼンで「currently」と「now」を混同した体験談
僕も以前、英語でのプレゼンテーションで「currently」と「now」の使い分けを誤り、少し意図がずれて伝わってしまった経験があります。
それは、あるプロジェクトの進捗報告で、開発中の新しい機能について説明していた時のことでした。その機能はまだ開発途中で、現状の実装レベルと、将来的に目指す完成形について話していました。
現状の説明として、僕はこう言いました。
“Now, the system can only handle basic calculations, but in the future, it will support complex analysis.”
自分としては「現時点では、システムは基本的な計算しか扱えませんが、将来的には…」と伝えたつもりでした。しかし、後でネイティブの同僚からフィードバックをもらった際、「あの部分、『now』を使ったことで、『たった今、この瞬間だけ基本計算しかできない(けど、すぐに変わるかも)』みたいに、少し一時的すぎるニュアンスに聞こえたかもしれない。『Currently』を使った方が、『現行バージョンでは』という、もう少し安定した現在の状況として伝わったと思うよ」とアドバイスされました。
なるほど、と思いました。「now」が持つ「今この瞬間」という強い指示性が、かえって状況の一時性を強調してしまった可能性があるのです。僕が伝えたかったのは「現時点での仕様」という、ある程度の期間における事実だったので、確かに「currently」の方がより適切だったかもしれません。
言葉の持つ微妙なニュアンスが、聞き手の受け取り方に影響を与えることを実感しました。特にビジネスシーンでは、誤解を招かない正確な表現が求められます。「currently」と「now」は似ていますが、フォーマルさだけでなく、時間的なニュアンスの違いも意識して使い分けることの重要性を学んだ出来事でした。
「currently」と「now」に関するよくある質問
フォーマルな場面ではどちらが適切ですか?
一般的に「currently」の方がややフォーマルな響きがあり、ビジネス文書、ニュース記事、公式発表などで好まれます。「now」もフォーマルな場面で使えますが、「currently」の方がより改まった印象を与えることが多いでしょう。
過去や未来の話の中で「当時の今」を指す場合は?
過去の時点での「その時」「当時」を指す場合は「then」を使います(例:I was a student then.)。未来の時点での「その時」も同様に「then」で表せます(例:I will be busy then.)。「now」や「currently」は基本的に現在のことを指します。
「right now」と「currently」の違いは?
「right now」は「now」を強調した表現で、「まさに今」「ちょうど今」という瞬間性を非常に強く表します。「currently」が持つ「現時点では」「ここしばらく」といった幅のあるニュアンスとは異なります。日常会話で「今すぐ!」という緊急性を示したい場合などによく使われます。
「currently」と「now」の違いのまとめ
「currently」と「now」の違い、これで使い分けに迷うことはなくなりましたね!
最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- 基本的な意味:「now」は「今この瞬間」が中心。「currently」は「現時点では」「目下」と少し幅のある現在。
- フォーマル度:「currently」はややフォーマル。「now」は一般的で、話し言葉で多用される。
- ニュアンス:「now」は直接的・即時的。「currently」は継続中の状況や一時的な状態を示すことも。
- 言葉の成り立ち:「currently」は時間の“流れ”の中の現在、「now」は直接的な“今”。
- 使い分けの目安:フォーマルな文書や継続的な状況説明には「currently」、日常会話や即時性・変化の強調には「now」が適していることが多い。
- 類似表現:「presently」は「まもなく」の意味に注意。「at the moment」は口語的で「now」「currently」に近い。
どちらも「現在」を表す便利な言葉ですが、微妙なニュアンスの違いを理解することで、より正確で自然な英語表現が可能になります。特にビジネスシーンでは、状況に応じた適切な言葉選びが、スムーズなコミュニケーションにつながりますね。
これからは自信を持って、「currently」と「now」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひチェックしてみてください。