「フリーター」と「フリーランス」、どちらも自由な働き方をイメージさせる言葉ですが、その違いをきちんと説明できますか?
なんとなく似ているようで、実は全く異なる働き方を指すこの二つの言葉。混同して使ってしまうと、思わぬ誤解を招くこともあるかもしれません。
この記事を読めば、「フリーター」と「フリーランス」の根本的な意味の違いから、社会的な位置づけ、メリット・デメリット、そして「個人事業主」といった関連語との比較まで、全てが明確になります。もう、自分や他者の働き方について話すときに、言葉選びで迷うことはありませんよ。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「フリーター」と「フリーランス」の最も重要な違い
基本的には、雇用形態(非正規雇用)を指すのが「フリーター」、働き方(組織に属さない独立した働き方)を指すのが「フリーランス」と覚えるのが簡単です。「フリーター」は主に若年層のアルバイト・パートを指し、「フリーランス」は専門スキルを持つ独立したプロフェッショナルを指すことが多いです。
まず、結論からお伝えしますね。
「フリーター」と「フリーランス」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な区別はバッチリでしょう。
項目 | フリーター | フリーランス |
---|---|---|
定義の核心 | 雇用形態(アルバイト・パートなどの非正規雇用) | 働き方・契約形態(組織に属さず、案件ごとに契約) |
主な対象 | 主に15~34歳の若年層(学生・主婦を除く) | 年齢不問、専門的なスキルや技能を持つ人 |
働き方の特徴 | 企業などに雇用され、時給や日給で働くことが多い | 特定の組織に雇用されず、独立して仕事を受注する |
収入の得方 | 労働時間に応じた給与(時給・日給など) | 案件ごとの報酬、成果報酬など |
社会的定義(厚生労働省など) | 明確な定義あり(年齢、就業形態など) | 法的な定義は曖昧(働き方の一種として認識) |
一般的なイメージ | 定職に就かない、自由だが不安定 | 専門職、自由な働き方、自己管理能力が必要 |
英語 | Freeter (和製英語) | Freelancer, Self-employed |
一番の違いは、「フリーター」が雇用される立場(非正規)であるのに対し、「フリーランス」は雇用されずに独立して働くスタイルを指す点ですね。フリーターは主にアルバイトやパートとして企業に雇われていますが、フリーランスは特定の企業に属さず、個人として仕事を受けます。
なぜ違う?言葉の意味と背景から働き方を掴む
「フリーター」は「フリー・アルバイター」の略で、定職に就かずアルバイトで生計を立てる若者を指す和製英語です。「フリーランス」は中世の傭兵(lance=槍)に由来し、特定の君主に属さず自由契約で働く人を意味します。この語源の違いが、雇用関係の有無という根本的な差につながっています。
では、なぜこの二つの言葉は異なる働き方を指すようになったのでしょうか?それぞれの言葉が生まれた背景や本来の意味を見ていくと、その違いがより深く理解できますよ。
「フリーター」の意味:非正規雇用の若年層
「フリーター」は、「フリー・アルバイター」を略した和製英語です。1980年代後半、リクルート社の雑誌『フロム・エー』の編集長だった道下裕計氏が、正社員として就職せずにアルバイトで生計を立てる若者を肯定的に捉える言葉として提唱したのが始まりとされています。
当初は自由な生き方を選ぶ若者というポジティブなニュアンスもありましたが、バブル崩壊後の就職氷河期を経て、安定した職に就けない、あるいは就かない若者という、ややネガティブなイメージも伴うようになりました。
厚生労働省では、フリーターを「15~34歳で、男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者のうち、①雇用者のうち『パート・アルバイト』の者、②失業者のうち探している仕事の形態が『パート・アルバイト』の者、③非労働力人口のうち希望する仕事の形態が『パート・アルバイト』で、家事・通学等していない者」と定義しています。年齢と雇用形態(パート・アルバイト)で定義されるのが特徴ですね。
「フリーランス」の意味:組織に属さず独立して働く人
「フリーランス」の語源は、中世ヨーロッパの傭兵に遡ります。「フリー(free=自由な、契約のない)」と「ランス(lance=槍)」を組み合わせた言葉で、特定の君主や領主に仕えず、自由契約で雇われる槍騎兵(傭兵)を指していました。
そこから転じて、現代では特定の企業や団体に所属せず、自身の持つ専門的なスキルや知識を活かして、案件ごとに契約を結び、独立して仕事を行う働き方、またはそのように働く人を指すようになりました。デザイナー、ライター、エンジニア、コンサルタントなど、様々な職種で見られる働き方ですね。
フリーランスは、特定の雇用主を持たず、自分の裁量で仕事を選び、働く時間や場所を決められる自由度の高さが特徴です。その一方で、収入の不安定さや、社会保障、事務手続きなどを全て自分で行う必要があるという側面もあります。
このように、語源や定義を見ても、「フリーター」が雇用形態(非正規)に焦点を当てているのに対し、「フリーランス」は組織からの独立性という働き方のスタイルそのものを表していることがわかりますね。
具体的な例文で使い方をマスターする
「学生時代はフリーターとしてコンビニで働いていたが、今はWebデザイナーのフリーランスとして独立した」のように使い分けます。「彼は正社員ではなくフリーターだ」「彼女は会社に属さずフリーランスで活躍している」のように、第三者についても使えます。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番分かりやすいですよね。
自分や相手の働き方を説明する場合と、間違いやすいNG例を見ていきましょう。
自分や相手の働き方を説明する場合
雇用されているか、独立しているかがポイントです。
【OK例文:フリーター】
- 大学卒業後、就職せずにフリーターとして生活している。
- 彼は夢を追いかけながら、フリーターで生計を立てている。
- 当時はフリーターでしたが、様々なアルバイト経験が今に活きています。
- 正社員登用を目指して、現在はフリーターとして働いています。
【OK例文:フリーランス】
- 会社を辞めて、フリーランスのライターとして独立しました。
- 彼女はフリーランスのエンジニアとして、複数のプロジェクトに関わっている。
- フリーランスは自由な反面、自己管理が重要になります。
- 彼はフリーランスとして、国内外のクライアントと仕事をしている。
「フリーター」は非正規雇用という立場を、「フリーランス」は独立した働き方そのものを表す言葉として使われているのがわかりますね。
これはNG!間違えやすい使い方
定義を混同すると、相手に誤った情報を伝えてしまいます。
- 【NG】彼は企業に雇われず、フリーランスとして時給で働いている。
- 【OK】彼は企業に雇われず、フリーランスとして案件ごとに報酬を得ている。
- 【OK】彼はフリーターとして、時給で働いている。
フリーランスは基本的に雇用されず、時給ではなく案件ごとの報酬で働くのが一般的です。「時給で働く」という説明はフリーターの特徴と合致します。
- 【NG】フリーターとして、個人で仕事を請け負っている。
- 【OK】フリーランスとして、個人で仕事を請け負っている。
- 【OK】フリーターとして、いくつかのアルバイトを掛け持ちしている。
個人で仕事を請け負うのはフリーランスの働き方です。フリーターは企業などに雇用されるのが基本ですね。
- 【NG】彼は40歳だけど、まだフリーターなんだ。
- 【△】彼は40歳だけど、まだアルバイトで生計を立てているんだ。
- 【注釈】厚生労働省の定義ではフリーターは34歳までですが、一般的には35歳以上でも非正規雇用で生計を立てる人を指して使われることもあります。ただし、定義上の年齢制限があることは念頭に置くべきでしょう。
フリーターには年齢の定義(主に15~34歳)があるため、40歳の人を指して使うのは厳密には正しくありません。ただし、俗な言い方として使われる場面もあるため、△としました。
【応用編】似ている言葉「個人事業主」「自営業」との違いは?
「フリーランス」は働き方のスタイルを指す言葉です。「個人事業主」は税務上の区分で、法人を設立せずに個人で事業を行う人(フリーランスの多くが該当)。「自営業」は、自分で事業を営むこと全般を指し、個人事業主も法人経営者も含む、より広い概念です。
「フリーランス」と関連して、「個人事業主(こじんじぎょうぬし)」や「自営業(じえいぎょう)」という言葉もよく聞かれますよね。これらの言葉とフリーランスの関係性も整理しておきましょう。
言葉 | 分類 | 主な意味 | 法人設立 | フリーランスとの関係 |
---|---|---|---|---|
フリーランス | 働き方 | 特定の組織に属さず、独立して案件ごとに契約する働き方。 | 問わない(多くは個人) | フリーランスの多くは個人事業主だが、法人化している人もいる。 |
個人事業主 | 税務上の区分 | 法人を設立せず、個人で事業を営む人。税務署に開業届を提出。 | しない | フリーランスの多くがこの区分に該当する。 |
自営業 | 事業形態 | 自分で事業を営んでいること。業種や規模は問わない。 | 問わない(個人事業主も法人経営者も含む) | フリーランスは自営業の一形態と言える。 |
ポイントは以下の通りです。
- フリーランス: 「働き方のスタイル」を指す言葉。
- 個人事業主: 「税務上の区分」を指す言葉。フリーランスの多くは、税務署に開業届を出して個人事業主となりますが、必須ではありません。
- 自営業: 「自分で事業を営んでいる状態」を指す広い言葉。個人事業主も、会社を設立した社長も「自営業」に含まれます。
つまり、関係性を図で示すと、以下のようになります。
自営業 ⊃ 個人事業主 ≒ フリーランス (※フリーランスの中には法人化している人もいるため、完全な包含関係ではない)
「フリーランスだけど、まだ開業届は出していない」「フリーランスとして活動していたが、事業が大きくなったので法人化した(=個人事業主ではなくなった)」というケースもありますね。
これらの言葉は、どの側面(働き方、税務、事業形態)から捉えるかによって使い分けられる、と理解しておくと良いでしょう。
「フリーター」と「フリーランス」の違いを社会的な視点から解説
社会的には、「フリーター」は非正規雇用の増加や若者のキャリア形成における課題と関連付けられることが多いです。一方、「フリーランス」は働き方の多様化、専門性の活用、ギグエコノミーの拡大といった文脈で語られることが多く、個人の自律性や専門性が注目されます。
「フリーター」と「フリーランス」は、単なる働き方の違いだけでなく、社会的な文脈や課題においても異なる側面を持っていますね。
「フリーター」という言葉は、特に1990年代後半から2000年代にかけての就職氷河期と関連付けて語られることが多いです。希望しても正社員になれず、非正規雇用であるアルバイトやパートで生計を立てざるを得ない若者が増加した社会背景があります。
そのため、「フリーター」は、雇用の不安定さ、低賃金、キャリア形成の困難さ、将来への不安といった、若年層の雇用問題や格差問題の象徴として扱われることがあります。もちろん、自ら望んでフリーターという働き方を選んでいる人もいますが、社会的な課題としての側面が注目されやすい言葉と言えるでしょう。
一方、「フリーランス」は、近年、働き方の多様化の流れの中で注目度が高まっています。インターネットの普及により、時間や場所にとらわれずに専門的なスキルを活かして働くことが容易になったことが背景にあります。
企業側も、必要な時に必要なスキルを持つ人材を外部から活用する動き(アウトソーシング、ギグエコノミー)が活発化しており、フリーランスの活躍の場は広がっています。政府も多様な働き方を支援する方針を打ち出しており、「フリーランス」は、個人の自律性、専門性、柔軟な働き方といったポジティブな側面で語られることが多いです。
ただし、フリーランスにも収入の不安定さや社会保障の課題は存在します。フリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の制定に向けた動きなど、フリーランスが安心して働ける環境整備も社会的な課題となっています。
このように、「フリーター」と「フリーランス」は、それぞれ異なる社会的な背景や課題と結びついており、単なる個人の選択というだけでなく、時代の変化を映し出す言葉でもあると言えるでしょう。
僕が「フリーランス」を「フリーター」と勘違いしていた頃の話
今でこそ、こうして言葉の違いについて解説していますが、僕自身も以前は「フリーター」と「フリーランス」を混同していた時期がありました。
大学生の頃、サークルの先輩に、卒業後就職せずにWebサイト制作の仕事をしている人がいました。彼は大学に通いながら独学でスキルを身につけ、いくつかの企業のサイトを手掛けていました。好きな時間に起き、カフェでMacBookを開いて仕事をし、時には長期旅行に出かける…そんな自由なライフスタイルを送っているように見えました。
当時の僕は、就職活動を目前に控え、会社に縛られる働き方に漠然とした疑問を感じていた時期でした。そんな時、その先輩の働き方を見て、「へえ、会社に就職しなくても、ああやってフリーターとして自由にやっていく道もあるんだな」と勝手に思い込んでいたんです。
ある日、サークルの飲み会でその先輩と話す機会があり、僕は「〇〇さんみたいに、フリーターとして自由に働けるのって憧れますよ」と言ってしまいました。
すると先輩は、少しムッとした表情で(今思えば当然ですが…)、「いや、俺はフリーターじゃなくて、フリーランスのWebデザイナーだから」と訂正したのです。
僕は「え?フリーターとフリーランスって違うんですか?」と素で聞き返してしまい、先輩に呆れ顔で「全然違うよ!フリーターはバイトだろ?俺は個人で仕事を受けてるんだから、フリーランスだよ」と説明されました。
その時初めて、僕は二つの言葉の意味を全く理解していなかったことに気づき、とても恥ずかしい思いをしました。自由に見える働き方という表面的な部分だけを見て、その実態(雇用されているのか、独立しているのか)を全く考えていなかったんですね。
言葉を正しく知らないということは、その言葉が指し示す世界や働き方の実態を理解していないことと同じなのだと痛感しました。
この経験があったからこそ、言葉の意味や背景をきちんと調べて理解しよう、という意識が芽生えたのかもしれません。あの時の先輩の呆れ顔は、今でも忘れられない苦い思い出です。
「フリーター」と「フリーランス」に関するよくある質問
フリーターからフリーランスになれますか?
なれます。フリーターとしてアルバイトなどをしながら専門的なスキル(デザイン、ライティング、プログラミングなど)を身につけ、個人で仕事を受注できるようになれば、フリーランスとして独立することが可能です。実際に、フリーター経験を経てフリーランスとして活躍している人は多くいます。
フリーランスはフリーターよりも安定していますか?
一概には言えません。フリーターは非正規雇用とはいえ企業に雇用されているため、最低賃金や労働時間などの法的な保護があります。一方、フリーランスは完全に独立しており、仕事の受注状況によって収入が大きく変動するリスクがあります。ただし、高い専門スキルを持ち、安定して仕事を得られるフリーランスであれば、フリーターよりも高い収入を得て、より安定した生活を送ることも可能です。安定性は個人のスキルや状況によります。
英語で「フリーター」と「フリーランス」はどう表現しますか?
「フリーター」は和製英語なので、そのまま “Freeter” と表現しても通じない場合があります。説明的に “part-time worker” や “someone who works multiple part-time jobs instead of a full-time career” のように表現する必要があります。「フリーランス」は英語由来の言葉なので、そのまま “freelancer” または “freelance worker” と表現します。独立して働いているという意味で “self-employed” も使われます。
「フリーター」と「フリーランス」の違いのまとめ
「フリーター」と「フリーランス」の違い、これでしっかり区別できるようになったでしょうか。
最後に、この記事の重要なポイントをまとめておきましょう。
- 定義の核心:「フリーター」は雇用形態(非正規)、「フリーランス」は働き方(独立)。
- 雇用関係:「フリーター」は企業などに雇用される、「フリーランス」は雇用されない。
- 主な対象:「フリーター」は主に若年層、「フリーランス」は年齢不問の専門職が多い。
- 語源:「フリーター」は和製英語、「フリーランス」は中世の傭兵が語源。
- 関連語:「個人事業主」は税務区分、「自営業」は事業形態を指す広い言葉。
現代では働き方が多様化しており、これらの言葉を耳にする機会も増えていますよね。それぞれの言葉が持つ意味や背景を正しく理解することで、自分自身のキャリアプランを考える上でも、他者とのコミュニケーションにおいても、より的確な認識を持つことができるでしょう。
これからは自信を持って、「フリーター」と「フリーランス」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに深く知りたい方は、社会や人間関係に関する言葉の違いをまとめたページもぜひチェックしてみてください。