「可否」と「是非」の違いとは?判断と強い意志の正しい使い分け

「可否」と「是非」、どちらも意見や判断を問う場面などで使われる言葉ですよね。

でも、「ご参加の可否をお知らせください」と「是非ご参加ください」では、意味合いが全く異なります。「この二つの言葉、どう使い分けるのが正しいんだろう?」と迷ったことはありませんか?

実はこの二つの言葉、単に「できるかできないか」「良いか悪いか」の判断を問うのか、それとも「正しいか間違っているか」の判断や「どうしても」という強い意志・願望を示すのかという点で、明確な違いがあるんです。

この記事を読めば、「可否」と「是非」の根本的な意味の違いから、漢字の成り立ち、具体的な使い分け、さらにはビジネスシーンでの適切な表現までスッキリ理解できます。もう言葉選びで迷うことはありませんよ。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「可否」と「是非」の最も重要な違い

【要点】

「可否」は「良いか悪いか」「できるかできないか」という二択の判断を問う場合に用います。一方、「是非」は「正しいか間違っているか」の判断や、「どうしても」「必ず」という強い願望・依頼・勧めを表す場合に用います。判断の種類と、意志の強さがポイントです。

まず、結論からお伝えしますね。

「可否」と「是非」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 可否(かひ) 是非(ぜひ)
中心的な意味 良いか悪いか、できるかできないか 正しいか正しくないか、善か悪か / どうしても、必ず
焦点 二者択一の判断(良し悪し、可不可) 道理・善悪の判断 / 強い意志・願望・依頼
使われ方 意見や出欠、承認などを問う(例:参加の可否、承認の可否) 物事の善悪・道理を論じる / 相手に強く勧めたり、自分の強い希望を伝えたりする(例:是非を問う、是非参加したい)
ニュアンス 客観的な判断を求める 道徳的な判断 / 主観的な強い気持ち
品詞 名詞 名詞 / 副詞
英語 propriety, advisability, feasibility / yes or no right or wrong, merits / certainly, by all means

簡単に言うと、会議への出欠確認のように「Yes/No」で答えられる判断を求めるのが「可否」、道徳的な問題について「正しいか間違っているか」を議論したり、「ぜひ来てください!」のように強く何かを勧めたりするのが「是非」というイメージですね。

「可否」は単なる判断、「是非」は善悪の判断か強い気持ち、と覚えると区別しやすいでしょう。

なぜ違う?言葉の由来から本質的な意味を掴む

【要点】

「可否」は「よし(許可)」と「いな(不許可)」を組み合わせた言葉で、二択の判断を表します。「是非」は「これ(正しい)」と「あらず(間違い)」を組み合わせ、善悪や道理の判断を示します。また、「是が非でも」のように強い意志を表す用法も生まれました。

なぜこの二つの言葉に意味の違いがあるのか、それぞれの漢字の成り立ちを見ていくとその本質的なイメージがより深く理解できますよ。

「可否」の成り立ち:「可(よし)」か「否(いな)」か

「可否」の「可(か)」は、「よし」「~してよい」「可能である」という意味を持つ漢字です。許可や肯定を示しますね。

「否(ひ)」は、「いな」「~ではない」「そうではない」という意味を持つ漢字です。否定や不許可を示します。

つまり、「可否」とは文字通り「可(よし)」か「否(いな)」か、つまり良いか悪いか、できるかできないか、賛成か反対か、といった二者択一の判断そのものを指す言葉なのです。

「是非」の成り立ち:「是(これ)」か「非(あらず)」か

「是非」の「是(ぜ)」は、「これ」「正しい」「道理にかなっている」という意味を持つ漢字です。

「非(ひ)」は、「あらず」「~ではない」「道理にそむく」という意味を持つ漢字です。

このことから、「是非」はまず、「是(これ)」か「非(あらず)」か、つまり物事の道理、善悪、正しさを判断することを意味するようになりました。「是非を論じる」といった使い方ですね。

さらに、ここから派生して、「是が非でも(ぜがひでも)」という言葉が生まれました。これは「良い手段(是)であろうと悪い手段(非)であろうと、どんな手段を使ってでも」という意味で、目的達成への強い意志を示します。

この「是が非でも」が省略され、副詞としての「是非」が「どうしても」「必ず」「きっと」といった、強い願望や依頼、勧めを表す意味で使われるようになったのです。「是非お越しください」「是非お願いします」といった使い方ですね。

漢字の意味を辿ると、「可否」が単純な二択の判断、「是非」が善悪の判断や強い意志という、それぞれのニュアンスの違いがよく分かりますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

出欠の返事は「参加の可否」、提案が良いか悪いかの判断も「可否」です。一方、計画の正当性を議論するのは「是非を問う」、相手に来てほしいと強く願うのは「是非お越しください」となります。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスシーン、日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

特にビジネスメールなどでは、相手に求めることが「判断」なのか「強い依頼」なのかを明確に伝えることが重要です。

ビジネスシーンでの使い分け

判断を求める場面か、強い意志を示す場面かを意識しましょう。

【OK例文:可否(名詞)】

  • 会議へのご出席の可否を、〇日までにご連絡いただけますでしょうか。(出席できるかできないか)
  • 本提案の承認可否について、ご判断をお願いいたします。(承認するかしないか)
  • 計画実行の可否を検討する。(実行すべきか否か)
  • アンケート調査で、新機能追加の可否を尋ねた。(追加が良いか悪いか)

【OK例文:是非(名詞)】

  • その事業計画の是非については、役員会で慎重に議論された。(計画が正しいか、道理にかなっているか)
  • 彼の行動の是非を問う声が上がっている。(行動が善か悪か)

【OK例文:是非(副詞)】

  • 是非、弊社の新製品発表会にお越しください。(強い勧め)
  • この件につきましては、是非とも御社にご協力をお願いしたいと考えております。(強い依頼・願望)
  • 是非一度、詳しいお話を伺えれば幸いです。(強い希望)

相手に判断を求める際は「可否」、物事の正当性を論じたり、強く勧めたり依頼したりする場合は「是非」を使います。

日常会話での使い分け

日常会話でも基本的な意味は同じですが、「是非」は特に親しい間柄での強い勧めや希望としてよく使われますね。

【OK例文:可否(名詞)】

  • 明日の飲み会、参加の可否を教えてくれる?(参加できるかできないか)
  • この服を買うかどうかの可否を決めかねている。(買うべきか否か)

【OK例文:是非(名詞)】

  • 子供の教育方針について、夫婦で是非を話し合った。(何が正しい教育か)

【OK例文:是非(副詞)】

  • 今度うちに是非遊びに来てね!(強い勧め)
  • この映画、すごく面白かったから是非見てみて!(強く勧める)
  • 是非ともそのボランティアに参加したいです。(強い希望)
  • お土産ありがとう!是非いただきます。(喜んで受け取る気持ち)

日常会話で「可否」を使う場面は、出欠確認など少し改まった状況が多いかもしれません。「是非」は気軽に使える便利な言葉ですね。

これはNG!間違えやすい使い方

意味を取り違えると、意図が伝わらなかったり、失礼になったりする場合があります。

  • 【NG】 ご都合の是非をお聞かせください。
  • 【OK】 ご都合の可否をお聞かせください。
  • 【OK】 是非ともご都合をつけていただければ幸いです。

相手の都合が良いか悪いかの判断を問うているので、「可否」が適切です。「是非」を使うと、「あなたの都合は正しいですか?間違っていますか?」と尋ねているような奇妙な意味になってしまいます。

  • 【NG】 新しい企画の是非をご検討ください。(※単なる承認を求める場合)
  • 【OK】 新しい企画の可否をご検討ください。(承認するかしないか)
  • 【OK】 新しい企画の是非(妥当性や正当性)についてご意見をいただけますでしょうか。

単に企画を承認してほしい(Go/No Goの判断)だけであれば、「可否」を使います。「是非」を使うと、企画の内容が道徳的に正しいか、社会的に妥当か、といった次元の議論を求めているようなニュアンスになります。

  • 【NG】 ご参加の可否、お待ちしております!(参加してほしい気持ちが強い場合)
  • 【OK】 是非ご参加ください!お待ちしております!
  • 【OK】 ご参加いただけますでしょうか。可否をお知らせください。

相手に参加してほしい気持ちを強く伝えたい場合は、副詞の「是非」を使うのが適切です。「可否をお待ちしております」だと、単に出欠の返事を待っているだけで、歓迎の気持ちが伝わりにくい可能性があります。

【応用編】似ている言葉「賛否」との違いは?

【要点】

「賛否(さんぴ)」は「賛成か反対か」という意見を問う場合に特化して使われます。「可否」も賛成・反対の意味を含むことがありますが、「良いか悪いか」「できるかできないか」など、より広い判断を問うことができます。「是非」は善悪の判断や強い意志を示すため、「賛否」とは異なります。

「可否」と意味が似ていて混同しやすい言葉に「賛否(さんぴ)」があります。この違いも理解しておくと、より nuanced な表現ができますよ。

「賛否」は、文字通り「賛成(さんせい)」か「反対(はんたい)」かを意味します。ある提案や意見、行動に対して、同意するかしないか、支持するかしないか、という二択の立場や意見を問う場合に限定して使われます。

  • その法案には賛否両論がある。
  • 会議の参加者に議案への賛否を問うた。
  • 彼の意見に対する賛否は、人によって分かれるだろう。

一方、「可否」は「賛成か反対か」の意味で使われることもありますが、「良いか悪いか」「可能か不可能か」「承認するかしないか」など、より広い範囲の二択の判断を問うことができます。

  • 計画実行の可否(=実行すべきか否か / 実行できるか否か)
  • 参加の可否(=参加できるか否か)

つまり、「賛否」は「可否」が使われる場面の一部(賛成/反対の判断)に特化した言葉、と言えるでしょう。

「是非」は、前述の通り「正しいか間違っているか」という善悪・道理の判断や、副詞としての強い意志・願望を示すため、「賛否」とは全く意味が異なりますね。

「可否」と「是非」の違いを国語的に解説

【要点】

国語辞典では、「可否」は「よいか悪いか。承知することと承知しないこと」と定義され、二者択一の判断を示します。「是非」は名詞として「道理にかなうこととはずれること。正しいこととまちがったこと。よしあし」と定義される一方、副詞として「(多く下に願望、依頼などの語を伴って)どうしても。かならず」という意味も持ちます。品詞の違いも重要なポイントです。

「可否」と「是非」の違いを、国語辞典の定義に基づいて、より詳しく見てみましょう。

多くの国語辞典では、以下のように説明されています。

可否(かひ)

  1. よいことと悪いこと。
  2. 承知することと承知しないこと。諾否(だくひ)。

(出典:デジタル大辞泉など)

定義からもわかるように、「可否」は「良い/悪い」「承知する/しない」という二者択一の判断を示す名詞です。「諾否(だくひ)」(承諾するか否か)と近い意味合いも持ちますね。

是非(ぜひ)

【名詞】

  1. 道理にかなうことと、はずれること。正しいこととまちがったこと。よしあし。「物事の―を論じる」「―を明らかにする」

【副詞】

  1. (多く下に願望、依頼、勧誘などの語を伴って)どうしても。かならず。なんとしても。「―成功させたい」「―おいでください」「―お願いします」
  2. (下に推量、疑問などの語を伴って)きっと。さだめし。「―に及ばず(=言うまでもなく)」

(出典:デジタル大辞泉など)

「是非」は、名詞としては「正しい/間違い」「善/悪」といった道理や道徳に関わる判断を意味します。

そして、副詞としては「どうしても」「必ず」という強い意志や願望、依頼を示す点が特徴的です。これは「可否」にはない用法ですね。

このように、国語的な定義からも、「可否」が客観的な二択の判断を求めるのに対し、「是非」は善悪の判断という側面と、主観的な強い気持ちを表す側面を持っていることが分かります。

特に「是非」を副詞として使う場面は非常に多いので、しっかり覚えておきたいですね。

僕が「是非」を使うべき場面で「可否」と尋ねてしまった体験談

僕も以前、ビジネスメールで「可否」と「是非」を混同してしまい、意図がうまく伝わらなかった経験があります。

あるイベントへの登壇を、尊敬する社外の専門家の方にお願いするメールを作成していた時のことです。その方にはぜひ登壇していただきたい、という熱い気持ちがありました。

メールの最後に、参加をお願いする一文として、僕はこう書きました。

「つきましては、本イベントへのご登壇の可否をご検討いただけますと幸いです」

自分としては、丁寧にお願いしているつもりでした。「登壇できるか、できないか、ご判断ください」という意味合いで書いたのです。

しかし、メールを送る前に先輩に見てもらったところ、すぐに指摘が入りました。

「この書き方だと、相手に『来られるなら来てね、来られないならそれでもいいよ』みたいに、どちらでもいいですよ、と判断を委ねているように読めるかもしれないよ。本当に来てほしいなら、もっと熱意を伝えないと!」

そして、先輩はこう書き換えることを提案してくれました。

「つきましては、本イベントへのご登壇を、是非ともお願いできますでしょうか」

あるいは、

「ご多忙中とは存じますが、是非ともご登壇賜りたく、お願い申し上げる次第です」

なるほど、と思いました。「可否」を使うと、相手に判断を委ねるニュアンスが強くなり、「来てください!」というこちらの強い希望が伝わりにくくなるのですね。

一方、「是非」を使うことで、「どうしてもあなたに来てほしいのです」という熱意や敬意を明確に伝えることができるのだと気づきました。

もちろん、相手の都合を無視して「是非!」と押し付けるのは良くありませんが、招待や依頼の場面では、相手に来てほしいというポジティブな気持ちを伝えることが、良い返事を引き出す上で重要なのだと学びました。

それ以来、相手に何かをお願いするメールでは、単に判断を求める「可否」ではなく、自分の気持ちを込めた「是非」を適切に使うように心がけています。

「可否」と「是非」に関するよくある質問

ここで、「可否」と「是非」に関してよくある質問にお答えしますね。

Q1. 目上の人に「可否」を尋ねるのは失礼ですか?

A1. いいえ、失礼ではありません。「ご都合の可否をお知らせください」「承認可否をご判断ください」のように、相手に判断を求める際に使うのは一般的なビジネス表現です。ただし、「是非(副詞)」を使うべき場面で「可否」を使うと、前述の体験談のように意図が伝わりにくくなる可能性はあります。

Q2. 「是非」を名詞で使うのはどんな時ですか?

A2. 物事の「善悪」「正しさ」「道理」について論じる場合に使います。「計画の是非を問う」「彼の行動の是非について議論する」といった文脈です。日常会話よりは、少し硬い議論や文章で使われることが多いですね。

Q3. 「是非ない」「是非もない」とはどういう意味ですか?

A3. 「是非に及ばない」と同じ意味で、「あれこれ論じるまでもない」「仕方がない」「やむを得ない」といった意味を表す慣用句です。現代ではあまり使われない古風な表現ですね。(例:「こうなった上は是非もない」)

「可否」と「是非」の違いのまとめ

「可否」と「是非」の違い、スッキリ整理できたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 「可否」は二択の判断:良いか悪いか、できるかできないか、賛成か反対か、といった単純な判断を問う名詞。
  2. 「是非」は二つの意味
    • 【名詞】正しいか間違っているか、善か悪かといった道理・善悪の判断
    • 【副詞】「どうしても」「必ず」という強い意志・願望・依頼・勧め
  3. 使い分けのポイント:相手に単なる判断を求めたいのか、それとも物事の善悪を論じたいのか、あるいは自分の強い気持ちを伝えたいのかで使い分ける。
  4. ビジネスメール注意点:相手への依頼や招待で、来てほしい気持ちを伝えたい場合は「可否」ではなく「是非(副詞)」を使う方が熱意が伝わる。

特に「是非」は名詞と副詞で意味が大きく異なるため、文脈からどちらの意味で使われているかを正しく理解することが大切ですね。

これからは自信を持って、「可否」と「是非」を的確に使い分けていきましょう。ビジネスシーンでの言葉遣いについて、さらに詳しく知りたい方は、ビジネス用語の違いまとめページもぜひご覧ください。