「喧噪」と「喧騒」の違い!やかましさを表す言葉の使い分け

「喧噪」と「喧騒」、どちらも「けんそう」と読み、「やかましく騒がしいこと」を意味しますが、どちらの漢字を使うべきか迷ったことはありませんか?

辞書を引いてもほとんど同じ意味…。じゃあ、どっちでもいいの?と思いますよね。

実は、現代の日本語では「喧騒」を使うのが一般的です。「喧噪」も間違いではありませんが、使われる場面はかなり限られています。

この記事を読めば、「喧噪」と「喧騒」の漢字の成り立ちからニュアンスの違い、なぜ「喧騒」が主流なのか、そして類義語との違いまでスッキリ理解できます。もう、どちらを使うべきか迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「喧噪」と「喧騒」の最も重要な違い

【要点】

意味は「やかましく騒がしいこと」でほぼ同じですが、現代では「喧騒」を使うのが一般的です。「噪」も「騒」も常用漢字ですが、慣用的に「喧騒」の方が広く使われています。「喧噪」はやや硬い印象や、文学的な表現で使われることが稀にある程度です。迷ったら「喧騒」を選びましょう。

まず、結論からお伝えしますね。

「喧噪」と「喧騒」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 喧噪(けんそう) 喧騒(けんそう)
中心的な意味 やかましく騒がしいこと。また、その声や音。 やかましく騒がしいこと。
漢字 喧(常用漢字)+(常用漢字) 喧(常用漢字)+(常用漢字)
使われ方 あまり一般的ではない。やや硬い印象。文学的表現などで稀に見られる。 一般的によく使われる。新聞やメディアでもこちらが主流。
ニュアンス 「噪」に鳥の声の意があるため、やや限定的か(ただし熟語では意識されない)。 広く「騒がしい」「やかましい」状況全般を指す。
迷ったとき 通常は「喧騒」で良い。 こちらを使うのが無難

一番大切なポイントは、意味はほとんど同じですが、現代日本語では「喧騒」を使うのが圧倒的に一般的だということです。

どちらの漢字も常用漢字に含まれているにも関わらず、「喧騒」の方が慣用的に広く使われています。新聞などのメディアでも、通常は「喧騒」が用いられますね。

なぜ違う?漢字の成り立ちからイメージを掴む

【要点】

「喧」は口々がやかましい様子。「噪」は鳥が集まって騒ぐ様子。「騒」は馬がやかましく動き回る様子を表します。いずれも「やかましい」という点で共通しており、熟語としての「喧噪」「喧騒」の意味に大きな差はありませんが、成り立ちを知ると漢字のイメージが掴めます。

「喧噪」と「喧騒」、意味はほとんど同じなのに、なぜ二つの表記が存在するのでしょうか?それぞれの漢字の成り立ちを見てみると、微妙なニュアンスの違い(というよりは、元のイメージ)が見えてきます。

「喧」の字:口々がやかましい様子

まず、共通して使われている「喧」という字。「口」が三つ(もとは四つ)と「宣」が組み合わさっています。「宣」は広く行き渡らせるという意味。つまり、「喧」は多くの口があちこちでやかましく言い立てる様子を表しています。「喧嘩(けんか)」や「喧伝(けんでん)」といった言葉にも使われますね。

「噪」の字:鳥たちが集まって騒ぐ様子

次に「喧噪」の「噪」。「口」へんに「喿(そう)」が組み合わさっています。「喿」は、木の上に鳥がたくさん集まって鳴く様子を表す漢字です。

このことから、「噪」は元々、鳥などが集まってやかましく鳴き騒ぐことを意味していました。「騒音」を意味することもあります。

「喧噪」という熟語になると、鳥に限らず広く「やかましい」という意味で使われますが、成り立ちにはこのようなイメージがあるんですね。

「騒」の字:馬がやかましく動き回る様子

最後に「喧騒」の「騒」。「馬」へんに「蚤(そう、のみ)」が組み合わさっています。「蚤」には小さい虫が飛び跳ねる様子から「さわがしい」という意味があります。

つまり、「騒」は、馬が蚤に食われて暴れるように、やかましく動き回る、落ち着かない様子を表しています。「騒動」や「物騒」といった言葉からも、落ち着かない、穏やかでないイメージが伝わってきますね。

これらの成り立ちを見ると、「噪」も「騒」も「やかましい」という共通の意味を持っています。そのため、「喧噪」と「喧騒」の意味がほとんど同じになるのも頷けます。ただ、なぜ現代で「喧騒」の方が一般的に使われるのかは、漢字の成り立ちだけでは明確には説明できず、言葉の慣用的な使われ方の変化によるものと考えられます。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「都会の喧騒」「祭りの喧騒」など、人や物音で騒がしい状況を表すには、基本的に「喧騒」を使います。「喧噪」は、あえて古い表現や硬い表現を使いたい場合を除き、現代ではあまり使われません。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ただし、「喧噪」と「喧騒」は意味がほぼ同じで、現代では「喧騒」が主流のため、使い分けというよりは「主に喧騒が使われる例」と「喧噪が使われる可能性のある稀な例」として見ていきましょう。

「喧騒」が一般的に使われる場面

人々の声や活動、物音などが入り混じってやかましい状況を表す際に、広く使われます。

  • 都会の喧騒を離れて、静かな田舎で暮らしたい。
  • 年末の市場は、買い物客で大変な喧騒に包まれていた。
  • 祭りの後の喧騒が嘘のように、街は静まり返っていた。
  • しばしの喧騒から逃れ、一人で考え事をする時間が必要だ。
  • 事故現場は、野次馬や報道陣の喧騒で騒然としていた。

このように、人や街の騒がしさを表現する際に「喧騒」は非常によく使われますね。

「喧噪」が使われる可能性のある場面(限定的)

現代の一般的な文章で見かけることは稀ですが、文学作品や少し改まった文章、あるいは漢字の持つ「鳥の声」のニュアンスを意識した場合などに使われる可能性はあります。

  • 文豪の小説に、市場の喧噪を描写した一節があった。(文学的表現)
  • 彼は都会の喧噪(=騒音、やかましさ)に耐えられず、郊外へ引っ越した。(やや硬い表現)
  • (※非常に稀な例)森の夜明けと共に、鳥たちの喧噪が始まった。(漢字の原義に近い用法)

ただし、これらの場面でも「喧騒」を使っても全く問題ありません。無理に「喧噪」を使う必要はないでしょう。

これはNG!間違えやすい使い方

厳密には間違いとは言えませんが、一般的ではない、あるいは不自然に聞こえる可能性のある使い方です。

  • 【△(不自然)】子供たちがリビングで喧噪を極めている。
  • 【OK】子供たちがリビングで喧騒を極めている。(または「騒いでいる」)

日常的な子供の騒がしさを表現するのに「喧噪」を使うのは、少し大げさで硬い印象を与えます。「喧騒」または、より平易な言葉を使うのが自然です。

  • 【△(一般的でない)】会議室の外が喧噪としていて集中できない。
  • 【OK】会議室の外が喧騒としていて集中できない。(または「騒がしくて」)

ビジネス文書や一般的な会話で、あえて「喧噪」を選ぶ理由は特にありません。「喧騒」を使うか、「騒がしい」などの言葉で表現するのが普通です。

【応用編】似ている言葉「騒音」「雑踏」との違いは?

【要点】

「喧騒」は人声や物音が入り混じった騒がしい状況を指します。「騒音」は不快な、やかましい音そのものを指します。「雑踏」は人が多く混み合っている場所や様子を指し、必ずしもやかましいとは限りません。

「喧騒」と似た言葉に「騒音(そうおん)」や「雑踏(ざっとう)」があります。これらの違いも理解しておくと、表現の幅が広がりますよ。

「騒音」は、読んで字のごとく「騒がしい音」ですが、特に不快感を与える、やかましい音を指します。工事現場の音、車のクラクション、大音量の音楽など、物理的な「音」そのものに焦点があります。

  • 例:工場地帯の騒音に悩まされている。
  • 例:飛行機の騒音で会話が聞こえない。

「雑踏」は、多くの人が集まって混み合っている場所や、その様子を指します。渋谷のスクランブル交差点や満員電車などが典型例です。必ずしも「やかましい」とは限らず、人が多いことによる混雑に焦点があります。

  • 例:年末年始の駅は大変な雑踏となる。
  • 例:雑踏をかき分けて進んだ。

これに対し「喧騒」は、人々の声や物音、活動などが入り混じって、やかましく騒がしい雰囲気や状況を指します。「騒音」ほど物理的な音に限定されず、「雑踏」ほど人の多さだけに限定されません。

  • 例:祭りの喧騒が遠くまで聞こえる。(音と雰囲気)
  • 例:都会の喧騒。(人の活動や音を含む全体的な騒がしさ)

まとめると、

  • 騒音:不快な「音」
  • 雑踏:人の「混雑」
  • 喧騒:人や音による「騒がしい状況・雰囲気」

という違いになりますね。

「喧噪」と「喧騒」の違いを公的な視点から解説

【要点】

公用文や多くのメディアでは、常用漢字であるかどうかに関わらず、慣用的に広く使われている表記を優先する傾向があります。「喧噪」と「喧騒」の場合、意味がほぼ同じで、かつ「騒」の字も常用漢字であることから、より一般的に使われている「喧騒」が選ばれることが多いです。

「喧噪」と「喧騒」、どちらの漢字も常用漢字なのに、なぜ「喧騒」の方が一般的に使われるのでしょうか? 公的な文書作成の指針やメディアでの慣例という視点から見てみましょう。

文化庁の常用漢字表では、「噪」も「騒」も常用漢字として認められています。そのため、どちらの表記を使っても、常用漢字という点では問題ありません。

しかし、実際の公用文や新聞・放送などのメディアでは、どちらか一方の表記に統一したり、より一般的に使われている表記を優先したりする慣例があります。これは、読者や視聴者にとっての分かりやすさや、表記の揺れを防ぐためです。

「喧噪」と「喧騒」については、意味がほとんど同じであり、どちらの漢字も常用漢字です。このような場合、歴史的経緯や社会での使われ方の実態(慣用)が重視されることがあります。

現代日本語においては、「喧騒」の方が「喧噪」よりも圧倒的に広く使われている実態があります。この慣用を尊重し、多くの公的な指針や報道機関の用語集などでは、「喧騒」という表記を採用していると考えられます。(例えば、共同通信社の『記者ハンドブック』などでも「喧騒」が一般的な表記として示されていることが多いです)。

つまり、常用漢字かどうかというルールだけでなく、「どちらがより社会で広く認知され、使われているか」という慣用が、表記の選択に影響を与えているわけですね。「喧騒」が主流となっているのは、このような背景が大きいと言えるでしょう。

僕が「喧噪」と書いて赤ペンを入れられた新人時代

僕も新人ライターだった頃、この「喧噪」と「喧騒」で、ちょっとした指摘を受けたことがあります。

ある街のルポ記事を書いていた時のこと。活気あふれる商店街の様子を描写するくだりで、少しでも文学的な、雰囲気のある表現を使いたいと考えました。そこで、辞書で「やかましい」を引いて見つけた「喧噪」という言葉を使ったんです。

「アーケードの下には、人々の声と呼び込みの音が混じり合い、心地よい喧噪が満ちていた」

自分としては、「噪」の字が持つイメージ(鳥の声のように、多くの声が集まって騒がしい感じ?)が、活気ある商店街の雰囲気に合うんじゃないか、なんて自己満足に浸っていました。

ところが、原稿を提出すると、先輩編集者から赤ペンが入っていました。「喧噪」の部分が「喧騒」に直されていたのです。

「藤吉くん、ここの『けんそう』だけど、普通は『騒』の字を使うよ。『噪』でも間違いじゃないけど、一般的じゃないから、読者が『ん?』って思うかもしれない。特にこだわりがなければ、『喧騒』にしておこう」

正直、「え、どっちも常用漢字なのに…」と少し戸惑いました。でも、先輩の言う通り、改めて新聞や他の記事を見てみると、確かに「喧騒」ばかり。僕が書いた「喧噪」は、ほとんど見かけません。

その時、言葉は、辞書的な意味の正しさだけでなく、社会で一般的にどう使われているかという「慣用」も非常に重要なんだと気づかされました。

たとえ漢字の意味合いに微妙な違いがあったとしても、多くの人が使っている、より一般的な表記を選ぶ方が、スムーズに意図が伝わる。特に多くの読者に向けた文章を書く上では、その視点が欠かせないのだと。

それ以来、同音異義語や似た意味の言葉を使うときは、辞書的な意味だけでなく、「普段どちらの表記をよく目にするか?」という点も意識するようになりました。「喧噪」と「喧騒」の一件は、言葉の「正しさ」と「伝わりやすさ」のバランスについて考える、良いきっかけになりましたね。

「喧噪」と「喧騒」に関するよくある質問

結局、どちらを使えばいいですか?

基本的には「喧騒」を使うのが最も一般的で無難です。現代の日本語では、「やかましく騒がしいこと」を意味する場合、ほとんど「喧騒」が用いられます。迷ったら「喧騒」を選びましょう。

「喧噪」を使うのは間違いですか?

間違いではありませんが、一般的ではありません。「噪」も常用漢字であり、辞書的な意味もほぼ同じなので誤りとは言えません。しかし、現代では使われることが稀なため、読者に違和感を与えたり、意図が伝わりにくくなったりする可能性があります。文学的な表現など、特別な意図がない限り、避けた方が良いでしょう。

なぜ「喧騒」の方が一般的に使われるのですか?

明確な理由は定かではありませんが、慣用的に「喧騒」の方が広く定着したためと考えられます。どちらの漢字も常用漢字で意味も似ていますが、言葉の歴史の中で「喧騒」という表記がより多くの人に使われ、受け入れられてきた結果、現在では主流となっています。メディアや公用文でも「喧騒」が主に用いられることが、その傾向を後押ししています。

「喧噪」と「喧騒」の違いのまとめ

「喧噪」と「喧騒」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 意味はほぼ同じ:「やかましく騒がしいこと」を指す。
  2. 漢字はどちらも常用漢字:「噪」も「騒」も常用漢字表に含まれる。
  3. 一般性は「喧騒」が圧倒的:現代日本語では「喧騒」を使うのが主流であり、メディアなどでも一般的。
  4. 「喧噪」は限定的:間違いではないが、使われることは稀。やや硬い、または文学的なニュアンス。
  5. 迷ったら「喧騒」:どちらを使うか迷った場合は、「喧騒」を選ぶのが最も無難。

漢字の成り立ちにはそれぞれ異なるイメージがありましたが、熟語としての意味に大きな差はなく、現代では慣用的に「喧騒」が広く使われています。

言葉の正確さも大切ですが、多くの人にスムーズに伝わるという観点も重要ですね。

これから自信を持って、「喧騒」を使っていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、漢字の使い分けの違いをまとめたページもぜひご覧ください。