「貴行」と「御行」の違い!銀行への敬称は書き言葉と話し言葉で使い分け

「貴行(きこう)」と「御行(おんこう)」、どちらも相手の銀行を敬って呼ぶ言葉ですが、就職活動の面接やビジネスメールで、どちらを使うべきか迷った経験はありませんか?

相手に失礼がないように、正しい敬称を使いたいですよね。

実はこの二つの言葉、「書き言葉」か「話し言葉」かという、使う場面によって明確に使い分けられるんです。この記事を読めば、「貴行」と「御行」の基本的な違いから、就活やビジネスシーンでの具体的な使い方、間違えやすいポイントまでスッキリ理解でき、自信を持って相手の銀行を呼ぶことができるようになります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「貴行」と「御行」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「貴行」は手紙やメールなどの書き言葉で使い、「御行」は面接や電話などの話し言葉で使います。どちらも相手の銀行に対する敬称ですが、使用する媒体(書くか話すか)によって使い分けるのがマナーです。

まず、結論からお伝えしますね。

「貴行」と「御行」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 貴行(きこう) 御行(おんこう)
中心的な意味 相手の銀行(敬称) 相手の銀行(敬称)
使う場面 書き言葉
(手紙、メール、履歴書、エントリーシートなど)
話し言葉
(面接、電話、会話、プレゼンテーションなど)
敬意の対象 相手の銀行 相手の銀行
使い分けの理由 文章にした際にかしこまった印象を与えるため 口頭で聞き取りやすく、丁寧な印象を与えるため(同音異義語回避)
覚え方 コウ → 入する(書く) オンコウ → 声(話す)

一番大切なのは、書くときは「貴行」、話すときは「御行」というシンプルなルールですね。

就職活動で言えば、エントリーシートや履歴書には「貴行」と書き、面接では「御行」と言うのが正解です。

なぜ違う?言葉の意味と「書き言葉」「話し言葉」の観点から解説

【要点】

「貴」も「御」も相手への敬意を示す接頭語ですが、「貴」は主に文章で用いられ、「御」は口頭で使われることが多いです。「貴行」は文章向きのかしこまった表現、「御行」は口頭で聞き取りやすい丁寧な表現(特に「紀行」「奇行」などの同音異義語と区別するため)として使い分けられます。

なぜ同じ銀行を指す敬称なのに、書き言葉と話し言葉で使い分けるのでしょうか?それぞれの言葉の意味と、日本語の慣習からその理由を探ってみましょう。

「貴行」は書き言葉(手紙・メールなど)で使う

「貴行」の「貴」は、「相手への敬意」を表す接頭語です。「貴社」「貴殿」など、手紙や文書で相手(や相手に属するもの)を敬う際に広く用いられます。

「行」はもちろん「銀行」を指します。

つまり、「貴行」は「あなたの銀行」を敬って表現する言葉であり、主に文章において、かしこまった丁寧さを示すために使われます。

手紙やビジネス文書といった書き言葉の世界では、古くから相手への敬意を示す際に「貴」を用いるのが一般的でした。その慣習が現代にも引き継がれているわけですね。

「御行」は話し言葉(面接・電話など)で使う

一方、「御行」の「御」も、「相手への敬意」を表す接頭語です。「御社」「御中」「御礼」など、話し言葉でも書き言葉でも使われますが、特に話し言葉で相手への丁寧さを示す際によく用いられます。

「貴行」ではなく「御行」を話し言葉で使う主な理由は、聞き取りやすさにあると言われています。

「きこう」という音には、「紀行」(旅行の記録)、「奇行」(奇妙な行い)、「寄稿」(原稿を寄せること)など、同音異義語が多く存在します。そのため、会話の中で「きこう」と言うと、聞き手がどの意味か瞬時に判断しにくく、誤解を生む可能性があります。

そこで、話し言葉では同音異義語の少ない「おんこう(御行)」を使うことで、明確に相手の銀行を指していることを伝え、聞き間違いを防ぐという慣習が定着したのです。

(読者の心の声)「なるほど!話すときは聞き間違いを防ぐためだったんだ。貴社と御社の使い分けと同じ理由なんだね!」

その通りです!会社を指す「貴社(書き言葉)」と「御社(話し言葉)」の使い分けと全く同じ理由ですね。このパターンを覚えておくと便利です。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

就活では、ESや履歴書には「貴行」、面接や電話では「御行」を使います。取引先とのやり取りでも、メールや文書では「貴行」、電話や対面では「御行」です。混同して使うと、ビジネスマナーを知らないという印象を与えかねません。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

特に重要な就職活動と、一般的なビジネスシーンでの使い分けを見ていきましょう。

就職活動(就活)での使い分け

銀行への就職を目指す学生にとっては必須の知識です。

【OK例文:貴行】(書き言葉)

  • 貴行の〇〇という理念に共感し、志望いたしました。(エントリーシート)
  • 学生時代に培ったコミュニケーション能力を、貴行で活かしたいと考えております。(履歴書)
  • 貴行のインターンシップに参加させていただき、地域経済への貢献に強い関心を持ちました。(お礼状)

【OK例文:御行】(話し言葉)

  • 私が御行を志望する理由は、〇〇だからです。(面接)
  • 御行の〇〇支店で、お客様の資産運用についてお話を伺い、大変勉強になりました。(面接)
  • 本日はお忙しい中、面接の機会をいただきありがとうございます。御行で働くことを強く希望しております。(電話)

この使い分けは基本中の基本なので、間違えないようにしっかり覚えておきましょう。

ビジネスシーン(取引先など)での使い分け

取引先や顧客である銀行に対して使う場合も同様です。

【OK例文:貴行】(書き言葉)

  • 先日はお打ち合わせいただき、ありがとうございました。貴行のご提案内容、社内で検討させていただきます。(メール)
  • 貴行の〇〇サービスに関する資料をお送りいただけますでしょうか。(依頼書)
  • 貴行におかれましては、ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。(時候の挨拶状)

【OK例文:御行】(話し言葉)

  • 先日お送りした資料についてですが、御行でのご検討状況はいかがでしょうか。(電話)
  • 御行の〇〇様には、いつも大変お世話になっております。(対面での会話)
  • 本日は御行の皆様にお集まりいただき、誠にありがとうございます。(プレゼンテーション)

これはNG!間違えやすい使い方

書き言葉と話し言葉を混同してしまうのが、最も典型的な間違いです。

  • 【NG】(面接で)私が貴行を志望する理由は…
  • 【OK】(面接で)私が御行を志望する理由は…

面接は話し言葉の場面なので、「貴行」を使うのは誤りです。相手に「マナーを知らないのかな?」と思われてしまう可能性があります。

  • 【NG】(メールで)御行のサービスについて質問がございます。
  • 【OK】(メールで)貴行のサービスについて質問がございます。

メールは書き言葉なので、「御行」ではなく「貴行」を使うのが正解です。

書くか、話すか。この一点を常に意識すれば、間違うことはありませんね。

【応用編】似ている言葉「貴社」「御社」との違いは?

【要点】

「貴社(きしゃ)」と「御社(おんしゃ)」は、相手の「会社」に対する敬称です。「貴行」「御行」が銀行に限定されるのに対し、「貴社」「御社」は銀行を含む一般企業全般に使えます。使い分けは同じで、書き言葉では「貴社」、話し言葉では「御社」です。

「貴行」「御行」と非常によく似た使い分けをする言葉に、「貴社(きしゃ)」と「御社(おんしゃ)」があります。これも合わせて覚えておくと混乱しませんよ。

「貴社」「御社」は、相手の「会社」を敬って呼ぶ言葉です。

使い分けのルールは「貴行」「御行」と全く同じです。

  • 貴社(きしゃ)書き言葉で使う(手紙、メール、履歴書など)
  • 御社(おんしゃ)話し言葉で使う(面接、電話、会話など)

なぜ話し言葉で「御社」を使うのか、理由も同じです。「きしゃ」には「記者」「汽車」「帰社」など多くの同音異義語があるため、聞き間違いを防ぐために話し言葉では「おんしゃ」が使われます。

対象が「銀行」なら「貴行/御行」、対象が「会社(銀行を含む一般企業)」なら「貴社/御社」と使い分ける、と覚えておきましょう。

(読者の心の声)「じゃあ、銀行に対して『貴社』や『御社』を使ってもいいの?」

良い質問ですね。銀行も会社の一形態なので、「貴社」「御社」を使っても間違いではありません。しかし、相手が銀行であると明確に分かっている場合は、「貴行」「御行」を使う方がより具体的で丁寧な印象を与えるでしょう。特に就職活動などでは、その銀行を特定して敬意を示す意味でも「貴行」「御行」を使うのが一般的です。

「貴行」と「御行」の違いを専門的に解説(敬語・ビジネスマナーの観点から)

【要点】

敬語表現において、「貴」や「御」は相手への敬意を示す接頭語です。ビジネスマナーとして、相手の組織(銀行)を指す場合、コミュニケーションの媒体(書き言葉か話し言葉か)に応じて「貴行」と「御行」を使い分けることが求められます。これは、相手への配慮(聞き取りやすさ)と、場面に応じた適切な敬意表現の実践として重要視されます。

敬語やビジネスマナーという観点から、「貴行」と「御行」の使い分けの意義を考えてみましょう。

日本語の敬語体系において、「貴」や「御(おん、ご)」は、相手や相手に属するものごとに対して敬意を示すための接頭語として機能します。相手の組織名を直接呼ぶのではなく、これらの敬称接頭語を付けることで、相手への敬意を表現するわけですね。

ビジネスマナーにおいては、相手や場面に応じて適切な言葉遣いをすることが、円滑なコミュニケーションと信頼関係の構築に不可欠とされています。

「貴行」と「御行」の使い分けは、まさにこの原則に基づいています。

  • 書き言葉で「貴行」を使うこと:手紙や文書といった改まった媒体において、相手の銀行に対する伝統的でかしこまった敬意を示す作法に則っています。
  • 話し言葉で「御行」を使うこと:会話というリアルタイムのコミュニケーションにおいて、「きこう」という同音異義語による聞き間違いや誤解を防ぎ、相手がスムーズに理解できるよう配慮する作法です。これもまた、相手への敬意の表れと言えます。

つまり、単にルールだから使い分けるというだけでなく、「相手への敬意」と「相手への配慮(分かりやすさ)」という、ビジネスマナーの根幹に関わる理由があるのです。

特に銀行は、信用を重んじる業界です。就職活動や取引において、こうした基本的なビジネスマナーを身につけているかどうかは、相手に与える印象を大きく左右する可能性があると言えるでしょう。

言葉遣い一つにも、相手への配慮が表れるものですね。

私が面接で「貴行」と言って赤面した就活時代の体験談

今でこそ、こうして言葉の違いについて解説していますが、僕も就職活動中は失敗ばかりでした。特に忘れられないのが、第一志望だった銀行の最終面接での出来事です。

面接対策は万全のつもりでした。企業の理念も事業内容も頭に叩き込み、想定される質問への回答も何度も練習しました。もちろん、「書き言葉は貴行、話し言葉は御行」というルールも知っていました。

…知っていたはず、だったんです。

面接は和やかな雰囲気で始まり、最初は練習通りに受け答えできていました。しかし、面接官からの鋭い質問に答えているうちに、だんだん頭が真っ白になってきて…。

そして、事件は起きました。面接官から「当行でどのような仕事に挑戦したいですか?」と聞かれた時、僕は熱意を込めてこう答えてしまったのです。

「はい!私は貴行の法人営業部で、地域の中小企業を支援する仕事に挑戦したいと考えております!」

言ってしまった瞬間、「あっ…」と思いました。顔から血の気が引くのを感じました。目の前に座っていた人事部長の眉が、ほんの少しピクリと動いたのを僕は見逃しませんでした。

(心の声)「やばい! 『貴行』って言っちゃった! 面接は話し言葉だから『御行』だろ…!」

頭の中では大パニックでしたが、面接を止めるわけにもいきません。その後も必死で話し続けましたが、明らかに動揺していました。案の定、その銀行からはお祈りメールが届きました。

もちろん、不採用の理由はそれだけではないでしょう。でも、あの場面で基本的なマナー違反をしてしまったことは、少なからず影響したのではないかと、今でも悔やまれます。知っていることと、緊張した場面で自然にできることは全く違うのだと痛感しました。

この失敗談、恥ずかしいですが、皆さんの参考になれば幸いです。特に面接では、頭で理解しているだけでなく、口に出して練習し、体に染み込ませておくことが本当に大切ですよ。

「貴行」と「御行」に関するよくある質問

信用金庫や農協(JA)などにも使えますか?

はい、使えます。「貴行」「御行」は銀行だけでなく、信用金庫、信用組合、労働金庫、農協(JAバンク)、漁協(JFマリンバンク)など、銀行と同様の金融業務を行う組織に対しても使うことができます。ただし、組織によっては「貴庫(きこ)/御庫(おんこ)」、「貴組合(きくみあい)/御組合(おんくみあい)」といった、より具体的な敬称を使う場合もあります。迷った場合は、相手の組織形態に合わせて使い分けるか、確信が持てなければ「貴社/御社」を使うのも一つの方法です。

Webサイトの入力フォームやチャットではどちらを使いますか?

これは少し判断が難しい場面ですね。Webサイトの入力フォーム(エントリーシートなど)は、手書きの書類と同様に「書き言葉」とみなされるため、「貴行」を使うのが一般的です。一方、チャットは会話に近い形式ですが、文字でのやり取りなので「書き言葉」と捉えることもできます。企業の採用担当者とリアルタイムで会話するようなチャットであれば「御行」が自然かもしれませんが、定型的な問い合わせフォームのような場合は「貴行」を使う方が無難かもしれません。迷った場合は「貴行」を使うか、文脈によって判断するのが良いでしょう。

なぜ話し言葉と書き言葉で使い分けるのですか?

主な理由は二つあります。一つは、話し言葉で「きこう(貴行)」と言うと、「紀行」「奇行」などの同音異義語と聞き間違える可能性があるため、聞き取りやすい「おんこう(御行)」を使うようになったという、相手への配慮です。もう一つは、日本語の敬語の慣習として、書き言葉(文書)では「貴」を用いるのがよりかしこまった表現、話し言葉(口頭)では「御」を用いるのが一般的、という使い分けが定着しているためです。

「貴行」と「御行」の違いのまとめ

「貴行」と「御行」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本ルール:書き言葉(メール、書類)では「貴行」、話し言葉(面接、電話)では「御行」を使う。
  2. 対象:相手が銀行(信用金庫、農協なども含む)の場合に使う敬称。
  3. 使い分けの理由:話し言葉での聞き間違いを防ぐため(同音異義語回避)と、書き言葉・話し言葉における敬語の慣習のため。
  4. 「貴社」「御社」との関係:「会社」に対する敬称。「貴社」が書き言葉、「御社」が話し言葉。銀行に対しても使えるが、「貴行」「御行」の方がより望ましい。

この使い分けは、ビジネスマナーの基本中の基本です。

特に就職活動など、相手に与える第一印象が重要な場面では、正しく使い分けることが大切です。自信を持って使い分けられるよう、普段から意識してみてくださいね。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、敬語関連の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。