「記載」と「記入」、どちらも書類に何かを書くときに使う言葉ですが、その使い分けに迷った経験はありませんか?
基本を言うと、「記載」はすでにある文章や書類に情報を付け加えること、「記入」は用紙の空欄を埋めることを指します。
この記事を読めば、それぞれの言葉が持つ核心的なイメージから、ビジネスシーンでの具体的な使い分けまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。
それでは、まずは二つの言葉の最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「記載」と「記入」の最も重要な違い
基本的には「記載」は既存の書類に情報を書き加えること、「記入」は用意された空欄を埋めることと覚えておけば間違いありません。「記載」は内容の正確性が、「記入」は形式通りに埋めることが重視される傾向にあります。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
項目 | 記載 | 記入 |
---|---|---|
中心的な意味 | 書類や書物などに、ある事柄を書きしるすこと。 | 用紙などの定められた空欄に、必要事項を書き入れること。 |
ニュアンス | 客観的な事実や情報を、既存の媒体に「載せる」イメージ。 | 定められた枠やスペースに、情報を「入れる」イメージ。 |
対象となるもの | 報告書、議事録、Webサイト、契約書、書籍など。 | 申込書、アンケート、履歴書、エントリーシート、解答用紙など。 |
英語表現 | state / list / describe / mention | fill in / fill out |
一番大切なポイントは、情報を「どこに」書くかをイメージすることですね。
すでにある文章の続きや、特定の場所に情報を「載せる」のが「記載」。用意された空欄に情報を「入れる」のが「記入」と考えると、とても分かりやすいでしょう。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「記載」の「載」は、車に荷物を載せる様子から「のせる」という意味を持ちます。一方、「記入」の「入」は、中へはいる形から「いれる」という意味を持ちます。漢字のイメージがそのまま言葉の意味につながっています。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がよくわかりますよ。
「記載」の成り立ち:「載」が表す、すでにあるものに載せるイメージ
「記載」の「載」という漢字は、「車」へんと、音を表す「栽」から成り立っています。
これは、荷物を車に「のせる」様子を表しており、そこから「しるす」「のせる」といった意味が生まれました。
つまり、「記載」とはすでにある土台(書類やウェブサイトなど)の上に、新しい情報を載せるというイメージを持つと、その核心を掴みやすいでしょう。
報告書に事実を書き加えたり、議事録に発言内容を記録したりするのは、まさに情報を「載せる」行為ですよね。
「記入」の成り立ち:「入」が表す、空のスペースに入れるイメージ
一方、「記入」の「入」という漢字は、物が中へ「はいる」形をかたどった象形文字です。
非常に直接的で分かりやすいですよね。
このことから、「記入」には用意された空のスペース(空欄)に、外から情報を持ってきて入れるという核心的なイメージがあります。
申込書の氏名欄や、アンケートの選択肢にチェックを入れる行為は、まさに空欄を埋めて「入れる」作業と言えるでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネス文書では、報告書に「必要事項を記載してください」、申込書に「氏名をご記入ください」のように使い分けます。対象が「書類全体」か「特定の空欄」かを意識するのがポイントです。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
客観的な事実や情報の伝達が重要なビジネスシーンでは、この二つの言葉は明確に使い分けられます。
【OK例文:記載】
- 報告書の末尾に、参考資料の出所を記載してください。
- 契約内容の詳細については、契約書の第5条に記載されています。
- 議事録には、決定事項だけでなく議論の経緯も記載しておきましょう。
【OK例文:記入】
- こちらの申込用紙に、お名前とご住所をご記入ください。
- アンケートの該当する項目に、チェックを記入していただけますか。
- 経費精算書に、日付と金額を漏れなく記入するように。
このように、文書全体や特定の項目に情報を加えるのが「記載」、定型のフォーマットを埋めるのが「記入」と覚えておけば、まず間違いありません。
日常会話での使い分け
日常会話でも、このルールは同じように当てはまります。
【OK例文:記載】
- 商品のパッケージに記載されている賞味期限を確認する。
- 保証書には、購入日と店名が記載されている必要があります。
- ウェブサイトの会社概要に、資本金が記載されていなかった。
【OK例文:記入】
- 図書館の利用者カード申込書に、必要事項を記入した。
- 年末調整の書類に、扶養家族の情報を記入する。
- ホテルのチェックイン時に、宿帳へ氏名を記入する。
これはNG!間違えやすい使い方
意味が逆になってしまったり、不自然に聞こえたりする例を見てみましょう。
- 【NG】申込用紙に必要事項を記載してください。
→申込書は空欄を埋めるものなので「記入」が適切です。「記載」だと、申込書の余白に何か書き加えるような不自然な印象を与えます。
- 【NG】報告書に氏名を記入してください。
→報告書は通常、決まったフォーマットの空欄を埋めるものではありません。どこに書くか指定がない場合は「氏名を記載してください」や「署名してください」が自然です。
「書類のどこに書くか」を意識すれば、こうした間違いは防げますね。
【応用編】似ている言葉「記述」との違いは?
「記述」は、筋道を立てて文章として書き表すことに重点が置かれます。「記載」や「記入」が単なる事実や情報を書き記すのに対し、「記述」はより詳細で説明的なニュアンスを持ちます。
「記載」や「記入」と似た言葉に「記述(きじゅつ)」があります。この違いも押さえておくと、表現の幅が広がりますよ。
「記述」は、物事の様子や自分の考えなどを、筋道を立てて文章として書き表すことを指します。
例えば、実験の結果を「記述」する、事件の状況を「記述」する、といった使い方をしますね。
「記載」「記入」が比較的短い情報をピンポイントで書き記すのに対し、「記述」はある程度のまとまりを持った文章を書くというニュアンスの違いがあります。
言葉 | 中心的な意味 | 例文 |
---|---|---|
記載 | 情報を書き「載せる」 | 報告書に結果を記載する。 |
記入 | 空欄に書き「入れる」 | 解答用紙に答えを記入する。 |
記述 | 筋道を立てて「書きしるす」 | レポートに考察を記述する。 |
僕が「記入」と「記載」を混同して後輩を混乱させた話
僕も昔、この二つの言葉の使い分けで、少し恥ずかしい思いをしたことがあるんです。
社会人3年目になり、後輩の指導を任されるようになった頃の話です。ある日、後輩に取引先へ提出する重要な書類の作成を依頼しました。
その書類は、基本情報などを埋める定型的なフォーマット部分と、状況を報告する自由記述の欄がありました。僕は後輩に「この書類の必要項目を、漏れなく記載しておいて」と指示を出したのです。
自分では「書類全体をちゃんと書いておいて」というつもりでした。しかし、後輩は真面目な性格だったため、「記載」という言葉から「何か特別な情報を付け加えるのだろうか?」と考えてしまったようです。
しばらくして「先輩、『記載』というのは、どの情報をどこに書けばいいのでしょうか…?フォーマットの部分は『記入』でよろしいですか?」と恐る恐る質問に来ました。
その時、僕はハッとしました。自分の指示が曖昧で、言葉の使い分けが不正確だったせいで、後輩を無駄に悩ませてしまったのです。
「ごめん!僕の言い方が悪かった。フォーマット部分は『記入』して、報告欄に状況を『記載』してほしい、という意味だったんだ」と平謝りしました。
この経験から、特に指示を出す立場にある人間は、言葉を正確に選ばないと相手を混乱させ、仕事の効率を下げてしまうのだと痛感しました。それ以来、書類作成を依頼するときは「この欄はご記入ください」「こちらのスペースに詳細をご記載ください」と、より具体的に伝えるように心がけています。
「記載」と「記入」に関するよくある質問
結局、「記載」と「記入」は、どちらを使えばいいですか?
対象が申込書やアンケートのような「空欄を埋める」ものであれば「記入」を、報告書や議事録のように「情報を書き加える」ものであれば「記載」を使うのが基本です。迷ったら、情報を「入れる」のか「載せる」のかをイメージしてみてください。
履歴書は「記載」と「記入」のどちらですか?
履歴書は、氏名や学歴などを指定された欄に書き入れる形式なので、「記入」がより適切です。ただし、「職務経歴欄に実績を記載する」のように、特定の項目について言う場合は「記載」を使うこともあります。
手書きでもパソコンでの入力でも、使い分けは同じですか?
はい、同じです。手書きかデジタル入力かという手段の違いではなく、あくまで「空欄を埋める」行為なのか、「情報を書き加える」行為なのかという目的の違いで使い分けます。
「記載」と「記入」の違いのまとめ
「記載」と「記入」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 「記載」は載せること:すでにある書類や書物などに、情報を書き加える(載せる)行為。
- 「記入」は入れること:用意された用紙などの空欄に、情報を書き入れる行為。
- 迷ったら漢字のイメージで判断:「載」は車に載せる、「入」は中に入れるイメージ。
この二つの言葉は、ビジネス文書を作成する上で基本となるものです。
言葉の背景にある漢字のイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、感覚的に使い分けられるようになります。
これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。