「交誼」と「厚誼」の違いがわかる!敬意が伝わる言葉の選び方

「交誼(こうぎ)」と「厚誼(こうぎ)」、どちらも「付き合い」を意味する言葉ですが、そのニュアンスには違いがあるのをご存知でしたか?

特にビジネス文書や改まった場面での挨拶で、どちらを使うべきか迷うことがあるかもしれませんね。

実はこの二つの言葉、相手との関係性の深さや敬意の度合いによって使い分けるのがポイントなんです。

この記事を読めば、「交誼」と「厚誼」の基本的な意味から、具体的な使い分け、さらには使う上での注意点までスッキリ理解できます。もう言葉選びで迷うことはありませんよ。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「交誼」と「厚誼」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、一般的な付き合いなら「交誼」、特に深い付き合いや目上の方への敬意を示すなら「厚誼」と覚えるのが簡単です。「厚誼」は相手への感謝や敬意を込めて使う、より丁寧な表現です。

まず、結論からお伝えしますね。

「交誼」と「厚誼」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けは大丈夫でしょう。

項目 交誼 厚誼
中心的な意味 人と人との交わり、付き合い。
(一般的な人間関係)
情愛のこもった親しい付き合い。
(特に深い、手厚い関係)
ニュアンス 対等な関係での一般的な「交際」や「付き合い」。 敬意や感謝の気持ちを込めた、深い「ご交誼」。「厚い」という字が示す通り、手厚く、心のこもった関係性。
使う場面 比較的フラットな関係性での付き合いを述べるとき。「交誼を結ぶ」など。 ビジネス文書、挨拶状、スピーチなど、改まった場面で、相手(特に目上の方)への敬意や感謝を示すとき。「平素は格別のご厚誼を賜り」など。
敬意の度合い 普通 高い

一番大切なポイントは、「厚誼」は相手への敬意を込めた丁寧な言葉であるということですね。

ビジネスシーンなど、相手に敬意を示すべき場面では「厚誼」を使うのが一般的です。「交誼」も間違いではありませんが、少し軽い印象を与えてしまう可能性があります。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「交誼」の「交」は“まじわる”、「誼」は“よしみ(親しい付き合い)”を意味します。一方、「厚誼」の「厚」は“あつい・手厚い”という意味。漢字の意味から、「交誼」は一般的な付き合い、「厚誼」はより深い、心のこもった付き合いという違いがイメージできますね。

なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、それぞれの漢字が持つ意味を紐解くと、より深く理解できますよ。

「交誼」の成り立ち:「交」わる「誼(よしみ)」のイメージ

「交誼」の「交」は、「まじわる」「行き来する」といった意味を持つ漢字です。「交流」「交通」などの言葉からも、人と人、物と物が行き交う様子がイメージできますね。

そして「誼」は、「よしみ」と読み、「親しい付き合い」「情愛」を意味します。「友誼(ゆうぎ)」という言葉を思い浮かべると分かりやすいかもしれません。

つまり、「交誼」とは、人々が互いに行き交い、親しく付き合うこと、その関係性そのものを指す言葉なんですね。比較的フラットな人間関係における「付き合い」という基本的な意味合いが強いです。

「厚誼」の成り立ち:「厚」い「誼(よしみ)」のイメージ

一方、「厚誼」の「厚」は、「あつい」ですよね。この漢字には、物理的な厚みだけでなく、「手厚い」「心がこもっている」「深い」といった意味合いが含まれています。「濃厚」「温厚」などの言葉からも、その深さや温かみが感じられます。

この「厚」が「誼(よしみ)」につくことで、「厚誼」は単なる付き合いではなく、非常に手厚い、心のこもった深い親しい付き合いを意味するようになるのです。

だからこそ、相手への深い感謝や敬意を表現する際に用いられるわけですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ビジネス文書の定型句では「平素は格別のご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます」のように「厚誼」が使われます。これは相手への敬意を示すためです。「交誼」は「彼とは長年の交誼がある」のように、個人的な関係性を述べる際に使われることがあります。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスシーンと日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

ビジネス文書やスピーチでは、相手への敬意を示すことが重要なので、「厚誼」を使う場面が多いですね。

【OK例文:交誼】

  • 貴社と末永く交誼を結んでいきたいと考えております。
  • 異業種の方々との交誼を深める良い機会となりました。
  • 彼とは学生時代からの交誼があり、気心の知れた仲です。

【OK例文:厚誼】

  • 平素は格別のご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます。(定型的な挨拶文)
  • 在職中は、公私にわたり温かいご厚誼を賜りましたこと、心より感謝申し上げます。(退職の挨拶など)
  • 今後とも変わらぬご指導ご鞭撻ならびにご厚誼を賜りますようお願い申し上げます。(結びの言葉)
  • 〇〇様には、格別のご厚誼にあずかり、誠にありがとうございました。(故人への弔辞など)

このように、「厚誼」は多くの場合、「賜る」「いただく」「あずかる」といった謙譲語と共に使われ、相手からの手厚い配慮や親交に対する感謝の気持ちを表します。「ご厚誼」という形で使われることがほとんどですね。

「交誼」もビジネスシーンで使えないわけではありませんが、どちらかというと個人的な関係性や、対等な立場での付き合いを表す際に使われることが多いでしょう。

日常会話での使い分け

正直なところ、日常会話で「交誼」や「厚誼」を使うことは、ほとんどありませんね。少し硬い表現なので、普段の会話では「付き合い」「親交」「仲良くしていただいて」といった、より一般的な言葉を使う方が自然です。

【言い換え例:交誼】

  • 彼とは長年の付き合いがある。
  • 地域の方々との交流を大切にしたい。

【言い換え例:厚誼】

  • いつもお世話になっております。(感謝の気持ち)
  • 〇〇さんには、いつも良くしていただいています。(手厚い配慮への感謝)
  • これからも仲良くしてください

あえて使うとすれば、改まった手紙や、少し格式張った場でのスピーチなどでしょうか。その場合でも、ビジネスシーンと同様の使い分けになります。

これはNG!間違えやすい使い方

意味合いを取り違えると、少し不自然に聞こえる可能性があります。

  • 【NG】友人の〇〇君とは、小学校以来のご厚誼です。
  • 【OK】友人の〇〇君とは、小学校以来の交誼(付き合い)です。

友人との対等な関係性を表すのに「ご厚誼」を使うのは、少し大げさで不自然ですね。たとえ親しい友人であっても、通常は「付き合い」や「友情」といった言葉を使います。

  • 【NG】平素は格別なる交誼を賜り、誠にありがとうございます。
  • 【OK】平素は格別なるご厚誼を賜り、誠にありがとうございます。

これはビジネス文書の定型句ですが、相手への敬意と感謝を示す場面なので、「厚誼」を使うのが適切です。「交誼」を使うと、敬意が足りない、あるいは言葉を知らないという印象を与えかねませんね。

「交誼」と「厚誼」の違いを敬語表現の観点から解説

【要点】

「厚誼」は、相手からの「手厚いよしみ」を敬って言う言葉であり、それ自体が敬語表現としての性質を持ちます。「ご厚誼を賜る」のように謙譲語と組み合わせて使うことで、相手への深い敬意と感謝を示すことができます。「交誼」にはそのような敬語のニュアンスは通常含まれません。

「交誼」と「厚誼」の使い分けを考える上で、敬語の観点は非常に重要です。

結論から言うと、「厚誼」は敬意を込めて使う言葉であり、敬語表現の一部として機能することが多いのに対し、「交誼」には通常そのような敬語のニュアンスは含まれません。

「厚誼」は、「厚い(手厚い、心のこもった)」+「誼(よしみ、親しい付き合い)」という成り立ちからもわかるように、相手からの配慮や親交に対する深い感謝や敬意を示す言葉です。そのため、「ご厚誼」という形で尊敬の接頭語「ご」がつくことが多く、さらに「賜る」「いただく」といった謙譲語を伴って、「ご厚誼を賜り(いただき)」のように使われます。

これは、「相手からの手厚いよしみ(=厚誼)を、ありがたくいただく」というへりくだった表現であり、相手を高める敬語の使い方ですね。

例えば、「平素は格別のご厚誼を賜り、厚く御礼申し上げます」という定型句は、「日頃から、格別に手厚いお付き合いを(あなた様から私どもへ)いただきまして、深く感謝申し上げます」という意味合いになります。ここに「交誼」を使うと、単に「日頃から付き合っていただきありがとうございます」となり、敬意の度合いが大きく下がってしまいます。

一方、「交誼」は基本的に対等な関係での付き合いを指すため、それ自体に強い敬意のニュアンスは含まれません。「貴社との交誼」のように使うことはありますが、「ご交誼を賜り」のような敬語表現として使われることはまずありません。

したがって、目上の方や取引先など、敬意を示すべき相手に対して、これまでの関係性に感謝したり、今後の変わらぬ付き合いをお願いしたりする際には、「厚誼(ご厚誼)」を用いるのが適切と言えるでしょう。

この敬語のニュアンスの違いを理解することが、適切な使い分けの鍵となりますね。

僕が挨拶状で「交誼」と「厚誼」を間違えてしまった体験談

僕も社会人になりたての頃、この「交誼」と「厚誼」の使い分けで、恥ずかしい失敗をした経験があるんです。

初めて担当したお客様への年末の挨拶状を作成していた時のこと。日頃の感謝を伝えようと、慣れないながらも丁寧な言葉を選んで文章を考えていました。

「今年一年、大変お世話になりました。来年も変わらぬ……」ここで、「付き合い」を丁寧な言葉で表現しようとして、辞書を引いたんです。そこで目にしたのが「交誼」と「厚誼」。どちらも「付き合い」という意味があることを知り、「よし、これを使おう!」と思いました。

しかし、当時の僕はそれぞれのニュアンスの違いを深く理解していませんでした。「交誼」の方が字面がシンプルで使いやすそう、くらいの軽い気持ちで、「来年も変わらぬご交誼のほど、よろしくお願い申し上げます」と書いてしまったのです。

自信満々で書き上げた挨拶状を上司にチェックしてもらったところ、すぐに赤ペンが入りました。

「ここの『ご交誼』だけど、お客様への感謝と敬意を示すなら『ご厚誼』の方が適切だよ。『交誼』だと、なんだか対等な友達へのメッセージみたいに聞こえちゃうかもしれないからね。特に『賜る』とか『いただく』が付く場合は、『厚誼』を使うのが一般的だよ。」

上司は優しく教えてくれましたが、僕は顔から火が出るほど恥ずかしかったのを覚えています。お客様に対して、まるで友達に話すかのような言葉遣いをしてしまったなんて……。言葉一つで、相手に与える印象が全く変わってしまうことを痛感しました。

この経験から、言葉の意味だけでなく、その言葉が持つニュアンスや敬意の度合い、そして使われる場面をしっかり理解することの大切さを学びました。それ以来、特に改まった文書を作成する際には、言葉の背景まで意識して選ぶように心がけています。

「交誼」と「厚誼」に関するよくある質問

目上の方への手紙ではどちらを使うべきですか?

はい、目上の方への手紙で、日頃の親しいお付き合いへの感謝や、今後の変わらぬ関係をお願いする場合には、「厚誼」または「ご厚誼」を使うのが適切です。「平素より格別のご厚誼を賜り、誠にありがとうございます」「今後ともご厚誼のほどお願い申し上げます」のように使うことで、相手への敬意を効果的に示すことができますね。

年賀状の挨拶で使うのはどちらが適切ですか?

年賀状も改まった挨拶状ですので、取引先や目上の方に対しては「昨年中は格別のご厚誼を賜り厚く御礼申し上げます」「本年も変わらぬご厚誼のほどお願い申し上げます」のように「厚誼」を使うのが一般的で、より丁寧な印象になります。親しい友人などであれば「昨年はいろいろとお世話になりました」「本年もどうぞよろしく」といった表現で十分でしょう。

「厚誼」を使うときの注意点はありますか?

「厚誼」は敬意の高い言葉なので、自分たちの側からの付き合いについて述べる際には使わないのが原則です。例えば、「弊社からも最大限の厚誼を尽くします」のような使い方はしません。あくまで相手からの手厚い付き合いに対して感謝したり、それを願ったりする場合に使う言葉ですね。また、日常会話で使うと少し堅苦しく聞こえる場合があるので、場面に応じて「お付き合い」「ご支援」などの言葉に言い換えることも考えましょう。

「交誼」と「厚誼」の違いのまとめ

「交誼」と「厚誼」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は関係性の深さと敬意:一般的な付き合いは「交誼」、深い付き合いや敬意を示す場合は「厚誼」。
  2. 「厚誼」は敬語表現:「ご厚誼を賜る」のように使い、相手への感謝と敬意を強く示す。ビジネス文書や挨拶状の定型句でよく使われる。
  3. 漢字のイメージが鍵:「交」は“まじわる”、「厚」は“手厚い・深い”イメージ。
  4. 日常会話ではあまり使わない:「付き合い」「お世話になる」などで言い換えるのが自然。

特にビジネスシーンでは、相手への敬意を示す言葉遣いがとても大切ですよね。「厚誼」を適切に使うことで、相手との良好な関係を築く一助となるはずです。

これから自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、敬語関連の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。