「公示」と「告示」の違いとは?意味や使い方をわかりやすく解説

「公示」と「告示」、どちらも「公に知らせる」という意味で非常によく似ていますが、その使い分けに迷った経験はありませんか?

実はこの2つの言葉、知らせる対象が「国民全体」か「特定の範囲」かという明確な違いがあるんです。

この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的な意味から、法的根拠に基づいた具体的な使い分け、さらには似ている言葉との違いまでスッキリと理解できます。これでもう、公的な文書を作成する際に言葉選びで手が止まることはありませんね。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「公示」と「告示」の最も重要な違い

【要点】

基本的には知らせる対象が「国民全体」に及ぶ国家的・全国的な重要事項なら「公示」、対象が「特定の人や地域」に限られるなら「告示」と覚えるのが簡単です。この2つの言葉は法令によって使い分けが定められています。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 公示 告示
中心的な意味 国が、法令に基づき国民全体に知らせること 国や地方公共団体が、法令に基づき管轄下の特定の人や地域に知らせること
対象 全国民 特定の地域の住民、関係者など
根拠法の例 日本国憲法、公職選挙法 地方自治法、都市計画法など多数
使われる場面の例 衆議院・参議院議員選挙、憲法改正の国民投票 地方選挙、都市計画決定、地価の公表、行政処分
キーワード 国民全体、国家的、全国的 特定の範囲、地域的、管轄内

一番大切なポイントは、言葉が使われる文脈の「スケール(範囲)」を意識することですね。

国全体に関わるスケールの大きな話が「公示」、それよりも範囲が限定される行政のお知らせが「告示」とイメージすると、分かりやすいのではないでしょうか。

なぜ違う?言葉の定義と法的根拠からイメージを掴む

【要点】

「公示」は憲法や公職選挙法を根拠とし、国政選挙など国民全体に関わる重要事項で使われます。一方、「告示」は地方自治法など様々な法令を根拠とし、国や地方公共団体が管轄内でのお知らせに用いる、より広い意味を持つ言葉です。

なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、それぞれの定義と法的根拠を紐解くと、その理由がよくわかりますよ。

「公示」とは?―国政選挙などで国民全体に知らせること

「公示」とは、国家の機関が、法令の規定に基づいて、一定の事項を広く一般国民に知らせる行為を指します。

ポイントは、対象が「国民全体」であるという点です。そのため、使われる場面は非常に限定的で、国家の運営に関わる特に重要な事柄に限られます。

例えば、以下のような場面で使われます。

  • 衆議院議員総選挙・参議院議員通常選挙の期日(公職選挙法)
  • 憲法改正の国民投票の期日(日本国憲法の改正手続に関する法律)
  • 皇室典範に定められた皇位継承など

このように、「公示」は日本国憲法や公職選挙法といった、国の根幹に関わる法律に基づいて行われる、非常に重い意味を持つ言葉なんですね。

「告示」とは?―特定の地域や範囲に知らせること

一方、「告示」とは、国や地方公共団体が、その権限に基づいて、決定した事項を一般の人々や関係者に公式に知らせる行為です。

「公示」との決定的な違いは、その対象が必ずしも国民全体ではないという点です。ある特定の地域、特定の団体、あるいは特定の条件に当てはまる人々など、管轄内の範囲に限定される場合に使われます。

根拠となる法律も地方自治法や都市計画法、道路交通法など多岐にわたり、非常に広い場面で使われるのが特徴です。

  • 地方選挙(都道府県知事選挙、市町村長選挙など)の期日
  • 都市計画区域の決定
  • 地価公示法に基づく標準地の価格(地価公示)
  • 特定の医薬品の指定

つまり、「告示」は行政機関が行う「お知らせ」全般を指す、より汎用的な言葉と考えるとイメージしやすいでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

国の選挙である衆院選・参院選は「公示」、地方の選挙である知事選・市長選は「告示」と使い分けます。一般的なビジネスシーンでこれらの言葉を使うことは稀で、「告知」や「通知」といった言葉を選ぶのが無難です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

特に重要な公職選挙法での使い分けから見ていきましょう。

公職選挙法における使い分け

選挙のニュースを見ていると、「公示された」と「告示された」という言葉を耳にしますが、これも選挙の種類によって明確に使い分けられています。

【OK例文:公示】

  • 衆議院議員総選挙の期日が公示された。
  • 来たる参議院議員通常選挙は、6月22日に公示される予定だ。

【OK例文:告示】

  • 東京都知事選挙が本日告示され、選挙戦が始まった。
  • 統一地方選挙として、道府県議会議員選挙が告示された。

このように、国会議員を選ぶ国政選挙は「公示」、知事や市町村長、地方議員を選ぶ地方選挙は「告示」と、はっきり分かれているんですね。これは選挙を管轄するのが、国政選挙は天皇の詔書に基づき内閣が、地方選挙は地方公共団体の選挙管理委員会と、主体が異なるためです。

行政手続きなどでの使われ方

選挙以外でも、行政が何かを知らせる際に使われます。

【OK例文:公示】

  • 国土交通省が、地価公示法に基づき全国の標準地の価格を公示した。

【OK例文:告示】

  • 市役所の掲示板に、新しい都市計画の決定が告示されている。
  • 厚生労働省は、新たに保険適用となる医薬品を告示した。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることが多いですが、厳密には正しくない使い方を見てみましょう。

  • 【NG】町内会の夏祭り開催を公示する。
  • 【OK】町内会の夏祭り開催を告知する。(または回覧する)

夏祭りの対象は国民全体ではないので、「公示」は明らかにスケールが大きすぎますね。「告示」も行政行為なので、この場合はより一般的な「告知」などが適切です。

  • 【NG】社内の人事異動を告示する。
  • 【OK】社内の人事異動を通知する。(または発表する)

会社は行政機関ではないため、「告示」は使えません。この場合は「通知」や「内示」といった言葉が使われますね。

【応用編】似ている言葉「公告」との違いは?

【要点】

「公告(こうこく)」も広く知らせる意味ですが、官公庁だけでなく、株式会社などの民間企業も法令上の義務として行う点が「公示」「告示」との大きな違いです。決算公告や合併公告などがこれにあたります。

「公示」「告示」と似た言葉に「公告(こうこく)」があります。これも押さえておくと、言葉の理解がさらに深まりますよ。

「公告」も「公に広く告げ知らせる」という点では同じです。

しかし、決定的な違いは、その主体が官公庁に限らないという点です。

株式会社などが、会社法などの法令に基づいて、株主や債権者といった利害関係者に向けて特定の情報を開示する義務があります。この手続きが「公告」です。

  • 株式会社の決算公告(貸借対照表の開示)
  • 会社の合併や分割に関する公告
  • 裁判所の破産手続き開始の公告

このように、「公示」と「告示」が主に行政機関の行為であるのに対し、「公告」は民間企業も主体となる、より法律手続き的なニュアンスの強い言葉と言えるでしょう。

「公示」と「告示」の違いを公的な視点から解説

【要点】

法令では「公示」と「告示」は明確に区別されています。例えば公職選挙法では、衆議院議員総選挙(第四十一条)では「公示」が、地方公共団体の長の選挙(第百三条)では「告示」が用いられると、条文で厳密に定められています。

実は、この「公示」と「告示」の使い分けは、感覚的なものではなく、法律によって厳密に定められているんです。

少し専門的な話になりますが、法律の条文を見てみると、その違いは一目瞭然です。

例えば、選挙の根拠法である公職選挙法を見てみましょう。

衆議院議員の総選挙については、第四十一条で「総選挙の期日は、少なくとも十二日前に公示しなければならない」と定められています。

一方で、地方公共団体の長の選挙については、第百三条で「選挙の期日は、少なくとも十二日前に告示しなければならない」と規定されています。

このように、どの場面でどちらの言葉を使うかは、それぞれの法律によって明確に決められているんですね。だからこそ、特に公的な文書では、この使い分けを正しく理解しておくことが非常に重要になるわけです。

興味のある方は、e-Gov法令検索などで実際の条文を確認してみるのも、理解を深める良い方法ですよ。

僕が「告示」と書いて赤面した新人時代の体験談

僕も新人時代、この「公示」と「告示」の使い分けで、恥ずかしい思いをしたことがあるんです。

行政と連携するプロジェクトを担当していた頃、市が主催する大規模な市民向けイベントのプレスリリース案を作成していました。少しでもデキる新人だと思われたい一心で、公的な響きを持つ言葉を使おうと考えたのです。

「市のイベントだから、これは行政行為だ。対象は市民だから、特定範囲。つまり『告示』が正しいはずだ!」

そう思い込み、「イベントの開催をここに告示します」と自信満々に書き上げました。

意気揚々と提出した僕に、上司は静かに言いました。

「気持ちはわかるけど、『告示』は法令に基づいて特定の事項を知らせる、かなりお堅い言葉なんだ。僕らがプレスリリースで使うには少し重すぎるかな。ここはシンプルに『開催をお知らせします』とか『発表します』で十分伝わるよ」

上司は優しく指摘してくれましたが、言葉の持つ「重み」や「使われるべき文脈」を全く意識できていなかった自分が恥ずかしく、顔がカッと熱くなったのを今でも覚えています。

この経験から、言葉を使うときは、その言葉が持つ背景や法的な根拠までイメージすることが何よりも大切だと学びました。それ以来、特に公的な言葉に触れる際は、その意味合いを深く考えるクセがついたように思います。

「公示」と「告示」に関するよくある質問

衆議院解散は「公示」「告示」どっちですか?

衆議院の解散そのものは「解散の詔書」によって行われ、「公示」や「告示」は使いません。その解散を受けて行われる総選挙の投票日などを知らせることが「公示」にあたります。

会社の設立を知らせるのは「公示」「告示」どちらを使いますか?

どちらも使いません。会社の設立は法務局への登記によって成立します。その情報を広く知らせる場合は、会社法で定められた方法(官報や日刊新聞紙、電子公告)で「公告」することになります。

「公示価格」と「告示価格」は同じものですか?

一般的に「公示価格」は地価公示法に基づく「地価公示」の価格を指し、「告示価格」という言葉は法令上は存在しません。文脈によっては、何らかの行政決定を知らせる「告示」の中で示された価格を指す場合があるかもしれませんが、土地の価格としては「公示価格」が正式です。

「公示」と「告示」の違いのまとめ

「公示」と「告示」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は対象範囲で使い分け:広く国民全体に関わることは「公示」、特定の地域や人々に関することは「告示」。
  2. 法的根拠が異なる:「公示」は憲法や公職選挙法など国の根幹に関わる法律、「告示」は地方自治法など、より広範な行政手続きに関する法律に基づいている。
  3. 選挙での使い分けが代表例国政選挙は「公示」地方選挙は「告示」と明確に区別されている。

どちらも行政が使う堅い言葉ですが、そのスケールの違いをイメージすると、ニュースや公的な文書の理解がより一層深まるはずです。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。