「職員」と「社員」、どちらも組織で働く人を指す言葉ですが、その違いを正確に説明できますか?
特にビジネスシーンでは、相手の所属によって呼び方を使い分ける必要があり、間違えると失礼にあたる可能性も…。
実はこの二つの言葉、主に所属する組織の種類によって使い分けられます。
この記事を読めば、「職員」と「社員」の明確な違いから、具体的な使い分け、さらには「従業員」との違いまでスッキリ理解でき、もう迷うことはありません。自信を持って使い分けられるようになりますよ。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「職員」と「社員」の最も重要な違い
基本的には、公的な組織や非営利団体などで働く人は「職員」、営利目的の会社で働く人は「社員」と使い分けるのが一般的です。ただし、組織によっては独自の呼称を用いる場合もあります。
まず、結論からお伝えしますね。
「職員」と「社員」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
項目 | 職員 | 社員 |
---|---|---|
主な所属組織 | 国・地方公共団体(公務員)、学校、病院、NPO法人、各種団体など(非営利組織が多い) | 株式会社、合同会社などの営利企業(会社) |
中心的な意味 | 特定の「職務」に従事する人 | 「会社」の一員として雇用されている人 |
雇用形態 | 正規・非正規を問わないことが多い(例:常勤職員、非常勤職員) | 一般的に正規雇用者を指すが、契約社員などを含む場合もある |
法律上の定義 | 国家公務員法、地方公務員法などで規定される場合がある | 会社法上の「社員」は出資者を指すが、一般的には被雇用者を指す |
ニュアンス | 公的な役割、専門的な職務に従事するイメージ | 企業活動に従事し、利益追求に貢献するイメージ |
一番大きな違いは、やはり所属している組織の種類ですね。
役所や学校、病院などで働いている方は「職員」、一般的な会社(株式会社など)で働いている方は「社員」と呼ぶのが基本、と覚えておくと分かりやすいでしょう。
ただし、これはあくまで一般的な傾向です。組織によっては独自の呼称を使っている場合もあるので、迷ったときは相手の組織での呼ばれ方を確認するのが確実ですね。
なぜ違う?言葉の意味と由来からイメージを掴む
「職員」の「職」は“つとめ・やくめ”、「社員」の「社」は“もうけを目的とする人の集まり”を意味します。漢字の意味から、「職員」は役割や任務、「社員」は会社組織への所属というニュアンスの違いが生まれます。
なぜ所属する組織によって呼び方が変わるのでしょうか。それぞれの言葉の意味や漢字の成り立ちを見ていくと、その背景にあるイメージが見えてきますよ。
「職員」が指す範囲とは?
「職員」の「職」という漢字には、「つとめ」「やくめ」「担当する仕事」といった意味があります。「員」は「構成メンバー」を意味しますね。
つまり、「職員」とは、ある特定の「職務」や「役割」を担うために集まった組織の構成員、というニュアンスが強い言葉なのです。
国や地方公共団体の仕事(=公務)、学校での教育、病院での医療といった、社会的な役割や専門性が求められる職務に従事する人を指すことが多いのは、この「職」の持つ意味合いから来ていると考えられますね。
そのため、利益を追求する企業よりも、公的な機関や非営利団体で使われることが多いわけです。
「社員」が指す範囲とは?
一方、「社員」の「社」という漢字は、元々は土地の神を祀る場所や結社を意味しましたが、近代以降、「会社」のように「もうけを目的とする人の集まり」を指すようになりました。「員」は職員と同じく「構成メンバー」です。
このことから、「社員」とは、「会社」という営利組織に所属し、その一員として活動する人を指すのが一般的です。
株式会社や合同会社など、利益を上げることを目的とする企業で働く人々を「社員」と呼ぶのは、この「社」が持つ意味合いに基づいているんですね。
ちなみに、会社法という法律の上では、「社員」は会社の出資者(株式会社の場合は株主)を指す特別な意味も持ちますが、日常会話やビジネスシーンで「社員」という場合は、通常、その会社に雇用されて働いている人を指します。
具体的な例文で使い方をマスターする
市役所で働く人は「職員」、民間企業で働く人は「社員」と呼びます。非営利団体や学校のスタッフも「職員」と呼ばれることが多いです。雇用形態(正規・非正規)に関わらず使われる場合があります。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
どんな場面で「職員」と「社員」を使い分けるのか、具体的な例を見ていきましょう。
「職員」を使う場面(OK例文)
公的な機関や非営利団体、特定の専門職集団などで使われることが多いですね。
- 市役所の職員に手続きについて質問した。
- 〇〇大学の事務職員として採用された。
- その病院には多くの医療職員が勤務している。
- NPO法人の職員がイベントの準備を進めている。
- 組合職員向けの研修会が開催された。
- 彼は国連職員として海外で活躍している。
- 博物館の学芸職員が展示の説明をしてくれた。
- 学校職員(教員や事務員など)の会議が開かれた。
- その団体の常勤職員と非常勤職員の比率は半々だ。
このように、「公務員」はもちろん、学校、病院、NPO、組合、国際機関など、様々な組織で「職員」という言葉が使われます。正規雇用か非正規雇用かを問わず使われることが多いのも特徴です。
「社員」を使う場面(OK例文)
こちらは、一般的な営利企業で働く人を指す場合に使います。
- 株式会社〇〇の正社員として働いています。
- 彼は大手商社の社員だ。
- 我が社の社員は皆、高いモチベーションを持っている。
- 新入社員向けの研修プログラムが始まった。
- 社員一同、お客様のご来店を心よりお待ちしております。
- 社員割引を利用して商品を購入した。
- 派遣社員や契約社員も会議に参加する。
一般的に「会社員」と呼ばれる人たちは、この「社員」にあたりますね。正社員を指すことが多いですが、文脈によっては契約社員や派遣社員などを含めて使うこともあります。
これはNG!間違えやすい使い方
所属組織を意識しないと、不自然な表現になってしまうことがあります。
- 【NG】市役所の社員に相談した。
- 【OK】市役所の職員に相談した。
市役所は地方公共団体であり、営利企業ではないため、「社員」ではなく「職員」が適切です。
- 【NG】株式会社〇〇の職員募集。
- 【OK】株式会社〇〇の社員募集。(または「従業員募集」)
株式会社は営利企業なので、そこで働く人を募集する場合は「社員」または後述する「従業員」を使うのが一般的です。「職員募集」だと、公的機関や非営利団体の募集のように聞こえてしまいますね。
相手の所属組織を意識して、適切な言葉を選ぶことが大切ですね。
【応用編】似ている言葉「従業員」との違いは?
「従業員」は、組織に雇用されて業務に従事する人全般を指す、より広い言葉です。「社員」が主に正規雇用者を指すのに対し、「従業員」は契約社員、パート、アルバイトなども含みます。「職員」を使う組織でも、雇用されている人全体を指して「従業員」と呼ぶことがあります。
「職員」「社員」と似た言葉に「従業員(じゅうぎょういん)」があります。これも使い分けに迷うことがありますよね。違いを押さえておきましょう。
「従業員」は、組織(会社や団体など)に雇用されて、その業務に従事している人全般を指す、より広い意味を持つ言葉です。
「社員」が、特に正社員を指すことが多いのに対して、「従業員」は正社員だけでなく、契約社員、嘱託社員、パートタイマー、アルバイトなど、様々な雇用形態の人を含むのが一般的です。
ですから、会社のスタッフ全体を指したい場合は「従業員」を使うのがより包括的と言えますね。
また、「職員」という呼称を使う組織(例:学校、病院など)でも、雇用されているスタッフ全体をまとめて指す際に「従業員」という言葉が使われることもあります(例:「当院の従業員数は〇〇名です」)。
まとめると、以下のようになります。
- 職員:主に公的機関や非営利団体などで特定の「職務」に就く人。
- 社員:主に営利企業(会社)に所属する人(特に正社員を指すことが多い)。
- 従業員:組織に雇用されて働く人全般(雇用形態を問わない、最も広い意味)。
誰を指したいのか、その範囲によって使い分けるのがポイントですね。
「職員」と「社員」の違いを法律・公的な視点から解説
法律上、「職員」は国家公務員法や地方公務員法などでその身分や職務が規定される場合があります。一方、「社員」は会社法では原則として「出資者」を意味しますが、労働基準法などでは「労働者」として扱われ、一般用語としての「社員(被雇用者)」とは区別が必要です。公用文では、誤解を避けるため文脈に応じた明確な表現が求められます。
「職員」と「社員」の使い分けは、法律や公的な文書においても意識されています。
まず「職員」ですが、特に公務員の場合、国家公務員法や地方公務員法によって、その身分、権利、義務、服務などが厳密に定められています。これらの法律に出てくる「職員」は、明確な法的定義を持つ言葉です。また、独立行政法人などの公的な性格を持つ組織でも、その設置法などで「役員及び職員」といった形で規定されることがあります。
一方、「社員」は少し注意が必要です。先ほども触れましたが、会社法という会社の基本的なルールを定めた法律では、「社員」は原則として会社の「出資者」を意味します。例えば、合同会社の出資者は「社員」と呼ばれます。これは、一般的な意味での「会社で働く人(=従業員)」とは全く異なる意味合いです。
ただし、労働基準法など労働者を保護するための法律では、会社に雇用されて働く人は「労働者」として定義され、その中に一般的に「社員」と呼ばれる人々も含まれます。
このように、法律の分野によって「社員」の意味が異なるため、文脈をよく確認する必要がありますね。
公用文を作成する際には、こうした法律上の定義も踏まえつつ、国民にとって誤解が生じないよう、より具体的で分かりやすい言葉を選ぶことが求められます。例えば、単に「社員」と書くのではなく、「従業員」「職員」「構成員」など、その組織や文脈に最も適した言葉を選ぶ配慮がなされることがあります。文化庁などが示す公用文作成の指針も、こうした分かりやすさを目指す考え方に基づいています。
僕が「職員」と「社員」の呼び方で混乱した新人時代の体験談
僕が社会人になりたての頃、まさにこの「職員」と「社員」の使い分けで混乱した経験があります。
大学時代の友人に、公務員になったA君と、民間のIT企業に就職したB君がいました。久しぶりに3人で集まって近況報告をしていた時のことです。
A君が「うちの職場の職員はさ~」と話し始めたのに対し、B君は「うちの会社の社員は結構…」と話していました。僕は当時、どちらも同じように「会社で働く人」くらいの認識しかなく、「なんで呼び方が違うんだろう?」と内心不思議に思っていました。
さらに混乱したのは、大学のキャリアセンターでアルバイトをしていた先輩の話を聞いた時です。その先輩は「大学の職員さんって、意外と忙しいんだよね」と言っていました。「大学って会社じゃないのに、なんで職員なんだろう?」と、ますます疑問が深まったのを覚えています。
その時は聞き流してしまったのですが、後になって自分で調べてみて、「あ、所属する組織の種類で呼び方が変わるんだ!」と納得しました。公務員のA君は「職員」、民間企業のB君は「社員」、そして大学という教育機関で働く先輩の周りの人も「職員」と呼ぶのが自然だったわけです。
この経験から、言葉の使い分けには、その背景にある社会的なルールや組織の性質が反映されていることを学びましたね。相手がどの組織に所属しているのかを意識するだけで、より適切な言葉遣いができるようになるんだな、と実感した出来事でした。
それ以来、名刺交換をした際などに、相手の組織がどのような性質を持つのか(公的機関か、営利企業か、非営利団体かなど)を少し意識するようになりました。小さなことですが、こうした意識がスムーズなコミュニケーションにつながることもあるんですよね。
「職員」と「社員」に関するよくある質問
パートやアルバイトは「職員」「社員」どちらですか?
一般的に、パートやアルバイトは「職員」や「社員」というよりは、「従業員」という言葉で包括的に表現されることが多いです。ただし、「非常勤職員」や「アルバイト社員」といった呼称を用いる組織もあります。厳密な定義よりは、その組織での一般的な呼ばれ方に従うのが良いでしょう。
NPO法人のスタッフは何と呼びますか?
NPO法人(特定非営利活動法人)は営利を目的としないため、そこで働く人は「社員」ではなく「職員」と呼ばれるのが一般的です。「NPO職員」「団体職員」のように呼ばれます。
病院のスタッフは「職員」「社員」どちらですか?
病院(特に公立病院や大学病院、社会福祉法人が運営する病院など)も非営利性が高いため、「職員」と呼ぶのが一般的です。「医療職員」「病院職員」のように使われます。ただし、営利企業が運営する一部のクリニックなどでは「社員」と呼ぶ可能性もゼロではありません。
「職員」と「社員」の違いのまとめ
「職員」と「社員」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 所属組織で使い分け:公的機関や非営利団体などは「職員」、営利企業(会社)は「社員」が基本。
- 漢字の意味がヒント:「職」は“職務・役割”、「社」は“営利目的の集まり”のイメージ。
- 「従業員」はより広い意味:雇用形態を問わず、組織で働く人全般を指す。
- 法律上の意味に注意:会社法上の「社員」は出資者を指すなど、文脈で意味が変わる場合がある。
これらのポイントを押さえておけば、ビジネスシーンでも日常会話でも、自信を持って「職員」と「社員」を使い分けられるはずです。
相手の所属組織を少し意識するだけで、より丁寧で適切なコミュニケーションが可能になりますね。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、ビジネス関連の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。