「主催」と「主宰」、どちらを使えばいいか迷った経験はありませんか?
この2つの言葉は、イベントなどの責任者か、グループの中心人物かで使い分けるのが基本です。
この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的なイメージから具体的な使い分け、さらには似た言葉との違いまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「主催」と「主宰」の最も重要な違い
「主催」はイベントや行事を中心となって開催する場合に、「主宰」は会やグループを中心となって運営・指導する場合に使います。迷ったら、行事の責任者なら「主催」、グループの中心人物なら「主宰」と考えると分かりやすいでしょう。
まず、結論からお伝えしますね。
この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
項目 | 主催 | 主宰 |
---|---|---|
中心的な意味 | 中心となって催し物などを行うこと。開催の責任者。 | 中心となって会やグループなどを運営・指導すること。中心人物・指導者。 |
対象 | イベント、会議、大会、展示会など(一時的な催し物が多い) | 研究会、劇団、結社、同好会など(継続的な集まりが多い) |
ニュアンス | 開催責任、企画・実行の中心 | 運営の中心、指導的立場、まとめ役 |
英語での表現例 | sponsor, host, organizer | preside over, run, lead |
ポイントは、一時的なイベントの責任者は「主催」、継続的なグループの中心人物は「主宰」と覚えることですね。
「主催者」「主宰者」という形で人を指す場合も、この違いを意識すると分かりやすいでしょう。
なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「主催」の「催」は人を促して何かを“もよおす”イメージ。「主宰」の「宰」は全体を“つかさどる”、中心となってまとめるイメージを持つと、ニュアンスの違いが掴みやすくなります。
なぜこの二つの言葉にニュアンスの違いが生まれるのか、それぞれの漢字の成り立ちを紐解くと、その理由が見えてきますよ。
「主催」の成り立ち:「催」が表す“もよおす”イメージ
「催」という漢字は、「催促(さいそく)」や「開催(かいさい)」といった言葉に使われるように、「うながす」「物事を始めるように働きかける」「もよおす」という意味を持っています。
つまり、「主催」とは、中心となって(主)、人々をうながし、イベントなどを開催する(催)という意味合いが強いんですね。
だから、イベントや会議など、一時的な催し物を中心となって執り行う場合に「主催」が使われることが多いのです。
「主宰」の成り立ち:「宰」が表す“つかさどる”イメージ
一方、「宰」という漢字は、「宰相(さいしょう)」という言葉があるように、「物事を取り仕切る」「つかさどる」という意味を持っています。
「主宰」とは、中心となって(主)、全体を取り仕切り、運営する(宰)というイメージです。
そのため、研究会や芸術的なグループ、結社など、ある程度の期間継続する集まりの中心人物として、運営や指導を行う場合に「主宰」が用いられることが多いのでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
国際会議の開催責任者は「主催」、俳句の会の中心となって指導する人は「主宰」のように、具体的な場面をイメージすると使い分けが容易になります。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番分かりやすいですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
会議なのか、研究会なのか、対象となる集まりの性質を考えると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:主催】
- 来月開催される国際会議は、〇〇協会が主催する。
- このチャリティーイベントの主催者は、地元企業有志の会です。
- 弊社主催の製品発表会にご来場いただき、誠にありがとうございます。
【OK例文:主宰】
- 彼は若手研究者を集め、月例の研究会を主宰している。
- この劇団は、著名な演出家〇〇氏が主宰していることで知られる。
- 彼女は、自身のファッションブランドのデザイン部門を主宰する立場にある。
このように、会議やイベントの開催責任者は「主催」、研究会やグループの運営・指導の中心は「主宰」となりますね。
日常会話での使い分け
日常会話でも、考え方は同じです。地域のイベントなのか、サークル活動なのかを思い浮かべてみましょう。
【OK例文:主催】
- 町内会主催の夏祭りが、今週末に公園で開催される。
- PTA主催のバザーの準備で忙しい。
【OK例文:主宰】
- 祖父は地域の俳句同好会を長年主宰している。
- 彼女は自宅で料理教室を主宰しており、いつも予約でいっぱいだ。
- 彼はアマチュアオーケストラの音楽監督として、練習を主宰している。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じるかもしれませんが、少し不自然に聞こえる使い方を見てみましょう。
- 【NG】〇〇文学賞を主宰する出版社。
- 【OK】〇〇文学賞を主催する出版社。
文学賞は一時的な選考・授賞の「催し」なので、「主催」が適切です。「主宰」を使うと、まるで出版社が文学グループを運営しているかのようなニュアンスに聞こえるかもしれませんね。
- 【NG】彼は自分が主催する読書会のメンバーを募集している。
- 【OK】彼は自分が主宰する読書会のメンバーを募集している。
読書会は継続的な「集まり」であり、彼がその中心となって運営しているので、「主宰」がより自然です。「主催」だと、毎回イベントとして開催しているような、少し大げさな響きになる可能性があります。
【応用編】似ている言葉「主管」との違いは?
「主管」は、主に組織内で特定の業務や部門を担当し、管理・運営することを指します。「主催」や「主宰」がイベントやグループ全体の中心であるのに対し、「主管」はより具体的な業務範囲の責任者というニュアンスです。
「主催」「主宰」と似た言葉に「主管(しゅかん)」があります。これも意味の違いを押さえておくと、より言葉の使い分けが正確になりますよ。
「主管」は、「ある事柄を中心となって管理すること。また、その人や役所。」(出典:デジタル大辞泉)という意味です。
ポイントは、特定の業務や部門の管理責任という点です。
例えば、大きなイベント(主催:〇〇実行委員会)の中で、会場設営や警備に関する業務を特定の部署が担当する場合、「会場設営は施設管理部が主管する」のように使います。
また、会社組織内で「このプロジェクトは営業企画部が主管している」といった使われ方もしますね。
「主催」や「主宰」がイベントやグループ全体の中心的な立場を示すのに対し、「主管」は、より具体的な業務範囲や部門の管理責任者というニュアンスが強い言葉です。組織内の役割分担を示す際によく使われます。
「主催」と「主宰」の違いを言葉の専門家が解説
言語学的に見ると、「催」は外に向けて働きかける動作、「宰」は内部を取り仕切る管理のニュアンスを持ちます。この漢字本来の意味が、「主催」=イベント開催、「主宰」=グループ運営という使い分けに繋がっていると考えられます。社会的な慣習としても、この使い分けが定着しています。
「主催」と「主宰」の使い分けについて、もう少し専門的な視点から見てみましょう。
言葉の意味や用法は、その漢字が持つ本来の意味だけでなく、社会の中でどのように使われてきたかという歴史的・慣習的な側面も影響します。
漢字の意味から見ると、「催」には「うながす」「もよおす」という意味があり、外に向けて何かを働きかけ、イベントなどを発生させるような動的なイメージがあります。一方、「宰」には「つかさどる」「全体を取りまとめる」という意味があり、ある範囲の内側を管理し、秩序を保つような静的なイメージがありますね。
この漢字の持つニュアンスが、「主催」は一時的なイベントの開催、「主宰」は継続的なグループの運営・指導、という現代の使い分けに繋がっていると考えられます。
例えば、「会議を主催する」は会議というイベントを外に向けて開催する行為であり、「研究会を主宰する」は研究会というグループ内部の活動を取り仕切る行為、と捉えることができます。
また、学術団体や芸術団体、あるいは私的な塾や教室などでは、その中心人物や指導者を指して「主宰者」と呼ぶ慣習が古くからあります。これも「主宰」が単なる開催責任者ではなく、そのグループの精神的支柱や指導者といったニュアンスを含むことの表れと言えるでしょう。
公的な文書や報道などでは、基本的にこの意味の違いに基づいた使い分けがされています。もし迷った際は、信頼できる国語辞典で意味や用例を確認するのが最も確実です。
僕がイベント企画で「主宰」と書いて冷や汗をかいた話
僕も駆け出しのプランナー時代、この「主催」と「主宰」の使い分けで恥ずかしい思いをしたことがあるんです。
ある地域活性化イベントの企画書を作成していた時のこと。企画の中心となっていたのは地元の商店街振興組合でした。僕は企画書の中で、その組合のことを「本イベントの主宰者」と書いてしまったんですね。「中心となってイベント全体を取り仕切っているのだから『主宰』だろう」と、深く考えずに使ってしまいました。
企画書を意気揚々と提出したところ、先輩からすぐに内線電話が。
「このイベントって、今回限りの単発開催だよな?それに、商店街組合はイベント全体を開催する責任者であって、何か特定のグループを運営・指導してるわけじゃないだろ?ここは『主催』が適切だよ。『主宰』だと、まるで商店街組合が何か文化的なサークルでも運営してるみたいに聞こえちゃうぞ。」
電話口で指摘を受けながら、自分の思い込みに気づき、顔から火が出る思いでした。幸い、クライアントに見せる前の内部チェック段階だったので事なきを得ましたが、あの時の冷や汗は忘れられません。
この経験から、言葉を使うときは、辞書的な意味だけでなく、その言葉が使われる具体的な状況やニュアンスまでしっかりイメージすることが大切だと痛感しました。それ以来、似たような言葉に出会うと、それぞれの使われ方を注意深く観察するクセがついたように思います。
「主催」と「主宰」に関するよくある質問
イベントの案内状では「主催」「主宰」どちらを使うべきですか?
一般的なイベント、例えば講演会、セミナー、展示会、お祭りなどの場合は「主催」を使います。そのイベントの開催責任者が誰であるかを示すためです。もし、継続的に活動している団体(劇団や研究会など)がその活動の一環として公演や発表会を行う場合は、その団体を指して「〇〇(団体名)主宰」と表記することもありますが、イベント自体の責任を示す場合は「主催」が一般的です。
会社の部署が中心となって行う社内行事は「主催」「主宰」どちらですか?
社内行事の場合も、その行事を企画・実行する中心的な部署を示す場合は「〇〇部主催」とするのが一般的です。例えば、「人事部主催の新人歓迎会」のような形です。もし、社内に特定のテーマで活動する委員会や研究グループがあり、そのグループが中心となって何かを行う場合は「〇〇委員会主宰」という表現も考えられますが、一時的な行事の責任部署を示すなら「主催」が分かりやすいでしょう。
個人が開催するワークショップやセミナーは「主催」「主宰」どちらが適切ですか?
個人が単発で開催するワークショップやセミナーの場合は、「〇〇(個人名)主催」とするのが一般的です。もし、その個人が継続的に教室やコミュニティを運営しており、その活動の一環として行う場合は「〇〇(個人名)主宰」とすることもありますが、単発のイベント告知であれば「主催」の方が誤解が少ないでしょう。
「主催」と「主宰」の違いのまとめ
「主催」と「主宰」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 「主催」はイベント開催の責任者:一時的な催し物を中心となって行う場合。
- 「主宰」はグループ運営の中心人物:継続的な会などを中心となって運営・指導する場合。
- 漢字のイメージが鍵:「催」は“もよおす”、「宰」は“つかさどる”イメージ。
- 迷ったら対象で判断:一時的な行事なら「主催」、継続的なグループなら「主宰」。
言葉のニュアンスを正しく理解し、状況に応じて使い分けることで、より的確なコミュニケーションが可能になります。
これからは自信を持って、「主催」と「主宰」を選んでいきましょう。