「すいません」は失礼?「すみません」との違いとビジネスでの使い方

「すいません」と「すみません」、意識せずに使っているけれど、どちらが正しいのか迷った経験はありませんか?

実は、公的な場やビジネスシーンでは「すみません」を使うのが正解です。「すいません」は、「すみません」が発音しやすく変化した口語表現(話し言葉)だからですね。

この記事を読めば、二つの言葉の決定的な違いから、TPOに応じた具体的な使い分け、さらには類義語との違いまでスッキリと理解でき、もう迷うことはありません。

それではまず、二つの言葉の最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「すいません」と「すみません」の最も重要な違い

【要点】

本来の正しい形は「すみません」です。「すいません」は「すみません」が発音しやすく変化した話し言葉であり、書き言葉やフォーマルな場では「すみません」を使いましょう。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 すみません すいません
位置づけ 本来の正しい形 「すみません」の口語形(話し言葉)
使われる場面 話し言葉・書き言葉の両方。フォーマル、ビジネス、日常など全般。 主に話し言葉。ややくだけた、インフォーマルな場面。
相手に与える印象 丁寧、標準的、適切 くだけた、やや幼い、場面によっては不適切
使い分けの指針 迷ったらこちらを使えば間違いなし 親しい間柄での会話に留めるのが無難

一番大切なポイントは、ビジネスメールや目上の方との会話など、少しでも丁寧さが求められる場面では「すみません」を選ぶのが絶対的なルールということです。

「すいません」はあくまで発音のしやすさから生まれた俗な表現だと覚えておきましょう。

なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)から理由を紐解く

【要点】

語源は「済む」の否定形「済まない」です。これが丁寧語の「ます」と結びつき「済みません」となり、音が変化して「すみません」となりました。「すいません」は、さらに発音しやすく変化した音便形です。

なぜ「すみません」が正しい形なのか、その理由を言葉の成り立ちから見ていくと、イメージが掴みやすいですよ。

「すみません」の成り立ち

「すみません」の語源は、動詞の「済む(すむ)」にあります。

この「済む」を否定形にすると「済まない」になりますよね。

この「済まない」という言葉には、「このままでは自分の気持ちが収まらない、申し訳ない」というニュアンスが含まれています。

これに丁寧の助動詞「ます」の否定形「ません」がついて、「済みません(すみません)」という言葉が生まれました。

つまり、相手への謝罪や感謝、依頼をする際に「このままでは私の気が済みません」という気持ちを表す、非常に丁寧な言葉なんですね。

「すいません」の成り立ち

では、「すいません」はどこから来たのでしょうか。

これは、「すみません」の「み」の音が、発音しやすい「い」の音に変化したものです。

日本語では、発音の都合で音が変化することがあり、これを「音便(おんびん)」と呼びます。

例えば、「〜てしまう」を「〜ちゃう」、「〜ておく」を「〜とく」と言うのと同じ現象ですね。

つまり、「すいません」は文法的に間違っているわけではないのですが、あくまで発音しやすいように変化した「話し言葉」としての位置づけなのです。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ビジネスメールや上司への報告では「すみません」が必須です。一方、店員さんを呼んだり、同僚に軽く声をかけたりする日常的な場面では「すいません」も許容されます。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

フォーマルさが求められるビジネスシーンでは、「すみません」を使うのが基本です。

【OK例文:すみません】

  • すみません、こちらの資料を3部コピーしていただけますか。(依頼)
  • お忙しいところすみません、少々お時間をいただけますでしょうか。(呼びかけ)
  • 私の確認不足で、大変すみませんでした。(謝罪)

【使い分け注意:すいません】

  • (廊下ですれ違いざまに)あ、すいません、〇〇部長、先ほどの件ですが…。(急な呼びかけ)
  • (同僚に)すいません、そのペン借りてもいい?(親しい相手への軽い依頼)

このように、緊急時や親しい同僚との会話など、くだけた場面では「すいません」が使われることもありますが、基本は「すみません」と覚えておきましょう。

日常会話での使い分け

日常会話では「すいません」も頻繁に使われますが、丁寧な印象を与えたい場合は「すみません」が適切です。

【OK例文:すみません】

  • すみません、道を教えていただけますか。
  • (プレゼントをもらって)わざわざすみません、ありがとうございます。
  • すみません、注文をお願いします。(飲食店で)

【OK例文:すいません】

  • すいません、この服、試着してもいいですか?
  • (物を落としたのを拾ってもらい)あ、すいません

これはNG!間違えやすい使い方

これだけは絶対に避けるべき、という使い方があります。

それは、メールや手紙、報告書などの「書き言葉」で「すいません」を使うことです。

  • 【NG】先日の件、ご迷惑をおかけし大変すいませんでした。(メール文)
  • 【OK】先日の件、ご迷惑をおかけし大変すみませんでした。(メール文)

書き言葉は話し言葉よりも客観性や正確性が求められます。

「すいません」と書かれていると、幼稚な印象や、常識をわきまえない人という印象を与えかねないので、絶対にやめましょう。

【応用編】似ている言葉「ごめんなさい」との違いは?

【要点】

「すみません」が謝罪・感謝・依頼の3つの意味を持つのに対し、「ごめんなさい」は謝罪に特化した言葉です。「ごめんなさい」は相手に許しを請うニュアンスが強く、よりプライベートな関係で使われます。

「すみません」と似た言葉に「ごめんなさい」がありますよね。この二つの違いも明確にしておきましょう。

最も大きな違いは、使える範囲です。

言葉 主な意味 使われる場面 ニュアンス
すみません ①謝罪 ②感謝 ③依頼・呼びかけ 公的・私的を問わず広い場面 迷惑をかけたことへの申し訳なさ
ごめんなさい ①謝罪 家族、恋人、友人など親しい間柄 相手に許しを請う

「ごめんなさい」の「ごめん」は「御免」と書き、「許し」を意味します。

つまり、「(私の非を)許してください」とストレートに許しを請うのが「ごめんなさい」なんですね。

そのため、ビジネスシーンで上司や取引先に「ごめんなさい」を使うと、幼稚で馴れ馴れしい印象を与えてしまうため、不適切です。

ビジネスでの謝罪は「すみません」か、より丁寧な「申し訳ございません」を使いましょう。

「すいません」と「すみません」の違いを言語学的に解説

【要点】

言語学的に見ると、「すいません」は「すみません」の「み(mi)」の母音「i」が前の「す(su)」の母音「u」に影響されず、子音「m」が脱落して「い(i)」に変化した「イ音便」の一種です。これは発音のしやすさを優先した、自然な言語変化と言えます。

少し専門的な視点から、この言葉の違いを見てみましょう。

「すみません(su-mi-ma-sen)」が「すいません(su-i-ma-sen)」に変化する現象は、日本語の音変化の一つである「音便(おんびん)」で説明できます。

特にこれは「イ音便」と呼ばれるもので、「〜キ」や「〜ギ」の音が「〜イ」に変わる現象(例:咲きて→咲いて)が有名ですが、マ行の音がイ音に変わるパターンも存在します。

「すみません」のマ行の音「み(mi)」は、口を閉じて発音する破裂音「m」と母音「i」で構成されています。

これが、より口の動きが少ない「い(i)」の音に変化することで、発音にかかるエネルギーを節約していると考えることができます。

言語というものは、常に人々が使いやすいように少しずつ変化していく性質を持っています。

「すいません」は、文法的な正しさ(規範)よりも、日々のコミュニケーションにおける効率性(実用)が優先された結果生まれた、ごく自然な言葉の姿だと言えるでしょう。

ただし、社会的な規範として「すみません」が正しい形とされている以上、フォーマルな場面では規範に沿った言葉遣いをすることが、円滑な人間関係を築く上で重要になるわけですね。

僕が「すいません」を連発して信頼を失いかけた体験談

僕も新入社員の頃、この「すいません」の口癖で、恥ずかしい思いをしたことがあるんです。

配属されて間もない頃、僕はとにかく必死で、何かあるたびに「すいません!」と口走っていました。

先輩に質問するときも「すいません!」、資料を渡してもらったときも「すいません!」、少し注意されたときも「すいません!」。

自分では謝罪も感謝も依頼も全部これで表現できる便利な言葉くらいに思っていたんですね。

ある日、OJTでお世話になっていた女性の先輩から、少し真面目な顔で「ちょっといい?」と呼び止められました。

「〇〇くんって、いつも『すいません』だよね。便利な言葉だけど、そればかりだと、何に対して謝っているのか、感謝しているのか、気持ちが伝わりにくいよ」

続けて先輩は、「特に感謝のときは『ありがとうございます』、謝るときは『申し訳ありません』、呼びかけるときは『恐れ入ります』みたいに、場面に合わせて言葉を使い分けた方が、君の気持ちがもっと相手に伝わるし、何より丁寧に見えるよ」と教えてくれました。

僕はハッとしました。良かれと思って使っていた言葉が、実は自分の意図を曖昧にし、相手に軽薄な印象すら与えていたかもしれないのです。

その日から、僕は意識して言葉を使い分けるようにしました。

最初は少しぎこちなかったですが、感謝を「ありがとうございます」とはっきり伝えるだけで、相手の表情が和らぐのを実感しました。

この経験から、言葉はTPOに合わせて使い分けることで、初めて正確に気持ちを伝え、相手との信頼関係を築くツールになるのだと学びましたね。

「すいません」と「すみません」に関するよくある質問

結局、どちらを使えばいいですか?

迷った場合は、常に「すみません」を使用することをおすすめします。「すみません」は本来の正しい形であり、ビジネスから日常まであらゆる場面で安心して使えます。

「すいません」を使うと失礼にあたりますか?

必ずしも失礼というわけではありませんが、くだけた印象や幼稚な印象を与える可能性があります。相手や場面を選んで使うべき言葉であり、特に目上の方や公的な場での使用は避けるのが賢明です。

メールや文書で「すいません」と書くのは間違いですか?

はい、明確な間違いです。メールや文書は「書き言葉」であるため、話し言葉である「すいません」を使うのはビジネスマナー違反と見なされます。必ず「すみません」と表記しましょう。

「すいません」と「すみません」の違いのまとめ

「すいません」と「すみません」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は「すみません」:本来の正しい形で、書き言葉でも話し言葉でも使える万能な言葉。
  2. 「すいません」は話し言葉限定:発音のしやすさから生まれた口語表現。親しい間柄での使用に留めるのが無難。
  3. TPOが何より重要:ビジネスや目上の方には「すみません」、プライベートな謝罪なら「ごめんなさい」、感謝なら「ありがとうございます」と、場面に応じて最適な言葉を選ぶ意識が大切。

言葉は、相手への配慮を映す鏡のようなものです。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。