丁寧語と敬語の違いとは?敬語の種類と使い分けを解説

「丁寧語で話しましょう」「敬語を正しく使いなさい」

どちらもよく聞く言葉ですが、「丁寧語」と「敬語」って、いったい何が違うのでしょうか?

「丁寧語も敬語の一部なんでしょ? でも、尊敬語とか謙譲語とか、色々あってよく分からない…」と感じている方も多いかもしれませんね。その通り、丁寧語は敬語の一種ですが、他の敬語とは役割が少し異なります。この関係性を理解することが、正しい言葉遣いの第一歩です。

この記事を読めば、「丁寧語」と「敬語」の関係性、敬語の種類(尊敬語・謙譲語・丁寧語・美化語)、具体的な使い分け、よくある間違いまで、スッキリと整理できます。もう迷わず、相手や場面にふさわしい言葉を選び、自信を持ってコミュニケーションできるようになりますよ。

それでは、まず最も重要な違い、「丁寧語」と「敬語」の関係性から見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「丁寧語」と「敬語」の最も重要な違い

【要点】

「敬語」は相手への敬意を示す言葉遣い全体の総称です。「丁寧語」はその敬語の一種で、主に聞き手に対して物事を丁寧に述べる表現(例:「です」「ます」)を指します。敬語には他に、相手を高める「尊敬語」や自分を低める「謙譲語」などがあります。

まず結論として、「丁寧語」と「敬語」の関係性と、それぞれの特徴を一覧表にまとめました。

項目 丁寧語(ていねいご) 敬語(けいご)
分類 敬語の一種 言葉遣いにおける敬意表現の総称
主な役割 話や文章の聞き手・読み手に対して、物事を丁寧に述べる。 話や文章の相手、または話題の中の人物や物事に対して敬意を表す。
敬意の方向 主として聞き手・読み手へ。 聞き手・読み手、話題の人物、その両方など、種類によって異なる。
代表例 です、ます、ございます 尊敬語(いらっしゃる、おっしゃる)
謙譲語(伺う、申し上げる)
丁寧語(です、ます)
美化語(お酒、ご住所)など
使われる場面 公の場、ビジネス、初対面など、幅広く使われる基本的な敬語。 相手や状況に応じて、尊敬語・謙譲語・丁寧語などを使い分ける必要がある。

一番のポイントは、「敬語」という大きなカテゴリーの中に、「丁寧語」が含まれているということです。

「敬語」は、相手を敬う気持ちを表すための様々な言葉遣いの総称であり、その中には、相手の動作を高める「尊敬語」、自分の動作をへりくだる「謙譲語」、そして聞き手に対して丁寧に話す「丁寧語」など、いくつかの種類があります。

「丁寧語」は、その中でも最も基本的で、日常的に広く使われる敬語と言えるでしょう。「です」「ます」を使うだけで、グッと丁寧な印象になりますよね。

したがって、「丁寧語と敬語の違いは?」という問いの答えは、「丁寧語は敬語の一部(一種類)である」となります。

なぜ違う?言葉の成り立ちからイメージを掴む

【要点】

「丁寧」は念入りに行き届いている様、「敬」はうやまう心を表します。「丁寧語」は言葉遣いを念入りにすることで敬意を示す方法、「敬語」はうやまう心そのものを言葉で示す方法全般、という成り立ちの違いがあります。

「丁寧語」と「敬語」という言葉自体の成り立ちを知ると、その関係性がよりイメージしやすくなりますよ。

「丁寧語」の成り立ち:「丁寧」の意味

「丁寧」という言葉は、もともと中国の打楽器(銅鑼のようなもの)の名前だったという説があります。それが転じて、「細かい点にまで注意が行き届いているさま」「念入りなさま」「礼儀正しいさま」といった意味で使われるようになりました。

つまり、「丁寧語」とは、言葉遣いを念入りに、配慮が行き届いたものにすることで、相手への礼儀正しさを示す言葉、というイメージですね。「です」「ます」をつけることで、ぞんざいではない、きちんとした話し方になります。

「敬語」の成り立ち:「敬」と「語」の意味

「敬語」の「敬」は、「うやまう(敬う)」という意味です。相手を尊び、礼を尽くす気持ちを表します。「尊敬」「敬意」といった言葉に使われていますね。「語」は「ことば」です。

したがって、「敬語」とは、文字通り相手を「敬う」気持ちを表現するための「言葉」全般を指します。その表現方法として、相手を高めたり(尊敬語)、自分がへりくだったり(謙譲語)、言葉遣いを念入りにしたり(丁寧語)といった、様々な種類があるわけです。

成り立ちから見ても、「丁寧語」が敬意を表す一つの「方法」であるのに対し、「敬語」はその方法を含む「目的」や「概念」全体を示していることがわかりますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「です・ます」を使うのが丁寧語の基本です。目上の人には、尊敬語(例:「おっしゃる」)や謙譲語(例:「拝見します」)と丁寧語を組み合わせて使います。身内に尊敬語を使ったり、過剰な二重敬語は誤りです。

「丁寧語」と、それを含む「敬語」全体の使い分けを、具体的な例文で見ていきましょう。ビジネスシーン、日常会話、そして間違いやすいNG例です。

ビジネスシーンでの使い分け

ビジネスシーンでは、相手(上司、同僚、部下、取引先、顧客など)や場面に応じて、丁寧語だけでなく、尊敬語や謙譲語を適切に組み合わせることが求められます。

【丁寧語が中心となる場面】(同僚、比較的フラットな関係)

  • 明日の会議の資料、もう完成しましたか?
  • この件については、後ほどメールで連絡します
  • 今日の午後は外出の予定です

【尊敬語・謙譲語+丁寧語を使う場面】(目上の人、取引先、顧客など)

  • 部長がそのようにおっしゃっていました。(尊敬語「おっしゃる」+丁寧語「ます」)
  • お客様が資料をご覧になっています。(尊敬語「ご覧になる」+丁寧語「ます」)
  • 私が資料を作成いたします。(謙譲語Ⅱ/丁重語「いたす」+丁寧語「ます」)
  • 明日、御社へ伺います。(謙譲語Ⅰ「伺う」+丁寧語「ます」)

このように、丁寧語は他の敬語と組み合わせて使われることが非常に多いですね。丁寧語だけでは敬意が足りない場面では、尊敬語や謙譲語を適切に使う必要があります。

日常会話での使い分け

日常会話では、相手との親しさの度合いによって使い分けます。

【丁寧語を使う場面】(初対面の人、店員さん、あまり親しくない人など)

  • すみません、駅への行き方を教えていただけますか?
  • これはいくらですか?
  • 今日はいい天気ですね。

【丁寧語を使わない場面】(家族、親しい友人など)

  • 今日の晩ごはん、何? (「何ですか?」ではない)
  • ちょっと手伝ってくれる? (「手伝っていただけますか?」ではない)
  • うん、大丈夫だよ。 (「はい、大丈夫です」ではない)

親しい間柄で丁寧語を使いすぎると、かえってよそよそしい印象を与えてしまうこともありますね。

これはNG!間違えやすい使い方

敬語のルールを誤解していると、不適切な表現になってしまいます。

  • 【NG】(社外の人に、自社の部長について)〇〇部長がおっしゃっていました
  • 【OK】(社外の人に、自社の部長について)〇〇部長が申しておりました

身内の動作には尊敬語を使わず、謙譲語を使います。「おっしゃる」は尊敬語、「申す」は謙譲語(この場合は謙譲語Ⅱ/丁重語)です。丁寧語「ます」の使い方は合っていますが、尊敬語・謙譲語の選択が誤りです。

  • 【NG】お客様が資料を拝見されました
  • 【OK】お客様が資料をご覧になりました

「拝見する」は謙譲語Ⅰ(自分側の動作)、「ご覧になる」は尊敬語(相手側の動作)です。相手(お客様)の動作に謙譲語を使うのは誤りです。「~される」という尊敬の助動詞をつけても間違いは正せません。

  • 【NG】先生がお書きになられました。(過剰な二重敬語)
  • 【OK】先生がお書きになりました。/先生が書かれました。

「お書きになる」で既に尊敬語なのに、さらに尊敬の助動詞「られる」をつけるのは、一般的に過剰な敬語(二重敬語)とされます。「です」「ます」のような丁寧語の範囲を超えた敬語の重ねすぎは避けましょう。

「丁寧語」と「敬語」の関係性を種類から解説

【要点】

敬語は主に「尊敬語」「謙譲語Ⅰ」「謙譲語Ⅱ(丁重語)」「丁寧語」「美化語」の5種類に分類されます。「丁寧語」はその一つで、聞き手への丁寧さを示します。「美化語」(例:「お酒」「ご住所」)は物事を美化する言葉で、丁寧語とは異なります。

「丁寧語」が「敬語」の一部であることは分かりましたが、敬語全体の中での「丁寧語」の位置づけを、もう少し詳しく見てみましょう。文化庁の『敬語の指針』(平成19年)では、敬語を以下の5種類に分類しています。これが現在、敬語理解のスタンダードとなっています。

敬語の5分類(文化庁『敬語の指針』より)

  1. 尊敬語:相手側または第三者の行為・ものごと・状態などについて、その人物を立てて述べるもの。(例:いらっしゃる、おっしゃる、なさる、〜様)
  2. 謙譲語Ⅰ:自分側から相手側または第三者に向かう行為・ものごとなどについて、その向かう先の人物を立てて述べるもの。(例:伺う、申し上げる、差し上げる、〜先生)
  3. 謙譲語Ⅱ(丁重語):自分側の行為・ものごとなどを、話や文章の相手に対して丁重に述べるもの。(例:参る、申す、いたす、拙著)
  4. 丁寧語:話や文章の相手に対して丁寧に述べるもの。(例:です、ます、ございます)
  5. 美化語:ものごとを、美化して述べるもの。(例:お酒、お料理、ご住所)

(出典:文化庁「敬語の指針」 を元に作成)

「丁寧語」の位置づけと役割

この5分類を見ると、「丁寧語」は敬語を構成する要素の一つであることが明確にわかりますね。

尊敬語や謙譲語が、主に「誰の行為を高めるか、または低めるか」によって使い分けるのに対し、丁寧語はシンプルに「聞き手(読み手)に対して、丁寧な言葉遣いをする」という役割を持っています。

そのため、尊敬語や謙譲語を使う際にも、文末には通常「ます」などの丁寧語を伴うことが多く、敬語表現の土台となる部分と言えます。

「美化語」との違い:「お」や「ご」の使い方

丁寧語と混同しやすいのが「美化語」です。「お酒」「お料理」「ご住所」「ごゆっくり」のように、名詞や形容詞、副詞などに「お」や「ご」をつけて、言葉遣いを上品にするのが美化語です。

丁寧語が主に文末(「です」「ます」)で聞き手への丁寧さを示すのに対し、美化語は特定の単語自体を美化する働きがあります。聞き手への敬意というよりは、話し手自身の品位を示すニュアンスが強いと言われます。

もちろん、丁寧語と美化語は一緒に使われることが多いです(例:「お酒を飲みます」)。しかし、「お酒、飲む?」のように、美化語を使っても文末が丁寧語でない場合もありますし、「酒です」のように、丁寧語を使っても美化語でない場合もあります。それぞれ独立したカテゴリーとして理解しておくと良いでしょう。

「お」や「ご」は尊敬語(例:お名前、ご説明)や謙譲語Ⅰ(例:お手紙、ご連絡)を作る際にも使われるため、少しややこしいですが、単に言葉を美化している場合は美化語、相手の持ち物や行為を高めている場合は尊敬語、自分から相手へ向かう物事を示している場合は謙譲語Ⅰ、と区別できます。

僕が「丁寧語」だけで話して、冷や汗をかいた新人時代

敬語って、丁寧語だけ使っていれば大丈夫、ってものでもないんですよね…。僕も新人時代、まさにその落とし穴にハマって、取引先で冷や汗をかいた経験があります。

初めて一人でクライアントとの打ち合わせに行くことになった時のことです。相手は年配の社長さん。失礼があってはならないと、とにかく「ですます」調を徹底しようと心に決めていました。

打ち合わせの中で、社長さんから自社の〇〇部長(僕の上司)の意見について尋ねられました。僕は練習通り、丁寧に答えようとしてこう言いました。

「はい、その件については、〇〇部長も良いと言いました。ですので、弊社としても前向きに進めたいです

その瞬間、社長さんの表情がわずかに曇った気がしました。打ち合わせ自体は無事に終わったのですが、帰り道、なんだかモヤモヤしていました。

会社に戻って、同席していた先輩にその話をすると、先輩は「あー、〇〇(僕の名前)、それはちょっとマズいかもな」と言いました。

「何がですか?ちゃんと『ですます』で丁寧に話したつもりなんですけど…」

「丁寧語は使えてるけど、敬語としては足りないんだよ。社外の人に対して、自分の会社の上司の話をする時は、上司の動作をへりくだる謙譲語を使うのが基本だ。『部長が良いと言いました』じゃなくて、『部長も良いと申しておりました』とか『部長も賛成しております』みたいに言うべきだったんだ。それに、社長(相手)の動作について話すなら尊敬語が必要だ。『社長が言いました』じゃなくて『社長がおっしゃいました』だろ?丁寧語だけだと、相手や自分の上司を立てる敬意が表現できていないんだよ」

僕は衝撃を受けました。「ですます」を使っていれば敬語として完璧だと思い込んでいたのです。しかし、それだけでは不十分で、誰の動作について話しているのか、その人を立てるべきなのか、へりくだるべきなのかを判断して、尊敬語や謙譲語を使い分けないと、かえって失礼になる場合があるのだと、その時初めて理解しました。

あの時の社長さんのわずかな表情の変化は、僕の言葉遣いに対する違和感だったのかもしれません。丁寧語は敬語の基本だけれど、それだけで全てをカバーできるわけではない。相手や状況に応じた敬語の使い分けがいかに重要か、身をもって学んだ出来事でした。

「丁寧語」と「敬語」に関するよくある質問

Q1: 「です」「ます」以外に丁寧語はありますか?

A1: はい、「です」「ます」が代表的ですが、「ございます」も丁寧語(丁重な表現)に含まれます。例えば、「こちらが資料でございます」「〇〇でございますね」のように使います。「です」よりもさらに丁寧な印象を与えます。

Q2: 尊敬語や謙譲語を使わずに、丁寧語だけで話すのは失礼ですか?

A2: 相手や場面によります。同僚や部下、比較的親しい相手であれば、丁寧語だけでも十分な場合が多いです。しかし、目上の人や取引先、顧客など、明確な敬意を示すべき相手に対して、尊敬語や謙譲語を使うべき場面で使わないと、失礼にあたる可能性が高いです。TPOに合わせた使い分けが重要ですね。

Q3: 丁寧語を使いすぎると、かえって良くないこともありますか?

A3: はい、あります。例えば、非常に親しい友人や家族に対して常に「ですます」調で話すと、よそよそしく、距離を感じさせてしまうことがあります。また、過剰に丁寧な言葉(例:「〜でございますでしょうか」など、過度な丁重語や冗長な表現)を使いすぎると、慇懃無礼に聞こえたり、かえってコミュニケーションがスムーズにいかなくなったりすることもあります。相手との関係性や場の雰囲気に合わせた、自然な丁寧さが大切です。

「丁寧語」と「敬語」の違いのまとめ

「丁寧語」と「敬語」の関係性、そして敬語の種類に応じた使い分けについて、理解が深まったでしょうか?

最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。

  1. 敬語の一部としての丁寧語:「敬語」は相手への敬意を示す言葉遣い全体の総称であり、「丁寧語」はその中の一つのカテゴリー。
  2. 丁寧語の役割:主に聞き手(読み手)に対して、物事を丁寧に述べる(例:「です」「ます」「ございます」)。
  3. 他の敬語との違い:尊敬語は相手を高め、謙譲語(Ⅰ・Ⅱ)は自分側を低めることで敬意を示すが、丁寧語は聞き手への丁寧さを直接示す。
  4. 美化語との違い:「お酒」「ご住所」などの美化語は、単語自体を上品にする言葉であり、丁寧語とは役割が異なる。
  5. 使い分けが重要:丁寧語は基本だが、相手や場面に応じて尊敬語や謙譲語と組み合わせる必要がある。丁寧語だけでは敬意が不足する場合がある。

敬語は複雑に感じるかもしれませんが、基本となる5つの種類とその役割を理解すれば、使い分けの迷いが少なくなります。「丁寧語」はその基礎となる重要な要素ですが、それだけで万能ではないことを覚えておくのが大切ですね。

正しい敬語は、円滑な人間関係を築くための潤滑油です。今回の学びを活かして、自信を持って適切な言葉遣いを心がけていきましょう。敬語の使い分けについて、もっと他の言葉も知りたい場合は、敬語の違いをまとめたページもぜひ参考にしてください。