「追求」と「追及」の違い!意味と対象で使い分ける方法を解説

「追求」と「追及」、どちらも「ついきゅう」と読む同音異義語ですが、意味を混同して使っていませんか?実はこの二つの言葉、追い求める対象が「理想や利益」か「責任や原因」かで明確に使い分けることができます。

この記事を読めば、それぞれの言葉の核心的なイメージから具体的な使い分け、さらには似た言葉との違いまでスッキリと理解でき、もう二度と迷うことはありません。

ビジネス文書やレポート作成で自信を持って言葉を選べるようになりますよ。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「追求」と「追及」の最も重要な違い

【要点】

基本的には理想や利益などを得るために追い求めるなら「追求」、責任や原因などをどこまでも問いただすなら「追及」と覚えるのが簡単です。目的が「手に入れること」か「明らかにすること」かで判断しましょう。

まず、結論からお伝えしますね。

この二つの言葉の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。

これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 追求(ついきゅう) 追及(ついきゅう)
中心的な意味 理想や目的、利益などを得ようとして追い求めること 責任や原因、不明な点などをどこまでも問いただし、明らかにしようとすること
対象・目的 理想、幸福、利益、利便性、目標、夢など(得たいもの) 責任の所在、事件の原因、犯人、不明点、疑問点など(明らかにしたいこと)
ニュアンス ポジティブな目標達成、理想の実現を目指す ネガティブな要素(責任、原因など)を問いただす、追い詰める
英語での表現例 pursuit (of happiness, profit), seek inquire into, press (for an answer), investigate

一番大切なポイントは、何を追い求めているのか、その対象と目的を意識することですね。

利益や理想像といった「得たいもの」を追い求める場合は「追求」、責任の所在や事件の真相といった「明らかにしたいこと」を追い詰める場合は「追及」と覚えておけば、多くの場面で迷うことは少なくなるでしょう。

なぜ違う?漢字の成り立ち(語源)からイメージを掴む

【要点】

「追求」の「求」は何かを欲し、手に入れようと“探し求める”イメージです。一方、「追及」の「及」は手を伸ばして“追いつき問いただす”イメージを持つと、対象の違いが分かりやすくなります。

なぜこの二つの言葉に意味の違いが生まれるのか、それぞれの漢字の成り立ちを紐解くと、その理由がより深く理解できますよ。

言葉の背景を知ると、単なる丸暗記ではなく、イメージで捉えられるようになりますよね。

「追求」の成り立ち:「求」が表す“探し求める”イメージ

「追求」の「求」という漢字は、「求める(もとめる)」ですよね。

この漢字には、何かを欲しがって手に入れようとする、探し求めるといった意味があります。

「要求(ようきゅう)」や「求人(きゅうじん)」といった言葉を思い浮かべると、そのイメージが掴みやすいでしょう。

つまり、「追求」とは、自分の理想や利益、目的といった「欲しいもの」を積極的に探し求めていくというニュアンスを持っている、と考えると分かりやすいですね。

「追及」の成り立ち:「及」が表す“追いつめる”イメージ

一方、「追及」の「及」という漢字は、「及ぶ(およぶ)」、「及ぼす(およぼす)」と読みますね。

この漢字には、手を伸ばして届く、影響を与えるといった意味のほかに、後から追いつく、問いただす、徹底的に調べる、といった意味合いが含まれます。

「追いつく」というイメージから、「追及」には、逃げる相手や隠された真実などに追いつき、その責任や原因をどこまでも問いただす、明らかにしようと追い詰めるというニュアンスが含まれるんですね。

「普及(ふきゅう)」や「言及(げんきゅう)」という言葉からは少しイメージしにくいかもしれませんが、「追いつめて問いただす」という強い意志を感じさせる漢字です。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

企業の「利益追求」や個人の「幸福追求」のように目標達成を目指す場合は「追求」、事件の「原因追及」や政治家の「責任追及」のように、不明な点や責任を明らかにする場合は「追及」と使い分けるのが基本です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

多くの人が「あれ、どっちだっけ?」と迷いがちなポイントもこれで解消できるはずです。

ビジネスシーンでの使い分け

目的語(何を追い求めるか)に注目すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:追求】

  • 企業として、常に利益追求を最優先課題としている。
  • 我々は、顧客満足度の追求を通じて、社会に貢献したい。
  • この新技術は、さらなる利便性追求から生まれた。
  • チーム一丸となって、今期の目標達成追求する。

【OK例文:追及】

  • システム障害の原因を徹底的に追及し、再発防止に努めます。
  • 会計不正の責任の所在を明らかにするため、調査委員会が追及を開始した。
  • 報告書の不明点について、担当者に追及した。
  • 納期遅延の理由について、取引先を厳しく追及する。

このように、追い求める対象がポジティブな目標か、ネガティブな原因・責任かで使い分けると、ビジネス文書でも迷うことがなくなりますね。

特に報告書などでは、原因や責任の所在を明確にする場面が多いので、「追及」を使う機会も意外と多いかもしれません。

日常会話での使い分け

日常会話でも、考え方は同じです。

何を追い求めているかを意識しましょう。

【OK例文:追求】

  • 彼は、自身の理想とする生き方を追求している。
  • 多くの人が、幸福追求して生きている。
  • 彼女は、ファッションにおいて独自の追求している。
  • 趣味を通じて、自己実現追求する人もいる。

【OK例文:配付】

  • 警察は、事件の真相追及するために捜査を続けている。
  • 彼は、友人の裏切りの原因追及せずにはいられなかった。
  • マスコミは、政治家のスキャンダルを徹底的に追及した。
  • 子供は、親に「なぜ?」と疑問追及することがある。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が逆になってしまう可能性があるので、注意が必要な使い方を見てみましょう。

  • 【NG】事故の原因追求する。
  • 【OK】事故の原因追及する。

事故の原因は、明らかにすべき対象であり、探し求めて手に入れる理想ではありませんよね。

したがって、「追及」が適切です。

「追求」を使うと、まるで事故の原因を探し求めて喜んでいるかのような、不自然な響きに聞こえてしまうかもしれません。

  • 【NG】企業の利益追及する。
  • 【OK】企業の利益追求する。

企業の利益は、達成すべき目標であり、得るべきものです。

「追及」を使うと、まるで利益を得たことに対して、その正当性などを問いただしているかのような、本来の意図とは異なる意味合いになってしまいますね。

このように、目的語と動詞の関係性を意識することが、正しい使い分けの鍵となります。

【応用編】似ている言葉「探求」との違いは?

【要点】

「探求(たんきゅう)」は、主に知識や真理など、形のない本質的なものを深く掘り下げて探し求める場合に使われます。「追求」が具体的な目標や利益を目指すのに対し、「探求」はより学術的・哲学的なニュアンスを持ちます。「追及」のようなネガティブな対象を問いただす意味はありません。

「追求」「追及」と似た響きを持つ言葉に「探求(たんきゅう)」があります。

これも押さえておくと、言葉の理解がさらに深まりますよ。

「探求」は、「探(さが)し」「求(もと)める」という漢字の組み合わせからもわかるように、何かを探し求めるという意味では「追求」と似ています。

しかし、決定的な違いは、「探求」の対象は主に知識、真理、学問、芸術の本質など、形のない、より根源的なものであるという点です。

「追求」が幸福や利益といった比較的具体的な目標を目指すのに対し、「探求」はもっと深く、本質を理解しようとする学術的、哲学的なニュアンスが強い言葉です。

【例文:探求】

  • 彼は、宇宙の真理探求するために研究者の道を選んだ。
  • 哲学とは、人間存在意味探求する学問である。
  • 芸術家は、常に新しい表現可能性探求し続ける。

もちろん、「追及」のように、責任や原因を問いただすといったネガティブな意味合いは全くありません。

「追求」はゴールを目指す、「追及」は原因を突き詰める、「探求」は本質を探る、といったイメージで使い分けると良いでしょう。

「追求」と「追及」の違いを言語学的に解説

【要点】

言語学的に見ると、「追求」の「求」は未来志向の獲得要求、「追及」の「及」は過去・現在の事象への到達・波及を示します。この動詞が持つ方向性の違いが、意味の使い分けの根幹にあると言えます。

少し専門的な視点になりますが、「追求」と「追及」の違いは、それぞれの漢字が持つ動詞としての性質からも説明できます。

言語学において、動詞はその動作が向かう方向性(アスペクト)によって分類されることがあります。

「追求」における「求」は、「求める」という行為が示すように、まだ手にしていない未来の目標や理想を獲得しようとする意志、つまり未来志向のベクトルを強く含んでいます。

何かを得ようと「前へ」進むイメージですね。

一方、「追及」における「及」は、「及ぶ」「及ぼす」という言葉が示すように、ある基準点や原因に到達する、影響が波及するといった、過去または現在の事象との関連性を示す性質を持っています。

原因や責任の所在といった「後ろにあるもの」に追いつき、その範囲を確定しようとするイメージと言えるでしょう。

このように、動詞(漢字)が持つ根源的な方向性の違いが、「追求」と「追及」の意味の違いを生み出していると考えることができます。

少し難しいかもしれませんが、言葉の成り立ちを深く理解する一助になりますよね。

僕が「追求」と書いて大恥をかいた若手時代の体験談

僕も若手社員だった頃、この「追求」と「追及」で恥ずかしい思いをしたことがあるんです。

入社2年目、あるプロジェクトで発生したシステムトラブルの原因分析を担当していました。

連日遅くまで原因究明にあたり、ようやく特定できた根本原因とその対策をまとめた報告書を作成することになりました。

少しでも報告書の見栄えを良くしたい、できるやつだと思われたい一心で、僕は結論部分にこう書きました。

「本トラブルの根本原因を徹底的に追求し、以下の対策を講じます」

「原因をどこまでも追い求めたんだ!」という達成感を込めて、「追求」という言葉を選んだんですね。

自信満々で報告書を提出した僕に、当時の課長は赤ペンで「追求」を二重線で消し、隣に「追及」と書き加えて、静かにこう言いました。

「原因や責任は『追及』するものだよ。『追求』は利益とか理想に使う言葉だ。原因を追求する、だと、まるで原因を手に入れたがっているみたいに聞こえるだろう?言葉一つで報告書の信頼性が変わるから、気をつけて」

課長は冷静でしたが、僕は顔から火が出るほど恥ずかしかったのを覚えています。

自分の言葉選びの甘さ、そして言葉が持つ意味の重みを全く理解していなかったことを痛感しました。

この経験から、言葉を使うときは、その言葉が指し示す対象や文脈を正しく理解し、一つ一つの言葉の意味を深く考えることが何よりも大切だと学びました。

それ以来、同音異義語はもちろん、何気なく使っている言葉でも、辞書で意味を確認するクセがついたように思います。

あなたも、もし迷ったら、少し立ち止まって言葉の意味を考えてみてくださいね。

「追求」と「追及」に関するよくある質問

Q1:「利益の追求」と「利益の追及」、どちらが正しいですか?

A1:一般的に、企業などが目標として利益を追い求める場合は「利益の追求」が正しい使い方です。「追及」は責任などを問いただす意味合いが強いため、「利益の追及」とすると、利益を得たこと自体を問題視するようなニュアンスになり、通常は使いません。

Q2:責任を問う場合はどちらを使いますか?

A2:責任の所在を明らかにするために問いただす場合は「責任の追及」を使います。「追求」は理想や目標を得ようとすることなので、「責任の追求」とは言いません。

Q3:理想を追い求めるのはどちらですか?

A3:理想や夢、幸福など、自分が得たいと願う目標を追い求める場合は「理想の追求」を使います。「追及」は原因や責任を明らかにすることなので、この文脈では使いません。

「追求」と「追及」の違いのまとめ

「追求」と「追及」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 基本は追い求める対象で使い分け:理想や利益など【得たいもの】なら「追求」、責任や原因など【明らかにしたいこと】なら「追及」。
  2. 漢字のイメージが鍵:「求」は“探し求める”、「及」は“追いつき問いただす”イメージ。
  3. 似た言葉との違い:「探求」は知識や真理など、形のない本質を深く探る場合に使う。

言葉の意味を正確に理解し、文脈に合わせて的確な言葉を選ぶことは、円滑なコミュニケーションの基本ですよね。

特にビジネスシーンでは、誤った言葉遣いが思わぬ誤解を招くこともあります。

これからは自信を持って、「追求」と「追及」を使い分けていきましょう。