「つまずく」と「つまづく」、正しいのはどっち?意味の違いと迷わない使い分け

「つまずく」と「つまづく」、どちらの言葉を使えば良いか、ふと迷ってしまうことはありませんか?

足元の段差でよろけたり、計画が思うように進まなかったりする時に使うこの言葉。実は、意味は同じですが、使われ方にちょっとした違いがあるんです。

この記事を読めば、「つまずく」と「つまづく」のどちらがより一般的で、どんな時に使い分けられることがあるのか、その背景までスッキリ理解できます。もう、些細な言葉の違いで悩む必要はありませんよ。

それではまず、一番知りたい結論から見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「つまずく」と「つまづく」の最も重要な違い

【要点】

「つまずく」と「つまづく」は基本的に同じ意味ですが、現代では「つまずく」が一般的で標準的な形とされています。「つまづく」も間違いではありませんが、やや古い言い方、あるいは口頭での発音の変化形と見なされることが多いです。迷ったら「つまずく」を使うのが無難でしょう。

早速ですが、「つまずく」と「つまづく」の主な違いを表にまとめました。

項目 つまずく つまづく
意味 ①歩行中、足先が物に当たって体勢を崩すこと。
②物事が順調に進まなくなること。挫折すること。
「つまずく」と同じ。
漢字 躓く 躓く(同じ漢字)
使われ方 一般的、標準的。新聞や公用文でもこちらが使われる。 間違いではないが、やや古い言い方。話し言葉や強調したい時に使われることも。
ニュアンス 標準的な表現。 やや口語的、古風な響きを持つ場合がある。

ポイントは、どちらを使っても意味自体は通じるけれど、現代の標準的な書き言葉としては「つまずく」が推奨されている、ということですね。

「つまづく」も決して間違いではないので、会話などで耳にすることはあるでしょう。

なぜ違う?言葉の成り立ちからイメージを掴む

【要点】

両者は同じ「躓く」という漢字を使い、意味も共通です。違いは主に発音上の変化(音便)や歴史的な経緯によるもので、「つまずく」がより標準的な形として定着してきました。

「つまずく」と「つまづく」は、なぜ二つの言い方が存在するのでしょうか?その背景を探ってみましょう。

「躓く」という漢字の意味

まず、どちらの言葉も漢字で書くと「躓く」となります。

この「躓」という漢字は、「足」へんに「質」と書きますね。「質」には「物が積み重なる」「妨げとなるもの」といった意味合いがあります。

つまり、「躓く」は文字通り、足(あし)が進むのを妨げるものに当たってよろける様子を表しているわけです。ここから転じて、物事が順調に進まなくなるという意味でも使われるようになりました。

意味の上では、「つまずく」も「つまづく」も、この漢字が示すコアなイメージは全く同じなんですね。

「つまずく」と「つまづく」の音の変化

では、読み方の違いはどこから来たのでしょうか?

これは、日本語の発音上の変化(音便)や、歴史的な言葉の揺れが関係していると考えられます。

もともとは「つまずく」という形が古くからあったようですが、発音のしやすさなどから「つまづく」という形も使われるようになった、あるいは地域による方言差があった、などの説があります。

例えば、「ま」の音は唇を閉じる破裂音で、「ず」の音は舌を使う摩擦音です。「つ・ま・ずく」よりも「つ・ま・づく」の方が、口の動きとしては少しだけ楽かもしれませんね。こうしたわずかな発音の違いが、二つの形を生んだ可能性があります。

しかし、現代の共通語、特に書き言葉においては、「つまずく」が標準的な形として広く認識され、辞書などでも「つまづく」は「つまずくの異形」や「やや古い言い方」として扱われることが多くなっています。

なんだか、言葉の歴史を感じて面白いですよね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

物理的な転倒だけでなく、比喩的な失敗や停滞にも使われます。「石につまずく」「計画がつまずく」のように使います。「つまづく」も同じ意味で使えますが、書き言葉では「つまずく」を使う方が一般的です。

それでは、具体的な例文で「つまずく」と「つまづく」の使い方を見ていきましょう。

「つまずく」の使用例

まずは、一般的で標準的な「つまずく」の例文です。

<物理的な意味>

  • 歩道のでっぱりにつまずいて転びそうになった。
  • 暗い廊下で足元の荷物につまずいた
  • 彼はゴール目前でつまずき、優勝を逃した。

<比喩的な意味>

  • 新規事業が思わぬところでつまずいている
  • 彼は人間関係でつまずき、会社を辞めてしまった。
  • 数学の証明問題でつまずき、先に進めない。
  • 人生の早い段階でのつまずきが、彼を成長させた。

このように、物理的な動作だけでなく、計画やキャリア、学習などが順調に進まなくなる状況にも広く使われますね。

「つまづく」の使用例

次に、「つまづく」の例文です。意味は「つまずく」と同じですが、使われる場面が少し異なります。

<物理的な意味>

  • 石段でつまづいて、ひざを擦りむいた。(話し言葉などで使われる)
  • 急いでいたので、敷居につまづいてしまった。(やや古風な響きも)

<比喩的な意味>

  • 人生でちょっとつまづいただけだよ、気にするな。(話し言葉での励まし)
  • 序盤で大きくつまづいたことが、敗因となった。(小説などで、動きを強調したい場合など)

「つまづく」は、話し言葉で使われたり、少し強調したい場合、あるいは小説などで古風な雰囲気を出すために意図的に使われたりすることがあります。

どちらを使うべきかの判断基準

基本的には、書き言葉やビジネスシーン、公的な場面では「つまずく」を使うのが無難です。

一方、親しい人との会話や、文学的な表現などで、あえて「つまづく」を使うことも間違いではありません。

もし迷った場合は、「つまずく」を選んでおけば、まず問題ないでしょう。

【応用編】似ている言葉「けつまずく」との違いは?

【要点】

「けつまずく」は、「つまずく」の中でも特に後ろによろける、ひどくつまずくという意味合いが強い言葉です。勢いよく転びそうになる様子を表します。

「つまずく」と似た言葉に「けつまずく」という言葉もありますね。これも一緒に覚えておきましょう。

「けつまずく」は、「つまずく」よりも勢いが強い、あるいは後ろによろけるニュアンスを含みます。

  • 急ブレーキをかけた車を避けようとして、派手にけつまずいた
  • 慌てて立ち上がろうとして、椅子の脚にけつまずいてしまった。

「け」は接頭語で、勢いを強める働きがあります。「蹴る(ける)」との関連も指摘されています。

単に「つまずく」よりも、より激しく体勢を崩すイメージですね。比喩的な意味で使われることは比較的少ないです。

「つまずく」と「つまづく」の違いを公的な視点から解説

【要点】

現代仮名遣いのルールや常用漢字表の考え方に基づき、公的な文書や報道では「つまずく」に統一するのが一般的です。「じ」「ぢ」、「ず」「づ」の使い分けルールにおいて、「つまずく」が本則とされているためです。

なぜ現代では「つまずく」が標準とされるようになったのか、もう少し詳しく見てみましょう。

これは、日本語の表記ルールである「現代仮名遣い」(昭和61年内閣告示)が関係しています。

このルールでは、「じ」「ぢ」、「ず」「づ」の使い分けについて、基本的には「じ」「ず」を使うことを原則(本則)としています。

ただし、例外として、

  1. 同じ音が続く場合(例:つづく、ちぢむ)
  2. 複合語で元の語の音が濁る場合(例:はなぢ=鼻+血、みかづき=三日+月)

などでは「ぢ」「づ」を使うことも認めています。

「つまずく」の場合、「躓く(つまず・く)」という一語であり、上記の例外には当てはまりません。そのため、原則に従って「ず」を使う「つまずく」が、現代仮名遣いに沿った形とされるのです。

多くの国語辞典や、新聞・放送などの報道機関の用字用語集(表記ガイドライン)でも、「つまずく」を標準的な表記として採用しています。

こうした背景から、公的な文書やビジネス文書、学校教育などでは「つまずく」を使うことが推奨されているんですね。

文化庁のウェブサイトなどでも、言葉に関する指針が公開されていますので、興味のある方は確認してみると良いでしょう。
文化庁 | ことば・国語

僕がプレゼンで「つまづいて」冷や汗をかいた体験談

僕も若い頃、この言葉の使い分けでちょっとした失敗をしたことがあります。

入社3年目、初めて大きなクライアントへのプレゼンテーションを任された時のことです。準備には万全を期したつもりでしたが、当日は緊張でガチガチ。

プレゼンの冒頭、掴みとして最近の業界動向について話していた時でした。「この新しい規制によって、多くの企業が計画の初期段階でつまづいており…」と言った瞬間、ふと(あれ?今のは「つまずいて」が正しかったかな?)と頭をよぎったんです。

一瞬、言葉に詰まってしまい、その動揺が顔に出てしまったのでしょう。最前列に座っていたクライアントの部長が、怪訝そうな顔をしたように見えました。

(まずい、出だしから信頼を失ったかも…)

冷や汗が背中を伝うのを感じながらも、なんとかプレゼンを続けましたが、その後もずっと「つまづく」のことが頭から離れませんでした。

幸い、プレゼン自体は好評で契約には至ったのですが、終了後に上司から「衣田くん、さっき『つまづく』って言ったけど、ああいう場では『つまずく』の方がいいぞ。細かいけど、意外と聞いている人は聞いているからな」と優しく指摘されました。

本当に些細な違いかもしれません。でも、言葉一つで相手に与える印象が変わることもあるのだと痛感した出来事でした。特にビジネスの場では、標準的とされる言葉遣いを意識することの大切さを学びましたね。それ以来、迷った時は必ず辞書で確認するようになりました。

「つまずく」と「つまづく」に関するよくある質問

結局、「つまづく」は間違いなのですか?

いいえ、間違いではありません。ただ、現代の標準的な書き言葉としては「つまずく」が推奨されており、「つまづく」はやや古い言い方、あるいは口頭での発音の変化形と見なされることが多いです。

会話で「つまづく」と言っても大丈夫ですか?

はい、会話で使う分には全く問題ありません。むしろ、発音しやすいと感じる人もいるかもしれません。ただし、ビジネスシーンでのプレゼンや改まった場では、「つまずく」を使う方がより適切でしょう。

どちらの表記が一般的ですか?

現代では「つまずく」の方が圧倒的に一般的です。新聞、書籍、ウェブサイトなど、ほとんどのメディアで「つまずく」が使われています。

「つまずく」と「つまづく」の違いのまとめ

「つまずく」と「つまづく」の違い、もう迷うことはありませんね。

最後に、この記事の重要なポイントをまとめます。

  1. 意味は同じ:「つまずく」も「つまづく」も、「足元の障害物でよろける」「物事が順調に進まなくなる」という同じ意味です。
  2. 現代の標準は「つまずく」:公的な文書や報道、一般的な書き言葉では「つまずく」を使うのが基本です。
  3. 「つまづく」も間違いではない:話し言葉や、やや古風な表現、強調したい場合などに使われることもあります。
  4. 迷ったら「つまずく」:どちらを使うか迷った場合は、「つまずく」を選んでおけば間違いありません。

言葉は時代とともに変化していくものですが、その背景にあるルールやニュアンスを知っておくと、より自信を持って言葉を使えるようになりますよね。

これからは、状況に応じて適切な言葉を選び、スムーズなコミュニケーションに役立ててください。