「寄付」と「寄贈」の違いとは?お金と物品の使い分けを解説

「寄付」と「寄贈」、どちらも何かを無償で提供する行為を指しますが、その違いを明確に説明できますか?

似ているようで、実は贈る「モノ」や「相手」によって使い分けるのが基本です。

「寄付」は主に金銭を公共性の高い団体へ、「寄贈」は主に物品を特定の施設へ贈る際に使われます。

この記事を読めば、「寄付」と「寄贈」の意味の違いから言葉の成り立ち、具体的な使い分け、さらには税制上のポイントまでスッキリ理解でき、自信を持って正しく使い分けられるようになります。もう迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「寄付」と「寄贈」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、金銭を贈る場合は「寄付」、物品を贈る場合は「寄贈」と覚えるのが簡単です。「寄付」は公共性の高い団体や事業が対象、「寄贈」は学校や病院などの施設が主な対象となりますが、「寄付」は物品を含む場合もあります。

まず、結論からお伝えしますね。

「寄付」と「寄贈」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 寄付(きふ) 寄贈(きぞう)
中心的な意味 公共事業・社寺・学校・団体などに、金銭や品物を贈ること。 学校・病院・図書館・博物館などの施設や団体に品物を贈ること。
贈るモノ 主に金銭だが、物品の場合もある。 主に物品
贈る相手 公共性の高い事業、団体、施設、社寺など幅広く使われる 学校、病院、図書館、博物館など特定の施設や団体が主な対象。
ニュアンス 金銭的な援助、支援。社会貢献。 物品の提供、贈呈。
英語 donation, contribution donation (of goods), presentation

一番分かりやすい区別は、お金なら「寄付」、モノなら「寄贈」と考えることですね。

ただし、「寄付」は物品を贈る場合にも使われることがあります(例:衣類を寄付する)。一方で、「寄贈」を金銭に対して使うことは通常ありません。

また、贈る相手もポイントです。「寄贈」は学校や図書館といった具体的な施設が相手になることが多いのに対し、「寄付」はより広く、NPO法人や災害支援の募金なども対象になります。

なぜ違う?言葉の成り立ちからイメージを掴む

【要点】

「寄付」の「付」は金銭や物品を授け与えるイメージ、「寄贈」の「贈」は物品などを相手に送る、プレゼントするイメージです。この漢字の違いが、主に金銭か物品かというニュアンスの違いにつながっています。

なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、それぞれの漢字の成り立ちを見てみると、そのニュアンスの違いがより深く理解できますよ。

「寄付」の成り立ち:「付」が示す金銭や物品を授け与えるイメージ

「寄付」の「寄」は、「身を寄せる」「近くへ送る」といった意味があります。「付」は、「付き従う」「付ける」の他に、「授け与える」「手渡す」という意味を持っています。「交付」や「付与」といった言葉を考えると分かりやすいかもしれませんね。

このことから、「寄付」には、対象となる団体や事業に、金銭や物品を寄せ集めて授け与える、といったニュアンスが含まれていると考えられます。

「寄贈」の成り立ち:「贈」が示す物を相手に送るイメージ

一方、「寄贈」の「贈」は、「おくる」「プレゼントする」という意味を持つ漢字です。「贈答品」や「贈り物」といった言葉で使われますね。

このことから、「寄贈」は、特定の相手(施設など)に対して、物を送る、プレゼントするという行為そのものに焦点が当たっているイメージです。

「付」が金銭・物品両方を含む広い意味で「与える」のに対し、「贈」は「物を贈る」という意味合いが強いことから、「寄付」は金銭中心、「寄贈」は物品中心という使い分けが生まれたと考えられますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

会社がNPOに資金援助するのは「寄付」、卒業生が母校にピアノを贈るのは「寄贈」と使い分けるのが基本です。何を、誰に贈るのかを意識しましょう。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスシーンと日常会話、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

何を(お金かモノか)、誰に(団体か施設か)贈るのかを意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:寄付】

  • 当社は毎年、地域貢献活動の一環としてNPO法人に寄付を行っています。
  • 災害復興支援のため、売上の一部を寄付することを決定しました。
  • 社員有志による募金をとりまとめ、赤十字社に寄付しました。
  • 年末調整で寄付金控除を受けるために領収書が必要です。

【OK例文:寄贈】

  • 創立100周年を記念し、母校の図書館に書籍を寄贈しました。
  • 地域の病院に車椅子を数台寄贈いたしました。
  • 取引先から、開業祝いとして絵画を寄贈された。
  • 美術館に所蔵の美術品を寄贈する手続きを進めている。

このように、お金が関わる場合は「寄付」、物品が主体で相手が特定の施設の場合は「寄贈」がしっくりきますね。

日常会話での使い分け

日常会話でも、考え方は同じです。

【OK例文:寄付】

  • 駅前でユニセフの募金に寄付した。
  • 着なくなった服を慈善団体に寄付しようと思う。
  • ふるさと納税も寄付の一種だよね。

【OK例文:寄贈】

  • 卒業制作の彫刻を、学校に寄贈することになった。
  • 読み終えた本がたくさんあるので、近くの図書館に寄贈できないか聞いてみよう。
  • 公園に新しいベンチが寄贈されたらしい。

日常会話では、物品の場合でも「寄付」を使うことも比較的多いかもしれませんね。「服を寄贈する」より「服を寄付する」の方が耳にする機会が多い気がします。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じることもありますが、本来の意味からすると不自然、あるいは失礼にあたる可能性のある使い方を見てみましょう。

  • 【NG】友人の誕生日プレゼントとして、本を寄贈した。
  • 【OK】友人の誕生日プレゼントとして、本を贈った(プレゼントした)。

「寄贈」は、公共性の高い施設や団体に対して物品を贈る場合に使う言葉です。個人へのプレゼントに使うのは不適切ですね。

  • 【NG】被災地に現金を寄贈する。
  • 【OK】被災地に現金を寄付する。(もしくは義援金を送る)

金銭を贈る場合は、通常「寄付」を使います。「寄贈」は物品が対象なので、現金を「寄贈する」とは言いません。

【応用編】似ている言葉「寄進」との違いは?

【要点】

「寄進(きしん)」は、「寄付」や「寄贈」と似ていますが、贈る相手が神社やお寺に限定されるのが大きな違いです。金銭・物品どちらにも使われます。

「寄付」「寄贈」と似た言葉に「寄進(きしん)」があります。これも押さえておくと、言葉の使い分けがさらに正確になりますよ。

「寄進」は、神社やお寺(社寺)に、金銭や土地、物品などを寄付・寄贈することを意味します。

「寄付」や「寄贈」との大きな違いは、対象が社寺に限定されるという点です。

【例文:寄進】

  • 先祖代々お世話になっているお寺に、本堂修復のため寄進した。
  • 神社の境内に、彼の名前が刻まれた灯籠が寄進されている。
  • 彼女は信仰心から、熱心に寺社への寄進を行っている。

神社やお寺に関連する文脈では、「寄付」「寄贈」よりも「寄進」という言葉が使われることが多いですね。

「寄付」と「寄贈」の違いを税制・法律の視点から解説

【要点】

税法上、「寄付」も「寄贈」も寄付金控除(所得控除または税額控除)の対象となり得ますが、対象となる団体や控除の種類、必要な手続き(領収書の要否など)が異なります。金銭の寄付は比較的控除を受けやすいですが、物品の寄贈は評価額の算定などが必要になる場合があります。

「寄付」と「寄贈」は、社会貢献活動として行われることが多いですが、税制や法律の観点からも違いを見てみましょう。

個人が特定の団体に対して金銭を「寄付」した場合、確定申告を行うことで寄付金控除を受けられる場合があります。これは、所得税や住民税が軽減される制度ですね。対象となるのは、国や地方公共団体、特定の公益法人(認定NPO法人など)、政治活動に関する寄付など、法律で定められた範囲に限られます。

物品を「寄贈」した場合も、寄付金控除の対象となる可能性があります。しかし、その物品の金銭的な評価額を算定する必要があり、手続きが金銭の寄付よりも複雑になることがあります。また、対象となる団体や控除の種類も金銭の場合と同様に限定されています。

例えば、美術館に美術品を寄贈する場合や、学校に土地や建物を寄贈する場合などが考えられますが、その評価方法や税務上の扱いは専門的な知識が必要です。

法人(会社)が寄付や寄贈を行う場合も、損金算入(経費として計上すること)ができる範囲が法律で定められています。こちらも、寄付・寄贈の相手先や目的によって扱いが異なります。

つまり、税制上の優遇措置を受ける観点からは、「寄付」も「寄贈」も対象となりえますが、その条件や手続きには違いがあるということです。

寄付金控除の詳細については、国税庁のウェブサイトなどで確認するか、税務署や税理士に相談するのが確実でしょう。

僕が「寄付」と「寄贈」を混同して恥をかいた体験談

実は僕、学生時代にこの「寄付」と「寄贈」を混同して、ちょっと恥ずかしい思いをしたことがあるんです。

当時、所属していたボランティアサークルで、地域の清掃活動と並行して、不要になった古本を集めて地域の児童養護施設に贈る、という企画を立ち上げました。メンバーみんなで協力して、たくさんの本が集まったんです。

いよいよ施設に本を届ける段になり、代表として僕が施設長さんにご挨拶の連絡をすることになりました。意気揚々と電話をかけ、こう切り出したんです。

「〇〇大学の△△サークルの藤吉と申します。この度、私どもの活動で集まりました古本を、ぜひ御施設に寄付させていただきたく、ご連絡いたしました!」

自分としては、善意の気持ちを込めて「寄付」という言葉を選んだつもりでした。ところが、電話口の施設長さんは、少し間を置いて、穏やかな口調でこうおっしゃいました。

「ご連絡ありがとうございます。本のご寄贈、大変ありがたくお受けいたします。子どもたちもきっと喜びますよ」

その瞬間、ハッとしました。「寄付」ではなく「寄贈」…?

電話を切った後、すぐに辞書で調べました。そこで初めて、「寄付」は主にお金、「寄贈」は主に物品を指すこと、特に施設などに贈る場合は「寄贈」がより適切であることを知ったのです。

施設長さんは、僕の間違いを直接指摘することなく、さりげなく正しい言葉を使ってくれたんですね。その優しさに感謝すると同時に、自分の言葉に対する意識の低さが猛烈に恥ずかしくなりました。

良かれと思って使った言葉が、実は場面にそぐわないものだった…。この経験は、言葉の意味を正確に理解し、相手や状況に合わせて使い分けることの大切さを痛感するきっかけになりました。

それ以来、似たような言葉に出会うと、「これはどう違うんだろう?」と立ち止まって考える癖がついたように思います。「寄付」と「寄贈」の違いは、僕にとって忘れられない学びの一つです。

「寄付」と「寄贈」に関するよくある質問

お金を贈る場合はどちらを使いますか?

一般的に「寄付」を使います。公共性の高い事業や団体への金銭的な支援は「寄付」と表現するのが最も自然です。「現金を寄贈する」とは通常言いません。

物品を贈る場合はどちらを使いますか?

「寄贈」を使うのがより適切ですが、「寄付」も使われます。特に学校、病院、図書館などの施設へ物品を贈る場合は「寄贈」が一般的です。ただし、慈善団体へ衣類などを送る場合は「寄付」と言うことも多いです。迷った場合は、「物品を提供する」など、より具体的な言葉を使うのも良いでしょう。

個人へのプレゼントに「寄贈」は使えますか?

いいえ、使えません。「寄贈」は公共性の高い施設や団体に対して使う言葉であり、個人間の贈り物(プレゼント)に使うのは不適切です。その場合は「贈る」「プレゼントする」などを使います。

「寄付」と「寄贈」の違いのまとめ

「寄付」と「寄贈」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 贈るモノで使い分け:主にお金なら「寄付」、主にモノなら「寄贈」
  2. 贈る相手で使い分け:「寄付」は公共性の高い団体など幅広く、「寄贈」は学校や病院など特定の施設が主な対象。
  3. 漢字のイメージが鍵:「付」は広く授け与える、「贈」は物を送るイメージ。
  4. 税制上の扱い:どちらも寄付金控除の対象になり得るが、条件や手続きが異なる。

言葉の成り立ちや使われる場面を意識すると、その違いがより明確になりますね。

基本は「お金かモノか」で判断しつつ、相手や文脈も考慮して使い分けることで、より正確なコミュニケーションができるはずです。

これから自信を持って、適切な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、社会の言葉の違いをまとめたページもぜひご覧ください。