「~だといいな」「~したいな」と願望を表すとき、英語の「hope」と「wish」のどちらを使うか迷ったことはありませんか?
どちらも「願う」「望む」と訳せますが、ネイティブスピーカーはこれらをはっきりと使い分けています。
実はこの二つの言葉、願望の実現可能性が高いか低いかで使い分けるのが基本なんです。「hope」は実現の可能性があること、「wish」は実現が難しいことや現実とは違うことに対して使うことが多いんですよ。
この記事を読めば、「hope」と「wish」のニュアンスの違いから、言葉の由来、文法的な使い分け、さらには似た言葉「desire」との違いまでスッキリ理解でき、英会話や英作文で自信を持って使い分けられるようになります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「hope」と「wish」の最も重要な違い
基本的には、実現可能性があるなら「hope」、実現可能性が低い・または現実と違うことなら「wish」と覚えるのが簡単です。「hope」は未来の出来事に対する期待、「wish」は現在の事実と違う願望や過去の後悔を表すことが多いです。
まず、結論からお伝えしますね。
「hope」と「wish」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | hope | wish |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | (実現の可能性があることを)望む、期待する | (実現可能性が低いこと、現在の事実と違うこと、過去のことなどを)願う、~だったらいいのにと思う |
| 実現可能性 | あり得ると思っている | 低い、ほぼない、不可能(現実と違うことへの願望) |
| 対象となる時制 | 主に未来のこと(現在もあり得る) | 主に現在(事実と違うこと)、過去(後悔)、未来(実現困難なこと) |
| 続く節の動詞の形(注意点) | 通常、現在の時制(未来のことでも) 例:I hope it doesn’t rain tomorrow. |
仮定法(過去形や過去完了形)を使うことが多い 例:I wish I were rich. / I wish I had studied harder. |
| 文法 | 動詞、名詞 | 動詞、名詞 |
| ニュアンス | 前向きな期待、現実的な望み。 | 叶わないかもしれない願望、現実逃避、後悔。 |
一番大切なポイントは、その願望が現実的に起こり得ると思っているかどうかですね。
「明日は晴れるといいな」と天気の可能性を期待するのは「hope」、「宝くじが当たったらいいのにな」と現実離れしたことを願うのは「wish」というイメージです。文法的な使い方の違い(特に wish の後の仮定法)も非常に重要ですよ。
なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む
「hope」は古英語で「期待する、信頼する」という意味があり、実現を信じて待つ前向きなニュアンスを持っています。「wish」はゲルマン語起源で「望む、欲する」という意味があり、単なる欲求や、満たされない状況での願望というニュアンスが根底にあります。
なぜこの二つの言葉が「実現可能性」で使い分けられるようになったのでしょうか。言葉の由来を紐解くと、それぞれの持つ核心的なイメージが見えてきます。
「hope」の由来:「期待する」「信頼する」前向きなイメージ
「hope」という言葉は、古英語の「hopian」に由来します。
これは「期待する」「信頼する」といった意味を持つ言葉でした。
何か良いことが起こることを信じて待つ、という前向きな気持ちが込められています。
この「実現を信じ、期待する」という元々の意味合いが、現代英語の「実現可能性があることを望む」という意味につながっているんですね。
ポジティブな気持ちで未来を見据えるイメージを持つと分かりやすいでしょう。
「wish」の由来:「望む」「欲する」満たされない願望のイメージ
一方、「wish」は、ゲルマン語系の言葉に起源を持ち、元々は「望む」「欲する」という意味合いが強い言葉でした。
これは、「hope」のような「実現への期待」というよりは、単純な欲求や、現状では満たされていないことへの願望を表すニュアンスが根底にあります。
「(今はそうではないけれど)こうだったらいいのに」「(手に入らないかもしれないけれど)これが欲しい」といった、現実とのギャップや実現の難しさを伴う「望み」を表す言葉として使われるようになったと考えられます。
叶わないかもしれない、現状とは違うことへの強い思い、というイメージが根底にあるわけですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスでは、プロジェクトの成功を期待するなら「hope」、実現不可能な納期短縮を願うなら「wish」を使います。日常会話では、友人の回復を祈るなら「hope」、自分が鳥になれたらと空想するなら「wish」です。「I wish you will pass the exam.」は仮定法ではないため不自然です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすい使い方を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
実現可能性や現実との比較を意識すると、使い分けが明確になりますよ。
【OK例文:hope】
- I hope this project will be successful. (このプロジェクトが成功することを期待しています。) ※成功の可能性がある
- We hope to receive your reply by the end of the week. (今週末までにご返信いただけることを期待しております。) ※返信は十分にあり得る
- She hopes for a promotion next year. (彼女は来年の昇進を望んでいる。) ※昇進の可能性がある
【OK例文:wish】
- I wish we had more time to prepare for the presentation. (プレゼンの準備にもっと時間があればよかったのに。) ※実際には時間がなかった(過去の後悔、現在の事実と違う願望)
- He wishes he could speak English fluently. (彼は英語を流暢に話せたらいいのにと思っている。) ※実際には話せない(現在の事実と違う願望)
- They wish the deadline could be postponed, but it’s impossible. (彼らは締め切りが延期できればと願っているが、それは不可能だ。) ※実現不可能な願望
- We wish you success in your new venture. (あなたの新しい事業での成功をお祈りしています。) ※決まり文句、実現可能性とは別に相手への好意を示す場合
未来の実現可能な目標には「hope」、現実と異なる願望や過去の後悔には「wish」+仮定法、という使い分けが基本ですね。ただし、相手への良い願いを伝える決まり文句として「wish you success」のように使うこともあります。
日常会話での使い分け
日常会話でも、考え方は同じです。
【OK例文:hope】
- I hope you feel better soon. (早く良くなることを願っています。) ※回復の可能性がある
- Let’s hope the train isn’t delayed. (電車が遅れないことを願おう。) ※遅れない可能性はある
- I hope she likes the birthday present I bought her. (彼女が私が買った誕生日プレゼントを気に入ってくれるといいな。) ※気に入る可能性がある
【OK例文:wish】
- I wish I were taller. (もっと背が高ければいいのに。) ※実際には高くない(現在の事実と違う願望)
- She wishes she hadn’t eaten so much cake. (彼女はあんなにケーキを食べなければよかったと思っている。) ※実際には食べてしまった(過去の後悔)
- I wish I could fly like a bird. (鳥のように飛べたらいいのになあ。) ※不可能・非現実的な願望
- I wish you a Merry Christmas! (メリークリスマス!) ※決まり文句
現実離れした願望や、「〜だったらなあ」という現在の事実と違うことには「wish」+仮定法がぴったりですね。クリスマスなどの挨拶も「wish」です。
これはNG!間違えやすい使い方
特に「wish」の後の動詞の形に注意が必要です。
- 【NG】I wish I am rich.
- 【OK】I wish I were rich.
現在の事実と違う願望を表す「wish」の後には、仮定法過去を使います。be動詞は主語に関わらず「were」を使うのが伝統的な形です(現代英語では was も使われますが、were がより正式です)。
- 【NG】I wish I didn’t say that.
- 【OK】I wish I hadn’t said that.
過去の行動に対する後悔を表す「wish」の後には、仮定法過去完了(had + 過去分詞)を使います。
- 【△/NG?】I wish you will pass the exam.
- 【OK】I hope you will pass the exam.
- 【OK】I hope you pass the exam.
未来のことについて「〜だといいな」と願う場合、実現可能性があるなら「hope」を使うのが一般的です。「hope」の後には未来形(will)または現在形を使います。「wish」を未来のことについて使う場合は、実現可能性が非常に低いというニュアンスが強くなり、通常は「wish you would/could…」のように助動詞の過去形を使います。「wish you will…」は文法的に間違いではありませんが、やや不自然に聞こえることが多いです。
【応用編】似ている言葉「desire」との違いは?
「desire」は「hope」や「wish」よりも強い欲求や願望を表す、よりフォーマルな言葉です。実現可能性の度合いは文脈によりますが、しばしば達成が難しい目標や強い渇望を示すのに使われます。
「hope」や「wish」と似た意味を持つ言葉に「desire(デザイア)」があります。これも押さえておくと、表現のニュアンスをより豊かにできますよ。
「desire」は、「強く望む」「渇望する」という意味合いを持つ言葉です。「hope」や「wish」よりも、願望の度合いが強く、感情的な響きを持ちます。
また、「hope」や「wish」に比べてフォーマルな場面や書き言葉で使われることが多い傾向があります。
実現可能性については、「hope」のように現実的な場合も、「wish」のように非現実的な場合もありますが、しばしば達成したいという強い意志や、手に入れたいという強い欲求を伴う目標や対象に対して使われます。
【例文:desire】
- He has a strong desire to succeed in his career. (彼はキャリアで成功したいという強い願望を持っている。) ※強い意志
- The report fulfills the requirements you desired. (その報告書はあなたが望んだ要件を満たしています。) ※フォーマルな文脈での「要望」
- She felt an overwhelming desire for chocolate. (彼女はチョコレートに対する抑えきれない欲求を感じた。) ※強い欲求
- Many people desire fame and fortune. (多くの人々が名声と富を渇望する。) ※強い願望
「hope」が穏やかな期待、「wish」が叶わないかもしれない願い、「desire」が強い欲求や渇望、といったニュアンスの違いをイメージすると良いでしょう。
「hope」と「wish」の違いを言語学的に解説
言語学的には、「hope」は話者がその命題(述べられている事柄)が真実である(または真実になる)と信じている、あるいは少なくとも可能であると考えている「現実」モダリティ(または可能性)を示唆します。一方、「wish」は話者がその命題が真実でない(または真実にならない)と認識している「反事実」モダリティを示す典型的な動詞であり、仮定法と結びつきやすい性質を持っています。
「hope」と「wish」の違いは、言語学における「モダリティ(Modality)」、特に話者が命題(述べられている事柄)に対してどのような態度をとっているか、という観点から説明できます。
「hope」のモダリティ:現実性・可能性
「hope」は、話者がその願望が実現する可能性があると信じている、あるいは少なくとも現実的にあり得ると考えていることを示します。これは「現実(Real Lived Reality)」または「可能性(Potentiality)」のモダリティに関連しています。
そのため、「hope」に続く節(that節など)の動詞は、通常、直説法(現実の時制)が用いられます。未来のことについて述べる場合でも、現在形や未来形(will)が使われ、仮定法のような特別な形はとりません。
- I hope she comes to the party. (彼女がパーティーに来ることを望む。→ 来る可能性がある)
- I hope it will be sunny tomorrow. (明日晴れることを望む。→ 晴れる可能性がある)
「wish」のモダリティ:反事実性
一方、「wish」は、話者がその願望が現実とは異なっている、または実現可能性が極めて低い(不可能である)と認識していることを示します。これは「反事実(Counterfactuality)」のモダリティを表す典型的な動詞です。
現在の事実と異なる願望や、過去の事柄に対する後悔など、現実ではない状況を想定するため、「wish」に続く節では仮定法が用いられるのが一般的です。
- I wish I were a bird. (私が鳥だったらなあ。→ 現実:鳥ではない)
- I wish I had known the truth. (真実を知っていたらなあ。→ 現実:知らなかった)
未来のことに対する「wish」も、実現が非常に難しいという反事実的なニュアンスを含むため、「would」や「could」といった助動詞の過去形(仮定法の一部)が使われることが多いです。
- I wish it would stop raining. (雨が止んでくれたらなあ。→ なかなか止まないだろうという気持ち)
このように、「hope」と「wish」の違いは、単なる意味の違いだけでなく、話者がその願望を現実世界とどう関連付けて捉えているか、というモダリティの根本的な違いに基づいていると言えます。この違いが、後続する文の形(直説法か仮定法か)にも影響を与えているわけですね。
僕が「hope」と「wish」を混同して相手を困らせた学生時代の話
僕も学生時代、英会話サークルに入りたての頃に「hope」と「wish」の使い分けで、ネイティブの先生を微妙な気持ちにさせてしまった苦い経験があります…
サークルの活動で、週末にハイキングに行く計画が持ち上がっていました。僕はそのハイキングをとても楽しみにしていたのですが、週間天気予報では残念ながら雨マーク。
活動日、ネイティブの先生と雑談しているときに、僕は満面の笑み(のつもり)でこう言いました。
「I really hope it will be sunny this weekend! We are going hiking!」
自分としては、「週末晴れることを本当に望んでるんです!ハイキングに行くんで!」と、純粋な期待感を伝えたつもりでした。天気なんて、どうなるか分からないし、晴れる可能性だってあるんだから「hope」でいいだろう、と。
ところが、先生は少し困ったような、なんとも言えない表情でこう返してきたんです。
「Oh, really? The forecast says rain all weekend, doesn’t it? Maybe you should say you wish it would be sunny? ‘Hope’ sounds a bit too optimistic given the forecast…」
(「へえ、そうなの?天気予報は週末ずっと雨だって言ってなかったっけ?もしかしたら『晴れたらいいのになあ (wish)』って言うべきかもね。『hope』だと、予報を考えるとちょっと楽観的すぎるように聞こえるかな…」)
その瞬間、僕はハッとしました。確かに天気予報は絶望的だった…。それなのに「hope」を使ったことで、「いやいや予報見てる?現実見えてる?」と相手に思わせてしまったのかもしれない、と。
先生は優しく指摘してくれましたが、自分の言葉選びが相手に与える印象を全く考えられていなかったことに気づき、とても恥ずかしい気持ちになりました。「実現可能性」という客観的な状況だけでなく、その場の状況や相手との共通認識を踏まえて言葉を選ぶことの重要性を学びました。
天気予報が雨だと分かっている状況で「晴れることを期待する(hope)」と言うのは、少し空気が読めていない感じがするのかもしれません。そんな時は、「晴れたらいいのになあ(wish)」と、現実とは違う願望として表現する方が自然だったんですね。
それ以来、単に「実現可能性あり=hope、なし=wish」と機械的に覚えるだけでなく、その場の状況や会話の流れも考えて、より自然に聞こえる方を選ぶように心がけています。
「hope」と「wish」に関するよくある質問
“I wish I hope…” という言い方はありますか?
通常、”I wish I hope…” という形では使いません。「wish」は反事実的な願望、「hope」は現実的な期待を表すため、これらを直接重ねるのは意味的に矛盾することが多いからです。もし「こう期待できたらいいのに(でも実際は期待できない)」というような複雑な気持ちを表したい場合は、別の表現を使うのが一般的です(例:”I wish I could hope for a better outcome, but…”)。
クリスマスに使うのは “hope”? “wish”?
クリスマスの挨拶では、”We wish you a Merry Christmas!” が定型句として使われますね。これは、相手の幸福を願う気持ちを表す伝統的な表現です。「hope」を使うことも文法的には可能ですが(例:”I hope you have a Merry Christmas!”)、決まり文句としては「wish」が一般的です。
どちらを使えばいいか迷ったら、どう判断すればいいですか?
まずは「実現する可能性があるか、現実的か」を考えてみてください。もし「あり得るな」と思えば「hope」を。「いや、無理だろうな」「今の事実とは違うけど、こうだったらな」と思えば「wish」(+仮定法)を使うのが基本です。未来のことなら「hope」を使うことが多いですが、実現が極めて難しい未来なら「wish」も使えます。挨拶や決まり文句では「wish」が使われることも多いので、それはそのまま覚えてしまうのが良いでしょう。
「hope」と「wish」の違いのまとめ
「hope」と「wish」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は実現可能性:実現可能性がある望みは「hope」。実現可能性が低い、現実と違う、過去への後悔は「wish」。
- 時制と文法:「hope」の後ろは通常、直説法(現在形や未来形)。「wish」の後ろは通常、仮定法(過去形や過去完了形)。
- 語源イメージ:「hope」は前向きな「期待」。「wish」は満たされない「欲求」。
- 似た言葉「desire」:より強い欲求や渇望を表すフォーマルな言葉。
- モダリティの違い:「hope」は現実・可能性、「wish」は反事実性を示す。
これらのポイント、特に実現可能性と文法の違いを意識すれば、英語での表現力がさらに豊かになるはずです。
これからは自信を持って、「hope」と「wish」を的確に使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。