「a」と「an」の違いは?英語の冠詞を正しく使い分ける基本

英語の「a」と「an」、どちらを使うべきか迷った経験はありませんか?

中学校で習ったはずなのに、いざ使おうとすると「あれ、どっちだっけ?」となってしまう…。そんな方も少なくないでしょう。

実はこの二つの使い分け、後に続く単語の「最初の音」が母音か子音かで決まる、とてもシンプルなルールなんです。この記事を読めば、「a」と「an」の基本的な違いから、間違いやすい例外、さらにはなぜそのようなルールがあるのかまでスッキリ理解でき、もう迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「a」と「an」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、次にくる単語の最初の「音」が子音なら「a」、母音(ア・イ・ウ・エ・オ)なら「an」を使います。スペル(文字)ではなく「音」で判断するのがポイントです。

まず、結論からお伝えしますね。

「a」と「an」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 a an
基本的な意味 不定冠詞(「ひとつの〜」「ある〜」など、特定されていない可算名詞の単数形につく)
使い分けのルール 次にくる単語の最初の「音」が子音の場合に使う。 次にくる単語の最初の「音」が母音(ア・イ・ウ・エ・オ)の場合に使う。
判断基準 スペル(文字)ではなく「発音(音)」で判断する
具体例(子音の音) a book, a cat, a university, a European
具体例(母音の音) an apple, an egg, an hour, an honest person

一番大切なポイントは、スペルではなく「音」で判断するという点ですね。「university」は「u」で始まりますが、発音は /juːnɪvɜːrsəti/ で子音の /j/ の音なので「a」を使います。逆に「hour」は「h」で始まりますが、発音は /aʊər/ で母音の /a/ の音なので「an」を使います。

なぜ違う?「a」と「an」の役割と発音の関係

【要点】

「a」と「an」はどちらも「ひとつの」という意味の不定冠詞ですが、使い分けは発音のしやすさに基づいています。「an」は、母音の音が続く場合に、発音をスムーズにするために「n」の音が加わった形です。

そもそも、なぜ英語には「a」と「an」という二つの形があるのでしょうか? その理由を知るには、これらの言葉の役割と発音の関係を見ていく必要があります。

不定冠詞「a」「an」の基本的な役割

まず、「a」も「an」も、英語の「冠詞」と呼ばれるグループに属し、特に「不定冠詞」と呼ばれます。冠詞は名詞の前について、その名詞がどのようなものかを補足する役割を持っています。

不定冠詞「a」「an」は、基本的に「数えられる名詞(可算名詞)」の「単数形」の前につき、「たくさんある中のひとつ」や「ある〜」といった、特定されていないものを指し示すときに使われます。

例えば、「I bought a book.(私はある本を一冊買った)」という場合、どの本かは特定されていません。単にたくさんある本の中の一冊、という意味合いになりますね。

「an」が使われる理由:発音しやすさのため

では、なぜ「a」と「an」の二つの形があるのでしょうか?

それは、ズバリ発音のしやすさのためです。

もし「an」がなく「a」しかなかった場合を想像してみてください。「a apple」や「a egg」のように、母音(「ア」や「エ」の音)の前で「a(ア)」を発音しようとすると、音がつながってしまい、少し言いにくい感じがしませんか?

そこで、間に「n」の音を入れることで、「an apple(アンナッポー)」や「an egg(アンネッグ)」のように、スムーズに発音できるようにしたのが「an」の成り立ちです。もともとは「an」が基本形で、子音の前で「n」が脱落して「a」になった、と考えると理解しやすいかもしれません。

つまり、使い分けのルールは、文法的な意味の違いではなく、純粋に「発音のスムーズさ」に基づいているわけですね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

子音の音で始まる「book」や「car」には「a」を、母音の音で始まる「orange」や「umbrella」には「an」をつけます。「university」(/j/の音)や「European」(/j/の音)は子音扱い、「hour」(/a/の音)や「honest」(/ɒ/の音)は母音扱いになる点に注意が必要です。

ルールがわかったところで、具体的な例文を見て使い方をマスターしましょう。特に間違いやすい例外パターンに注意してくださいね。

「a」を使う場合(子音の音で始まる名詞)

後に続く単語の最初の「音」が子音(/k/, /b/, /d/, /j/ など)の場合に使います。

  • She has a dog. (彼女は犬を一匹飼っている。) – /d/ の音
  • He bought a new car. (彼は新しい車を一<0xE5><0x8F><0xB0>買った。) – /k/ の音
  • There is a big tree in the park. (公園に大きな木が一本ある。) – /b/ の音
  • I need a pen. (ペンが一本必要だ。) – /p/ の音
  • Is there a hospital near here? (この近くに病院はありますか?) – /h/ の音(発音されるh)

「an」を使う場合(母音の音で始まる名詞)

後に続く単語の最初の「音」が母音(/æ/, /e/, /ɪ/, /ɒ/, /ʌ/ など、日本語のア・イ・ウ・エ・オに近い音)の場合に使います。

  • I ate an orange for breakfast. (私は朝食にオレンジを一個食べた。) – /ɒ/ の音
  • She wants to be an engineer. (彼女はエンジニアになりたがっている。) – /e/ の音
  • It was an interesting movie. (それは面白い映画だった。) – /ɪ/ の音
  • He waited for an hour. (彼は1時間待った。) – /aʊ/ の音(hを発音しない)
  • She is an honest person. (彼女は正直な人だ。) – /ɒ/ の音(hを発音しない)

ポイントは、スペルではなく、あくまで「音」で判断することですね。

注意すべき例外:「h」の発音と「u」「eu」のスペル

特に間違いやすいのが、スペルと最初の音が一致しないパターンです。

1. 「h」で始まる単語

「h」の音が発音される場合は「a」を使いますが(例: a house, a history)、発音されない(黙字の h)場合は母音の音で始まるため「an」を使います。

  • an hour (1時間)
  • an honest mistake (正直な間違い)
  • an heir (相続人)

2. 「u」や「eu」で始まる単語

スペルが母音の「u」や「eu」で始まっていても、最初の音が子音の /j/ (「ユ」のような音)で始まる場合は「a」を使います。

  • a university (大学)
  • a uniform (制服)
  • a useful tool (便利な道具)
  • a European country (ヨーロッパの国)
  • a unicorn (ユニコーン)

逆に、「u」で始まっていても、最初の音が母音の /ʌ/ (「ア」のような音)で始まる場合は「an」を使います。

  • an umbrella (傘)
  • an uncle (おじ)
  • an unhappy person (不幸な人)

これらの例外は、ルールを丸暗記するよりも、単語の発音を意識する習慣をつけることで自然と身についていきますよ。

これはNG!間違えやすい使い方

ルールを混同してしまうと、次のような間違いが起こりがちです。

  • 【NG】 I need an pen.
  • 【OK】 I need a pen.

「pen」の最初の音は子音 /p/ なので「a」が正解です。

  • 【NG】 She arrived a hour ago.
  • 【OK】 She arrived an hour ago.

「hour」の最初の「h」は発音しないため、母音 /aʊ/ の音で始まります。したがって「an」が正解です。

  • 【NG】 He studies at an university in London.
  • 【OK】 He studies at a university in London.

「university」の最初の音は子音 /j/ なので「a」が正解です。スペルに惑わされないようにしましょう。

「a」と「an」の違いを歴史的視点から解説

【要点】

不定冠詞「a/an」は、もともと古英語の「ān(one)」という単語に由来します。時とともに発音が弱まり、「an」となり、さらに子音の前で「n」が脱落して「a」が生まれました。このため、使い分けは単語の意味ではなく、発音上の都合によるものです。

「a」と「an」の使い分けが、なぜスペルではなく「音」で決まるのか、その背景には英語の歴史的な変化があります。

実は、「a」も「an」も、そのルーツを辿ると古英語の「ān」という単語に行き着きます。この「ān」は、現代英語の「one(ひとつ)」と同じ意味を持っていました。

時が経つにつれて、「ān」の発音は徐々に弱まり、不定冠詞として使われる際には「an」という形になりました。この段階では、まだ後に続く単語が母音で始まろうが子音で始まろうが、「an」が使われていたと考えられています。

しかし、子音の前で「an」を発音すると、例えば「an book」のように少し発音しにくい場面が出てきます。そのため、子音の音の前では、発音しやすいように「n」の音が自然に脱落し、「a」という形が生まれたのです。

一方で、母音の前では「n」の音があった方がスムーズに発音できるため、「an」の形がそのまま残りました(例:「an apple」)。

このように、「a」と「an」の使い分けは、もともと「one」という一つの単語が、発音上の都合によって時代とともに形を変えていった結果生まれたものなのです。だからこそ、スペルではなく「音」が使い分けの基準となっているわけですね。英語の歴史を感じさせる面白いルールだと思いませんか?

僕がプレゼンで「a university」を間違えた恥ずかしい話

僕も昔、この「a」と「an」の使い分けで、人前で恥ずかしい思いをしたことがあります。あれは忘れもしない、大学の英語プレゼンテーションの授業での出来事でした。

当時、僕は自分の留学経験について発表することになっていて、原稿もしっかり準備し、何度も練習して本番に臨みました。発表自体は順調に進んでいたのですが、問題は質疑応答の時間に起こりました。

聴衆の一人から、「留学先の大学についてもう少し詳しく教えてください」という質問が出たんです。僕は意気揚々と答え始めました。「Yes, I studied at… uh… an university in California called…」と言いかけた瞬間、ネイティブの先生が、少し困ったような、でもちょっと面白そうな顔で僕の言葉を遮りました。

「Wait, did you say ‘an university’?」

一瞬、何が問題なのか分かりませんでした。「university」は母音の「u」で始まっているのだから、「an」で正しいはずだ、と頭の中で考えていました。しかし、先生の表情と教室の微妙な空気から、自分が何か基本的な間違いを犯したことに気づき、顔が真っ赤になりました。

先生は優しく説明してくれました。「’University’ starts with a ‘y’ sound, like ‘you’. So, it should be ‘a university’. (Universityは ‘you’ みたいに ‘y’ の音で始まるんだ。だから ‘a university’ が正しいんだよ)」

その瞬間、「しまった!スペルじゃなくて音で判断するんだった!」と、授業で習ったルールを思い出しました。頭では理解していたつもりでも、いざ話すとなると、スペルに引っ張られて間違えてしまったのです。

プレゼンの内容自体は悪くなかったはずなのに、この基本的な冠詞の間違いのせいで、なんだか締まらない発表になってしまった気がして、その日は一日中落ち込みました。

でも、この恥ずかしい経験のおかげで、「a」と「an」の使い分けは絶対に「音」で判断する!というルールが、骨身にしみて理解できました。それ以来、英語を話すときや書くときには、単語のスペルだけでなく、必ずその「最初の音」を意識するようにしています。失敗は成功のもと、とはよく言ったものですよね。

「a」と「an」に関するよくある質問

Q1: 形容詞が名詞の前にある場合は、どうやって判断すればいいですか?

A1: 不定冠詞「a」か「an」かは、直後に来る単語の最初の音で決まります。たとえ名詞が子音の音で始まっていても、その直前にある形容詞が母音の音で始まっていれば「an」を使います。逆も同様です。

  • an interesting book (book は子音 /b/ の音だが、interesting が母音 /ɪ/ の音で始まるため an)
  • a unique opportunity (opportunity は母音 /ɒ/ の音だが、unique が子音 /j/ の音で始まるため a)

Q2: 頭字語(略語)の場合はどうなりますか?(例:FBI, NASA)

A2: 頭字語の場合も、ルールは同じで「最初の音」で判断します。その頭字語がアルファベットの文字として発音されるか、単語として発音されるかで変わってきます。

  • an FBI agent (FBI は /ef biː aɪ/ と発音され、最初の音 /e/ が母音のため an)
  • a NASA project (NASA は /næsə/ と発音され、最初の音 /n/ が子音のため a)
  • an SOS signal (SOS は /es oʊ es/ と発音され、最初の音 /e/ が母音のため an)

Q3: 不可算名詞(数えられない名詞)には「a」や「an」は使えますか?

A3: いいえ、原則として不可算名詞(例: water, information, advice, furniture)には不定冠詞「a」や「an」はつきません。「a」や「an」は「ひとつの」という意味合いを持つため、数えられない名詞には使えないのです。ただし、「a piece of advice」や「a cup of water」のように、単位を表す語句を伴う場合は使えます。

「a」と「an」の違いのまとめ

「a」と「an」の違い、これで完全にマスターできたでしょうか。

最後に、この記事の大事なポイントをまとめておきましょう。

  1. 使い分けは「音」が基準:次に続く単語の最初の音が子音なら「a」、母音(ア・イ・ウ・エ・オ)なら「an」を使う。
  2. スペルに注意:「university」のように「u」で始まっても子音の音なら「a」、「hour」のように「h」で始まっても母音の音なら「an」を使う。
  3. 発音しやすさが理由:母音の前で発音しやすいように「n」が入ったのが「an」の成り立ち。
  4. 直後の単語で判断:名詞の前に形容詞などがある場合は、その直後の単語の最初の音で判断する。

ルール自体はシンプルですが、特に例外的なパターンは慣れるまで少し練習が必要かもしれませんね。英語の文章を読んだり聞いたりする際に、「なぜここは a なんだろう?」「なぜ an なんだろう?」と少し意識してみるだけでも、自然と感覚が身についていきますよ。

これから自信を持って、「a」と「an」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。