「プロセス」と「プロシージャ」、どちらも仕事の手順や流れを説明する際によく使われるカタカナ語ですよね。
でも、「製造プロセス」と「作業プロシージャ」、この二つの言葉の違いを明確に説明できますか? なんとなく使い分けているけれど、実は意味合いが異なるんです。この違いは、目的達成までの「全体的な流れ」なのか、その中の「具体的な手順」なのかという点にあります。
この記事を読めば、「プロセス」と「プロシージャ」の根本的な意味の違い、由来、ビジネスやIT分野での具体的な使い分け、そして似た言葉との違いまで、スッキリと理解できます。もうマニュアル作成や説明の場面で迷うことはありませんよ。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「プロセス」と「プロシージャ」の最も重要な違い
基本的には「プロセス(process)」が目的達成までの「全体的な流れ」や「工程」を指し、「プロシージャ(procedure)」がそのプロセスを実行するための「具体的な手順」や「手続き」を指します。「プロセス」はWhy/What、「プロシージャ」はHowに焦点を当てていると覚えるのが簡単です。
まず、結論として「プロセス」と「プロシージャ」の最も重要な違いを一覧表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けは大丈夫でしょう。
| 項目 | プロセス (Process) | プロシージャ (Procedure) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 工程、過程、進行、一連の活動 | 手順、手続き、進め方、所作 |
| 焦点 | 目的達成までの全体的な流れ、段階、変化 | 特定のタスクを実行するための具体的なステップ、方法 |
| 抽象度 | 比較的高い(What / Why) | 比較的低い(How) |
| 範囲 | 広範、複数の手順を含むことがある | 限定的、特定の行動手順 |
| 具体例 | 開発プロセス、思考プロセス、製造プロセス、業務プロセス | 操作プロシージャ、緊急時対応プロシージャ、検査プロシージャ |
| イメージ | フローチャート、ロードマップ | マニュアル、指示書、レシピ |
ポイントは、「プロセス」が大きな目的を達成するための段階的な「流れ全体」を俯瞰的に捉えるのに対し、「プロシージャ」はその流れの中の特定の作業を「どのように実行するか」という具体的な手順を示す、という点です。
例えば、「新製品開発プロセス」という大きな流れの中に、「試作品の性能テストプロシージャ」という具体的な手順が含まれる、といった関係性になりますね。
なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む
「プロセス」はラテン語の「前に進む」が語源で、目的へ向かう進行・流れのイメージ。「プロシージャ」も同じ語源ですが、「進め方」に焦点が当たり、定められた手続きや手順のイメージが強くなります。
この二つの言葉が「流れ」と「手順」という異なるニュアンスを持つ背景には、それぞれの言葉の成り立ちが関係しています。
「プロセス」の由来:「前進する」「進行する」流れのイメージ
「プロセス(process)」の語源は、ラテン語の “procedere”(前に進む)の過去分詞 “processus”(前進、進行)に由来します。
- “pro-” は「前に (forward)」
- “cedere” は「行く (go)」
文字通り、目的(ゴール)に向かって段階的に「前に進んでいく」一連の流れや過程を指す言葉として使われるようになりました。
化学反応のプロセス、生物の成長プロセス、物事の製造プロセスなど、インプットがアウトプットへと変化していく「進行」や「変化の過程」そのものに焦点が当たっているイメージです。
「プロシージャ」の由来:「進め方」「手続き」としての手順のイメージ
一方、「プロシージャ(procedure)」も、同じラテン語の “procedere”(前に進む)に由来しますが、こちらはフランス語の “procédure” を経由して英語に入ってきました。
フランス語の段階で、「訴訟手続き」や「議事進行」といった、定められた「進め方」や「手続き」という意味合いが強くなりました。
そのため、英語の “procedure” も、特定の目的を達成するために確立された、あるいは公式に定められた一連の行動ステップ、つまり「手順」や「手続き」を指す言葉として定着しました。
「プロセス」が自然発生的な変化の過程も含むのに対し、「プロシージャ」はより人為的に定められた、具体的な「やり方」のニュアンスが強いですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
「採用プロセス全体を見直す」「ソフトウェアのインストールプロシージャに従う」のように使います。全体的な流れや工程には「プロセス」、具体的な操作手順や手続きには「プロシージャ」を使い分けましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーン、IT・システム開発分野、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
業務改善やプロジェクト管理などで頻繁に登場します。
【OK例文:プロセス】
- 我が社の採用プロセスは、書類選考、一次面接、二次面接、最終面接の4段階です。(採用活動全体の流れ)
- 顧客からの問い合わせ対応プロセスを標準化し、対応品質の向上を目指す。(業務全体の工程)
- 意思決定プロセスの透明性を高めることが、組織の課題だ。(意思決定に至る過程)
- 新商品の企画から販売までのプロセスには、約半年かかります。(企画から販売までの一連の流れ)
【OK例文:プロシージャ】
- 経費精算は、定められたプロシージャに従って申請してください。(具体的な申請手順)
- 緊急時の避難プロシージャを全従業員に周知徹底する。(具体的な避難手順)
- 品質管理部門が作成した検査プロシージャに基づき、製品チェックを行う。(具体的な検査手順)
- 新規アカウント発行のプロシージャは、マニュアルのP.5に記載されています。(具体的な発行手続き)
「プロセス」が目的までの大きな段階や流れを示しているのに対し、「プロシージャ」はその中の特定のタスクを実行するための具体的なステップを示しているのが分かりますね。
IT・システム開発分野での使い分け
システム設計やプログラミングの文脈でも明確に使い分けられます。
【OK例文:プロセス】
- ソフトウェア開発プロセス(例:ウォーターフォール、アジャイル)について学ぶ。(開発全体の進め方・工程)
- OS内で複数のプロセスが同時に実行されている。(OSが管理するプログラム実行の単位)
- データの収集から分析、可視化までの一連のプロセスを自動化した。(データ処理全体の流れ)
【OK例文:プロシージャ】
- データベースのバックアッププロシージャを定期的に実行する。(具体的なバックアップ手順)
- このプログラミング言語では、特定の処理をまとめたものをプロシージャ(手続き)と呼ぶ。(サブルーチンの一種)
- システム障害発生時の復旧プロシージャを定義しておく。(具体的な復旧手順)
- インストールプロシージャに従って、ソフトウェアをセットアップしてください。(具体的なインストール手順)
ここでも、「プロセス」は全体的な工程やOSの動作単位、「プロシージャ」は具体的な手順やプログラムの構成要素を指しています。
これはNG!間違えやすい使い方
範囲や抽象度を取り違えると、不自然な表現になることがあります。
- 【NG】 我が社の経営プロシージャを見直す必要がある。(経営全体は「戦略」や「プロセス」。「プロシージャ」は具体的すぎる)
- 【OK】 我が社の経営プロセス(または戦略)を見直す必要がある。
- 【NG】 パソコンの起動プロセス(起動の手順)を説明します。(具体的な手順なら「プロシージャ」が適切。「プロセス」だとOS内部の動作全体のような響きに)
- 【OK】 パソコンの起動プロシージャ(手順)を説明します。
- 【OK】 パソコンが起動する際の内部的なプロセスは複雑だ。
- 【NG】 料理のプロシージャ(料理全体)を学ぶ。(料理を作る全体の流れなら「プロセス」)
- 【OK】 料理のプロセスを学ぶ。
- 【OK】 この料理を作るためのプロシージャ(レシピの手順)は簡単だ。
このように、「プロセス」と「プロシージャ」は包含関係にあることが多い(プロセスの中にプロシージャが含まれる)ため、話している対象の範囲や具体性のレベルを意識することが重要ですね。
【応用編】似ている言葉「メソッド」との違いは?
「メソッド(method)」は、特定の目的を達成するための「方法」や「方式」を指します。「プロシージャ」が具体的な「手順」そのものに焦点を当てるのに対し、「メソッド」はその手順を含む体系的な「やり方」や「考え方」というニュアンスが強いです。
「手順」や「方法」に関連する言葉として、「メソッド(method)」もあります。これも合わせて違いを見ておきましょう。
「メソッド」は、特定の目的を達成するための体系的な「方法」「方式」「流儀」を指します。科学的な研究手法(scientific method)、教育方法(teaching method)、問題解決の手法などがこれにあたります。
「プロシージャ」が、タスクを実行するための具体的な「手順」そのものに焦点を当てているのに対し、「メソッド」は、その手順の背景にある考え方や原理原則も含んだ、より体系化された「やり方」というニュアンスがあります。
例えば、
- 問題解決のための特定の手法(例:ロジックツリー)は「メソッド」
- そのメソッドを使って問題を解決していく具体的なステップは「プロシージャ」(あるいはプロセス)
と考えることができます。
また、プログラミング(特にオブジェクト指向言語)においては、オブジェクトが持つ操作や振る舞いを定義したものを「メソッド」と呼びますね。これは「プロシージャ」とは異なる使われ方です。
| 言葉 | 中心的な意味 | 焦点 | イメージ |
|---|---|---|---|
| プロセス | 工程、過程 | 全体的な流れ、変化 | フローチャート |
| プロシージャ | 手順、手続き | 具体的なステップ、方法 | マニュアル、指示書 |
| メソッド | 方法、方式 | 体系的なやり方、考え方 | 手法、流儀 |
「プロセス」と「プロシージャ」の関係性を図解
一つの大きな「プロセス」(例:家を建てる)は、複数の具体的な「プロシージャ」(例:基礎工事の手順、壁の組み立て手順)から構成されます。プロセスが全体像、プロシージャがその詳細な部品、という関係性で理解しましょう。
「プロセス」と「プロシージャ」の関係性を、より視覚的にイメージしてみましょう。
このように、多くの場合、
- まず、大きな目的を達成するための全体的な流れである「プロセス」が存在します。
- そのプロセスは、いくつかの段階やタスクに分かれています。
- そして、各段階やタスクを具体的にどのように実行するかを示したものが「プロシージャ」です。
つまり、一つの「プロセス」の中に、複数の「プロシージャ」が含まれる、という階層構造になっていることが多いのです。
もちろん、非常に単純な作業であれば、プロセスとプロシージャがほぼ同じものを指す場合もありますが、基本的には「プロセス=全体像」「プロシージャ=詳細手順」という関係性を理解しておくと、使い分けが容易になりますね。
新人の頃、マニュアル作成で「プロセス」と「プロシージャ」を混同した話
僕が社会人になりたての頃、部署内の業務マニュアルを作成する仕事を任されたことがありました。その時、まさにこの「プロセス」と「プロシージャ」を混同して、先輩に指導された経験があります。
その業務は、顧客からの問い合わせを受けてから、調査し、回答するまでの一連の流れでした。僕は、その流れ全体を説明するつもりで、マニュアルのタイトルを「顧客問い合わせ対応プロシージャ」としてしまったのです。そして、その中に「担当者割り当て」「原因調査」「回答案作成」「上長承認」「顧客への回答」といった項目を並べていきました。
意気揚々とドラフトを先輩に見せたところ、「うーん、タイトルは『プロシージャ』じゃなくて『プロセス』の方がしっくりくるかな」と言われました。
先輩の説明はこうでした。「君が書いたのは、問い合わせを受けてから解決するまでの『全体的な流れ=プロセス』だよね。『プロシージャ』と言うと、例えば『原因調査』の中の、データベースを検索する具体的な『手順』とか、特定のツールの『操作手順』みたいに、もっと細かいステップを指すことが多いんだよ」と。
そして、「このマニュアルの目的は、まず全体の流れ(プロセス)を理解してもらうことだろう? その上で、各段階の具体的なやり方(プロシージャ)が必要なら、それは別紙とか、詳細手順として書くべきだね」と教えてくれました。
言葉の定義を曖昧なまま使うと、文書の意図や構造が分かりにくくなってしまうことを痛感しましたね。
「プロセス」で全体像を示し、「プロシージャ」で詳細を記述する。この使い分けを意識するだけで、マニュアルや説明文書が格段に分かりやすくなる。あの時の先輩のアドバイスは、今でも僕の仕事の基本になっています。
「プロセス」と「プロシージャ」に関するよくある質問
ここでは、「プロセス」と「プロシージャ」について、よくある質問にお答えします。
Q1: 「業務プロセス」と「業務プロシージャ」はどう違いますか?
A1: 「業務プロセス」は、特定の業務目標(例:受注処理、商品発送)を達成するための一連の活動の流れ全体を指します。一方、「業務プロシージャ」は、そのプロセスに含まれる個々のタスク(例:受注データの入力、発送伝票の作成)を実行するための具体的な手順やルールを指します。「業務プロセス」の中に複数の「業務プロシージャ」が含まれるのが一般的です。
Q2: 日本語の「手順」はどちらに近いですか?
A2: 日本語の「手順」は、具体的なステップや方法を指すことが多いので、「プロシージャ」に近いと言えます。「作業手順」「操作手順」のように使われますね。ただし、文脈によっては「プロセス」が示すような全体的な流れを「手順」と表現することもあります(例:「成功への手順」)。
Q3: どちらを使うべきか迷ったらどうすればいいですか?
A3: 話している内容が、目的達成までの「全体的な流れ」や「工程」であれば「プロセス」を、特定の作業の「具体的なやり方」や「決まった手続き」であれば「プロシージャ」を使うのが基本です。それでも迷う場合は、「流れ」「工程」「手順」「手続き」「方法」といった、より具体的な日本語で表現するのが、誤解を避ける上で最も確実でしょう。
「プロセス」と「プロシージャ」の違いのまとめ
「プロセス」と「プロシージャ」の違い、これでスッキリしましたね!
最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- 焦点が違う:「プロセス」は全体的な流れ・工程 (What/Why)、「プロシージャ」は具体的な手順・手続き (How)。
- 抽象度が違う:「プロセス」は抽象度が高く、「プロシージャ」は抽象度が低い。
- 関係性:多くの場合、「プロセス」の中に「プロシージャ」が含まれる。
- 語源イメージ:「プロセス」は「前進する」、「プロシージャ」は「進め方」。
- 類語:「メソッド」は体系的な方法・方式。
言葉の定義とその範囲を正確に理解することで、業務指示やマニュアル作成、システム設計など、様々な場面でより明確なコミュニケーションが可能になります。
特に、誰かに作業を依頼したり、方法を説明したりする際には、全体像(プロセス)と詳細手順(プロシージャ)を意識して使い分けることが、認識のズレを防ぐ上で非常に重要ですね。
これから自信を持って、「プロセス」と「プロシージャ」という言葉を使っていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。