「section」と「article」の違いとは?文章や契約書の構成要素を解説

文書や契約書などで「章」や「条項」、「記事」などを英語で表現する際、「section」と「article」、どちらを使うべきか迷ったことはありませんか?

どちらも文書を構成する一部分を指しますが、使われる文脈やニュアンスには違いがありますよね。

一般的には「section」がより広範な「部分・区分」を指すのに対し、「article」は特に法律文書の「条項」や独立した「記事」を指すことが多いです。この記事を読めば、「section」と「article」の根本的な違いから、具体的な使い分け、さらには類似表現との比較までスッキリ理解でき、英文読解や作成で迷うことはもうありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「section」と「article」の最も重要な違い

【要点】

「section」は文書、場所、物などを「切り分けた部分」を幅広く指す一般的な言葉です。一方、「article」は、法律文書や規約などの「条項」、新聞・雑誌などの独立した「記事」、あるいは個々の「品物」といった特定の意味で使われることが多いです。

まず、結論からお伝えしますね。

「section」と「article」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。使われる文書の種類や文脈に注目すると分かりやすいでしょう。

項目 section article
中心的な意味 部分、区分、セクション、(本などの)節、章、(新聞などの)欄 条項(法律、契約書)、記事(新聞、雑誌)、品物、冠詞
指す範囲 広範。文書、場所、組織、物など様々な「部分」 特定的。法律文書の構成単位、独立した読み物、個々の物など
主な使われ方 ・報告書や論文の「章」「節」
・ウェブサイトの「区分」
・店の「売り場」
・新聞の「欄」(例: sports section)
・法律や契約書の「第〇条」
・憲法の「条」
・新聞や雑誌の「記事」
・(あまり一般的でないが)個々の「品物」
ニュアンス 全体を構成する一部分、切り分けられた区画 独立した項目、個別の規定や文章
階層関係 しばしば Article の下位区分として使われることがある (例: Article 1, Section 2) しばしば Section より上位の区分として使われることがある

一番大切なポイントは、「section」は汎用性が高く、様々な「部分」を指せるのに対し、「article」は使われる場面が比較的限定されるということですね。

特に契約書や法律文書を読む際には、「Article(条)」の下に「Section(項)」が来る階層構造になっていることが多いので、この関係性を知っておくと理解が深まります。

なぜ違う?言葉の核心的な意味からイメージを掴む

【要点】

「section」の語源は「切ること」で、全体を切り分けた一部分というイメージ。「article」の語源は「小さな関節」で、全体を構成する独立した個々の部分・項目というイメージです。

なぜこの二つの言葉に意味の違いが生まれるのか、言葉の成り立ち(語源)を紐解くと、その核心的なイメージが見えてきますよ。

「section」の核心:「切り分けられた」部分

「section」の語源は、ラテン語の「sectio」で、「secare(切る)」という動詞から派生しています。「sector(部門)」や「segment(部分)」とも関連がありますね。

つまり、「section」の元々のイメージは、全体を「切り分けた」ひとつの部分、区画です。

本の一部分(章、節)、組織の一部分(部門、課)、場所の一部分(区域、売り場)など、様々なものを切り分けてできた「一部分」を指す、非常に汎用性の高い言葉であることが、この語源から理解できますね。

「article」の核心:「個別の項目」や「独立した記事」

一方、「article」の語源は、ラテン語の「articulus」で、「artus(関節、肢)」の指小形(小さいものを示す形)です。「joint(関節)」や「limb(手足)」に関連しています。

元々は「小さな関節」を意味し、そこから、全体を構成する「個々の部分」や「項目」を指すようになりました。

法律や契約が個別の「条項」から構成されること、新聞や雑誌が独立した「記事」の集まりであること、あるいは(文法用語としての)「冠詞」(a, an, the)が文の小さな構成要素であることなどは、この「個別の項目」というイメージに繋がります。

また、あまり一般的ではありませんが、「an article of clothing(衣料品1点)」のように、個々の「品物」を指す用法があるのも、この語源と関連していると考えられますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

報告書の「第3章」は “Section 3″、契約書の「第5条」は “Article 5″、新聞の「スポーツ欄」は “sports section”、特定の話題に関する「記事」は “an article about…” と表現するのが一般的です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスシーンと日常的な文脈、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け(契約書、報告書など)

文書の種類によって使い分けがはっきりしていることが多いです。

【OK例文:section】

  • Please refer to Section 5 of the report for the detailed data. (詳細なデータについては、報告書のセクション5を参照してください。) ※報告書の章・節
  • This issue is discussed in the following section. (この問題は次のセクションで議論されます。) ※文書内の区分
  • The marketing department is divided into several sections. (マーケティング部はいくつかの課に分かれています。) ※組織の区分
  • Let’s move on to the Q&A section. (質疑応答のセクションに移りましょう。) ※プレゼンなどの構成部分

【OK例文:article】

  • Article 10 of the contract outlines the termination conditions. (契約書の第10条に解約条件が概説されています。) ※契約書の条項
  • Freedom of speech is guaranteed by Article 21 of the Constitution. (言論の自由は憲法第21条によって保障されています。) ※法律の条項
  • I read an interesting article about AI in the newspaper this morning. (今朝の新聞でAIに関する興味深い記事を読みました。) ※新聞記事
  • Each article of the shipment was carefully inspected. (積み荷の各品物は慎重に検査された。) ※個々の品物(やや稀な用法)

このように、一般的な文書の「部分」は「section」、法律や契約の「条項」、新聞・雑誌の「記事」は「article」と使い分けるのが基本ですね。

日常会話・一般的な文書での使い分け

日常的な場面では、「section」の方が「部分」という意味で広く使われます。

【OK例文:section】

  • Which section of the library has history books? (図書館のどのセクションに歴史の本がありますか?) ※場所の区分
  • I usually read the sports section of the newspaper first. (私はたいてい新聞のスポーツ欄を最初に読みます。) ※新聞の欄
  • This cake recipe has a difficult section. (このケーキのレシピには難しい部分がある。) ※手順の一部

【OK例文:article】

  • Did you see that magazine article about climate change? (気候変動に関するあの雑誌記事を見た?) ※雑誌記事
  • “A” and “the” are called articles in English grammar. (英語の文法では「a」と「the」は冠詞と呼ばれます。) ※文法用語
  • She collects rare articles of furniture. (彼女は珍しい家具類を収集している。) ※品物

これはNG!間違えやすい使い方

意味の範囲を取り違えると不自然な表現になります。

  • 【NG】 Please read Article 3 of this user manual.
  • 【OK】 Please read Section 3 of this user manual. (一般的なマニュアルの章・節は “Section”)

ユーザーマニュアルのような一般的な文書の構成単位には「section」を使うのが普通です。「Article」を使うと法律文書のような堅苦しい響きになります。

  • 【NG】 The supermarket has a large frozen food article.
  • 【OK】 The supermarket has a large frozen food section. (店の売り場・区画は “section”)

店の売り場のような場所の区分には「section」を使います。「article」には通常、場所を指す意味はありません。

  • 【NG】 I wrote a short section for the company newsletter.
  • 【OK】 I wrote a short article for the company newsletter. (独立した読み物としての「記事」は “article”)

社内報などに掲載される独立した文章は「記事(article)」と呼ぶのが一般的です。「section」だと、何か大きな文書の一部分を書いたようなニュアンスになります。

【応用編】似ている言葉「chapter」「clause」「item」「paragraph」との違いは?

【要点】

「chapter」は本などの比較的大きな区切り(章)。「clause」は契約書や法律文の「条項」(ArticleやSectionの下位区分にも)。「item」はリストなどの「項目」。「paragraph」は文章の「段落」。それぞれ指す単位や文脈が異なります。

文書の構成要素を表す言葉は他にもあります。それぞれの違いを知っておくと、より正確な表現が可能です。

  • chapter: 主に書籍や論文などの比較的大きな区切り、「章」を指します。通常、「section」よりも上位の区分です。(例:The book is divided into ten chapters. その本は10章に分かれています。)
  • clause: 特に法律文書や契約書の中の特定の「条項」や「ただし書き」を指します。しばしば「Article」や「Section」の下位区分として使われます。文法用語としては「節」を意味します。(例:Please pay attention to clause 5 in Article 3. 第3条の5項にご注意ください。)
  • item: リスト、議題、コレクションなどの個々の「項目」や「品目」を指します。(例:Let’s discuss the next item on the agenda. 議題の次の項目について議論しましょう。)
  • paragraph: 文章における「段落」を指します。通常、いくつかの文(sentence)から構成されます。(例:The key information is in the third paragraph. 重要な情報は第3段落にあります。)

これらの言葉は、文書の種類や階層構造における位置づけによって使い分けられます。「Chapter > Section > Clause / Paragraph > Sentence」のような階層をイメージすると分かりやすいかもしれませんね。「Item」はリストの項目を指す際に便利です。

「section」と「article」の違いを言語学的に解説

【要点】

意味論的には、「section」は全体の部分集合や物理的な分割を指すことが多いのに対し、「article」は特定のジャンル(法律、ジャーナリズム)における慣習的な構成単位や、個物性(item-ness)を強調する際に用いられます。テキストのジャンルや慣習が使い分けに大きく影響します。

言語学的に見ると、「section」と「article」の使い分けは、意味論(Semantics)における指示対象の性質と、語用論(Pragmatics)における特定のジャンルや談話共同体での慣習に大きく依存しています。

section」は、その語源(ラテン語 secare「切る」)が示すように、全体(whole)を何らかの基準で分割した部分(part)を広く指示する語です。この「部分」は、物理的な空間(a section of the room)、組織(a section of the company)、テキスト(a section of the report)など、様々な領域に適用可能です。意味的には、全体との包含関係や、隣接する他の部分との境界を意識させる、比較的一般的な区分マーカーと言えます。

一方、「article」は、語源(ラテン語 articulus「小さな関節」)が示唆するように、全体を構成する個別の要素や単位を指示しますが、その適用範囲は「section」よりも限定的です。特定のジャンルにおける慣習的な用法が強く影響しています。

  1. 法律・規約分野:「Article」は、憲法、条約、契約書などにおける主要な構成単位「条」を指す専門用語として定着しています。ここでは、「section」はしばしば「article」の下位区分「項」として用いられます (Article III, Section 1 of the U.S. Constitution など)。
  2. ジャーナリズム分野:「Article」は、新聞、雑誌、ウェブサイトなどに掲載される独立した読み物としての「記事」を指します。ここでは、内容的な完結性が含意されます。「section」は、新聞の「スポーツ欄 (sports section)」のように、記事が属するカテゴリー区分を指すことがあります。
  3. その他の用法:「an article of faith(信条)」のように抽象的な「項目」を指したり、「articles of clothing(衣料品)」のように個々の「品物」を指すこともありますが、現代英語では限定的な用法です。文法用語の「冠詞」もこの流れに属します。

このように、「article」の用法は、特定の談話共同体(discourse community)における慣習(convention)によって強く規定されています。単なる意味的な「部分」というよりは、特定のジャンルにおける「機能的な単位」としての性格が強いと言えるでしょう。

参考文献としては、テキスト言語学やジャンル分析、専門用語辞典(例: Black’s Law Dictionary)などが挙げられます。これらの分野では、言葉の意味だけでなく、それがどのような種類のテキストで、どのような機能を果たして使われるかが分析されていますね。

契約書ドラフトで混乱!「section」と「article」を間違えた体験談

僕も、駆け出しの頃に英文契約書のドラフトを作成していて、「section」と「article」の使い分けで大きな勘違いをし、上司に厳しく指摘された経験があります。

当時、日本語の契約書をもとに英訳する作業をしていました。日本語の契約書では、大きな区切りが「第〇条」、その中の細かい規定が「第〇項」となっていました。

僕は単純に、「条」が大きい区切りだから「Section」、「項」がその下の細かい部分だから「Paragraph」かな?と思い込み、英文契約書の構成を

Section 1
Paragraph 1
Paragraph 2
Section 2
Paragraph 1

という形でドラフトを作成してしまったのです。

意気揚々とレビューをお願いしたところ、法務経験の長い外国人上司から、開口一番、厳しい口調で言われました。

「君は契約書の基本構造を理解しているのか? 英語の契約書では、通常、一番大きな区切りは『Article』だ。『Section』はその下位区分、あるいは『Article』がない場合の主要区分として使うことが多い。『Paragraph』は単なる文章の段落で、法的な構成単位としては通常使わない。『Article 1, Section 1.1』のような形が標準だ。このままでは、他の法律家が見たら素人が作ったと思われるぞ!」

頭が真っ白になりました…。日本語の「条」や「項」という言葉に引きずられ、英語圏での契約書作成の慣習(コンベンション)を全く理解していなかったのです。「section」が一般的な「部分」を指す言葉であることは知っていましたが、法律文書という特定のジャンルにおいては「article」が主要な単位として使われる、というルールを知りませんでした。

上司は続けて、「なぜ Article が使われるかというと、契約全体を構成する独立した『項目』としての意味合いが強いからだ。Section はそれをさらに細かく『切り分けた』部分というニュアンスなんだよ」と、言葉の背景まで説明してくれました。

この経験から、単語の意味だけでなく、それがどのような種類の文書(ジャンル)で、どのような慣習に基づいて使われているかを理解することの重要性を痛感しました。特に専門分野の文書では、一般的な意味とは異なる使われ方をする言葉があるのだと学びましたね。

それ以来、新しい分野の翻訳や文書作成に携わる際は、必ずその分野での標準的な用語法や文書構造を調べるようにしています。

「section」と「article」に関するよくある質問

Q1: 結局、文書の「章」や「節」は “section” と “article” のどちらを使えばいいですか?

一般的な報告書、書籍、論文、マニュアルなどの「章」や「節」は「section」を使うのが普通です。「Chapter」という言葉も「章」として使われますね。「article」は主に法律・契約書の「条」や新聞・雑誌の「記事」に使われるので、一般的な文書の構成単位としてはあまり使いません。

Q2: 契約書で “Article” と “Section” はどう使い分けられますか?

多くの英文契約書では、最も大きな構成単位として「Article」(第〇条)が使われ、その内部のより詳細な規定を示す単位として「Section」(第〇項、または第〇条第〇項)が使われます。例えば、「Article 5」の中に「Section 5.1」「Section 5.2」…といった形で階層構造になっていることが多いです。ただし、契約書によっては「Section」のみで構成されている場合もあります。

Q3: 新聞の「スポーツ欄」は “sports section” なのに、個々の記事は “article” なのはなぜですか?

新聞全体を構成する大きな話題の「区分」としては「section」(例:国際欄 international section, スポーツ欄 sports section)が使われます。一方、その欄の中に掲載されている、特定の話題について書かれた独立した読み物一つひとつは「article」(記事)と呼ばれます。区分・領域を指すのが「section」、独立した文章を指すのが「article」と考えると分かりやすいでしょう。

「section」と「article」の違いのまとめ

「section」と「article」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. section「部分・区分」を指す一般的な言葉。報告書、場所、組織など幅広く使える。
  2. article「条項」(法律・契約書)、「記事」(新聞・雑誌)、「品物」など、特定的な意味で使われる。
  3. 使い分けの鍵:文書の種類(法律文書か一般文書か)や文脈(全体の部分か、独立した項目か)で判断する。
  4. 階層関係:契約書などでは「Article」が上位、「Section」が下位の区分となることが多い。
  5. 類語:「chapter」(章)、「clause」(条項の下位区分)、「item」(項目)、「paragraph」(段落)など、指す単位に応じて使い分ける。

言葉の成り立ち(section = 切る、article = 小さな関節)をイメージすると、それぞれの言葉が持つ「部分」としてのニュアンスの違い(切り分けられた部分 vs 独立した構成項目)が理解しやすくなりますね。

これからは文書の種類や文脈に合わせて、自信を持って「section」と「article」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。