「チームワーク」と「協調性」の違いとは?意味と使い方を解説

「チームワーク」と「協調性」、どちらも組織やグループで働く上で欠かせない要素ですが、この二つの言葉の違いを正確に説明できますか?

似ているようで、実は指しているものが異なりますよね。「チームワークが良い」と「協調性がある」は、褒め言葉として使われますが、その意味合いは少し違います。この二つの言葉は、「集団としての機能」なのか「個人の持つ性質」なのかという点で使い分けられます。

「チームワーク」はチーム全体で目標達成を目指す共同作業や連携を指し、「協調性」は個人が周囲の人々と協力し、円滑な関係を築こうとする態度や性格を意味します。この記事を読めば、「チームワーク」と「協調性」の核心的なイメージから具体的な使い分け、学術的な視点までスッキリ理解でき、もう迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「チームワーク」と「協調性」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、集団全体の「連携プレー」なら「チームワーク」、個人の「協力的な態度」なら「協調性」と覚えるのが簡単です。「チームワーク」は目標達成のための機能、「協調性」は人間関係を円滑にするための個人の資質です。

まず、結論からお伝えしますね。

「チームワーク」と「協調性」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 チームワーク(Teamwork) 協調性(Cooperativeness)
指すもの 集団・チームの機能、連携、共同作業 個人の性質、態度、能力
中心的な意味 共通の目標達成に向けたメンバー間の協力・連携 異なる意見や立場の人と協力し、調和を保とうとする姿勢
焦点 目標達成、成果、効率性 人間関係、円滑なコミュニケーション、合意形成
評価の対象 チーム全体 個人
ニュアンス 相乗効果、役割分担、一体感 協力的、柔軟、思いやり、和を重んじる

一番大切なポイントは、「チームワーク」が集団の状態や行動を指すのに対し、「協調性」が個人の特性を指すという点ですね。

良い「チームワーク」を発揮するためには、メンバー一人ひとりに「協調性」が求められる、という関係性と考えると分かりやすいでしょう。

なぜ違う?意味と核心イメージから違いを掴む

【要点】

「チームワーク」は「Team(チーム)」+「Work(仕事、働き)」で、“チームとしての働き、機能”が核心イメージです。「協調性」は「協(力を合わせる)」+「調(ととのえる)」+「性(性質)」で、“力を合わせ調和を保つ性質”というイメージを持つと、集団と個人の違いが理解しやすくなります。

なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、それぞれの言葉が持つ核心的なイメージを探ってみましょう。

「チームワーク」の核心イメージ:「目標達成のための共同作業」

「チームワーク」は、英語の「Team(チーム、組)」と「Work(仕事、作業、働き)」が組み合わさった言葉です。文字通り、「チームとしての働き」や「チームで行う作業」という意味が根幹にあります。

スポーツチームを思い浮かべると分かりやすいかもしれません。個々の選手が高い能力を持っていても、連携が取れていなければ試合には勝てませんよね。パスを繋いだり、互いの動きを読んでサポートしたり、共通の目標(勝利)に向かってメンバーが協力し、それぞれの役割を果たしながら連携すること。これが「チームワーク」の核心イメージです。

個々の力の足し算以上の成果(相乗効果)を生み出すための、集団としての機能やプロセスに焦点が当たっています。

「協調性」の核心イメージ:「他者と円滑に関わる姿勢」

一方、「協調性」は、「(力を合わせる)」「調(ととのえる、調和する)」「(性質)」という漢字で構成されています。

つまり、「協調性」の核心イメージは、自分とは異なる考えや立場を持つ人々と力を合わせ、全体の調和(バランス)を保とうとする個人の性質や態度です。

周りの意見に耳を傾けたり、自分の主張ばかりを通そうとせず譲歩したり、対立を避け円滑な人間関係を築こうとしたりする姿勢が「協調性」にあたります。

こちらは、目標達成そのものよりも、集団内の人間関係やコミュニケーションを円滑に進めるための個人の資質に焦点が当たっていますね。

このように言葉の成り立ちや構成要素を考えると、「チームワーク=集団の機能」、「協調性=個人の資質」という違いが、よりはっきりと理解できるのではないでしょうか。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ビジネスでは、「チームワークを発揮してプロジェクトを成功させる」のように集団の連携を、「彼は協調性があり、誰とでもうまくやれる」のように個人の性質を表現します。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

「集団」の話か、「個人」の話かを意識すると、使い分けは簡単ですよ。

【OK例文:チームワーク】

  • このプロジェクトの成功は、部門間の優れたチームワークの賜物だ。
  • 良いチームワークを築くためには、明確な目標共有と役割分担が不可欠です。
  • 我々の部署はチームワークが良く、互いに助け合いながら業務を進めている。
  • チームワークを高めるための研修を実施する予定です。

【OK例文:協調性】

  • 彼は高い協調性を持ち、どんなメンバーとも円滑にコミュニケーションが取れる。
  • 採用面接では、専門スキルだけでなく協調性も重視しています。
  • 彼女は自分の意見も持っているが、周りの意見を尊重する協調性もある。
  • グループワークでは、個々の能力以上に協調性が求められる場面がある。

「チームワーク」はチームや部署といった集団が主語になることが多いのに対し、「協調性」は「彼」「彼女」「(個々の)メンバー」といった個人が主語になることが多いですね。

日常会話での使い分け

日常会話でも、考え方は同じです。

【OK例文:チームワーク】

  • あのサッカーチームは、スター選手はいないがチームワークで勝利を掴んだ。
  • 文化祭の準備を通じて、クラスのチームワークが深まった。
  • バンドメンバーとのチームワークが、良い演奏には欠かせない。

【OK例文:協調性】

  • グループ旅行では、個人の希望も大切だが、ある程度の協調性が必要だ。
  • 彼は少しマイペースだが、意外と協調性がある一面も見せる。
  • 子供には、社会で生きていくために協調性を身につけてほしい。

これはNG!間違えやすい使い方

意味は通じるかもしれませんが、少し不自然に聞こえる使い方を見てみましょう。

  • 【NG】彼は素晴らしいチームワークを持っている。
  • 【OK】彼は素晴らしい協調性を持っている。
  • 【OK】彼の所属するチームは素晴らしいチームワークを持っている。

「チームワーク」は集団の特性なので、個人に対して「持っている」と表現するのは不自然です。個人が持つ協力的な性質を指すなら「協調性」が適切ですね。

  • 【NG】この部署は協調性が良い。
  • 【OK】この部署はチームワークが良い。
  • 【OK】この部署のメンバーは協調性が高い。

部署(集団)全体の連携が良いことを言いたい場合は「チームワーク」が適切です。「協調性」を使うなら、「メンバーは(個々に)協調性が高い」のように、個人に焦点を当てる必要があります。

「チームワーク」と「協調性」の違いを組織論・心理学的に解説

【要点】

組織論では、「チームワーク」は目標達成のための機能的な側面(役割分担、情報共有、相互支援)を指します。一方、心理学(特に社会心理学)では、「協調性」は個人のパーソナリティ特性の一つ(ビッグファイブ理論など)であり、他者への配慮や共感性と関連付けられます。

学術的な視点、特に組織論や心理学の分野から見ると、「チームワーク」と「協調性」はどのように捉えられているのでしょうか。

組織論や経営学の文脈では、「チームワーク」は、共通の目標を達成するために、メンバーがそれぞれの役割を認識し、情報を共有し、互いに支援し合いながら、効果的に協力するプロセスや状態を指します。重要なのは、単に仲が良いことではなく、目標達成に向けた「機能的な連携」が取れているかどうかです。優れたチームワークは、生産性の向上やイノベーションの創出につながると考えられています。

一方、心理学、特にパーソナリティ心理学や社会心理学の分野では、「協調性」は個人の持つ性格特性の一つとして扱われます。例えば、主要な性格特性を示す「ビッグファイブ理論」では、「協調性(Agreeableness)」は、他者への信頼、利他性、共感性、謙虚さ、協力的な態度などを含む次元とされています。協調性が高い人は、対人関係において摩擦を避け、円滑なコミュニケーションを図ろうとする傾向があるとされます。

つまり、学術的には、

「チームワーク」= 組織・集団レベルの目標達成機能
「協調性」= 個人レベルの対人関係に関わる性格特性

というように、分析のレベル(集団か個人か)と焦点(機能か特性か)が明確に区別されています。

もちろん、個々のメンバーの協調性が高いことが、結果としてチーム全体のチームワーク向上に寄与することは大いにあり得ます。しかし、協調性が高いメンバーばかりが集まっても、目標共有や役割分担が不明確であれば、必ずしも良いチームワークが生まれるとは限らない、という点も重要ですね。(より詳しくは、厚生労働省などが推進する職場環境改善の取り組みなども参考になります。)

僕が新人研修で「チームワーク」と「協調性」を混同して指摘された体験談

僕も新入社員の頃、まさにこの「チームワーク」と「協調性」を混同して、研修の講師にやんわりと指摘されたことがあります。

それは、グループワーク形式の新人研修での出来事でした。いくつかのグループに分かれて課題に取り組み、最後にそのプロセスや成果を発表するという内容でした。

僕たちのグループは、幸いメンバーに恵まれ、議論も活発で雰囲気も良く、最終的になかなか良い発表ができたと自負していました。発表後の質疑応答で、講師から「〇〇さんのグループは、なぜうまくいったと思いますか?」と問われたのです。

僕は、「はい、それはメンバー一人ひとりのチームワークが高かったからだと思います!」と、自信満々に答えてしまいました。

すると、講師はにこやかに、しかし的確にこう補足してくれました。「なるほど、メンバーの皆さんの協力的な姿勢、つまり協調性が高かったのですね。そして、それが結果としてグループ全体の良いチームワークにつながった、ということですね。」

その瞬間、「しまった!」と思いました。僕が言いたかったのは、個々のメンバーが協力的に議論を進められたこと(=協調性)だったのに、それを「チームワーク」という言葉で表現してしまったのです。講師は、僕の言葉足らずを汲み取り、「個人の協調性」と「集団のチームワーク」を区別して言い直してくれたんですね。

ほんの少しの違いですが、「個人の資質」と「集団の状態」をごちゃ混ぜにしてしまっていたことに気づき、とても恥ずかしくなりました。同時に、言葉を正確に使うことの重要性を改めて感じました。

それ以来、組織やチームについて話すときは、「これは個人の話か? それとも集団全体の話か?」と自問自答するクセがつきました。あの時の講師の的確なフォローには、今でも感謝しています。

「チームワーク」と「協調性」に関するよくある質問

Q1: チームワークと協調性はどちらがより重要ですか?

A1: どちらも重要ですが、目的や状況によって重視される度合いは異なりますね。目標達成や成果創出が最優先される場面では、個々の協調性もさることながら、結果を出すための「チームワーク」の機能性がより重視されるでしょう。一方、多様なメンバーがいる組織で円滑な人間関係を築き、長期的な協力体制を維持するためには、個々人の「協調性」が非常に重要になります。理想的には、協調性の高いメンバーが良いチームワークを発揮することですね。

Q2: 協調性がない人はチームワークに貢献できませんか?

A2: 一概には言えませんね。協調性が低いとされる人でも、特定の専門スキルが高かったり、独自の視点を持っていたりして、チームの目標達成に大きく貢献することはあります。ただし、その場合でも、最低限のコミュニケーションルールを守ったり、他のメンバーの意見を完全に無視しない、といった配慮はチームワークを維持するために必要でしょう。重要なのは、多様な個性を持つメンバーが、それぞれの強みを活かしつつ、共通の目標に向かって連携できるかどうかです。

Q3: 「チームワーク」の類義語はありますか?

A3: 「連携」「協力」「共同作業」「団結力」「一体感」などが、文脈によって近い意味で使われますね。英語由来の言葉であれば、「コラボレーション(collaboration)」も、特に異なる組織や専門家が協力して何かを作り上げるような場合に、チームワークに近い意味で使われます。

「チームワーク」と「協調性」の違いのまとめ

「チームワーク」と「協調性」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 指す対象が違う:「チームワーク」は集団・チームの機能や連携、「協調性」は個人の性質や態度。
  2. 焦点が違う:「チームワーク」は目標達成のための共同作業、「協調性」は人間関係を円滑にする協力的な姿勢。
  3. 核心イメージが鍵:「チームワーク」は“チームとしての働き”、「協調性」は“力を合わせ調和を保つ性質”。
  4. 関係性:個々のメンバーの「協調性」が、良い「チームワーク」の土台となることが多い。

集団としてのパフォーマンスを語るなら「チームワーク」、個人の人となりや対人スキルを語るなら「協調性」と使い分けるのが基本です。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。