「worker」と「employee」の違いとは?雇用形態を意識した使い分け

「worker」と「employee」、どちらも「働く人」を指す言葉ですが、そのニュアンスや使われる範囲には明確な違いがあります。

あなたはこれらの言葉を正しく使い分けられていますか?特に契約書やビジネス文書で英語を使う際、混同してしまうと意図が正確に伝わらない可能性がありますよね。この二つの言葉は、特定の雇用主との関係性に注目すると、その違いがはっきりします。

「worker」はより広範に「働く人、労働者」全般を指し、「employee」は特定の企業や組織に雇用されている「従業員」を意味します。この記事を読めば、「worker」と「employee」の核心的なイメージから具体的な使い分け、法律的な観点までスッキリ理解でき、もう迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「worker」と「employee」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、雇用形態を問わず「働く人」全般なら「worker」、特定の雇用主の下で働く「従業員」なら「employee」と覚えるのが簡単です。「worker」は範囲が広く、「employee」は雇用契約に基づいた関係性を指します。

まず、結論からお伝えしますね。

「worker」と「employee」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 worker employee
品詞 名詞 名詞
中心的な意味 労働者、働く人、作業員
(広く労働に従事する人)
従業員、被雇用者、社員
(雇用契約に基づき雇われている人)
範囲 広い(正社員、契約社員、派遣社員、アルバイト、フリーランス、自営業者なども含む場合がある) 狭い(特定の雇用主と雇用関係にある人)
焦点 労働、作業、活動そのもの 雇用主との契約関係、所属
ニュアンス 肉体労働や特定の作業に従事する人、労働者階級といった意味合いも持つことがある 企業や組織の一員、給与所得者
法律上の定義 国や文脈により異なるが、一般的に労働法の保護対象となる範囲が広い場合がある 雇用契約に基づき、特定の権利と義務を持つ

一番大切なポイントは、「worker」が非常に広い範囲の「働く人」を指すことができるのに対し、「employee」は会社などに「雇われている人」に限定されるという点です。

全ての「employee」は「worker」ですが、全ての「worker」が「employee」とは限りません。例えば、フリーランスのデザイナーは「worker」ですが、特定の会社に雇われているわけではないので、通常は「employee」とは呼ばれませんね。

なぜ違う?意味と核心イメージから違いを掴む

【要点】

「worker」は動詞「work(働く)」+「-er(~する人)」で、“働く人、労働する人”という直接的なイメージです。「employee」は動詞「employ(雇う)」+「-ee(~される人)」で、“雇われる人”という受動的な関係性が核心イメージとなります。

なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、それぞれの言葉の成り立ちから核心的なイメージを探ってみましょう。

「worker」の核心イメージ:「労働を提供する人」全般

「worker」は、動詞「work(働く、労働する、作業する)」に、「~する人」を意味する接尾辞「-er」が付いた、非常にシンプルな構造の言葉です。

そのため、その核心イメージは文字通り「働く人」「労働する人」「作業する人」であり、雇用形態や職種に関わらず、何らかの労働を提供している人全般を広く指すことができます。

工場で働く人、建設現場で働く人、オフィスで働く人、フリーランスで働く人など、様々な「worker」が存在します。特に、具体的な「労働」や「作業」に焦点が当たるニュアンスを持つこともありますね。

「employee」の核心イメージ:「雇用契約下の従業員」

一方、「employee」は、動詞「employ(雇う、雇用する)」に、「~される人」を意味する接尾辞「-ee」が付いた言葉です。「-ee」は、例えば「interviewee(面接される人)」や「trainee(訓練される人)」など、行為を受ける側を示す際に用いられます。

このことから、「employee」の核心イメージは、「雇われている人」「雇用主(employer)によって雇用されている側の人」であり、雇用主との間に雇用契約が存在することが前提となります。

会社員、公務員など、特定の組織に所属し、指示を受けて働き、給与を受け取る人が典型的な「employee」です。ここには、雇用主と被雇用者という明確な関係性が含まれています。

このように言葉の成り立ちを見ると、「worker」が「働く」という行為そのものに、「employee」が「雇われる」という関係性に焦点を当てている違いが、より明確になりますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

「worker」は様々な雇用形態を含む労働者全体(factory workers, migrant workers)や、特定の作業者(construction worker)を指します。「employee」は特定の会社の従業員(company employees, full-time employee)や公務員(government employee)などを指します。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

それぞれの言葉がよく使われる場面と、間違いやすいNG例を見ていきましょう。

「worker」が使われる主な場面

働く人全般や、特定の種類の労働者を指す場合に広く使われます。

【OK例文:worker】

  • Many factory workers went on strike demanding higher wages. (多くの工場労働者が賃上げを要求してストライキを行った。)
  • Construction workers need to follow strict safety protocols. (建設作業員は厳格な安全手順に従う必要がある。)
  • The government introduced new support measures for self-employed workers. (政府は自営業者向けの新たな支援策を導入した。)
  • She is a social worker helping vulnerable families. (彼女は弱い立場にある家族を支援するソーシャルワーカーだ。)
  • Migrant workers play an important role in the country’s economy. (移民労働者はその国の経済において重要な役割を果たしている。)
  • All workers have the right to a safe working environment. (全ての労働者は安全な労働環境に対する権利を有する。)

このように、職種(construction worker, social worker)や、雇用形態・属性(self-employed worker, migrant worker)、あるいは労働者全体を指す場合に「worker」が使われますね。

「employee」が使われる主な場面

特定の会社や組織に雇用されている従業員を指す場合に限定して使われます。

【OK例文:employee】

  • Our company has over 1,000 employees worldwide. (当社には世界中で1000人以上の従業員がいる。)
  • All new employees are required to attend an orientation session. (全ての新しい従業員はオリエンテーション研修に参加する必要がある。)
  • He has been a loyal employee of this firm for 20 years. (彼はこの会社に20年間勤めている忠実な従業員だ。)
  • The company offers various benefits to its full-time employees. (その会社は正社員に様々な福利厚生を提供している。)
  • Government employees must adhere to a strict code of conduct. (公務員は厳格な行動規範を遵守しなければならない。)

「company employee」「full-time employee」「government employee」のように、特定の雇用主や雇用形態における「従業員」を指すのが一般的です。

これはNG!間違えやすい使い方

範囲を混同すると、不自然になったり、意図が伝わらなかったりします。

  • 【NG】Freelancers are also important employees for our project.
  • 【OK】Freelancers are also important workers (or contributors) for our project. (フリーランスも我々のプロジェクトにとって重要な働き手(貢献者)です。)

フリーランスは特定の雇用契約を結んでいるわけではないので、「employee」と呼ぶのは不適切です。「worker」や、より広く「contributor(貢献者)」などを使うのが自然ですね。

  • 【NG】The factory needs more employees to operate the machines. (文脈によっては可能だが、workerの方が一般的)
  • 【OK】The factory needs more workers to operate the machines. (その工場は機械を操作するためにより多くの作業員を必要としている。)

工場で機械を操作する人を指す場合、雇用されている従業員(employee)であることも多いですが、その「作業」内容に焦点を当てる場合は「worker」の方がより一般的で自然に聞こえます。「employee」だと、雇用形態や所属を強調するニュアンスがやや強まります。

  • 【NG】All employees deserve fair treatment. (間違いではないが、workerの方がより包括的)
  • 【OK】All workers deserve fair treatment. (全ての労働者は公正な待遇を受けるに値する。)

労働者の権利について語る場合など、雇用形態に関わらず全ての働く人を対象としたい場合は、「worker」を使う方がより包括的で適切です。「employee」に限定すると、フリーランスや非正規雇用の人々が含まれないと解釈される可能性があります。

「worker」と「employee」の違いを労働法・契約の観点から解説

【要点】

労働法において、「worker」は労働の対価を得る人として広く定義され、多様な保護の対象となることが多いです。一方、「employee」は雇用契約に基づき、指揮命令下で働く人と定義され、特定の権利(有給休暇、社会保険など)と義務を負います。契約形態によって法的な扱いが異なります。

法律、特に労働法の文脈では、「worker」と「employee」の区別は非常に重要です。なぜなら、どちらに分類されるかによって、適用される法律や権利、保護の範囲が異なる場合があるからです。(ただし、国や地域によって定義や扱いは異なります。)

一般的に、英国法などを参考にすると、「worker(労働者)」は、自身の労働力を提供し、その対価として報酬を得る人として、より広く定義される傾向があります。これには、正規の従業員だけでなく、契約社員、派遣労働者、一部の自営業者(ギグワーカーなど)が含まれることがあります。Workerに分類されると、最低賃金、労働時間規制、差別禁止などの基本的な労働保護を受けられる場合が多いです。

一方、「employee(被用者、従業員)」は、特定の雇用主(employer)との間に「雇用契約(contract of employment)」を結び、雇用主の指揮命令下で働き、その対価として給与を受け取る人と、より狭く定義されます。Employeeに分類されると、上記の基本的な保護に加えて、通常、有給休暇、病気休暇、解雇に関する保護、育児休業、社会保険への加入といった、より広範な権利と福利厚生が保障されます。

日本の労働基準法では、「労働者」という用語が使われ、これは「職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう」と定義されています(第9条)。この定義は比較的広く、パートタイム労働者やアルバイトも含まれますが、雇用契約の有無や指揮命令関係の実態によって判断され、フリーランスや個人事業主は原則として含まれません。日本の法律用語としては「employee」に直接対応する単語はありませんが、「被用者」が近い概念と言えるでしょう。

つまり、法的な観点からは、

「worker」= 労働を提供し報酬を得る人(広い範囲、基本的な保護)
「employee」= 雇用契約下で働く人(狭い範囲、より広範な権利・義務)

という区別が重要になるのです。契約書などでこれらの言葉が使われる場合、その定義をしっかり確認することがトラブルを避ける上で大切ですね。

僕が契約書で「employee」なのに実態が違った体験談

僕も以前、フリーランスとして働き始めたばかりの頃、この「worker」と「employee」の違いを意識させられる出来事がありました。

ある企業と業務委託契約を結んで、特定のプロジェクトに常駐する形で仕事をすることになったんです。契約書には、私の立場を示す言葉として「Contract Employee」と書かれていました。「Employee」という言葉が入っていたので、「なるほど、契約社員のような扱いなのかな」と、当時は深く考えずにサインしました。

ところが、実際に働き始めると、どうも様子がおかしい。正社員(Regular Employee)の方々と同じように、始業・終業時間も厳密に管理され、日々の業務についても細かい指示を受け、他の正社員と全く同じように扱われたのです。福利厚生は適用されないものの、実態としては完全に雇用主の指揮命令下にある状態でした。

契約期間の終盤、別の契約条件について担当者と話していた際に、ふと疑問に思って聞いてみたんです。「契約書ではEmployeeとなっていますが、実態としては指揮命令下にあり、これは法的には労働者(worker)としての保護も受けられるのではないでしょうか?」と。

担当者の方は少し驚いた顔をして、「ああ、契約書のテンプレートでEmployeeという言葉を使っていますが、〇〇さん(僕)はあくまで外部の業務委託(independent worker/contractor)という認識です」と答えました。

その時にハッとしました。契約書に「Employee」と書かれていても、それが必ずしも法的な意味での「被用者」を意味するとは限らない。むしろ、企業側が安易に言葉を使っているだけで、実態(指揮命令関係の有無、労働時間の拘束など)がより重要になるのだ、と。

幸い、その企業とは良好な関係で契約を終えられましたが、もし何かトラブル(例えば、一方的な契約解除や報酬の未払いなど)があった場合、契約書の「Employee」という言葉と、実際の「worker/contractor」という認識のズレが、法的な立場の判断に影響したかもしれません。

この経験から、契約書に書かれている肩書きや言葉だけでなく、実際の働き方や契約内容が法的にどういう意味を持つのかをしっかり確認することの重要性を学びました。「worker」なのか「employee」なのか、あるいは「independent contractor(独立請負人)」なのか。その違いが、自分の権利や働き方に直結するのだと痛感した出来事でしたね。

「worker」と「employee」に関するよくある質問

Q1: パートタイマーやアルバイトは “worker” ですか? “employee” ですか?

A1: パートタイマーやアルバイトは、通常、特定の雇用主と雇用契約を結んで働くため、「employee」に分類されます。同時に、労働を提供する人なので「worker」でもあります。つまり、パートタイマーやアルバイトは「employeeであり、かつworkerでもある」と言えますね。ただし、会話の中で単に「働く人」として言及する場合は「worker」を使うこともあります。

Q2: 派遣社員(Temporary staff dispatched from an agency)はどちらになりますか?

A2: 派遣社員の扱いは少し複雑ですね。派遣社員は派遣会社(Agency)と雇用契約を結んでいるため、派遣会社にとっては「employee」です。一方、派遣先企業(Client company)から見ると、直接の雇用契約はないものの、指揮命令を受けて働くため、広い意味での「worker」と見なされます。法的な責任関係も派遣元と派遣先で分担されるため、文脈によってどちらの側面が強調されるかが変わってきます。

Q3: “staff” と “employee” の違いは何ですか?

A3: “staff” は、特定の組織やチームで働く人々全体を集合的に指す言葉で、「職員」「スタッフ」という意味です。「employee」が個々の従業員を指すのに対し、「staff」は集団を指すニュアンスが強いですね。例えば、「Our hotel staff are very friendly.(当ホテルのスタッフはとてもフレンドリーです)」のように使います。個々のスタッフは通常「employee」でもありますが、「staff」という言葉は、役職や雇用形態に関わらず、その場で働くメンバー全体を指す場合にも使われます。

「worker」と「employee」の違いのまとめ

「worker」と「employee」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 範囲が違う:「worker」は雇用形態を問わず広く「働く人」全般、「employee」は特定の雇用主に雇われている「従業員」に限定。
  2. 焦点が違う:「worker」は労働・作業そのもの、「employee」は雇用主との契約関係
  3. 核心イメージが鍵:「worker」は“労働を提供する人”、「employee」は“雇われる人”。
  4. 法律上の意味合い:国や文脈によるが、「worker」の方が広い保護対象、「employee」は特定の権利・義務を持つことが多い。

すべての「employee」は「worker」ですが、逆は必ずしも真ではありません。この包含関係を理解することが、使い分けの基本です。

特に契約関係や法律の話をする際には、これらの言葉の定義を意識することが重要になりますね。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。