「accuracy」と「precision」の違いとは?意味や使い方を解説

「Accuracy」と「Precision」、どちらも「正確さ」と訳されることが多いですよね。

でも実は、特に科学技術の分野やビジネスデータの分析など、厳密さが求められる場面では、この二つの言葉は明確に区別して使われています。

この違いを知らないと、意図が正しく伝わらなかったり、データの解釈を誤ったりする可能性も…。この記事を読めば、AccuracyとPrecisionの核心的な意味の違いから、具体的な使い分け、覚え方のコツまでスッキリ理解でき、自信を持って使いこなせるようになりますよ。

それではまず、最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「accuracy」と「precision」の最も重要な違い

【要点】

Accuracyは「真の値(目標)にどれだけ近いか(正確度)」を示すのに対し、Precisionは「測定値や結果がどれだけ互いに近いか、ばらつきが少ないか(精度、精密度)」を示します。的(まと)に例えると、Accuracyは「的の中心に近いか」、Precisionは「放った矢が一点にまとまっているか」の違いです。

まず、結論として「Accuracy」と「Precision」の最も重要な違いを表にまとめました。

項目 Accuracy(正確度) Precision(精度、精密度)
中心的な意味 結果が真の値や目標にどれだけ近いか 結果のばらつきがどれだけ小さいか(再現性)
視点 目標とのズレの小ささ 結果同士の一貫性、まとまり具合
的(まと)の例え 矢が的の中心に近いか 矢が一点に集中しているか(中心からずれていてもOK)
日本語訳 正確度、真度 精度、精密度、再現性
関連する概念 系統誤差(バイアス)の小ささ 偶然誤差(ばらつき)の小ささ

どうでしょう?こうして比較すると、違いがイメージしやすくなったのではないでしょうか。

Accuracyは「狙ったところに当たっているか」Precisionは「毎回同じところに当たっているか」という感覚で捉えると、グッと分かりやすくなりますね。

品質管理やデータ分析の世界では、AccuracyとPrecisionの両方が高い状態を目指すことが重要になります。

なぜ違う?言葉の語源からイメージを掴む

【要点】

Accuracyの語源はラテン語の「注意深く行う」にあり、真実や目標に対する注意深さを意味します。一方、Precisionの語源は「切り詰める」にあり、余分なものを削ぎ落とした結果としてのばらつきのなさを示唆しています。

言葉の意味の違いは、その語源を探るとさらに深く理解できますよね。それぞれの成り立ちを見てみましょう。

accuracyの語源:「注意深さ」から来る真実への近さ

Accuracyは、ラテン語の `accuratus`(注意深く行った、正確な、精巧な)に由来します。これは `accurare`(注意深く行う)という動詞の過去分詞形です。

さらに `accurare` は、`ad-`(~へ)と `cura`(注意、配慮)が組み合わさった言葉です。

この成り立ちから、Accuracyには「真実や目標に対して、注意深く配慮を払い、近づけていく」というニュアンスが含まれていることがわかりますね。

まさに「的の中心を狙う」イメージに繋がります。

precisionの語源:「切り詰める」ことから来る再現性の高さ

一方、Precisionは、ラテン語の `praecisio`(切り離すこと)に由来し、これは `praecidere`(切り詰める、短縮する)という動詞から来ています。

`praecidere` は `prae-`(前に)と `caedere`(切る)が組み合わさった言葉です。

この「切り詰める」「削ぎ落とす」というイメージから、Precisionには「不要な変動やばらつきを削ぎ落として、結果を一点に集中させる」というニュアンスが感じられます。

矢が一点にまとまっている状態、つまり「再現性の高さ」や「ばらつきのなさ」を想起させますね。

語源を知ると、単なる「正確さ」という訳語だけでは捉えきれない、それぞれの言葉が持つ本来のイメージが掴みやすくなるのではないでしょうか。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ビジネスでは、市場予測のAccuracy(目標達成度)と、製品寸法のPrecision(ばらつきのなさ)のように使い分けます。データ分析ではモデルの予測Accuracyと測定器のPrecisionなどが重要です。NG例として、両者の意味を混同しないように注意が必要です。

では、実際のビジネスシーンや日常会話でどのように使い分けるのか、具体的な例文を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

目標値との一致が重要か、結果の一貫性が重要かで使い分けます。

【OK例文:Accuracy】

  • 市場予測モデルのAccuracy(正確度)を向上させる必要がある。 (予測値が実際の市場の動きに近いか)
  • 顧客満足度調査の結果は、どの程度のAccuracy(正確度)で全体の意見を反映しているだろうか? (調査結果が真の顧客満足度に近いか)
  • 目標達成率のAccuracy(正確度)を高めるために、KPI設定を見直した。(指標が実際の目標達成度合いを正しく示しているか)

【OK例文:Precision】

  • この製造ラインで作られる部品の寸法Precision(精度)は非常に高い。(部品ごとの寸法のばらつきが小さい)
  • 繰り返し行ったアンケート調査で、毎回ほぼ同じ結果が得られた。この調査方法のPrecision(再現性)は高いと言える。(結果のばらつきが小さい)
  • 彼の報告書はいつも細部までPrecision(精密)に記述されている。(記述内容に曖昧さやばらつきがない)

科学技術・データ分析での使い分け

この分野では特に厳密な使い分けが求められます。

【OK例文:Accuracy】

  • 温度計の示す値のAccuracy(正確度)を確認するために、標準温度計と比較した。(測定値が真の温度に近いか)
  • 開発したAIモデルの予測Accuracy(正解率)は95%に達した。(予測結果が正解データと一致する度合い)
  • GPSの位置情報のAccuracy(正確度)は、環境によって変動する。(測定された位置が実際の地理的位置に近いか)

【OK例文:Precision】

  • この測定器のPrecision(精密度)は0.01mmであり、非常に細かい測定が可能だ。(測定値のばらつきが小さい)
  • 実験を複数回繰り返しても、常に同じ測定値が得られた。使用した機器のPrecision(再現性)は高い。(結果のばらつきが小さい)
  • データの入力Precision(精度)を高めるために、ダブルチェック体制を導入した。(入力されるデータの一貫性を高め、誤入力を減らす)

日常会話での使い分け

日常会話では厳密に区別されないことも多いですが、意識すると表現が豊かになります。

【OK例文:Accuracy】

  • 彼の証言のAccuracy(正確さ)には疑問が残る。(内容が事実と合っているか)
  • 天気予報の降水確率のAccuracy(的中率)は年々向上している。(予報が実際の天気と一致するか)

【OK例文:Precision】

  • 彼はいつもPrecision(正確)な時間感覚で行動する。(行動にばらつきがない、時間にずれがない)
  • 彼女の料理は、レシピ通りの分量をPrecision(正確)に守って作られている。(手順や量にばらつきがない)

これはNG!間違えやすい使い方

意味を取り違えると、意図が伝わらなくなる可能性があります。

  • 【NG】体重計を買い替えたら、毎回違う数値が表示される。この体重計はAccuracyが低い。
  • 【OK】体重計を買い替えたら、毎回違う数値が表示される。この体重計はPrecisionが低い。

毎回違う数値が出るのは、測定結果の「ばらつきが大きい」ことを意味するので、「Precision」が低い、となります。(もちろん、毎回違う数値が表示され、かつ真の体重からもずれている場合はAccuracyも低い可能性がありますが、この文脈ではまずPrecisionの問題を指摘するのが自然です。)

  • 【NG】彼のシュートはいつもゴールの隅を狙っているが、枠を外れてばかりだ。シュートのPrecisionは高いが…。
  • 【OK】彼のシュートはいつもゴールの隅を狙っているが、枠を外れてばかりだ。シュートのAccuracyは低いが…。

狙った場所(ゴールの隅)に当たっていないので、「Accuracy」が低い、となります。(もし、枠は外れても毎回ほぼ同じ場所に飛んでいくなら、Precisionは高いと言えるかもしれません。)

このように具体的な状況を思い浮かべると、使い分けの感覚が掴めてきますね。

「accuracy」と「precision」の違いを学術的に解説

【要点】

測定や統計の分野では、Accuracy(正確度)はさらにTrueness(真度)Precision(精密度)の二つの要素に分解されることがあります(ISO 5725-1)。Truenessは「系統誤差(偏り)の小ささ」、Precisionは「偶然誤差(ばらつき)の小ささ」を意味し、Accuracyはこの両方が高い状態を指します。

AccuracyとPrecisionの違いは、ISO(国際標準化機構)の規格など、学術的な定義を見るとさらに明確になります。

特に測定学や統計学の分野で参照されるISO 5725-1という規格では、「測定方法及び測定結果の正確さ(Accuracy)」について定義されています。

この規格によると、Accuracy(正確度)は、以下の二つの要素の組み合わせとして説明されることがあります。

  1. Trueness(真度):測定値の平均値と、真の値(または参照値)との近さ。「系統誤差(バイアス、偏り)」の小ささを表します。
  2. Precision(精密度):独立した測定値間の近さ。「偶然誤差(ばらつき)」の小ささを表します。

つまり、学術的な文脈では、Accuracy(正確度) = Trueness(真度) + Precision(精密度) という関係で捉えられることがあるのです。

これを先ほどの「的」の例えで説明すると、以下のようになります。

  • Truenessが高い:矢の集団の中心が、的の中心に近い状態。(偏りが少ない)
  • Precisionが高い:矢が互いに近く、一点にまとまっている状態。(ばらつきが少ない)
  • Accuracyが高い:矢が的の中心近くに、かつ一点にまとまっている状態。(偏りもばらつきも少ない)

ビジネスシーンで常にこの厳密な定義を使う必要はありませんが、特に技術文書や品質管理、研究開発などの分野では、このISOの定義に基づいた使い分けがされていることを知っておくと、コミュニケーションがよりスムーズになるでしょう。

Accuracyは総合的な「良さ」を示し、Precisionはその構成要素の一つである「再現性」や「安定性」を示している、と考えると理解しやすいかもしれませんね。

僕が翻訳チェックで「precision」の指摘に赤面した体験談

僕も駆け出しの頃、このAccuracyとPrecisionの違いを理解しておらず、恥ずかしい思いをしたことがあります。

ある精密機器メーカーの技術マニュアルの翻訳チェックを担当した時のことです。原文には「This sensor provides high precision measurements.」とありました。

僕は当時、AccuracyもPrecisionもどちらも「正確さ」だと思い込んでいたので、「このセンサーは高精度な測定を提供します」と普通に訳し、特に疑問も感じませんでした。「Precision=精度」という訳語自体は間違っていませんからね。

ところが、クライアントのエンジニアの方から、「このセンサーの売りは、測定値の『ばらつきの小ささ』なんだ。だから、単に『高精度』だと、真の値に近い(Accuracyが高い)とも解釈できてしまう。『精密な測定』とか『再現性の高い測定』といった表現の方が、この文脈ではよりPrecisionのニュアンスが伝わるんじゃないかな?」と、丁寧ながらも鋭い指摘を受けたのです。

まさに、頭をガツンと殴られたような衝撃でした!

そのセンサーは、必ずしも常に真の値を示すわけではないけれど(Accuracyはそこそこ)、何度測ってもほぼ同じ値を示す(Precisionが非常に高い)という特性が、特定の用途で重宝されていたのです。

僕は「精度」という日本語に引きずられて、AccuracyとPrecisionが持つ本質的な意味の違いを全く理解できていませんでした。言葉の表面的な意味だけでなく、それが使われる文脈や背景にある技術的な意味合いまで理解することの重要性を痛感した出来事です。

あの時のエンジニアの方の的確な指摘と、自分の知識不足で赤面した感覚は、今でも忘れられません。それ以来、特に技術翻訳に関わる際は、言葉の定義をより深く掘り下げるようになりましたね。

「accuracy」と「precision」に関するよくある質問

Q1: accuracyとprecision、簡単に覚える方法は?

A: 的(まと)のイメージで覚えるのがおすすめです。Accuracyは「的の中心に近いか」(Accurate = Centerにate)、Precisionは「矢が一点にまとまっているか」(Precise = 集まっている)と覚えると、視覚的に違いを捉えやすいでしょう。ダーツや射撃を思い浮かべると分かりやすいですね。

Q2: ビジネスではどちらがより重要ですか?

A: どちらが重要かは、目的や状況によります。例えば、売上目標に対する実績の評価ではAccuracy(目標値との近さ)が重要ですし、製品の品質管理においてはPrecision(個体差のなさ、ばらつきの小ささ)が非常に重要になります。多くの場合、AccuracyとPrecisionの両方が高い状態を目指すべきですが、どちらを優先するかはケースバイケースで判断する必要があります。

Q3: 日本語訳で使い分けるとしたら?

A: 一般的には、Accuracyを「正確度」Precisionを「精度」または「精密度」と訳し分けることが多いです。ただし、文脈によってはAccuracyも「精度」と訳されることがあります(例:予測精度)。混乱を避けるためには、ISO 5725-1に倣い、Accuracyを「正確度」、Truenessを「真度」、Precisionを「精密度」と使い分けるのが最も厳密です。迷った場合は、単に「正確さ」とするのではなく、具体的な意味(「目標値との近さ」「ばらつきの小ささ」など)を補足説明すると誤解が少なくなります。

「accuracy」と「precision」の違いのまとめ

「Accuracy」と「Precision」の違い、しっかり掴んでいただけたでしょうか?

最後に、この記事の重要なポイントをまとめておきますね。

  1. Accuracyは「真の値・目標への近さ」(正確度):的の中心に近いか。
  2. Precisionは「結果のばらつきの小ささ・再現性」(精度、精密度):矢が一点にまとまっているか。
  3. 語源:Accuracyは「注意深さ」、Precisionは「切り詰める」イメージ。
  4. 使い分け:ビジネスや科学技術分野では特に重要。目的や文脈に応じて、どちらの「正確さ」が求められているかを見極める。
  5. 学術的定義:Accuracy(正確度) = Trueness(真度) + Precision(精密度)。

この二つの言葉は、似ているようで全く異なる概念を指しています。特にデータや品質について語る際には、この違いを意識することで、より的確でプロフェッショナルなコミュニケーションが可能になります。

これからは自信を持って「Accuracy」と「Precision」を使い分けて、あなたの仕事や学びに活かしてくださいね。カタカナ語の使い分けについてもっと知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いまとめページもぜひご覧ください。