「finish」と「complete」、どちらも「終わる」「終える」という意味で習った記憶がありますよね。
でも、英語のメールや報告書を書くとき、「この場合はどっちを使うのが自然なんだろう…?」と迷ってしまうことはありませんか?実は、この二つの単語、似ているようでいてニュアンスが結構違うんです。
この記事を読めば、「finish」と「complete」の核心的な意味の違いから、具体的な使い分け、さらには語源までスッキリ理解できます。ビジネスシーンや日常会話で自信を持って使い分けられるようになりますよ。
それではまず、最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「finish」と「complete」の最も重要な違い
基本的には、単に「終わる」なら「finish」、目標達成や完全に「完了する」なら「complete」と覚えるのが簡単です。「finish」は活動の終了、「complete」は必要な要素が全て揃い完成・達成するイメージです。
まず、結論からお伝えしますね。
「finish」と「complete」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | finish | complete |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | (活動やタスクなどが)終わる、終わりを迎える | (必要な要素が揃って)完了する、完成する、達成する |
| ニュアンス | 単なる終了、中断も含む場合がある。「やり終える」ことに焦点。 | 完全に仕上げる、必要な部分を全て満たす、達成感を含む。「完成・達成」に焦点。 |
| 対象 | 食事、仕事、宿題、レース、活動など一時的な行為や期間。 | プロジェクト、レポート、フォームへの記入、コレクション、目標など一定のゴールや完全性が求められるもの。 |
| 時間との関係 | 時間切れで終わる場合にも使う。「I finished the test.」(テストを終えた ※時間内に解き終わったか、時間切れかは不明) | 必要な時間をかけて完了する場合に使うことが多い。「I completed the test.」(テストを完了した ※最後まで解き終えたニュアンス) |
| 達成感 | 伴う場合もあるが、必須ではない。 | 伴うことが多い。 |
簡単に言うと、何かを「やり終える」のが「finish」、何かを「完全に仕上げる、達成する」のが「complete」というイメージですね。
例えば、昼食を食べ終えるのは「finish lunch」、長期プロジェクトをやり遂げるのは「complete the project」といった使い分けになります。「complete」の方が、より「完璧さ」や「達成感」のニュアンスが強いのがポイントです。
なぜ違う?語源からイメージを掴む
「finish」はラテン語の「finis(終わり、境界)」に由来し、物事の終点を意識させます。一方、「complete」はラテン語の「complere(満たす)」に由来し、欠けているものを満たして完全にするイメージを持ちます。この語源の違いが、現代でのニュアンスの違いにつながっています。
なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、その語源を紐解くと、それぞれの単語が持つ核心的なイメージが見えてきますよ。
「finish」の語源:「終わり」に至るイメージ
「finish」は、ラテン語の「finis」という言葉に由来します。「finis」は「終わり、終点、境界」といった意味を持っています。
これから、「finish」には、ある活動や期間がその終点に達する、境界線に到達するという基本的なイメージが生まれます。レースのゴールライン(finish line)を思い浮かべると分かりやすいかもしれませんね。とにかく「終わり」に至る、という感覚が強い単語です。
「complete」の語源:「満たす」ことで完成するイメージ
一方、「complete」は、ラテン語の「complere」に由来します。「complere」は、「com(完全に)」と「plere(満たす)」が組み合わさった言葉で、「完全に満たす、いっぱいにする」という意味を持っています。
このことから、「complete」には、欠けている部分を満たして完全な状態にする、必要な要素を全て揃えて仕上げるというニュアンスが生まれます。フォームの全ての欄を埋めて完成させるイメージや、パズルの最後のピースをはめて全体像を完成させるイメージを持つと分かりやすいでしょう。「満たして完全にする」という感覚がポイントです。
言葉の成り立ちを知ると、単に「終わる」だけでなく、「どのように終わるか」というニュアンスの違いが、より深く理解できますよね。
具体的な例文で使い方をマスターする
ビジネスでは、タスクの終了報告には「finish」、プロジェクトの完遂報告には「complete」が適切です。日常会話では、食事や宿題の終わりには「finish」、書類の記入完了には「complete」を使うのが自然です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
仕事の文脈では、「やり終えた」のか「完了・達成した」のかを意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:finish】
- I’ll finish writing this email in 10 minutes. (あと10分でこのメールを書き終えます。)
- Have you finished reading the report? (そのレポートは読み終わりましたか?)
- Let’s finish this meeting by 5 PM. (この会議は午後5時までに終えましょう。)
- She finished her presentation successfully. (彼女はプレゼンテーションを無事終えました。)
特定の作業や活動の終了を伝える場合に「finish」が使われますね。
【OK例文:complete】
- We finally completed the project after six months. (6ヶ月を経て、私たちはついにそのプロジェクトを完了しました。)
- Please complete the application form by Friday. (金曜日までに申込書への記入を完了してください。)
- The construction of the new building is now complete. (新しいビルの建設が完了しました。)
- He needs one more course to complete his degree. (彼が学位を取得するには、あと1コース必要です。)
プロジェクトの完遂、書類の完成、必要な条件を満たすといった場合に「complete」が使われるのが分かりますね。達成感や完全性が感じられます。
日常会話での使い分け
日常会話でも、考え方は同じです。
【OK例文:finish】
- Finish your dinner before watching TV. (テレビを見る前に夕食を終えなさい。)
- I just finished cleaning my room. (ちょうど部屋の掃除が終わったところだよ。)
- He finished the marathon in under 4 hours. (彼は4時間未満でマラソンを完走した。)
- When do you finish school today? (今日、学校は何時に終わるの?)
食事、掃除、マラソン、学校など、日々の活動や行為が終わる場面でよく使われますね。
【OK例文:complete】
- I need to complete this puzzle by tomorrow. (明日までにこのパズルを完成させないといけない。)
- She has completed her collection of rare stamps. (彼女はレアな切手のコレクションを完成させた。)
- Please complete the survey. (アンケートにご協力ください=アンケートを完了させてください。)
- Have you completed your homework? (宿題は(完全に)終わった? ※単に終わったか聞くなら finish a task でもOKだが、completeを使うと質や完全性を問うニュアンスが出る)
パズル、コレクション、アンケート、宿題など、何かを作り上げたり、必要な項目を全て満たしたりする状況で使われます。
これはNG!間違えやすい使い方
意味が通じないわけではありませんが、ネイティブにとっては不自然に聞こえるかもしれない使い方を見てみましょう。
- 【△/NG】 I completed my lunch. (昼食を完了した。)
- 【OK】 I finished my lunch. (昼食を終えた。)
食事は通常、特別な達成目標があるわけではなく、単に食べる行為が終わるだけなので「finish」が自然です。「complete」を使うと、まるでノルマを達成したかのような大げさな響きになります。
- 【△/NG】 Let’s complete the meeting now. (今、会議を完了しよう。)
- 【OK】 Let’s finish the meeting now. (今、会議を終えよう。)
会議は議論や決定を行う「活動」であり、それを「終える」のが自然なので「finish」が適切です。「complete」だと、会議というタスクを完全に成し遂げた、というニュアンスになり、少し不自然に聞こえる可能性があります。(ただし、議題がすべて完了した、という意味合いを強調したい場合は使われることもあります。)
- 【△/NG】 She finished the application form. (彼女は申込書を終えた。)
- 【OK】 She completed the application form. (彼女は申込書への記入を完了した。)
申込書は全ての必要項目を埋めて「完成」させるものなので、「complete」がより適切です。「finish」でも意味は通じますが、「単に書く作業が終わった」というニュアンスになり、「完全に記入し終えた」という意図が少し弱まる可能性があります。
微妙なニュアンスですが、意識することでより自然な英語表現に近づけますね。
「finish」と「complete」の違いを英語の専門的視点から解説
言語学的に見ると、「finish」は行為や状態の終点(terminus)に焦点を当てます。一方、「complete」は行為や状態が完全な形(telicity)に達すること、つまり、内在的なゴールや完成形が存在し、それに到達することに焦点を当てます。この違いが、達成感や完全性のニュアンスの差を生んでいます。
もう少し専門的な視点から、「finish」と「complete」の違いを見てみましょう。言語学、特にアスペクト(動詞が示す事柄の時間的な局面)の観点から考えると、これらの単語のニュアンスの違いがより明確になります。
「finish」は、あるプロセスや活動が単にその終わり(終点、terminus)に達したことを示す傾向があります。そのプロセスが本来持っていた目標が達成されたかどうか、完全な形になったかどうかは、必ずしも含意しません。例えば、”He finished reading the book.” は、彼が本を読むという行為を終えたことを意味しますが、本の内容を完全に理解したか、あるいは最後まで読み通したか(途中で読むのをやめた可能性も含む)までは断定できません。
一方、「complete」は、プロセスや活動がその内在的なゴールや区切り(telicity)に達し、完全な形になったことを強く示唆します。そこには、始めから終わりまでを通して、必要な要素がすべて満たされた、という含意があります。例えば、”He completed the report.” は、彼がレポートを書くというタスクを終え、それが提出可能な完成した状態になったことを意味します。単に書くのをやめたのではなく、レポートとして成立する形に仕上げた、というニュアンスです。
このように、「complete」は「完全性」や「達成」の概念と強く結びついています。プロジェクト、申請書、学位、コレクションなど、明確な完成形や達成基準が存在するものに対して使われることが多いのは、このためですね。対照的に、「finish」は食事や会議、日常的な作業など、必ずしも完全性や達成が主眼ではない活動の終了によく用いられます。
もちろん、文脈によっては「finish」が達成感を伴うこともありますし、「complete」が単なる終了を意味する場合もなくはありません。しかし、基本的な意味合いとして、「finish」は終点への到達、「complete」は完全な形への到達というイメージを持つと、より深いレベルで使い分けができるようになるでしょう。
僕が「finish」と「complete」の使い分けで失敗した体験談
僕も英語を学び始めた頃、「finish」と「complete」の使い分けで、ちょっと恥ずかしい思いをした経験があります。
あれは大学生の頃、交換留学プログラムの応募書類を作成していたときのこと。英語で志望理由などを書く必要があり、慣れないながらも必死で書き上げました。そして、ネイティブの先生にチェックをお願いしに行ったんです。
書類を見せる前に、「先生、やっと書類を終えました!」と伝えたくて、自信満々にこう言いました。
“Professor, I finally finished the application form!”
自分としては、「書き終えたぞ!」という達成感を込めたつもりだったのですが、先生は少し首を傾げて、こう優しく訂正してくれました。
“Ah, you mean you completed the application form? ‘Finish’ just means you stopped writing, but ‘complete’ means you filled in everything necessary. For forms, ‘complete’ is usually better.”
(ああ、「申込書を完成させた」ということかな?「finish」は単に書くのをやめた、という意味合いだけど、「complete」は必要なことを全て書き入れた、という意味だよ。書類の場合は、普通「complete」の方がいいね。)
ガツン、と頭を殴られたような衝撃でした。たしかに、申込書は全ての欄を埋めて初めて「完成」するものです。「書き終えた」だけでは、まだ不完全かもしれない。先生の指摘はまさにその通りでした。
そのとき、単語の意味を辞書で覚えるだけでなく、その単語が使われる状況や、本来持っているニュアンスまで理解することの大切さを痛感しました。「finish」と「complete」は、僕にとってその教訓を象徴する単語ペアになったんです。
それ以来、似たような意味の単語に出会うと、「これは単なる終わり?それとも完成・達成?」と自問自答するクセがつきました。ちょっとした違いですが、こういう積み重ねが、より自然で正確な表現につながるんですよね。
「finish」と「complete」に関するよくある質問
ここでは、「finish」と「complete」に関するよくある疑問にお答えしますね。
「finish」と「complete」は置き換え可能ですか?
多くの場合、置き換えると不自然になったり、ニュアンスが変わったりします。例えば、「食事を終える」は “finish eating” が自然で、”complete eating” とは通常言いません。逆に、「書類を完成させる」は “complete the form” が一般的で、”finish the form” だと「記入作業を終えた」という意味合いが強まります。文脈によって適切な単語を選ぶことが重要です。
どちらを使うべきか迷ったらどうすればいいですか?
迷った場合は、その行為やタスクに「完全な形」や「達成目標」があるかどうかで判断しましょう。単に活動が終わるだけなら「finish」、何かを作り上げたり、必要な条件をすべて満たしたりするなら「complete」を使うのが基本です。例えば、単に「仕事を終える」なら “finish work”、割り当てられた「プロジェクトを完了する」なら “complete the project” といった具合です。
簡単に覚える方法はありますか?
イメージで覚えるのがおすすめです。「finish」はゴールテープを切るイメージ(単なる終了)、「complete」はパズルの最後のピースをはめるイメージ(完全な完成・達成)を持つと、ニュアンスの違いが掴みやすいでしょう。
「finish」と「complete」の違いのまとめ
「finish」と「complete」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本的な使い分け:単に「終わる」なら「finish」、完全に「完了・完成・達成する」なら「complete」。
- ニュアンスの違い:「finish」は活動の終点、「complete」は必要な要素を満たして完全な形にすること。
- 対象の違い:「finish」は一時的な行為や期間に、「complete」はゴールや完全性が求められるものに使うことが多い。
- 語源のイメージ:「finish」は「終わり」、「complete」は「満たす」。
- 迷ったときの判断基準:その行為に「完全な形」や「達成目標」があるかで判断する。
似ているようで意外と奥が深い「finish」と「complete」。この二つの単語が持つ核心的なイメージを掴めば、もう使い分けに迷うことはありませんね。ぜひ、実際の英会話や英文作成で意識して使ってみてください。
言葉のニュアンスについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。