「cite」と「quote」の違いとは?引用と参照の使い分けを解説

レポートや論文、プレゼン資料を作成する際、「cite」と「quote」という言葉を使う場面がありますよね。

どちらも日本語では「引用する」と訳されることがあり、「あれ、どっちを使えばいいんだっけ?」と迷ってしまうことはありませんか?特に学術的な文章や正確性が求められるビジネス文書では、この使い分けは非常に重要です。

実はこの二つの単語、情報源に「言及する」のか、言葉を「そのまま抜き出す」のかという点で明確な違いがあるんです。

この記事を読めば、「cite」と「quote」のそれぞれの意味、語源、そして具体的な使い分けまでスッキリ理解できます。もう、引用・参照の英語表現で迷うことはありません!

それではまず、最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「cite」と「quote」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「cite」は出典や情報源に「言及する、参照を示す」こと、「quote」は他者の言葉や文章を「そのまま引用する」こと、と覚えるのが簡単です。「cite」は情報がどこから来たかを示し、「quote」はその情報の内容を正確に再現します。

まず、結論からお伝えしますね。

「cite」と「quote」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 cite quote
品詞 動詞、(まれに)名詞 動詞、名詞
中心的な意味 (出典・情報源として)~に言及する、~を引き合いに出す、参照を示す (他者の言葉・文章を)そのまま引用する、~と述べる
目的 情報源の明示、主張の裏付け 元の言葉の正確な伝達、強調
形式 著者名や文献名を挙げる、脚注や参考文献リストで示す 引用符(” ” や ‘ ‘)で囲むことが多い
ニュアンス 参照元を示す、典拠を示す 言葉をそのまま繰り返す、正確に伝える
日本語訳のヒント 引用する、挙げる、言及する、(情報源を)示す 引用する、~と述べる、(言葉を)引く

一番大切なポイントは、「cite」が情報の出どころを示す行為であり、「quote」が具体的な言葉をそのまま持ってくる行為であるという点です。「どこから情報を得たか」を示すのが「cite」、「何を言っていたか」を正確に示すのが「quote」とイメージすると分かりやすいですね。

なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む

【要点】

「cite」はラテン語の「citare(呼び出す、召喚する)」が語源で、情報源を「呼び出して」証拠とするニュアンス。「quote」は中世ラテン語の「quotare(番号を付ける、参照印を付ける)」が語源で、特定の箇所に「印を付けて」そのまま抜き出すニュアンスがあります。由来する行動イメージが異なりますね。

この二つの言葉がなぜ似たような「引用」という意味で使われつつ、異なるニュアンスを持つのか、その語源を探ると面白い発見がありますよ。

「cite」の語源:「呼び出す」「言及する」

「cite」は、ラテン語の動詞「citare」に由来します。「citare」は「呼び出す、召喚する、駆り立てる」といった意味を持っていました。法廷で証人を呼び出すようなイメージですね。

この語源から、「cite」には、自分の主張や記述の根拠として、特定の情報源(文献、著者、事例など)を「呼び出して」言及する、引き合いに出すというニュアンスが生まれました。情報源を証拠として提示する、という感覚が根底にあるわけです。

「quote」の語源:「印をつける」「区切る」

一方、「quote」は、中世ラテン語の「quotare」に由来すると考えられています。「quotare」は「(参照のために)番号を付ける、参照印を付ける」といった意味がありました。これは、さらにラテン語の「quotus(どれだけの数の)」に関連しています。

この語源から、「quote」には、書物などの特定の箇所に印を付け、そこを区切ってそのまま抜き出すというイメージが生まれます。文章の一部を「ここからここまで」と区切って取り出す感覚ですね。引用符(quotation mark)がまさに、その区切りを示す「印」の役割を果たしています。

言葉の成り立ちを知ると、「cite」が情報源への参照行為、「quote」が具体的な言葉の複製行為、という違いがよりはっきりと感じられますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

レポートで「Dr. Smith cites three reasons for this phenomenon.(スミス博士はこの現象の理由を3つ挙げている)」のように使うのが「cite」。「She quoted Shakespeare in her speech.(彼女はスピーチでシェイクスピアを引用した)」のように、具体的な言葉を引くのが「quote」です。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

「cite」と「quote」がそれぞれどのような場面で使われるか見ていきましょう。

「cite」を使う場合(出典・情報源を示す)

論文、レポート、記事などで、情報源や根拠、事例などを参照元として示す際に使います。

  • Please cite all sources used in your research paper. (研究論文で使用した全ての出典を明記してください。)
  • The lawyer cited a previous case to support his argument. (弁護士は自らの主張を裏付けるために過去の判例を引き合いに出した。)
  • He cited lack of funding as the main reason for the project’s failure. (彼はプロジェクト失敗の主な理由として資金不足を挙げた。)
  • This website cites data from the World Health Organization. (このウェブサイトは世界保健機関のデータを引用元として示している。)
  • Can you cite an example of what you mean? (あなたの意味することの例を挙げてもらえますか? – この場合は「例を示す」意味)

「~を参照した」「~を引き合いに出した」「~を(理由や例として)挙げた」といった文脈で使われることが多いですね。

「quote」を使う場合(言葉をそのまま引用する)

他者の発言や文章の一部を、言葉通りに正確に伝える際に使います。引用符(” “)と共に使われることが一般的です。

  • He quoted the famous line from the movie: “May the Force be with you.” (彼は映画の有名なセリフ「フォースと共にあらんことを」を引用した。)
  • The newspaper quoted the politician as saying he would not resign. (新聞はその政治家が辞任しないと述べた報じた(引用した)。)
  • “To be or not to be,” she quoted softly. (「生きるべきか死ぬべきか」と彼女は静かに口にした(引用した)。)
  • Can I quote you on that? (その発言、引用してもいいですか? – 会話などで確認する際の決まり文句)
  • The article quotes several experts on the topic. (その記事はそのトピックに関する複数の専門家の言葉を引用している。)

誰かの言葉や文章を「そのまま」持ってくる、というニュアンスが強いですね。名詞として「見積もり(quotation)」の意味で使われることもありますが、ここでは動詞の用法を中心に解説しています。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が通じないわけではありませんが、不自然に聞こえたり、意図がずれたりする可能性がある使い方です。

  • 【NG】 In his book, he quotes many researchers. (彼の本の中で、彼は多くの研究者を引用している。)
  • 【OK】 In his book, he cites many researchers. (彼の本の中で、彼は多くの研究者に言及している(出典として挙げている)。)
  • 【OK】 In his book, he quotes the words of many researchers. (彼の本の中で、彼は多くの研究者の言葉を引用している。)

研究者の名前や研究自体を出典として挙げる場合は「cite」が適切です。「quote」を使う場合は、その研究者の「言葉」をそのまま引用するニュアンスになります。

  • 【NG】 I need to cite his exact words. (彼の正確な言葉を参照する必要がある。)
  • 【OK】 I need to quote his exact words. (彼の正確な言葉をそのまま引用する必要がある。)

言葉を「そのまま」伝えることを強調したい場合は「quote」を使います。「cite」だと、出典を示すというニュアンスが強くなってしまいます。

このように、「情報源」に焦点を当てるか、「具体的な言葉」に焦点を当てるかで使い分けるのがポイントですね。

【応用編】似ている言葉「引用(いんよう)」との違いは?

【要点】

日本語の「引用(いんよう)」は、英語の「quote」(言葉をそのまま抜き出す)に近い意味合いで使われることが多いです。レポートなどで出典を示す行為(英語の「cite」に近い)も広義には「引用」と呼ぶことがありますが、区別する場合は「参考文献の提示」や「参照」といった言葉が使われます。著作権法上の「引用」のルールは、主に「quote」の行為に関わります。

ここで、日本語の「引用(いんよう)」という言葉と、「cite」「quote」の関係についても触れておきましょう。

日本語で「引用する」と言う場合、多くのケースでは英語の「quote」が意味する「他者の発言や文章をそのまま自分の著作物の中に示すこと」を指しています。例えば、「彼の論文から一節を引用する」といった使い方ですね。

一方で、レポートや論文の最後につける「引用文献リスト」のように、議論の根拠としたり、参考にした情報源(著者名、書籍名、URLなど)を示す行為、つまり英語の「cite」に近い行為も、広い意味で「引用」と呼ばれることがあります。しかし、より正確に区別したい場合は、「参考文献」や「出典の明示」、「参照」といった言葉で表現されることが多いでしょう。

特に重要になるのが、著作権法との関わりです。日本の著作権法で定められている「引用」のルール(出典の明示、引用部分の明確化、主従関係、改変しない、など)は、主に英語の「quote」にあたる行為、つまり他者の著作物をそのまま利用する際のルールです。

単に「〇〇氏の研究によれば~」のように情報源に言及する「cite」の行為自体は、通常、著作権法上の「引用」のルールとは直接関係しません(もちろん、言及する内容の正確性や、名誉毀損にならないような配慮は必要ですが)。

このように考えると、日本語の「引用」は文脈によって「cite」的な意味と「quote」的な意味の両方を含みうるものの、中心的な意味合いとしては「quote」に近いと言えるでしょう。

「cite」と「quote」の違いを学術的視点から解説

【要点】

学術論文やレポートにおいて、「cite(引用する、参照を示す)」は先行研究への敬意、議論の根拠付け、読者への情報提供という極めて重要な役割を担います。これは単なる形式ではなく、学術的誠実性(Academic Integrity)の根幹です。一方、「quote(引用する)」は、定義の正確な提示、議論の対象となる特定の表現の提示、あるいは印象的な言葉による効果的な論述のために用いられます。どちらも正確な出典情報(citation)の付記が必須です。

学術的な文章作成(Academic Writing)の世界では、「cite」と「quote」の使い分けは、単なる言葉選びの問題ではなく、研究倫理や作法に関わる重要な要素です。

cite」する行為、すなわち参考文献やデータ、先行研究に言及することは、学術界におけるコミュニケーションの根幹をなします。これには主に以下の目的があります。

  1. 先行研究への敬意と貢献の承認:自分の研究が、誰のどのような業績に基づいているかを示す。
  2. 主張の信頼性と客観性の担保:自分の議論や分析が、確かな証拠やデータ、理論に基づいていることを示す。
  3. 読者への情報提供:読者がさらに深く知りたい場合に、参照すべき情報源を提供する。
  4. 盗用(Plagiarism)の回避:他者のアイデアや言葉を、あたかも自分のものであるかのように提示することを避ける。

このように、「cite」は単に出典を書くという形式的な作業ではなく、学術コミュニティにおける知的誠実性(Academic Integrity)を示すための本質的な行為なのです。APAスタイル、MLAスタイル、シカゴスタイルなど、分野によって様々な引用スタイル(Citation Style)が存在するのも、この重要性を反映しています。

一方、「quote」する行為、すなわち他者の言葉をそのまま抜き出して示すことは、以下のような特定の目的のために行われます。

  1. 定義や法則の正確な提示:特定の用語の定義や、重要な法則などを、原文のまま正確に示す必要がある場合。
  2. 分析・批評の対象の明確化:特定の文章表現や言い回し自体を分析・批評の対象とする場合。
  3. 権威ある言葉による主張の強化:著名な研究者や専門家の印象的な言葉を引用することで、自らの主張に重みや説得力を持たせる場合。
  4. 議論の導入や問題提起:示唆に富む問いかけや、議論の的となるような言葉を提示する場合。

ただし、学術文章では、むやみに長い「quote」は避け、自分の言葉で要約(paraphrase)したり、概要をまとめたり(summarize)することが推奨される傾向にあります。その場合でも、元のアイデアや情報の出どころは必ず「cite」する必要があります。

「cite」は学術文章の根幹であり、「quote」はその中で特定の効果を狙うための技法の一つ、と位置づけることができるでしょう。そして、どちらの場合も、読者が情報源を正確にたどれるように、適切な形式で出典情報(citation – これは名詞形です)を付記することが絶対的なルールとなります。

僕がレポートで指摘された「cite」と「quote」の混同

僕も学生時代、レポート作成で「cite」と「quote」を混同して、先生から厳しい指摘を受けたことがあります。

ある社会学の授業で、特定の社会問題に関するレポートを提出したときのこと。僕は、関連する書籍や論文をいくつか読み、それらの著者たちの主張をレポートの中に盛り込みました。自分なりに出典は明記したつもりで、例えばこんな風に書いていたんです。

「この問題に関して、社会学者の山田氏は『〇〇〇〇』と述べている(山田, 2020)。また、佐藤氏も同様の指摘をしており、『△△△△』と主張している(佐藤, 2021)。」

自分としては、著者名と年号を示しているし、鉤括弧で囲っているから問題ないだろう、と思っていました。ところが、返却されたレポートには、先生からの赤字でこう書かれていました。

鉤括弧で囲むのは、原文を『一字一句そのまま』引用(quote)する場合のみ。君が書いているのは、著者たちの主張の『要約(paraphrase)』や『間接的な言及』だろう? それならば、鉤括弧は不要。誰のどの文献を参照(cite)したのかは分かるが、これでは君自身の言葉なのか、著者の言葉をそのまま引いているのか区別がつかない。引用(quote)のルールを再確認すること。

頭をガツンと殴られたような衝撃でした。僕は、「引用=出典を示すこと」くらいにしか考えておらず、「quote(言葉をそのまま引く)」と「cite(出典に言及する)」、そして「paraphrase(自分の言葉で言い換える)」の違いを全く意識していなかったのです。

先生の指摘通り、僕は著者たちの言葉を正確に quote したのではなく、自分なりに解釈して要約した部分も多かったのに、すべて鉤括弧に入れてしまっていました。これでは、どこまでが著者のオリジナルの表現で、どこからが僕の解釈なのか、全く区別できません。学術的な文章としては致命的なミスでした。

この経験を通じて、情報を参照(cite)することと、言葉をそのまま引用(quote)することは全く別の行為であり、それぞれに明確なルールがあることを痛感しました。特に、他者の言葉を借りる際には、それが直接的な quote なのか、間接的な言及や paraphrase なのかを明確に区別し、適切な形式(鉤括弧の有無、出典の示し方)で示すことの重要性を学びました。

それ以来、レポートや論文を書く際には、この区別を常に意識するようになりました。面倒に感じることもありますが、学術的な誠実さを保つためには欠かせない作法ですよね。

「cite」と「quote」に関するよくある質問

「cite」と「quote」について、よくある質問をまとめました。

レポートで参考文献を示すときはどちらを使いますか?

レポートの本文中で「(山田, 2020)」のように出典を示す行為や、巻末の参考文献リストを作成することは、「cite」にあたります。これは情報源に言及し、参照を示す行為だからです。もし、本文中で特定の文章を鉤括弧などを使ってそのまま抜き出す場合は、その行為自体は「quote」になりますが、その際にも出典を示す(citeする)必要があります。

会話の中で人の言ったことを伝えるときはどちらですか?

誰かが言ったことを一字一句正確に繰り返す場合は「quote」を使います。例えば、”He said, ‘I’ll be back.'” のように言います。一方、誰が言ったかという情報源に重点を置く場合や、内容を要約して伝える場合は「cite」が使われることもありますが、日常会話では「He mentioned…」や「According to him…」のような表現の方が一般的かもしれません。

動詞以外でも使いますか?

はい、どちらも名詞としても使われます。「citation」は「引用箇所、出典明示、参照」といった意味の名詞です。学術論文の参考文献リストは “Works Cited” や “References” と呼ばれることが多いですが、文脈によっては “Citations” とすることもあります。「quote」または「quotation」は「引用文、引用句」という意味の名詞です。また、ビジネスでは「見積もり」という意味でもよく使われますね (“request a quote”)。

「cite」と「quote」の違いのまとめ

「cite」と「quote」の違い、これで使い分けはバッチリですね!

最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。

  1. 核心的な違い:「cite」は出典や情報源に言及すること、「quote」は言葉をそのまま抜き出すこと。
  2. 目的:「cite」は情報源の明示や裏付け、「quote」は元の言葉の正確な伝達や強調。
  3. 形式:「cite」は著者名などで示し、「quote」は引用符(” “)を使うことが多い。
  4. 語源:「cite」は「呼び出す」、「quote」は「印をつける」。
  5. 日本語「引用」との関係:日本語の「引用」は主に「quote」に近いが、「cite」の意味合いも含むことがある。著作権法上のルールは主に「quote」に関わる。
  6. 学術的な重要性:「cite」は学術的誠実性の根幹、「quote」は特定の表現を示す技法。どちらも正確な出典明示が必須。

特にレポートや論文など、出典の明示が求められる場面では、この二つの言葉の使い分けは非常に重要です。「どこから情報を得たのか」を明確にするのが「cite」、「誰が(またはどの文献が)具体的に何と言ったのか」を正確に伝えるのが「quote」。この基本を押さえておけば、自信を持って適切な表現を選べるはずです。

言葉の正確な使い分けは、コミュニケーションの質を高める上で大切ですね。他の似たような英単語の使い分けについてもっと知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひチェックしてみてください。