英語で「持っていく」や「持ってくる」と言いたいとき、「bring」と「take」、どちらを使えばいいか迷うことはありませんか?
日本語ではどちらも「持つ」という動作が含まれますが、英語では動きの方向によって使い分けが必要ですよね。
「この場合、bringかな? takeかな?」と一瞬考えてしまう…。実はこの二つの単語、話し手や聞き手のいる場所に向かって移動するか、そこから離れて移動するかという、視点の違いで使い分けられるんです。この記事を読めば、「bring」と「take」の基本的な違いから、核心的なイメージ、具体的な使い方、似た単語との比較までスッキリ理解でき、英会話やライティングで自信を持って使えるようになります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「bring」と「take」の最も重要な違い
基本的には、話し手または聞き手のいる場所へ「持ってくる・連れてくる」場合は「bring」、話し手または聞き手のいる場所から離れた場所へ「持って行く・連れて行く」場合は「take」を使います。動きの方向性が鍵です。
まず、結論からお伝えしますね。
「bring」と「take」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | bring /brɪŋ/ | take /teɪk/ |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 持ってくる、連れてくる | 持って行く、連れて行く |
| 動きの方向性 | 話し手・聞き手の方へ (Towards the speaker/listener) | 話し手・聞き手から離れて (Away from the speaker/listener) |
| 視点 | 到着点(こちら側) | 出発点(こちら側) |
| 場所のイメージ | Here (ここへ) | There (あそこへ) |
| 対象 | 物、人 | |
| 例文(物) | Please bring me a glass of water. (水を一杯持ってきてください。) | Don’t forget to take your umbrella. (傘を持っていくのを忘れないで。) |
| 例文(人) | Can you bring your friend to the party? (友達をパーティーに連れてきてくれる?) | I’ll take my kids to the park. (子供たちを公園に連れて行きます。) |
一番大切なポイントは、話し手や聞き手が基準となり、物が「こちらに来る」のか「あちらへ行く」のかという動きの方向性ですね。これを意識すれば、使い分けは難しくありません。
なぜ違う?言葉の核心イメージと動きの方向性
「bring」は「come(来る)」のイメージと結びつき、物が話し手や聞き手のいる場所へ近づいてくる動きを表します。「take」は「go(行く)」のイメージと結びつき、物が話し手や聞き手のいる場所から離れていく動きを表します。この方向性の違いが核心です。
「持ってくる」と「持って行く」。日本語でも使い分けるように、英語の「bring」と「take」にも明確な方向性の違いがあります。それぞれの言葉が持つ核心的なイメージを見ていきましょう。
「bring」のイメージ:話し手・聞き手の方へ「持ってくる」
「bring」の核心イメージは、「こちらへ」という方向性です。物や人が、話し手(自分がいる場所)または聞き手(相手がいる場所)に向かって移動してくる状況を表します。
これは、基本的な動きを表す動詞「come(来る)」と関連付けて考えると分かりやすいでしょう。「come」が人や物がこちらへ移動することを表すように、「bring」はその移動に「持つ」という要素が加わったイメージです。
例えば、
- あなたが家にいて、誰かに飲み物を持ってきてもらう → Please bring me some juice.
- あなたがパーティー会場にいて、友人に食べ物を持ってきてもらう → Can you bring some snacks to the party?
のように、物が自分のいる場所、あるいは相手がいる場所(会話の場)に到着する動きを指します。
「take」のイメージ:話し手・聞き手から離れて「持って行く」
一方、「take」の核心イメージは、「あちらへ」という方向性です。物や人が、話し手(自分がいる場所)または聞き手(相手がいる場所)から離れて、別の場所へ移動していく状況を表します。
これは、基本的な動きを表す動詞「go(行く)」と関連付けて考えられます。「go」が人や物があちらへ移動することを表すように、「take」はその移動に「持つ」という要素が加わったイメージです。
例えば、
- あなたが家から出かけるときに、傘を持っていく → I should take an umbrella with me.
- あなたが学校にいる子供を迎えに行き、家に連れて帰る → I need to take my son home from school.
のように、物が自分のいる場所、あるいは相手がいる場所(会話の場)から出発して他の場所へ向かう動きを指します。
このように、「bring = come(こちらへ)」、「take = go(あちらへ)」という基本的な動きの方向性と結びつけて考えると、その違いが非常にクリアになりますね。
具体的な例文で使い方をマスターする
パーティーに料理を持ってくるなら「bring a dish」、会議に資料を持って行くなら「take the documents」、子供を学校へ連れて行くなら「take my child to school」、友人を家に連れてくるなら「bring my friend home」のように、目的地が話し手・聞き手の場所か、それ以外の場所かで使い分けます。
理屈はわかっても、実際に使うとなると迷うこともありますよね。具体的なシチュエーションを想定した例文で、「bring」と「take」の使い方をしっかり確認しましょう。
「bring」を使う場合(こちらへ持ってくる)
物や人が、話し手または聞き手のいる場所へ移動してくる状況です。
- Please bring your homework to me tomorrow morning. (明日の朝、宿題を私のところに持ってきてください。) ※聞き手(先生など)のいる場所へ
- Don’t forget to bring your swimming costume when you come to my house. (私の家に来るときは水着を持ってくるのを忘れないでね。) ※話し手(家主)のいる場所へ
- Did you bring anything to drink? (何か飲み物を持ってきた?) ※今いる場所へ
- She brought her boyfriend home to meet her parents. (彼女は彼氏を両親に会わせるために家に連れてきた。) ※家(両親のいる場所)へ
- What brought you here today? (今日は何があなたをここに連れてきたのですか?→どうして今日ここに来たのですか?) ※慣用表現
会話の相手がいる場所や、自分が今いる場所が基準点(到着点)になることが多いですね。
「take」を使う場合(あちらへ持って行く)
物や人が、話し手または聞き手のいる場所から離れて、別の場所へ移動していく状況です。
- Remember to take your lunch box when you leave. (出かけるときに、お弁当を持っていくのを覚えておいてね。) ※今いる場所から離れる
- I need to take these books back to the library. (これらの本を図書館に返しに持って行かないといけない。) ※ここから図書館へ
- Could you take this package to the post office for me? (この小包を郵便局へ持って行ってくれませんか?) ※ここから郵便局へ
- He took his dog for a walk in the park. (彼は犬を公園へ散歩に連れて行った。) ※家などから公園へ
- The bus will take you to the airport. (そのバスがあなたを空港まで連れて行ってくれます。) ※ここから空港へ
今いる場所が基準点(出発点)となり、別の目的地へ向かう動きを表します。
これはNG!間違えやすい使い方
動きの方向性を間違えると、コミュニケーションに齟齬が生じることがあります。
- (電話で相手に来てほしい時)【NG】 Can you take some pizza to my place tonight? (今夜、ピザを私の家へ持って行ってくれませんか?)
- 【OK】 Can you bring some pizza to my place tonight? (今夜、ピザを私の家へ持ってきてくれませんか?)
相手に自分の場所へ「持ってきて」ほしいので、「bring」を使います。「take」を使うと、相手が自分の家からどこか別の場所へピザを持って行く、という意味になってしまいます。
- (外出先から家にいる人に電話して)【NG】 I forgot my keys. Can you bring them to the station? (鍵を忘れちゃった。駅まで持ってきてくれない?)
- 【OK】 I forgot my keys. Can you take them to the station? (鍵を忘れちゃった。駅まで持って行ってくれない?)
話し手は駅にいて、聞き手(家の人)に家から駅へ「持って行って」ほしい状況です。聞き手の場所から離れる動きなので、「take」が適切です。(ただし、話し手が「駅にいる自分の方へ持ってきて」という意図で bring を使うことも稀にあります)
- 【NG】 Please bring your child to school by 8:30 AM. (お子さんを午前8時半までに学校へ連れてきてください。) ※学校関係者が保護者へ言う場合
- 【OK】 Please take your child to school by 8:30 AM. (お子さんを午前8時半までに学校へ連れて行ってください。) ※親が自分自身に言う場合など
- 【OK】 Please bring your child to school by 8:30 AM. (お子さんを午前8時半までに学校へ連れてきてください。) ※学校関係者が保護者へ言う場合(学校=こちら側、という視点)
この例は少し複雑です。保護者が子供を学校へ「持って行く」のは家から離れる動きなので「take」が基本です。しかし、学校の先生などが保護者に対して言う場合は、学校を基準点(こちら側)として「連れてきてください」という意味で「bring」を使うのが一般的です。視点が誰にあるかで変わるんですね。
【応用編】似ている言葉「fetch」との違いは?
「fetch」は「(離れた場所に)行って、何かを持って(連れて)戻ってくる」という一連の動作を表します。「go + take + bring」の3つの要素を含むイメージです。単に「持ってくる(bring)」や「持って行く(take)」とは異なります。
「持ってくる」「持って行く」に関連する言葉として、「fetch /fetʃ/」も覚えておくと便利です。これは「bring」や「take」とは少し異なるニュアンスを持っています。
「fetch」は、「(離れた場所へ)行って、〜を取って(連れて)戻ってくる」という一連の往復動作を表します。
イメージとしては、「go + take + bring」の3つのステップが一つになった感じです。
- Could you fetch me my glasses from the living room? (リビングから私のメガネを取ってきてくれませんか?) ※リビングへ行って(go)、メガネを持って(take)、戻ってくる(bring)
- The dog is trained to fetch the newspaper. (その犬は新聞を取ってくるように訓練されている。)
- Please fetch a doctor immediately! (すぐにお医者さんを呼んできてください!)
単に「持ってくる(bring)」や「持って行く(take)」という片道の動きではなく、「行って・取って・戻る」という往復の動作が含まれるのが「fetch」の特徴です。犬にボールを投げ、「Fetch!」と言うのは、まさにこの一連の動作を指示しているわけですね。
「bring」と「take」の違いを言語学的に解説
言語学的に、「bring」と「take」は「直示(Deixis)」に関わる動詞です。これらの動詞の使い分けは、発話の基準点(deictic center)、通常は話し手の位置(または聞き手の位置)に対する動きの方向によって決定されます。「bring」は基準点に向かう求心的な動き(centripetal movement)を、「take」は基準点から離れる遠心的な動き(centrifugal movement)を表します。
「bring」と「take」の使い分けは、言語学における「直示(ちょくじ)」または「ダイクシス(Deixis)」という概念、特に「場所の直示(Place Deixis)」と密接に関連しています。
直示とは、言葉の意味や解釈が、その言葉が発せられた文脈(誰が、いつ、どこで話しているかなど)に依存する現象です。「bring」と「take」の選択は、まさに発話の基準点(deictic center)、通常は話し手の現在の位置(または場合によっては聞き手の位置)に対する動きの方向性によって決定されます。
- bring:基準点(話し手/聞き手の位置)に向かってくる動き(求心的、centripetal movement)を表します。対象物が基準点に近づく、あるいは到着する結果を示唆します。これは場所の直示表現「here(ここへ)」や「come(来る)」と関連性が高いです。
- take:基準点(話し手/聞き手の位置)から離れていく動き(遠心的、centrifugal movement)を表します。対象物が基準点から出発し、別の場所へ向かう過程を示唆します。これは場所の直示表現「there(あそこへ)」や「go(行く)」と関連性が高いです。
例えば、「Please bring the book here.」では、本が話し手のいる場所(here)に向かって移動することが期待されます。一方、「Please take the book there.」では、本が話し手のいる場所から離れた別の場所(there)へ移動することが期待されます。
この使い分けは、多くの言語に見られる普遍的な特徴ではありません。例えば、スペイン語の「traer(持ってくる)」と「llevar(持って行く)」、フランス語の「apporter(持ってくる)」と「emporter(持って行く)」なども同様の区別をします。これは、人間が空間と移動を認識する上での基本的な認知メカニズムが言語に反映されている例と言えるでしょう。
話し手と聞き手が異なる場所にいる場合の解釈は、文脈に依存します。「Bring it to me.」は明確ですが、「Bring it to the office.」の場合、話し手や聞き手がオフィスにいれば自然ですが、そうでなければ「Take it to the office.」の方が適切な場合があります。基準点がどこにあるかの認識が重要になります。
このように、「bring」と「take」の使い分けは、単なる語彙の選択ではなく、発話状況における話し手の視点と対象物の動きの方向性を正確に反映するための、言語の基本的な仕組みに基づいているのです。
僕がパーティーで「take a cake」と言い間違えた話
僕自身の体験談なのですが、「bring」と「take」の使い分けで、ちょっとした勘違いから恥ずかしい思いをしたことがあります。
留学していた頃、友人宅でのホームパーティーに招待された時のことです。何か一品持ち寄ることになり、僕は手作りのケーキを持っていくことにしました。パーティー当日、会場である友人宅に向かう途中、別の友人に電話で「今どこ?何持っていくの?」と聞かれました。
僕はウキウキしながら、こう答えました。
「I’m on my way! I’ll take a cake I baked.」 (今向かってるよ!僕が焼いたケーキを持って行くよ。)
自分としては、「(家からパーティー会場へ)ケーキを持って行く」という意味で言ったつもりでした。出発点である家から離れる動きなので、「take」で正しいと思ったのです。
電話を切ってしばらくして友人宅に到着すると、電話で話した友人が僕を見るなり、少し不思議そうな顔で言いました。「あれ?ケーキは?途中で誰かにあげちゃったの?」
僕は「え?ここに持ってきたよ!」とケーキの箱を見せました。すると友人は笑いながら、「なんだ、持ってきたんだ!電話で ‘I’ll take a cake’ って言ってたから、てっきりパーティー会場(ここ)からどこか別の場所へ持って行っちゃうのかと思ったよ!こういう時は ‘I’m bringing a cake.’ って言うんだよ。」と教えてくれました。
その瞬間、僕は自分の勘違いに気づきました。確かに家(出発点)から見れば「持って行く(take)」ですが、会話の相手である友人はすでにパーティー会場(到着点)にいます。その相手に対しては、物が会場(こちら)に向かってくる動きになるので、「持ってくる(bring)」を使うのが自然だったのです。
基準となる視点が、必ずしも自分の物理的な出発点ではなく、会話の相手がいる場所や、会話の中心となっている場所(この場合はパーティー会場)になることがある。この点を僕は完全に見落としていました。
幸い、笑い話で済みましたが、「take」と言ったことで、「パーティーにはケーキを持って行かずに、どこか別の場所へ行く」と誤解されかねなかったわけです。言葉の選び方一つで、こんなにも伝わり方が変わるのかと、改めて英語の奥深さ(そして自分の迂闊さ)を感じました。
それ以来、物を持って移動する話をする際には、「誰(どこ)を基準に話しているか?」を常に意識し、「bring」と「take」を慎重に選ぶようにしています。
「bring」と「take」に関するよくある質問
Q1: 人を「連れてくる」「連れて行く」場合も同じ使い分けですか?
A1: はい、人に対しても物と同じように「bring」と「take」を使い分けます。
- Please bring your sister to the party. (妹さんをパーティーに連れてきてください。) ※パーティー会場(こちら)へ
- I will take my daughter to the zoo tomorrow. (明日、娘を動物園に連れて行きます。) ※ここから動物園へ
Q2: 電話で相手に「そちらに伺います」という時、何か持っていく場合は “bring” ですか “take” ですか?
A2: この場合、聞き手(相手)のいる場所へ持って行くことになるので、「bring」を使うのが一般的です。
- A: I’ll visit your office tomorrow. (明日あなたのオフィスに伺います。)
- B: Great!
- A: OK, I’ll bring the samples with me. (分かりました、サンプルを(あなたのオフィスへ)持って行きます。)
話し手は自分の場所から離れますが、聞き手の場所(到着点)を基準に考えるため「bring」が使われます。「come」の感覚に近いですね。
Q3: 「持っていく」という意味で “carry” との違いは何ですか?
A3: 「carry」は単に「運ぶ」「携帯する」という動作に焦点を当て、必ずしも特定の方向性(こちらへ/あちらへ)を含みません。「bring」や「take」は目的地への移動を伴うのに対し、「carry」は単に手に持っている状態や、ある場所から別の場所へ移動させる行為自体を指します。
- She always carries a large bag. (彼女はいつも大きなバッグを持ち歩いている。) ※携帯する
- Can you help me carry this box upstairs? (この箱を上の階へ運ぶのを手伝ってくれますか?) ※運ぶ行為
- Please bring this box upstairs. (この箱を上の階へ持ってきてください。) ※話し手が上の階にいる
- Please take this box upstairs. (この箱を上の階へ持って行ってください。) ※話し手が下の階にいる
「bring」と「take」の違いのまとめ
「bring」と「take」、これで使い分けの感覚が掴めましたね!
最後に、この記事で解説した重要なポイントをまとめて、記憶を確実にしましょう。
- 核心は動きの方向性:話し手・聞き手のいる場所【へ】近づく動きなら「bring」(comeのイメージ)。話し手・聞き手のいる場所【から】離れる動きなら「take」(goのイメージ)。
- 基準点は話し手・聞き手:どちらの単語を使うかは、会話の中心となっている場所(通常は話し手か聞き手のいる場所)を基準に判断する。
- 対象:物だけでなく、人を「連れてくる」「連れて行く」場合も同じルール。
- 似た言葉「fetch」:「行って・取って・戻ってくる」という往復の一連の動作を表す。
- 視点が重要:誰の視点(出発点か到着点か)で動きを捉えるかが使い分けの鍵。
「持ってくる」「持って行く」という日常的な動作を表す基本的な単語ですが、英語では視点と方向性を明確に区別します。この感覚を掴めば、コミュニケーションがよりスムーズになり、誤解も少なくなりますよ。
英会話や英文作成の際に、ぜひ「bring = こちらへ」「take = あちらへ」のイメージを思い出してみてください。他の似た英単語の使い分けを知りたい場合は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページも役立つはずです。