「チャート」と「グラフ」、どちらも情報を視覚的に表現するものとして、プレゼン資料やレポート作成などで頻繁に使われますよね。
でも、「この図はチャート?それともグラフ?」と、いざ使い分けようとすると迷ってしまうことはありませんか?
実はこの二つの言葉、「グラフ」が主に数値データの関係性を示す図であるのに対し、「チャート」はより広範な情報を視覚化するもの全般を指すという違いがあるんです。
この記事を読めば、「チャート」と「グラフ」それぞれの意味や語源、具体的な使い分けから、似ている言葉「ダイアグラム」との違いまでスッキリ理解できます。もうプレゼン資料で迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「チャート」と「グラフ」の最も重要な違い
基本的には、数値データの関係性を視覚化するなら「グラフ」(棒グラフ、折れ線グラフなど)、それ以外の図や表を含む広範な情報提示なら「チャート」(フローチャート、組織図など)と覚えるのが簡単です。「グラフ」は「チャート」の一種と考えることができます。
まず、結論からお伝えしますね。
「チャート」と「グラフ」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | チャート(Chart) | グラフ(Graph) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 情報を視覚的に表現した図や表全般 | 主に数値データ間の関係性を視覚的に示した図 |
| 表現する内容 | 数値、関係性、手順、構造など多岐にわたる | 数値の変化、比較、割合、分布など |
| 代表例 | 円チャート(円グラフ)、組織図、フローチャート、ガントチャート、海図 | 棒グラフ、折れ線グラフ、散布図、ヒストグラム |
| 包含関係 | グラフを含む、より広範な概念 | チャートの一種 |
| 主な目的 | 情報の理解促進、整理、伝達 | データの傾向やパターンの把握、比較 |
一番大切なポイントは、「グラフ」は「チャート」という大きなカテゴリの中に含まれるということですね。
ですから、「円グラフ」のことを「円チャート(Pie Chart)」と呼んでも間違いではありません。しかし、組織図や工程図を「グラフ」と呼ぶのは一般的ではありません。
迷ったときは、数値データを扱っている図なら「グラフ」も「チャート」も使える、数値データ以外(手順や構造など)なら「チャート」を使う、と考えると分かりやすいでしょう。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「チャート」の語源は「紙片、海図」を意味する言葉で、情報を書き留めた視覚資料全般を指します。「グラフ」の語源は「書く、記録する」で、特にデータや関係性を線や点で「書き記したもの」というニュアンスがあります。
なぜこの二つの言葉に意味合いの違いが生まれるのか、それぞれの言葉の成り立ち、つまり語源を探ってみると、そのイメージがより鮮明になりますよ。
「チャート」の成り立ち:「海図」から情報の視覚化へ
「チャート(Chart)」の語源は、ラテン語の「charta(カルタ)」、さらにはギリシャ語の「khartēs(カルテース)」に遡ります。これらの言葉は元々、パピルス紙の一枚や、紙片、書かれたもの全般を意味していました。
特に、大航海時代には航海士が使う「海図」を指す言葉として定着しました。海図は、海の深さ、海岸線、危険箇所など、航海に必要な様々な情報を一枚の図にまとめたものです。
この「情報を整理し、視覚的に分かりやすく示すもの」というイメージから、現代では、数値データだけでなく、組織の構造(組織図)、作業の手順(フローチャート)、プロジェクトの進捗(ガントチャート)など、広範な情報を視覚化する図全般を「チャート」と呼ぶようになったんですね。
「グラフ」の成り立ち:「書かれたもの」からデータ関係の図へ
一方、「グラフ(Graph)」の語源は、ギリシャ語の「graphē(グラフェー)」で、「書くこと、描くこと、書かれたもの」を意味します。これは「photograph(写真)」や「telegraph(電信)」の「graph」と同じ語源です。
数学や統計学の分野で、点や線、棒などを用いて数値データの関係性や変化を「書き記し」「視覚的に表現した図」を指す言葉として使われるようになりました。
つまり、「グラフ」は、「チャート」の中でも特に、数量的なデータとその関係性を、座標軸などを用いて視覚的に表現することに特化したイメージが強い言葉と言えるでしょう。
具体的な例文で使い方をマスターする
売上推移は「折れ線グラフ」、市場シェアは「円チャート(円グラフ)」、プロジェクト計画は「ガントチャート」、組織体制は「組織図(チャート)」、数学の関数関係は「グラフ」で示すのが一般的です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
表現したい情報の内容によって使い分けるのがポイントです。
【OK例文:チャート】
- プロジェクトの各工程とスケジュールをガントチャートで管理する。
- 会社の新しい組織図(組織チャート)が発表された。
- 業務改善のために、現在の作業フローチャートを作成した。
- アンケート結果の構成比を円チャート(円グラフ)で示す。
- 株価のテクニカル分析にはローソク足チャートがよく使われる。
手順、構造、スケジュール、割合など、数値データ以外の情報や、数値を割合で示す図などが「チャート」と呼ばれていますね。
【OK例文:グラフ】
- 月ごとの売上推移を折れ線グラフで示した。
- 部門別の売上高を比較するために棒グラフを作成した。
- 気温とアイスクリームの売上の相関関係を散布図(グラフ)で分析する。
- 顧客の年齢層の分布をヒストグラム(グラフ)で可視化する。
これらはすべて、数値データの変化、比較、関係性、分布を視覚的に表現していますね。これらはすべて「チャート」の一種でもあります。
日常会話・学術分野での使い分け
日常会話や学術的な文脈でも、基本的な考え方は同じです。
【OK例文:チャート】
- 占いで使うホロスコープチャートを作成してもらった。
- 音楽のコード進行をコードチャートで確認する。
- 患者の体温変化を記録した体温チャートを見る。
- 気象予報で使われる天気図(気象チャート)。
占い、音楽、医療記録、天気図など、様々な分野で情報を整理・図示する際に「チャート」が使われます。
【OK例文:グラフ】
- 数学の授業で二次関数のグラフの描き方を学んだ。
- 子供の身長の伸びを成長グラフに記録している。
- 実験結果をグラフにプロットして考察する。
数学的な関係性や、数値データの時間的変化などを表す際に「グラフ」が使われますね。
これはNG!間違えやすい使い方
意味が通じないわけではありませんが、一般的ではない使い方を見てみましょう。
- 【NG】会社の組織体制をグラフで示した。
- 【OK】会社の組織体制を組織図(組織チャート)で示した。
組織図は、役職間の関係性や階層構造を示すもので、数値データの関係性を表す「グラフ」とは異なります。「チャート」を使うのが適切です。
- 【NG】作業の手順を示すグラフを作成した。
- 【OK】作業の手順を示すフローチャートを作成した。
フローチャートも、処理の流れや判断分岐を図式化したものであり、「グラフ」ではありませんね。
- 【△】売上の割合を棒グラフで示した。
- 【OK】売上の割合を円グラフ(円チャート)または帯グラフ(帯チャート)で示した。
割合を示す場合、棒グラフでも表現できますが、全体に対する各部分の比率を視覚的に分かりやすく示すには、円グラフ(円チャート)や帯グラフ(帯チャート)の方が適していることが多いです。「グラフ」自体は間違いではありませんが、より適切な種類を選ぶという視点ですね。
【応用編】似ている言葉「ダイアグラム」との違いは?
「ダイアグラム(Diagram)」は、物事の関係性や構造を図式化・単純化して示すもので、「図解」に近いです。「チャート」と重なる部分もありますが、「ダイアグラム」は必ずしも定量的データを含まず、概念的な関係性やプロセスの説明によく使われます(例:ベン図、相関図)。
「チャート」や「グラフ」と似ていて、使い分けに迷う言葉に「ダイアグラム(Diagram)」があります。これも押さえておくと、表現の使い分けがさらに正確になりますよ。
「ダイアグラム」は、図、図形、図式、図解などと訳され、物事の関係性、構造、仕組みなどを、記号や線、図形などを使って単純化・視覚化して示すもの全般を指します。
「チャート」と意味が重なる部分も大きいですが、「ダイアグラム」は特に情報を整理し、関係性を分かりやすく説明するための「図解」というニュアンスが強いです。
例えば、複数の集合の関係を示す「ベン図」、登場人物の関係性を示す「相関図」、電気回路の接続を示す「回路図」、思考を整理する「マインドマップ」などは「ダイアグラム」の代表例です。
「チャート」が数値データ(円チャートなど)や手順(フローチャート)を示すことが多いのに対し、「ダイアグラム」はより概念的な関係性や構造を図で説明する際に使われる傾向があると言えるでしょう。
フローチャートは、「チャート」でもあり「ダイアグラム」でもある、というように、両者の境界は曖昧な部分もありますね。
「チャート」と「グラフ」の違いを専門家(データ可視化)視点で解説
データ可視化の専門分野では、「グラフ」は量的データを視覚的要素(点、線、棒など)の位置、大きさ、色などにマッピング(対応付け)し、主に座標系を用いてデータのパターンや関係性を明らかにするものと、より厳密に定義されます。「チャート」はそれを含む、より広範な視覚的表現全般を指す包括的な用語として使われます。
データ可視化(Data Visualization)や情報デザインの専門家の間では、「チャート」と「グラフ」は、その目的と表現方法において、もう少し厳密に使い分けられることがあります。
「グラフ」は、主に量的データ(数値データ)を扱い、そのデータが持つ特徴、傾向、パターン、相関関係などを明らかにするために、データを視覚的な要素(点、線、棒、面など)の属性(位置、長さ、面積、角度、色など)に体系的にマッピング(対応付け)したもの、と定義されます。多くの場合、直交座標系(X軸、Y軸)や極座標系などが用いられ、データの関係性を正確に表現することに主眼が置かれます。棒グラフ、折れ線グラフ、散布図などが典型です。
一方、「チャート」は、より広範な意味を持ち、情報を視覚的に整理し、伝達することを目的とした図や表の総称として使われます。「グラフ」もチャートの一種ですが、チャートにはグラフ以外にも、組織図、フローチャート、ガントチャート、マインドマップ、テーブル(表)など、必ずしも量的データを扱わない、あるいは座標系を用いない多様な視覚表現が含まれます。
専門家は、伝えたい情報の種類(量的か質的か、関係性かプロセスか、比較か構成かなど)と、その情報を最も効果的に伝えるための視覚表現形式(グラフの種類やチャートの種類)を意識的に選択します。したがって、専門的な文脈では、「グラフ」を「チャート」と呼ぶことはあっても、例えば組織図を安易に「グラフ」と呼ぶことは避ける傾向にあります。
データ可視化の分野における著名な書籍などを参考にすると、こうした定義や分類についてより深く学べますね。例えば、総務省統計局の「グラフの種類」なども参考になります。
僕が「グラフ」と呼ぶべきものを「チャート」と言って赤面した体験談
僕も以前、クライアントへのプレゼンテーションで、「チャート」と「グラフ」を混同してしまい、少し恥ずかしい思いをした経験があります。
あるWebサイトのアクセス解析結果を報告していた時のことです。月間のページビュー数の推移を示すために作成した「折れ線グラフ」を指しながら、僕は得意げにこう説明しました。
「こちらのチャートをご覧ください。先月は新機能リリースの影響で、ページビュー数が大幅に増加していることが分かります」
説明を終えると、クライアントの担当者(データ分析に詳しい方でした)が、穏やかに、しかし少し戸惑った表情でこう尋ねてきました。
「ありがとうございます。よく分かりました。…ちなみに、今のは『折れ線グラフ』ですよね?他の資料ではフローチャートなども使われていますが、何か意図があって呼び分けていらっしゃるのですか?」
その瞬間、僕は自分の間違いに気づき、顔が赤くなるのを感じました…!
たしかに、そのプレゼン資料の中には、ユーザーの行動フローを示した「フローチャート」も含まれていました。クライアントは、僕が意図的に「グラフ」と「チャート」を使い分けているのか、それとも単に混同しているのか、確認したかったのでしょう。
僕は慌てて、「申し訳ありません、混同しておりました。こちらは『折れ線グラフ』です。数値データの推移を示すものですので、『グラフ』と呼ぶべきでした」と訂正しました。
幸いクライアントは笑って許してくれましたが、言葉の定義を曖昧なまま使ってしまうと、相手に不要な混乱を与えたり、場合によっては専門性を疑われたりしかねない、ということを痛感した出来事でした。
特にデータに関わる報告など、正確性が求められる場面では、用語の使い分けにも注意が必要ですね。それ以来、図表を説明する際には、「これは何の情報を」「どのように表現しているか」を意識し、より適切な言葉を選ぶように心がけています。
「チャート」と「グラフ」に関するよくある質問
Q. 円グラフは「チャート」と「グラフ」どっちですか?
A. どちらの呼び方も正しいです。円グラフは数値データの割合を示すため「グラフ」の一種ですが、情報を視覚的に示す図という意味で「円チャート(Pie Chart)」とも呼ばれます。英語では「Pie Chart」の方が一般的かもしれませんね。
Q. プレゼン資料で使う図は、全部「チャート」と呼んでおけば無難ですか?
A. 「チャート」は広範な図を含む言葉なので、多くの場合、間違いにはなりにくいでしょう。ただし、棒グラフや折れ線グラフのように、一般的に「グラフ」として広く認識されているものをあえて「チャート」と呼ぶと、少し違和感を与える可能性はあります。可能であれば、棒グラフ、折れ線グラフ、フローチャート、組織図など、具体的な種類で呼ぶのが最も分かりやすいですね。
Q. Excelの「グラフ」機能と「チャート」機能の違いは何ですか?
A. ソフトウェアによって用語の使い方は異なりますが、一般的にExcelなどの表計算ソフトでは、数値データを基に作成する棒グラフ、折れ線グラフ、円グラフなどをまとめて「グラフ」または「チャート」機能として提供していますね。Excelでは「グラフ」という呼び方がメニューなどで使われていることが多い印象です。しかし、作成されるものは「チャート」の定義にも当てはまります。
「チャート」と「グラフ」の違いのまとめ
「チャート」と「グラフ」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 包含関係が基本:「グラフ」は「チャート」の一種。
- 内容で使い分け:主に数値データの関係性を示すなら「グラフ」、手順・構造などを含む広範な情報なら「チャート」。
- 迷ったら…:数値データなら「グラフ」も「チャート」もOK。数値以外なら「チャート」。より具体的な名称(棒グラフ、フローチャートなど)で呼ぶのがベスト。
- 語源イメージ:「チャート」は情報を書き留めた「海図」のような図全般、「グラフ」はデータを線や点で「書き記した」図。
- 類義語も意識:「ダイアグラム」は関係性や構造を図解するニュアンスが強い。
これらのポイントを押さえれば、もう「チャート」と「グラフ」の使い分けに迷うことはありませんね。
情報を視覚的に伝える際、その図が何を表現しているのかを正しく理解し、適切な言葉を選ぶことで、よりスムーズで誤解のないコミュニケーションが可能になります。自信を持って使い分けていきましょう。カタカナ語・外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。