「citation」と「reference」、特に学術論文やレポートを作成する際によく目にする言葉ですよね。
どちらも出典を示すことに関連していますが、「具体的にどう違うの?」「どっちを使えばいいの?」と迷ってしまう方も多いのではないでしょうか。
実はこの二つの言葉、本文中で出典を示す行為(またはその表記)か、巻末に記載する出典リスト(またはその情報)かという点で、明確な役割分担があるんです。
この記事を読めば、「citation」と「reference」それぞれの意味や語源、具体的な使い分け、さらには「引用」や「参考文献」といった関連語との違いまでスッキリ理解できます。もう論文やレポートの出典表記で迷うことはありません。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「citation」と「reference」の最も重要な違い
基本的には、本文中で「どこから情報を得たか」を示すのが「citation」、巻末などでその出典の詳細情報(著者名、タイトル、発行年など)をリスト化したものが「reference」と覚えるのが簡単です。「citation」が本文中の目印、「reference」がその目印の詳細情報、という関係性です。
まず、結論からお伝えしますね。
「citation」と「reference」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、学術的な文脈での基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | citation | reference |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 本文中で、情報やアイデアの出典元を示す行為、またはその表記(例:著者名と発行年) | citationで示された出典元の完全な書誌情報、またはそのリスト |
| 記載場所 | 本文中(文中または脚注/文末注) | 巻末(参考文献リスト内) |
| 目的 | 特定の記述の根拠を明示、盗用防止 | 読者が出典元を特定し、辿れるようにする |
| 形式 | 簡略化された形式(例:(Smith, 2020), [1]) | 詳細な書誌情報(著者名、タイトル、発行年、出版社など) |
| 役割 | 本文中の「目印」「ポインター」 | 「目印」の詳細情報、「地図」 |
一番大切なポイントは、「citation」が本文中の短い表示で、「reference」が巻末の詳しい情報リストという対応関係にあることですね。
例えば、本文中で「…という研究結果が示されている (Smith, 2020)。」と書くのが「citation」で、巻末の参考文献リストに「Smith, J. (2020). Title of the Book. Publisher.」と詳しく書くのが「reference」です。
この二つはセットで機能するもの、と考えると分かりやすいでしょう。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「citation」の語源は「呼び出す、引用する」で、本文中に情報源を「呼び出して」示すイメージです。「reference」の語源は「参照する、関連付ける」で、詳細情報に「立ち返って参照」できるようにするイメージが根底にあります。
なぜこの二つの言葉が異なる役割を持つのか、それぞれの言葉の成り立ちを探ると、その核心的なイメージが見えてきますよ。
「citation」の成り立ち:「引用する」「言及する」
「citation」の語源は、ラテン語の「citare(キターレ)」に由来します。これは「呼び出す、召喚する、引用する」といった意味を持つ動詞です。
ここから、「citation」には、本文を書いているまさにその場所で、情報やアイデアの出所となった権威や先行研究を「呼び出して」示す、あるいは「言及する」というニュアンスが生まれます。
「この記述は、私独自のものではなく、ここから来ていますよ」と、その場で証拠(出典)を示す行為、それが「citation」の基本的なイメージですね。
「reference」の成り立ち:「参照する」「関連付ける」
一方、「reference」の語源は、ラテン語の「referre(レフェッレ)」です。これは「(元のところに)戻す、関連付ける、参照する」といった意味を持ちます。
このことから、「reference」は、本文中の「citation」(目印)を見て興味を持った読者が、その出典元の詳細情報に「立ち返って参照」できるように、関連付けられた情報を提供する、というニュアンスを持ちます。
本文中で簡潔に示された情報源について、「もっと詳しく知りたい」と思ったときに確認するための詳細リスト、それが「reference」の役割なんですね。「参照」 という言葉の意味合いにも通じます。
具体的な例文で使い方をマスターする
学術論文では、本文中の「(Tanaka, 2023)」や「[2]」が「citation」、巻末の「田中一郎. (2023). 書籍名…」が「reference」です。ビジネス文書で市場データを述べる際に「(出典: 〇〇調査)」と書くのが「citation」に近い使い方で、巻末にその調査の詳細を示すのが「reference」にあたります。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。学術的な文脈と、もう少し広い文脈での使い方を見ていきましょう。
学術論文・レポートでの使い分け
論文やレポートでは、この使い分けが非常に重要になります。
【OK例文:citation】
- 近年の研究では、AIの進化がマーケティング手法に大きな影響を与えていることが指摘されている(Yamada, 2024)。
- この現象は「メッシーミドル」として知られており、消費者の複雑な購買行動を示している。
- Satoは、LLMOの重要性が今後ますます高まると予測している(2025, p. 15)。
- この点に関する詳細な議論は、Johnsonの研究[3]に見られる。
これらは全て本文中にあり、著者名と発行年(APAスタイルなど)や番号(バンクーバースタイルなど)で、簡潔に出典を示していますね。これが「citation」です。
【OK例文:reference】
(巻末の参考文献リスト)
- Yamada, T. (2024). AI Marketing Revolution. Tokyo: Academic Press.
- 佐藤太郎 (2025). AI時代のマーケティング戦略. 経営論集, 50(2), 10-25.
- [3] Johnson, A. (2022). Consumer Behavior in the Digital Age. New York: Publisher Inc.
- Think with Google. (n.d.). バタフライ・サーキット:複雑な検索行動のモデル化. Retrieved from https://www.thinkwithgoogle.com/intl/ja-jp/marketing-strategies/app-and-mobile/butterflycircuit3/
こちらは巻末などにリストとして記載され、著者名、発行年、タイトル、出版社(または雑誌名、巻号、ページ)、URLなど、出典元を特定するための詳細な情報が書かれています。これが「reference」です。本文中の「citation」 (Yamada, 2024) や [3] は、この「reference」リストの具体的な項目に対応しています。
ビジネス・一般的な文脈での使い分け
ビジネス文書や一般的な記事などでも、出典を示す際に同様の考え方が適用されますが、学術論文ほど厳密な形式が求められない場合もあります。
【OK例文:citation】
- 市場調査によると、〇〇の市場規模は昨年比で10%増加しました(出典:△△総研レポート)。
- 専門家は、今後の動向について「~」と述べています(〇〇氏、□□誌2024年5月号)。
- この技術の詳細は、別紙資料(資料A)をご参照ください。(※これは「参照」の指示に近いですが、出典を示す意味合いも含む)
- LANYの竹内氏はLLMOこそがAI時代のマーケティングの「センターピン」になると述べています。
本文中で、情報の出所を簡潔に示していますね。学術的な形式とは異なりますが、「どこからの情報か」を明示するという点で「citation」の役割を果たしています。
【OK例文:reference】
(報告書の巻末や脚注など)
- 参考文献:△△総研「2024年版 〇〇市場動向レポート」2024年4月発行
- 〇〇一郎「□□誌」2024年5月号, pp. 30-35.
- 資料A:株式会社××作成「新技術概要説明資料」
- 竹内渓太 (2025). 『強いLLMO AI検索で選ばれるためのマーケティングガイド』. エムディエヌコーポレーション.
こちらも、本文中で触れられた出典の詳細情報がリスト化されています。「参考文献」 というタイトルが使われることが多いですが、機能としては「reference」と同じです。
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることもありますが、本来の役割と異なる使い方を見てみましょう。
- 【NG】レポートの最後に、使用したcitationをリストアップした。
- 【OK】レポートの最後に、使用したreference(または参考文献)をリストアップした。
巻末に詳細な出典情報をリスト化するのは「reference」です。「citation」は通常、本文中の表記を指します。
- 【NG】本文中に詳しい書誌情報をreferenceとして記載した。
- 【OK】本文中に詳しい書誌情報をcitationとして記載した。(※通常は簡略表記ですが、文脈によっては詳細を記載する場合もある)
- 【OK】本文中にcitationを記載し、詳細は巻末のreferenceリストで示した。
本文中に記載するのは、あくまで「citation」です。「reference」は通常、巻末のリストを指します。
【応用編】似ている言葉「引用(Quotation)」「参考文献(Bibliography)」との違いは?
「引用(Quotation)」は他者の文章をそのまま抜き出す行為です。「参考文献(Bibliography)」は、執筆にあたり参考にした全ての文献リストで、本文中で直接「citation」していないものも含む場合があります。一方「referenceリスト」は本文中で「citation」したものだけをリストアップするのが一般的です。
「citation」「reference」と関連が深く、混同しやすい言葉に「引用(Quotation)」と「参考文献(Bibliography)」があります。これらの違いも理解しておくと、より正確な知識が身につきますよ。
「引用(Quotation)」との違い
「引用(Quotation)」は、他人の著作物(文章、発言など)の一部を、一字一句そのまま自分の文章の中に引いてきて使うことを指します。
「citation」や「reference」が出典の「情報」を示すのに対し、「引用」はその出典の「内容」を直接的に示す行為です。
引用を行う際は、引用部分を明確に区別し(例:かぎ括弧や字下げ)、必ず出典を示す「citation」と、対応する「reference」を記載する必要があります。これは著作権法上のルールでもあります。
例:「AIは認知度ではなく、信頼性・実績・構造化された情報にもとづいて判断するからです。」のように、内容を自分の言葉で要約したり、言及したりする場合は引用ではありませんが、出典を示す「citation」は必要です。
「参考文献(Bibliography)」との違い
「参考文献(Bibliography)」は、論文や書籍の巻末に記載される、執筆にあたって参考にした文献のリスト全般を指します。
「referenceリスト(Reference List)」と非常に似ていますが、厳密には区別されることがあります。
一般的に「referenceリスト」は、本文中で「citation」した文献だけをリストアップしたものを指します。読者が本文中の「citation」から直接辿れるようにするためです。
一方、「参考文献(Bibliography)」は、本文中で直接「citation」はしていないものの、執筆の背景知識として参考にした文献や、関連する重要文献なども含めてリストアップしたものを指す場合があります。
ただし、この区別は分野や慣習によって曖昧なことも多く、単に「参考文献」というタイトルで、実質的には「reference」リストと同じものを指しているケースも少なくありません。どちらの形式を求められているかは、提出先の指示や慣例を確認するのが最も確実ですね。
「citation」と「reference」の違いを学術ライティング専門家の視点で解説
学術界では、「citation」は研究の信頼性と透明性を担保する根幹であり、先行研究への敬意と自身の主張の位置づけを示す行為です。「reference」は、その主張の検証可能性を保証する詳細情報であり、読者が容易に原典にアクセスできる必要不可欠な要素です。両者の正確な連携が、学術コミュニケーションの基盤となります。
学術ライティングの専門家、例えば大学の論文指導教員や学術雑誌の編集者の視点から見ると、「citation」と「reference」は、単なる書式の問題ではなく、学術的なコミュニケーションと研究倫理の根幹に関わる重要な要素として捉えられています。
「citation」(本文中の引用・参照表記)は、以下の重要な役割を担います。
- 信頼性の担保:自分の主張や記述が、どのような先行研究やデータに基づいているかを具体的に示すことで、議論の客観性と信頼性を高めます。
- 先行研究への敬意:他者のアイデアや業績を正当に評価し、その貢献を明示することは、研究者コミュニティにおける基本的なマナーです。
- 盗用・剽窃の防止:他者の言葉やアイデアを、あたかも自分のものであるかのように提示することを防ぎます。これは研究倫理上、最も厳しく問われる点の一つです。
- 議論の位置づけ:自身の研究が、既存の研究の中でどのような位置にあるのか、どのような議論を踏まえているのかを読者に示します。
一方、「reference」(巻末の参考文献リスト)は、以下の不可欠な機能を提供します。
- 検証可能性の保証:読者が、本文中で示された「citation」の元となった文献を正確に特定し、必要であればその内容を確認できるようにします。これにより、研究の再現性や透明性が担保されます。
- 情報源へのアクセス提供:読者が関連研究をさらに深く調べるための、具体的な道しるべとなります。
- 書誌情報の標準化:APAスタイル、MLAスタイル、シカゴスタイルなど、分野ごとに定められた標準的な形式に従って書誌情報を提供することで、情報の検索性と利用性を高めます。
このように、学術界において「citation」と「reference」は、単なる形式ではなく、研究活動の公正さ、透明性、そして発展性を支えるための必要不可欠なインフラとして機能しているのです。両者を正確に、かつ適切に連携させることが、質の高い学術ライティングの基本となります。
僕がプレゼン資料で混同して指摘された体験談
僕も以前、社内向けのプレゼンテーション資料を作成した際に、「citation」と「reference」の区別が曖昧だったために、上司から指摘を受けた苦い経験があります。
新しいマーケティング施策の提案で、その根拠となる市場データや競合の動向について、いくつかの外部レポートや記事を調べて資料に盛り込んでいました。各スライドの右下に、情報源となったレポート名や記事タイトルを小さく記載し、「出典」とだけ記していました。
そして、資料の最終ページに「参考文献」というタイトルで、調べたレポートや記事のリスト(URLなども含む)をまとめて載せておいたんです。自分としては、これで丁寧に出典を示しているつもりでした。
ところが、プレゼン前のレビューで上司に見せたところ、こんなフィードバックが…
「データや競合情報はしっかり調べてあるね。ただ、出典の示し方が少し分かりにくいかな。各スライドの『出典』は、どの情報がどの文献に基づいているのか、もう少し具体的に紐づけた方がいい。例えば、『(A社レポート, 2024年)』みたいにね。これがcitationの役割だ。そして、最後のリストは『参考文献』でもいいけど、本文中でcitationしたものだけを載せるなら『referenceリスト』の方がより正確だよ。現状だと、どのスライドのどの情報が、最後のリストのどれに対応しているのか、パッと見て分かりにくいだろう?」
ハッとしました…!僕はただ情報源をリストアップすれば良いと考えていましたが、本文中の具体的な記述と、巻末のリスト情報が明確に対応付けられて初めて、出典提示の意味があるのだと気づかされたのです。
特に、複数のデータを使っている場合、どの数字がどのレポートから来ているのかを本文中で示さないと、情報の信頼性が曖昧になってしまいますよね。「citation」(本文中の目印)と「reference」(詳細リスト)が連携してこそ、情報の出所が正確に伝わるのだと、この経験を通じて学びました。それ以来、資料作成時には、この二つの連携を常に意識するようになりました。
「citation」と「reference」に関するよくある質問
Q. 論文を書くとき、必ず「citation」と「reference」の両方が必要ですか?
A. はい、学術論文やレポートにおいては、基本的に両方が必要です。本文中で他者の研究やデータに言及・引用した箇所には必ず「citation」を記載し、その「citation」に対応する詳細な書誌情報を巻末などに「reference」リストとしてまとめるのがルールです。これにより、研究の信頼性と透明性が保たれ、読者が情報源を確認できるようになります。
Q. 「citation」の形式(APA、MLAなど)がたくさんあって混乱します。
A. たしかに、「citation」と「reference」の書式スタイルは、分野や投稿先のジャーナルによって異なります(APA、MLA、シカゴ、ハーバードなど様々です)。どのスタイルを使うべきかは、論文の提出先の規定や、指導教員の指示に従うのが最も重要です。形式を統一し、正確に記載することが求められます。各種スタイルガイドや参考文献管理ツールを活用すると便利ですよ。
Q. Webサイトを参考にした場合、「citation」と「reference」はどう書けばいいですか?
A. Webサイトも重要な情報源ですので、書籍や論文と同様に出典を示す必要があります。本文中での「citation」は、著者名(もしあれば)と公開年、または記事タイトルと公開年などで示し、巻末の「reference」リストには、著者名(または組織名)、公開年(または最終更新日)、記事タイトル、サイト名、URL、そしてアクセス日などを記載するのが一般的です。これも書式スタイルによって細かなルールが異なりますので、スタイルガイドを確認しましょう。
「citation」と「reference」の違いのまとめ
「citation」と「reference」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 役割分担が基本:本文中の出典表記が「citation」、巻末の出典詳細リストが「reference」。
- 記載場所が違う:「citation」は本文中、「reference」は巻末。
- 形式が違う:「citation」は簡略表記(著者名、年号など)、「reference」は詳細な書誌情報。
- 目的が違う:「citation」は記述の根拠明示、「reference」は出典元の特定とアクセス担保。
- 両者は連携:「citation」は「reference」リストの特定項目へのポインターとして機能する。
- 関連語との違い:「引用(Quotation)」は原文そのままの利用、「参考文献(Bibliography)」は参考にした全文献リスト(「citation」していないものも含む場合がある)。
これらのポイントを押さえれば、学術論文やレポート作成における出典表記で迷うことは格段に減るはずです。
正確な「citation」と「reference」の使い分けは、研究倫理を守り、あなたの論考の信頼性を高める上で非常に重要です。自信を持って、適切な出典表記を行いましょう。カタカナ語・外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。