「consumer」と「customer」、どちらも「顧客」と訳されることが多く、違いが分かりにくいと感じたことはありませんか?
特にマーケティングやビジネスシーンでは、この二つの言葉を正確に使い分けることが非常に重要になります。
実は、「consumer」は商品やサービスを最終的に「消費・利用する人」全般を指すのに対し、「customer」は実際に「購入する人・企業」を指すという明確な違いがあるんです。
この記事を読めば、「consumer」と「customer」の核心的な意味の違いから、具体的な使い分け、さらには関連する言葉との違いまでスッキリ理解できます。もう二度と迷うことはありませんよ。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「consumer」と「customer」の最も重要な違い
基本的には、商品やサービスを消費・利用する人なら「consumer」、実際に購入する人・企業なら「customer」と覚えるのが簡単です。「customer」は常に「consumer」ですが、「consumer」が必ずしも「customer」であるとは限りません。
まず、結論からお伝えしますね。
「consumer」と「customer」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | consumer(コンシューマー) | customer(カスタマー) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 消費者、使用者 (商品やサービスを最終的に使う人) |
顧客、買い手 (商品やサービスを実際に買う人・企業) |
| 焦点 | 利用・消費する行為やニーズ | 購入する行為や関係性 |
| 対象範囲 | 広い(購入者でなくても含まれる) | 狭い(購入者に限定される) |
| 例 | テレビを見る人、食品を食べる人、アプリを使う人 | スーパーで買い物をする人、店の常連客、製品を購入した企業 |
| マーケティングでの視点 | 市場全体のニーズ、トレンド分析の対象 | 直接的な販売対象、関係構築(CRM)の対象 |
一番大切なポイントは、買う人が「customer」、使う人が「consumer」という関係性ですね。
例えば、赤ちゃん用のおむつを買うのは親(customer)ですが、実際に使うのは赤ちゃん(consumer)です。この違い、意外と重要なんです。
なぜ違う?言葉の成り立ち(語源)からイメージを掴む
「consumer」は「消費する(consume)」から来ており、「使い果たす人」が元のイメージです。一方、「customer」は「習慣(custom)」から来ており、「繰り返し買ってくれる人(常連)」というニュアンスを持っています。
なぜこの二つの言葉に違いが生まれるのか、それぞれの言葉の成り立ちを紐解くと、その理由がより深く理解できますよ。
「consumer」の成り立ち:「消費する人」というイメージ
「consumer」は、動詞の「consume」に「~する人」を意味する接尾辞「-er」がついた形です。
「consume」はラテン語の「consumere(使い果たす、浪費する)」が語源で、文字通り何かを使い切ったり、食べ尽くしたりするという意味合いを持っています。
このことから、「consumer」は、商品やサービスを最終的に利用し、その価値を享受(消費)する人、という核心的なイメージを持つことがわかりますね。購入したかどうかは、本来の意味では問われないわけです。
「customer」の成り立ち:「習慣的に買う人(常連)」というイメージ
一方、「customer」は、「custom」に「-er」がついた形です。
「custom」はラテン語の「consuetudo(慣習、習慣)」に由来し、古フランス語を経て英語に入りました。元々は「(その店で買うのが)習慣になっている人」、つまり「常連客」や「お得意様」といった意味合いが強かったようです。
時代とともに意味が広がり、現在では一回限りの購入者も「customer」と呼びますが、根底には「繰り返し買ってくれる存在」というニュアンスが残っています。お店や企業との「関係性」に焦点が当たっている言葉と言えるでしょう。
こうして語源を見ると、「消費」という行為自体に焦点を当てる「consumer」と、「購入」という行為や「関係性」に焦点を当てる「customer」の違いが、よりクリアになりますね。
具体的な例文で使い方をマスターする
マーケティング戦略で市場全体を指す場合は「consumer needs(消費者ニーズ)」、具体的な顧客対応を指す場合は「customer support(顧客サポート)」のように使い分けます。日常では、プレゼントをもらって使う人は「consumer」、買った人は「customer」です。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
誰に対して話しているのか、その人の立場(買う人か、使う人か)を意識すると、使い分けは簡単ですよ。
【OK例文:consumer】
- We need to understand consumer behavior in this market. (この市場における消費者行動を理解する必要がある。)
- This product meets the needs of today’s consumers. (この製品は現代の消費者のニーズに応えている。)
- The ultimate consumer of this baby food is the infant. (このベビーフードの最終的な消費者は乳児です。)
- Consumer electronics sales have increased this year. (今年は消費者向け家電の売上が増加した。)
【OK例文:customer】
- Thank you for being a valued customer. (大切なお客様でいてくださり、ありがとうございます。)
- Our customer service team is available 24/7. (弊社の顧客サービスチームは年中無休で対応可能です。)
- We gained 100 new customers last month. (先月、新たに100社の顧客を獲得しました。)
- Repeat customers are crucial for our business growth. (リピート顧客は我々のビジネス成長に不可欠です。)
「consumer」は市場全体や不特定多数の利用者を指すことが多く、「customer」は自社と直接取引のある相手を指すことが多いですね。
日常会話での使い分け
日常会話でも、考え方は同じです。「誰が買って、誰が使うのか?」を考えます。
【OK例文:consumer】
- My son is the main consumer of snacks in our house. (うちでは息子がお菓子の主な消費者だ。)
- Even people who don’t own a car can be consumers of transportation services. (車を持っていなくても、交通サービスの利用者にはなり得る。)
- She received a game console as a gift, so she is the consumer, but her friend is the customer. (彼女はゲーム機をプレゼントにもらったので消費者だが、買った友人の方がcustomerだ。)
【OK例文:customer】
- I’m a regular customer at that coffee shop. (私はあのコーヒーショップの常連客だ。)
- The store values feedback from its customers. (その店は顧客からのフィードバックを大切にしている。)
- He was the only customer in the shop at that time. (その時、店内にいた客は彼だけだった。)
これはNG!間違えやすい使い方
意味は通じることもありますが、厳密には正しくない、あるいは不自然に聞こえる使い方を見てみましょう。
- 【NG】The supermarket provides shopping carts for its consumers.
- 【OK】The supermarket provides shopping carts for its customers.
スーパーマーケットがカートを用意するのは、そこで買い物をする人(=購入者)のためなので、「customers」が適切です。「consumers」だと、単に店内を見て回るだけの人や、商品を食べたり使ったりする人全般を指すことになり、少し不自然に聞こえます。
- 【NG】This advertising campaign targets our loyal consumers.
- 【OK】This advertising campaign targets our loyal customers.
「loyal(忠実な、常連の)」という言葉は、繰り返し購入してくれる「customers」との関係性を示す言葉なので、「loyal customers」とするのが自然です。「loyal consumers」という表現も全くないわけではありませんが、通常は購入行動を伴う顧客ロイヤリティを指すため「customers」が一般的でしょう。
【応用編】似ている言葉「user」や「client」との違いは?
「consumer」と似た言葉に「user(ユーザー)」と「client(クライアント)」があります。「user」は特にソフトウェアやサービスなどの利用者を指し、「client」は弁護士やコンサルタントなど専門的なサービスの依頼人を指すことが多いです。
「consumer」や「customer」と似ていて混同しやすい言葉に、「user(ユーザー)」と「client(クライアント)」があります。これらの違いも押さえておくと、より的確な言葉選びができますよ。
「user(ユーザー)」との違い
「user」は文字通り「使う人」「利用者」を意味します。特に、ソフトウェア、アプリ、ウェブサービス、機械などの利用者を指す場合によく使われます。
「consumer」も「利用者」という意味合いを含みますが、「user」の方がより「実際に操作する人」「サービスを体験する人」というニュアンスが強いです。
- Software users reported a bug. (ソフトウェアのユーザーがバグを報告した。)
- The website aims to improve the user experience. (そのウェブサイトはユーザー体験の向上を目指している。)
無料サービスの利用者も「user」に含まれます。サービスの対価を支払う人が「customer」で、実際に使う人が「user」という関係になることもありますね。
「client(クライアント)」との違い
「client」も「顧客」と訳されますが、主に弁護士、会計士、コンサルタント、広告代理店、設計事務所など、専門的な知識やサービスを提供する事業者に対する「依頼人」を指す場合に用いられます。
一般的な小売店の客を「client」と呼ぶことは通常ありません。「customer」よりも、より継続的で、個別性の高い専門的なサービスを受ける関係性を示すことが多い言葉です。
- The lawyer discussed the case with his client. (弁護士はその件について依頼人と話し合った。)
- Our firm provides consulting services to corporate clients. (当社は法人クライアントにコンサルティングサービスを提供しています。)
このように、誰から何を買うか、何を使うかによって、「customer」「consumer」「user」「client」を使い分けることが大切ですね。
「consumer」と「customer」の違いをマーケティング視点で解説
マーケティング戦略では、市場全体の動向を掴むために「consumer」の視点が、具体的な販売促進や顧客関係管理(CRM)のためには「customer」の視点が重要になります。ターゲット設定では両者を区別し、それぞれに適したアプローチを考える必要があります。
ビジネス、特にマーケティングの世界では、「consumer」と「customer」の区別は非常に重要です。なぜなら、アプローチの仕方が全く異なるからです。
「consumer(消費者)」に焦点を当てる場合、それは市場全体のニーズやトレンド、潜在的な需要を探る視点になります。まだ自社の商品を買っていない人も含めて、「人々は何を求めているのか?」「どんなライフスタイルを送っているのか?」を分析し、新しい商品開発や市場参入戦略、広範な広告キャンペーンなどを考えます。「Consumer insight(消費者インサイト)」という言葉があるように、まだ満たされていない欲求や隠れた動機を見つけ出すことが重視されます。
一方、「customer(顧客)」に焦点を当てる場合、それは既に自社の商品やサービスを購入してくれた、あるいは購入する可能性が高い具体的な相手との関係性を考える視点になります。どうすればもっと買ってもらえるか(販売促進)、どうすれば満足度を高め、継続的に利用してもらえるか(CRM:顧客関係管理)、どうすれば口コミを広めてもらえるか、といった直接的なコミュニケーションや関係構築策が中心となります。「Customer satisfaction(顧客満足度)」や「Customer loyalty(顧客ロイヤリティ)」といった指標が重要になりますね。
例えば、子供向けのおもちゃを売る場合を考えてみましょう。
- Consumer視点:今の子どもたち(consumer)の間で何が流行っているか?どんな遊びに興味があるか?親(customerであると同時にconsumerでもある)はどんな教育的価値を求めているか? → 新しいおもちゃのコンセプト開発、テレビCMの企画
- Customer視点:一度おもちゃを買ってくれた親(customer)に、次は何をアピールするか?誕生日やクリスマスに合わせたDMを送るか?ポイントカードでリピート購入を促すか? → 既存顧客向けのキャンペーン、店舗での接客改善
このように、誰を対象として、何を目的とするかによって、「consumer」と「customer」のどちらの視点を重視するかが変わってきます。両者を混同してしまうと、的外れなマーケティング活動になってしまう可能性があるわけですね。効果的な戦略のためには、両者の違いを明確に意識することが不可欠です。
僕が「customer」を意識せず大失敗した新人時代の体験談
僕も新人マーケター時代、「consumer」と「customer」の区別が曖昧だったために、痛い失敗をした経験があります。
当時、僕が担当していたのは、ある飲料メーカーの新しい健康ドリンクでした。メインターゲットは健康意識の高い30代~40代の女性。僕たちは大規模な「消費者調査(Consumer Survey)」を実施し、ターゲット層の健康に関する悩みや、どんな味を好むか、どんな効果を期待するかなどを徹底的に調べ上げました。
その結果に基づいて、自信満々で商品を開発し、華々しい広告キャンペーンを展開。「これなら絶対に売れる!」と確信していました。
ところが…発売後の売上は惨憺たるもの。調査であれだけ「欲しい」という声があったのに、なぜ売れないのか、全く理解できませんでした。
頭を抱える僕に、当時の上司が言った言葉が突き刺さりました。
「君は『consumer』の声は聞いたかもしれないが、『customer』の声、つまり『実際に店頭で商品を選び、レジでお金を払う人』の気持ちを本当に考えたのか? 健康ドリンクを買うのは本人かもしれないが、スーパーで家族の食料品と一緒に買う主婦かもしれないぞ? その主婦(customer)にとって、そのパッケージは手に取りやすいか? 価格は他の商品と比べて納得できるか? そもそも、いつも行く店の棚に並んでいるのか?」
ハッとしました。僕たちは、理想的な「消費者(consumer)」像ばかりを追い求め、実際に商品を買ってくれる「顧客(customer)」が、どんな状況で、どんな気持ちで購買決定をするのか、そのリアルな場面を全く想像できていなかったのです。
どんなに良い商品でも、最終的に「買う」という行動を起こしてくれる「customer」の視点が抜け落ちていては意味がない。この失敗から、consumerとcustomer、両方の視点を持って戦略を立てることの重要性を痛感しました。机上の空論ではなく、リアルな購買行動を理解しようと努めるきっかけになった、苦いけれど貴重な経験です。
「consumer」と「customer」に関するよくある質問
「consumer」と「customer」は結局どちらが重要ですか?
どちらがより重要ということはありません。両方とも重要です。市場全体のニーズを理解し、新しい価値を創造するためには「consumer」の視点が不可欠ですし、具体的な売上を上げ、ビジネスを継続するためには「customer」との関係構築が不可欠です。ビジネスの目的や段階に応じて、どちらの視点をより重視するかが変わってきます。
見込み客はどちらにあたりますか?
見込み客(Potential customer / Prospect)は、まだ購入には至っていないものの、将来的に購入する可能性がある人や企業を指します。彼らは商品やサービスに関心を持っている段階なので、広い意味では「consumer」に含まれますが、マーケティングや営業活動の直接的な対象としては「将来のcustomer候補」として捉えられます。そのため、文脈によっては「potential customer」のように表現されることが多いですね。
BtoBビジネスではどちらを使いますか?
BtoB(企業間取引)ビジネスでは、取引相手となる企業や担当者を指す場合、一般的に「customer」が使われます。「BtoB customer」のように言いますね。ただし、その企業が提供する製品やサービスの最終的な利用者(従業員など)を指す場合は「end consumer」や「user」という言葉が使われることもあります。また、専門的なサービスを提供する場合は「client」が使われることも多いです。
「consumer」と「customer」の違いのまとめ
「consumer」と「customer」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- 基本は「使う人」か「買う人」か:「consumer」は最終的な消費者・利用者、「customer」は実際の購入者・企業。
- 対象範囲が違う:「consumer」は購入者以外も含む広い概念、「customer」は購入者に限定される。
- 語源イメージが鍵:「consume(消費する)」から来るのがconsumer、「custom(習慣)」から来るのがcustomer。
- マーケティングでは使い分けが超重要:市場分析ならconsumer視点、販売・関係構築ならcustomer視点。
- 類義語も意識:ソフトウェア等の利用者は「user」、専門サービスの依頼人は「client」を使うことが多い。
これらの違いを理解し、意識して使い分けることで、ビジネス文書やマーケティング戦略の精度が格段に向上するはずです。
特にグローバルなビジネスシーンでは、これらの言葉のニュアンスの違いが重要になることもありますので、しっかりマスターしておきましょう。カタカナ語・外来語の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。