「e.g.」と「ex.」、どちらも「例えば」という意味で使われる省略形ですよね。
メールや文書作成で見かけることも多いですが、「あれ、どっちを使うのが正式なんだっけ?」「そもそも違いはあるの?」と疑問に思ったことはありませんか? 実は、この二つは由来する言語(ラテン語か英語か)と、使われる場面のフォーマルさに違いがあるんです。
この記事を読めば、「e.g.」と「ex.」の根本的な意味の違い、由来、正しい使い分け、そして似ている略語「i.e.」との区別まで、スッキリと理解できます。もう迷うことはありませんよ。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「e.g.」と「ex.」の最も重要な違い
基本的には「e.g.」がラテン語由来の「例えば(for example)」の正式な略語であり、「ex.」は英語の “example” の略語で、よりインフォーマルな場面や口語的な文脈で使われることが多いです。ビジネス文書や学術論文など、フォーマルな場面では「e.g.」を使うのが一般的です。
まず、結論として「e.g.」と「ex.」の最も重要な違いを一覧表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けは大丈夫でしょう。
| 項目 | e.g. | ex. |
|---|---|---|
| 元の言葉 | ラテン語: exempli gratia | 英語: example |
| 意味 | 例えば (for example) | 例、実例 |
| 使われる場面 | フォーマルな文書(学術論文、ビジネス文書など) | インフォーマルな場面、メモ、口語的な文脈 |
| ピリオド | e と g の後にそれぞれ必要 (e.g.) | ex の後に必要 (ex.) ※e.x. は一般的ではない |
| 一般的な推奨 | フォーマルな文脈で推奨される | インフォーマルな文脈でのみ使用可(フォーマルでは避けるべき) |
ポイントは、「e.g.」が由緒正しいラテン語の略語であり、フォーマルな場面での標準的な表記であるのに対し、「ex.」は英語の単語を単純に短縮したもので、ややくだけた印象を与えるという点です。
どちらも「例えば」の意味で使えますが、書く文書の種類や相手によって使い分けるのがスマートですね。
なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む
「e.g.」はラテン語「exempli gratia(例のために)」の略で、学術的な伝統やフォーマルさを感じさせます。「ex.」は英語「example(例)」の略で、より直接的で日常的なイメージです。由来を知ると、使い分けの背景が見えてきますね。
なぜ「例えば」を表す省略形が二種類あるのか、それぞれの由来を探ると、その背景とニュアンスの違いが見えてきますよ。
「e.g.」の由来:「例えば」を意味するラテン語の略
「e.g.」は、ラテン語のフレーズ “exempli gratia” の略です。
- “exempli” は “exemplum”(例、模範)の属格(~の)
- “gratia” は「~のために」
つまり、直訳すると「例のために」となり、英語の “for example” と同じ意味になります。
ラテン語は、かつてヨーロッパの学術界で共通語として広く用いられていました。その名残で、学術論文や法律文書など、フォーマルな書き言葉では、今でもラテン語由来の略語(i.e., et al., etc. など)が好んで使われます。「e.g.」もその一つで、伝統的でアカデミックな響きを持つと言えるでしょう。
「ex.」の由来:「例」を意味する英語の略
一方、「ex.」は、単純に英語の単語 “example”(例、実例)を短縮したものです。
特別な由来があるわけではなく、日常的に使われる単語を便宜上短くした、より直接的で分かりやすい略語と言えます。
そのため、フォーマルな文書で求められる厳密さや伝統的なスタイルには必ずしも合致せず、メモ書きや、くだけたメール、あるいは口頭での説明の補助(板書など)といった、インフォーマルな場面で使われることが多くなります。
由来する言語と、それが使われてきた歴史的背景が、フォーマルさの違いを生んでいるわけですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
レポートや契約書では「e.g.」を、友人へのメールや簡単なメモでは「ex.」を使うのが一般的です。「Please provide details (e.g., date, time, location).」「Need snacks (ex. chips, chocolate) for the party.」のように使い分けましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
フォーマルな場面とインフォーマルな場面、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネス文書や学術論文での使い方
フォーマルな文書では、原則として「e.g.」を使用します。
【OK例文:e.g.】
- Various factors affect the price, e.g., supply and demand, production costs, and competition. (様々な要因が価格に影響します。例えば、需要と供給、生産コスト、競争などです。)
- Please submit the required documents (e.g., application form, identification). (必要書類(例えば、申請書、身分証明書)を提出してください。)
- Renewable energy sources, e.g., solar and wind power, are becoming increasingly important. (再生可能エネルギー源、例えば太陽光や風力などは、ますます重要になっています。)
- The system supports multiple file formats (e.g., PDF, DOCX, XLSX). (そのシステムは複数のファイル形式(例えば、PDF、DOCX、XLSX)に対応しています。)
このように、具体的な例をいくつか挙げる際に、その前に置かれます。コンマ(,)の有無はスタイルによりますが、e.g. の後にコンマを打つのが一般的です (e.g., …)。
日常的なメモやメールでの使い方
インフォーマルな場面では、「ex.」も使われることがあります。ただし、「e.g.」を使っても全く問題ありません。
【OK例文:ex.】
- Things to buy: fruits (ex. apples, bananas), drinks (ex. water, juice). (買うもの:果物(例:りんご、バナナ)、飲み物(例:水、ジュース)。)
- Let me know your preferred date (ex. next Monday or Tuesday?). (希望日を教えてください(例:来週の月曜か火曜?)。)
- Bring some games, ex. card games or board games. (何かゲームを持ってきて。例えば、カードゲームとかボードゲームとか。)
メモ書きや、ごく親しい間柄でのメールなど、簡潔さが優先される場面で見かけることがありますね。
これはNG!間違えやすい使い方
フォーマルな場面で「ex.」を使うのは避けましょう。
- 【NG】 This theory applies to various fields, ex., economics, psychology, and sociology. (学術的な文脈では「e.g.」が適切)
- 【OK】 This theory applies to various fields, e.g., economics, psychology, and sociology.
- 【NG】 Please provide specific examples (e.x., case studies, statistical data). (e.x. という表記は一般的ではない)
- 【OK】 Please provide specific examples (e.g., case studies, statistical data).
- 【OK】 Please provide specific examples (ex. case studies, statistical data). ※インフォーマルな文脈なら可
- 【NG】 The store sells electronic devices, like computers, smartphones, etc. (”like” や “such as” を使っている場合、e.g. や ex. は不要。”etc.” も例示が不完全であることを示すため、e.g. と同時に使うのは冗長とされることが多い)
- 【OK】 The store sells electronic devices, e.g., computers and smartphones.
- 【OK】 The store sells electronic devices, such as computers and smartphones.
特に学術論文やビジネスレターなどでは、「e.g.」を使うのがマナーであり、よりプロフェッショナルな印象を与えます。「e.x.」というピリオドの打ち方は基本的に誤りなので注意しましょう。
【応用編】似ている略語「i.e.」との違いは?
「i.e.」はラテン語「id est」の略で、「すなわち」「言い換えれば」という意味です。「e.g.」が具体的な「例」を挙げるのに対し、「i.e.」は前の言葉を別の言葉で「説明・定義」し直す際に使います。目的が全く異なるので混同しないようにしましょう。
「e.g.」と混同しやすいもう一つの重要なラテン語略語が「i.e.」です。これも合わせて覚えておきましょう。
「i.e.」は、ラテン語の “id est” の略で、「それは(id)」「~である(est)」、つまり「すなわち」「言い換えれば」「つまり」という意味です。英語の “that is” や “in other words” に相当します。
「e.g.」と「i.e.」の決定的な違いは、
- e.g. (exempli gratia): 具体的な例をいくつか挙げる (for example)
- i.e. (id est): 前に述べたことを言い換える、具体的に説明・定義する (that is, in other words)
という点です。
【例文:e.g. vs i.e.】
- We need to focus on major cities in Asia, e.g., Tokyo, Seoul, and Shanghai. (アジアの主要都市、例えば東京、ソウル、上海に焦点を当てる必要がある。)→ 例を挙げている
- We need to focus on the capital of Japan, i.e., Tokyo. (日本の首都、すなわち東京に焦点を当てる必要がある。)→ 言い換えている(日本の首都=東京)
「e.g.」はたくさんの選択肢の中から一部の例を示すのに対し、「i.e.」は同じものを別の言葉で説明し直したり、範囲を限定したりするイメージですね。使い方を間違えると、全く意味が変わってしまうので注意が必要です。
「e.g.」と「ex.」の使い分けを改めて整理
フォーマルな文書(論文、ビジネスレター、契約書など)では「e.g.」を使いましょう。インフォーマルなメモ、友人へのメール、ホワイトボードへの走り書きなどでは「ex.」も使えますが、「e.g.」を使っても問題ありません。迷ったら「e.g.」が無難です。
ここまで見てきたように、「e.g.」と「ex.」はどちらも「例えば」の意味で使われますが、その出自と使われる場面のフォーマルさが異なります。
「e.g.」はラテン語 “exempli gratia” の正式な略語であり、学術論文、ビジネス文書、技術文書、法的文書など、フォーマルな文脈で標準的に使われます。ピリオドは e と g の両方の後につけるのが正しい表記です (e.g.)。
「ex.」は英語 “example” の略語であり、よりインフォーマルな文脈、例えば個人的なメモ、友人へのメール、講義での板書などで使われることがあります。正式な文書では使用を避けるべきとされています。
どちらを使うべきか迷った場合は、「e.g.」を選んでおけば、ほとんどの場面で間違いありません。特に、相手や状況がフォーマルかどうか判断がつかない場合は、「e.g.」を使うのが最も安全な選択と言えるでしょう。
逆に、「ex.」をフォーマルな文書で使うと、やや稚拙な印象や、略語の知識がないという印象を与えてしまう可能性があるので注意が必要です。
私がレポート提出前に「e.g.」と「ex.」でパニックになった話
実は僕も、大学時代にこの「e.g.」と「ex.」の使い分けで冷や汗をかいた苦い思い出があります。
それは、ある重要なレポートの提出締切前夜のことでした。参考文献リストも整え、あとは細かな表現をチェックするだけ…のはずが、ふと自分の書いた文章中の「ex.」という表記が気になり始めたんです。
「あれ、レポートみたいなカッチリした文章で『ex.』って使っていいんだっけ? もしかして『e.g.』の方が正しい…?」
急いでネットで調べると、案の定、「フォーマルな文書では e.g. を使うべき」という情報がたくさん出てきました。「うわー、やっちゃった!」と深夜に一人で大パニックです。
レポート全体を見返すと、なんと十数カ所も「ex.」を使ってしまっているではありませんか! 締切は翌朝。絶望的な気持ちで、一つ一つ「ex.」を「e.g.」に修正していきました。単純な置換作業でしたが、焦りと自己嫌悪で、やけに時間がかかったのを覚えています。
たかが略語、されど略語。特にアカデミックな文書やビジネス文書では、こうした細かな表記ルールが、文章全体の信頼性や書き手の印象を左右することがあるんですよね。
この経験以来、フォーマルな文章を書くときは、安易に自己流の略語を使わず、必ず標準的な表記(この場合は「e.g.」)を使うように徹底しています。皆さんも、僕のような徹夜修正作業をする羽目にならないよう、最初から正しい使い分けを心がけてくださいね!
「e.g.」と「ex.」に関するよくある質問
ここでは、「e.g.」と「ex.」について、よくある質問にお答えしていきます。
Q1: ピリオドの付け方は決まっていますか?
A1: はい。「e.g.」は “exempli gratia” という二つの単語の略なので、それぞれの後にピリオドを打ちます (e.g.)。「ex.」は “example” という一つの単語の略なので、最後に一つピリオドを打ちます (ex.)。「e.x.」という表記は一般的ではありません。
Q2: 文中で使う場合、前後にコンマは必要ですか?
A2: スタイルガイドによって異なりますが、一般的には「e.g.」や「ex.」の後にコンマを付けることが多いです (例: …, e.g., A, B, and C.)。前にコンマを付けるかどうかは文脈によりますが、括弧()で囲む場合は、括弧の前にコンマは不要なことが多いです (例: … (e.g., A, B, and C)).
Q3: 日本語の文章中で使う場合はどうですか?
A3: 日本語の文章中では、無理に「e.g.」や「ex.」を使う必要はありません。「例えば」「例として」といった日本語を使う方が自然で分かりやすい場合が多いでしょう。もし使う場合は、英語のルールに準じて「e.g.」を使うのが無難ですが、文脈によっては「(例)」のように表記する方が一般的かもしれません。
「e.g.」と「ex.」の違いのまとめ
「e.g.」と「ex.」の違い、これでバッチリですね!
最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- 由来が違う:「e.g.」はラテン語 “exempli gratia”(例のために)、「ex.」は英語 “example”(例)。
- フォーマルさが違う:「e.g.」はフォーマル、「ex.」はインフォーマル。
- 使い分け:論文やビジネス文書では「e.g.」、メモやくだけた文脈では「ex.」も可(ただし「e.g.」でもOK)。
- 表記注意:ピリオドは e.g. と ex. が基本。「e.x.」は一般的ではない。
- 「i.e.」との違い:「i.e.」は「すなわち」の意味で、例を示す「e.g.」とは全く異なる。
言葉の成り立ちや使われる場面の TPO を理解することで、適切な略語を選ぶことができますね。
特に英文ライティングにおいては、こうした細かな使い分けが、文章の質を高める上で重要になります。
これから自信を持って、「e.g.」と「ex.」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。