「ヒアリング」と「リスニング」の違いとは?意味と使い方を解説

「ヒアリング」と「リスニング」、どちらも「聞く」ことに関連する言葉ですが、その違いを正しく説明できますか?

ビジネスシーンでよく聞く「クライアントにヒアリングする」と、英語学習でおなじみの「リスニング力を鍛える」。同じ「聞く」でも、使われる場面やニュアンスが異なりますよね。

「あれ、この場合はどっちを使うんだっけ?」と迷ってしまう方もいるかもしれません。実はこの二つ、聞く目的や意識の向け方に大きな違いがあるんです。

この記事を読めば、「ヒアリング」と「リスニング」のそれぞれの意味、由来、そして具体的な使い分けまでスッキリ理解できます。もう、ビジネス文書や日常会話で迷うことはありません!

それではまず、最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「ヒアリング」と「リスニング」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「ヒアリング」は情報を得るための「聞き取り調査」「リスニング」は内容を理解しようと意識的に「聴く」行為と覚えるのが簡単です。目的が情報収集か、理解・学習かで使い分けます。

まず、結論からお伝えしますね。

「ヒアリング」と「リスニング」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 ヒアリング (Hearing) リスニング (Listening)
中心的な意味 (情報を得るための)聞き取り、事情聴取、意見聴取 ※主にビジネス用語 (内容を理解しようと)聴くこと、傾聴 ※特に語学学習など
目的 情報収集、事実確認、意見聴取 内容理解、学習、共感
意識の向け方 相手から特定の情報を引き出すことに重点 相手の話す内容や音に注意を払い、理解することに重点
使われる主な場面 ビジネス(顧客要望の聞き取り、社内調査、公聴会など) 語学学習、音楽鑑賞、講演会、日常会話(相手の話を注意深く聞く場合)
英語本来の意味との関係 英語 “hearing” (聴覚、公聴会) の意味から、日本でビジネス用語として発展 英語 “listening” (聴くこと) の意味に近い

一番大切なポイントは、何のために「聞く」のかという目的ですね。「ヒアリング」は仕事などで必要な情報を集めるために能動的に聞き出すイメージ、「リスニング」は英語の勉強や人の話を真剣に聞くときのように、内容をしっかり捉えようと耳を傾けるイメージです。

なぜ違う?言葉の意味と由来からイメージを掴む

【要点】

「ヒアリング」は英語の”hearing”が元ですが、日本ではビジネスにおける「聞き取り調査」という意味合いが強くなりました。一方、「リスニング」は英語の”listening”に近く、音や話の内容に意識を向けて聴くことを指します。英語本来の”hearing”(聞こえる)と”listening”(聴く)の違いも理解すると、より明確になります。

なぜこの二つのカタカナ語が、日本で異なるニュアンスで使われるようになったのでしょうか?それぞれの言葉の意味と、元になった英語について見ていきましょう。

「ヒアリング」:ビジネスでの「聞き取り調査」

「ヒアリング」は、英語の “hearing” に由来します。英語の “hearing” は、主に「聴覚、聞くこと」という生理的な能力や、「公聴会、審問」といった意味で使われます。

しかし、日本語のビジネスシーンで使われる「ヒアリング」は、これらの意味合いとは少し異なり、相手から必要な情報を聞き出すための「聞き取り調査」や「意見聴取」といったニュアンスで定着しています。顧客のニーズを探る、関係者から事情を聞く、といった、特定の目的を持って積極的に情報を集める行為を指すことが多いですね。これは和製英語的な用法と言えるかもしれません。

「リスニング」:意識的に「聴く」こと

「リスニング」は、英語の “listening” に由来し、その意味合いも英語に近いです。”listening” は、単に音が耳に入る “hearing” とは異なり、意識的に音や話の内容に注意を向け、理解しようと努める行為を指します。

そのため、日本語の「リスニング」も、英語の授業での聞き取り練習、音楽を集中して聴くこと、あるいは相手の話に真剣に耳を傾ける「傾聴」といった、意図を持って「聴く」場面で使われます。

英語の “hearing” と “listening” との違い

ここで、元になった英語の “hearing” と “listening” の違いも確認しておくと、「ヒアリング」と「リスニング」のニュアンスの違いがより深く理解できます。

  • hearing: 音が自然に耳に入ってくる受動的な「聞こえる」という感覚に近い。意識していなくても音は聞こえますよね。例: “I can hear the birds singing.” (鳥のさえずりが聞こえる)
  • listening: 音や話に注意を集中し、内容を理解しようとする能動的な「聴く」という行為。努力や意図を伴います。例: “I am listening to the music.” (私はその音楽を聴いている)

日本語の「ヒアリング」は、英語の “hearing” の「公聴会」の意味合いや、情報を得るという目的意識が加わって独自の使われ方になったのに対し、「リスニング」は英語の “listening” の「意識的に聴く」というニュアンスを比較的保っている、と言えるでしょう。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

ビジネスでは「クライアントに新機能の要望をヒアリングする」のように情報収集の意図で「ヒアリング」を使います。語学学習では「リスニング教材で英語の発音を学ぶ」のように理解・学習目的で「リスニング」を使います。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

「ヒアリング」と「リスニング」がそれぞれどのような場面で使われるか見ていきましょう。

「ヒアリング」を使う場合(ビジネスシーン)

主に、特定の情報を得るための聞き取り調査や意見聴取の場面で使われます。

  • 顧客満足度向上のため、既存ユーザーへのヒアリングを実施した。
  • 新システムの導入にあたり、各部署の要望をヒアリングする必要がある。
  • 営業担当者は、まずクライアントの現状課題を丁寧にヒアリングすることから始める。
  • 事故の原因究明のため、関係者へのヒアリングが行われた。
  • 採用面接では、応募者の経験やスキルについて詳細なヒアリングを行う。

目的を持って相手から情報を引き出す、というニュアンスが共通していますね。

「リスニング」を使う場合(語学学習、日常会話)

内容を理解しようと意識的に聴く場面で使われます。

  • 英語のリスニング力を上げるために、毎日ニュースを聞いている。
  • このリスニング教材は、初心者にも分かりやすいと評判だ。
  • 彼は素晴らしいリスニングスキルを持っており、人の話を最後まで丁寧に聴く。
  • 音楽のリスニングは、私にとって最高のリラックス方法だ。
  • 会議では、まず相手の意見をしっかりとリスニングすることが重要だ。(=傾聴する)

語学学習のイメージが強いですが、人の話を注意深く聞く「傾聴」の意味でも使われますね。

これはNG!間違えやすい使い方

意味が通じなかったり、不自然に聞こえたりする可能性がある使い方を見てみましょう。

  • 【NG】 隣の部屋から物音がしたので、壁に耳を当ててヒアリングした。
  • 【OK】 隣の部屋から物音がしたので、壁に耳を当てて聞き耳を立てた。(または listened carefully した)

単に物音を聞こうとする行為は、情報収集を目的としたビジネス的な「ヒアリング」ではありません。英語の “listen carefully” に近いですが、日本語の「ヒアリング」は使えません。

  • 【NG】 お客様相談室では、お客様からのご意見をリスニングしています。
  • 【OK】 お客様相談室では、お客様からのご意見をヒアリングしています。(または、伺っています)

お客様相談室の目的は、意見や要望という「情報」を聞き取ることなので、「ヒアリング」の方が適切です。「リスニング」だと、ただ聞いているだけで、情報を収集・活用する意図が弱く聞こえる可能性があります。

  • 【NG】 英語の授業でヒアリングのテストがあった。
  • 【OK】 英語の授業でリスニングのテストがあった。

語学の聞き取り能力を測るテストは「リスニングテスト」ですね。「ヒアリングテスト」は和製英語で、聴力検査 (hearing test) と混同される可能性もあります。

このように、目的(情報収集か、理解・学習か)を意識すると、自然な使い分けができますね。

「ヒアリング」と「リスニング」の違いをコミュニケーション視点から解説

【要点】

コミュニケーションにおいて、「ヒアリング」は質問を通じて特定の情報を効率的に得ることを重視します。一方、「リスニング(傾聴)」は相手の話す内容だけでなく、感情や意図にも注意を払い、共感的に理解することを目指します。効果的なコミュニケーションには、場面に応じた両者の使い分けが重要です。

「ヒアリング」と「リスニング」は、コミュニケーションにおける「聞く」行為の質の違いとしても捉えることができます。

ヒアリング」は、前述の通り、特定の情報を得ることを主目的とします。そのため、コミュニケーションにおいては、質問を投げかけ、必要な答えを引き出すという側面が強くなります。効率的に事実や要望を確認したい場合には有効なアプローチです。例えば、システム開発の要件定義で、クライアントに必要な機能を具体的に聞き出す場面などが典型的です。そこでは、聞き手が主導権を持ち、構造化された質問で情報を集めることが重視されます。

一方、「リスニング」、特に「傾聴(Active Listening)」と呼ばれるレベルになると、単に情報を得るだけでなく、相手の話す内容、声のトーン、表情などから、その背景にある感情や意図まで深く理解しようとする姿勢が求められます。相手の話を遮らず、相槌や質問を通じて関心を示し、共感的に受け止めることが重要になります。例えば、部下の悩み相談に乗る場面や、顧客のクレーム対応で真意を掴もうとする場面などでは、この「リスニング」のスキルが不可欠です。そこでは、話し手が安心して話せるような、受容的な態度が重視されます。

もちろん、実際のビジネスコミュニケーションでは、ヒアリング的な要素とリスニング的な要素が混在することも多いでしょう。例えば、クライアントへのヒアリングの中でも、単に機能要件を聞くだけでなく、相手の潜在的な悩みや期待に耳を傾ける(リスニングする)ことで、より本質的な提案につながることもあります。

重要なのは、今、自分は相手から「情報を引き出したい」のか、それとも「相手を深く理解したい」のか、その目的を意識して「聞く」モードを使い分けることだと言えるでしょう。それぞれの違いを理解し、場面に応じて使い分けることが、より円滑で効果的なコミュニケーションにつながりますね。

僕が新卒研修で混同した「ヒアリング」と「リスニング」

僕も新人の頃、この二つの言葉を混同して、研修の場でちょっとした指摘を受けたことがあります。

新卒研修で、模擬的な顧客対応ロールプレイングが行われました。僕はお客様役の先輩社員から、製品に関する要望を聞き出す、という役割でした。ロールプレイングが終わり、フィードバックの時間になったとき、僕は自分の反省点としてこう言ったんです。

「お客様の要望をしっかりリスニングできなかった点が反省点です。もっと的確な質問をするべきでした…」

自分としては、「ちゃんと聞けなかった」というニュアンスで「リスニング」を使ったつもりでした。すると、研修担当の講師が穏やかにこう言いました。

「なるほどね。でも今の場面で求められていたのは、内容をじっくり『聴く』リスニングというより、必要な情報を的確に『聞き出す』ヒアリングのスキルかな。もちろん、お客様の話を丁寧に聴く姿勢(リスニング)も大切だけど、目的は要望という『情報』を引き出すことだから、『ヒアリング』を意識すると、もっと的確な質問ができたかもしれないね。」

その瞬間、「あっ!」と思いました。確かに、あのロールプレイングの目的は、お客様の言っていることの背景や気持ちを深く理解するというよりは、製品開発に必要な「要望」という具体的な情報を聞き出すことでした。僕は「聞く=リスニング」と単純に考えてしまっていたんですね。

ビジネスシーンで求められる「聞く」には、情報収集のための「ヒアリング」という側面が強いこと、そしてそれが内容理解を目指す「リスニング」とは目的が異なることを、その時初めて明確に意識しました。

もちろん、先輩が言ったように、相手の話を丁寧に聴く「リスニング」の姿勢が「ヒアリング」の土台になることも事実です。でも、目的が違うことを理解していないと、的外れな質問をしてしまったり、逆に必要な情報を聞き出せなかったりするんだな、と学びました。

それ以来、人と話すとき、特に仕事の場面では、「今はヒアリングモード?それともリスニングモード?」と、聞く目的を意識するようになりました。ちょっとした違いですが、コミュニケーションの質が変わってくるのを実感しています。

「ヒアリング」と「リスニング」に関するよくある質問

「ヒアリング」と「リスニング」について、よくある質問をまとめました。

「ヒアリング」と「リスニング」は同じ意味で使えますか?

基本的には使い分けるべきです。「ヒアリング」は主にビジネスシーンで使われ、情報収集を目的とした「聞き取り調査」を指します。「リスニング」は、語学学習や音楽鑑賞、傾聴など、内容を理解しようと意識的に「聴く」行為を指します。目的と文脈に応じて使い分けましょう。

市場調査で顧客の声を聞くのはどちらですか?

顧客の意見や感想、ニーズといった情報を収集することが目的なので、一般的には「ヒアリング」が使われます。「顧客ヒアリングを実施する」といった形ですね。ただし、顧客の深いインサイトを探るために共感的に話を聴く、というニュアンスを強調したい場合は、「リスニング」の要素も含まれると言えます。

音楽を聴くのは「リスニング」ですか?

はい、「リスニング」です。音楽に意識的に耳を傾け、そのメロディーや歌詞、音色などを味わい、理解しようとする行為なので、「listening to music」と言いますね。単にBGMとして流れていて、自然に耳に入ってくるだけなら英語の “hearing” に近いですが、意識的に聴く場合は “listening” です。

「ヒアリング」と「リスニング」の違いのまとめ

「ヒアリング」と「リスニング」の違い、これでバッチリ使い分けられそうですね!

最後に、この記事のポイントをまとめておきます。

  1. 目的で使い分け:「ヒアリング」は情報収集(聞き取り調査)、「リスニング」は内容理解・学習(意識的に聴く)。
  2. 主な文脈:「ヒアリング」はビジネス、「リスニング」は語学学習や傾聴など。
  3. 意識の方向:「ヒアリング」は相手から情報を引き出す意識、「リスニング」は相手の話や音に注意を向ける意識。
  4. 英語との関係:「ヒアリング」は和製英語的な用法、「リスニング」は英語の “listening” に近い。英語の “hearing” は「聞こえる」(受動的)、”listening” は「聴く」(能動的)。
  5. コミュニケーション:「ヒアリング」は効率的な情報取得、「リスニング(傾聴)」は共感的理解を目指す。

同じ「聞く」という行為でも、目的や意識が違うと使う言葉も変わってくるのが面白いですね。特にビジネスシーンでは「ヒアリング」が多用されますが、その意味合いを正しく理解しておくことが重要です。一方で、相手の話を深く理解するための「リスニング(傾聴)」スキルも、良好な人間関係を築く上で欠かせません。

これらの違いを意識して、場面に応じて的確な言葉を選び、コミュニケーション能力をさらに向上させていきましょう。他のカタカナ語の違いについて興味があれば、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。