「refer」と「mention」の違いとは?言及・参照の英語を使い分け

「~について触れる」「~を参照する」と英語で言いたいとき、「refer」と「mention」、どちらを使えばいいか迷うことはありませんか?

どちらも何かに「言及する」際に使われますが、その深さや目的に違いがあるんです。

簡単に言うと、詳しく参照させたい場合は「refer」、軽く話題に出す程度なら「mention」と使い分けるのが基本です。この記事を読めば、「refer」と「mention」のニュアンスの違いから具体的な使い方、さらには似た言葉との区別までスッキリ理解でき、英語でのコミュニケーションがより正確になります。それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「refer」と「mention」の最も重要な違い

【要点】

「refer (to A)」は、聞き手や読み手の注意を特定の情報源や対象 A に「向けさせる(参照させる)」のが主な目的です。一方、「mention A」は、対象 A について詳細には立ち入らず「軽く触れる、名前を出す」程度にとどまります。情報の深さと意図が異なります。

まず、結論からお伝えしますね。

「refer」と「mention」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。注意を向けさせるか、軽く触れるかがポイントです。

項目 refer (to A) mention A
中心的な意味 Aに言及する、参照する、(注意などを)向ける Aに(軽く)言及する、Aのことを口にする
情報の深さ 詳細な情報情報源を示すことが多い 表面的・簡潔に触れることが多い
意図・目的 注意を向けさせる、参照させる、関連付ける 単に話題に出す、名前を挙げる
使い方 refer to A (自動詞 + 前置詞) mention A (他動詞)
ニュアンス 「詳しくはこちらへ」「~に関連して」 「~という話が出た」「~の名前が出た」
関連語 reference(参照、言及) mention(言及、記載)

一番大切なポイントは、「refer」は基本的に「to」を伴い、聞き手の注意を何か(情報源など)に誘導するのに対し、「mention」は目的語を直接とり、その対象について軽く話題に出す、という使い方の違いですね。

例えば、報告書で図表を指し示すなら「refer to Figure 1」、会議で同僚の名前をちょっと出すなら「mention Mr. Tanaka」となります。

なぜ違う?言葉の核心的な意味からイメージを掴む

【要点】

「refer」の語源は「元へ運ぶ」で、注意や起源を特定の場所へ「差し向ける」イメージ。「mention」の語源は「心に留める」で、心に留めたことを「軽く口に出す」イメージです。

この二つの言葉のニュアンスの違いは、それぞれの語源を探るとより深く理解できますよ。

「refer」の核心:「(注意・情報源などを)~に向ける」

「refer」の語源は、ラテン語の「referre」で、「re-(再び、元へ)」と「ferre(運ぶ)」が組み合わさった言葉です。「carry back(元へ運ぶ)」というのが元々の意味合いです。

ここから、「refer」には、何かを元の場所や情報源に「運び戻す」、あるいは聞き手の注意を特定の対象に「差し向ける」という核心的なイメージが生まれます。

「refer to A」という形で、「Aを参照する」「Aに言及する」「Aを指す」といった意味で使われるのは、まさにこの「注意や起源をAに向ける」という動きを表しているんですね。「reference(参照)」という名詞にもそのイメージが引き継がれています。

「mention」の核心:「(軽く)~に言及する、口にする」

一方、「mention」の語源は、ラテン語の「mentio(思い出すこと、言及)」、さらに遡ると「mens(心、精神)」に関連しています。「mind(心)」や「memory(記憶)」とも繋がりますね。

この語源から、「mention」には、心(mind)に留めていること、思い出したことを「軽く口に出す」「名前を挙げる」という核心的なイメージがあります。

詳細に説明したり、注意を深く向けさせたりするのではなく、あくまで話題の一部として簡潔に触れる、というニュアンスが強いのです。「Don’t mention it.(どういたしまして)」という決まり文句も、「(礼なんて)口にするなよ」というニュアンスから来ていますね。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

会議で資料の特定箇所を示すなら「Please refer to page 5.」、以前話したプロジェクトに軽く触れるなら「I mentioned the project last week.」のように使い分けます。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

ビジネスと日常、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。

ビジネスシーンでの使い分け

会議での発言、メール、報告書などで頻繁に使われます。情報の深さや参照の必要性を意識しましょう。

【OK例文:refer (to A)】

  • Please refer to the attached document for more details. (詳細については添付文書をご参照ください。)
  • In his presentation, he referred to the latest market trends. (彼のプレゼンでは、最新の市場動向に言及していました。)
  • This term refers to a specific legal concept. (この用語は特定の法概念を指します。)
  • Could you refer me to someone in charge of sales? (営業担当の方を紹介(つないで)いただけますか?) ※人を特定の相手に向ける

【OK例文:mention A】

  • Did anyone mention the budget issue during the meeting? (会議中に誰か予算問題について言及しましたか?)
  • She briefly mentioned her previous experience at the interview. (彼女は面接で以前の経験について簡単に触れました。)
  • I forgot to mention that the deadline has been extended. (締め切りが延長されたことを言い忘れました。)
  • As I mentioned earlier, the main objective is to increase sales. (先ほど申し上げましたように、主な目的は売上を増加させることです。)

「refer to」は情報源や詳細な内容へ注意を促す場面、「mention」は特定の話題や事実を簡潔に伝える場面で使われているのがわかりますね。

日常会話での使い分け

日常会話では、「mention」の方が気軽に使いやすいかもしれません。「refer to」も使われますが、少し改まった響きになることがあります。

【OK例文:refer (to A)】

  • The teacher often refers to historical events in his class. (その先生は授業でよく歴史的な出来事に言及する。)
  • When you talk about “that place,” are you referring to the new cafe? (「あの場所」って言うとき、新しいカフェのことを指してるの?)
  • My doctor referred me to a specialist. (医者は私を専門医に紹介した。)

【OK例文:mention A】

  • He didn’t mention anything about breaking up. (彼は別れることについては何も言わなかった。)
  • Don’t forget to mention my name when you call her. (彼女に電話するとき、私の名前を出すのを忘れないでね。)
  • You mentioned you liked Italian food, right? (イタリアンが好きだって言ってたよね?)

これはNG!間違えやすい使い方

最も多い間違いは、「refer」を他動詞のように使ってしまう(「to」を忘れる)ことです。

  • 【NG】 Please refer the manual.
  • 【OK】 Please refer to the manual. (マニュアルを参照してください。)

「refer A to B」 (AをBに紹介する・差し向ける) という形はありますが、「Aを参照する」の場合は必ず「refer to A」となります。

また、ニュアンスの混同もあります。

  • 【△】 He just referred to her name in passing. (文法的には可能だが、少し不自然)
  • 【OK】 He just mentioned her name in passing. (通りすがりに彼女の名前に軽く触れた。)

単に名前を軽く出しただけなら、「mention」の方がより自然です。「referred to her name」だと、彼女の名前に何か特別な意味があるかのように、注意を向けさせている響きになる可能性があります。

【応用編】似ている言葉「cite」「quote」「allude to」との違いは?

【要点】

「cite」は出典を明記して引用・言及する場合、「quote」は言葉をそのまま引用する場合、「allude to」は間接的にほのめかす場合に使います。それぞれ「refer」や「mention」とは異なるニュアンスを持ちます。

「言及する」「参照する」に関連する言葉は他にもあります。これらの違いも押さえておきましょう。

  • cite A: (理由・例として)Aを引き合いに出す、引用する。(特に出典を明記して)(例:He cited several studies to support his argument. 彼は自説を裏付けるためにいくつかの研究を引き合いに出した。)

    ※ 学術的な文脈でよく使われます。「refer」よりも出典を示す意図が強いです。

  • quote A: A(言葉・文章)を(そのまま)引用する。(例:She quoted a famous line from Shakespeare. 彼女はシェイクスピアの有名な一節を引用した。)

    ※ 「” “」で括られるような、直接的な引用に使います。「refer」や「mention」は要約や間接的な言及にも使えます。

  • allude to A: Aを間接的に言う、ほのめかす、暗に示す。(例:He didn’t mention her name directly, but he clearly alluded to her. 彼は彼女の名前を直接は出さなかったが、明らかに彼女のことをほのめかしていた。)

    ※ 直接的ではない、暗示的な言及に使います。「mention」は直接的な言及です。

「cite」と「quote」は、特に文章やデータなどを正確に示す場合に重要ですね。「allude to」は、直接言わずにそれとなく伝える、という少し文学的なニュアンスも持ちます。

「refer」と「mention」の違いを言語学的に解説

【要点】

「refer」は主に「指示機能(deixis)」や「相互参照(cross-reference)」に関わり、聞き手の注意を特定の対象へ導きます。「mention」は「発話行為(speech act)」の一種で、特定の情報を会話に導入する行為そのものを指します。文法的には refer は自動詞 (+to)、mention は他動詞です。

言語学的な観点から見ると、「refer」と「mention」は、指示機能(deixis)、発話意図(illocutionary force)、そして動詞の項構造(argument structure)において違いがあります。

refer」は、多くの場合、指示機能、特に関係指示(anaphora or cataphora)や文脈指示(situational deixis)に関わります。「refer to A」という表現は、聞き手や読み手の注意(attention)を、文脈内または文脈外の特定の対象(referent)A へと方向づけることを主な機能とします。これは、テクスト内での相互参照(cross-reference)や、外部情報源への誘導において中心的な役割を果たします。文法的には、「refer」は「to」という前置詞を伴って初めて参照対象を示す自動詞(intransitive verb)として機能します。

一方、「mention」は、語用論(pragmatics)的には、特定の情報や話題を会話や文章に導入するという発話行為(speech act)そのものに焦点を当てます。詳細な説明や議論を意図せず、単にその存在や名前を手短に知らせる軽く触れるという発話意図を持ちます。そのため、情報の深さや重要性は「refer」に比べて低いと解釈されることが多いです。文法的には、「mention」は参照対象 A を直接目的語にとる他動詞(transitive verb)です。

この違いは、情報の扱い方にも影響します。「refer to A」は、A が持つ情報内容へのアクセスを示唆するのに対し、「mention A」は、A という存在自体を会話の場に出すことに主眼があります。例えば、「He referred to the report.」は報告書の内容に触れたことを示唆しますが、「He mentioned the report.」は報告書の存在について話した、という意味合いが強くなります(ただし、文脈によります)。

参考文献としては、語用論における発話行為理論(Searleなど)や、指示表現に関する研究(Lyonsなど)、そしてコーパスに基づく動詞の用法分析などが挙げられます。これらの分野では、単語の意味だけでなく、文脈における機能や話し手の意図といった側面から言葉の使い分けが分析されていますね。

会議で大失敗!「refer」と「mention」を取り違えた体験談

僕も以前、海外との電話会議で「refer」と「mention」を混同してしまい、相手を混乱させてしまった苦い経験があります…

新製品の仕様について議論していた時のことです。先行開発していた類似製品(コードネーム:Project Alpha)の技術文書に、参考になるデータが載っていたことを伝えたかったんですね。そこで、僕はこう言いました。

「Regarding the specification, I referred to Project Alpha. It has some useful data.」

僕の意図としては、「仕様に関して、(参考として)Project Alpha に軽く触れておくと、役立つデータがありますよ」くらいの軽い気持ちでした。だから本当は「I mentioned Project Alpha」と言うべきだったんです。

ところが、「referred to」を使ったことで、相手(アメリカ人のエンジニア)は、「彼が Project Alpha の『どの文書の』『どのデータ』を参照したのか、具体的な情報源を示している」と受け取ったようでした。

すぐに相手から「Oh, which document did you refer to? Could you share the specific data or page number?(ああ、どの文書を参照したんだい?具体的なデータかページ番号を共有してくれる?)」と矢継ぎ早に質問が飛んできたのです。

僕は一瞬、頭が真っ白になりました。(え?いや、ただ『Alphaも参考になるかも』って言いたかっただけで、特定の文書の特定箇所を今示せるわけじゃない…!)

慌てて、「Sorry, I just meant that Project Alpha might be a good reference in general. I don’t have a specific document in mind right now.(すみません、ただ一般的にProject Alphaが良い参考になるかもしれない、と言いたかっただけです。今、特定の文書を念頭に置いているわけではありません)」と言い直す羽目に。

相手は「Oh, I see. You just mentioned it as a potential reference. Got it.(ああ、なるほど。潜在的な参考情報としてそれに言及しただけなんだね。了解。)」と納得してくれましたが、僕のせいで会議の流れが数分間止まってしまい、非常に気まずい思いをしました。

「refer to」が持つ「具体的な参照先へ注意を向ける」という強い指示性を、僕は軽く考えていたのです。単に話題に出すだけのつもりが、「参照せよ」という指示のように聞こえてしまったんですね。

この経験以来、軽く触れるだけなら「mention」、具体的な情報源や詳細に注意を向けさせたいなら「refer to」と、その意図を明確に意識して使い分けるようになりました。たった一語の違いですが、コミュニケーションの齟齬(そご)を生む可能性があることを痛感した出来事でした。

「refer」と「mention」に関するよくある質問

Q1: 「refer A as B」という使い方はありますか?

はい、「refer to A as B」という形で、「AをBと呼ぶ、称する」という意味で使われます。(例:We refer to this phenomenon as ‘global warming’. 我々はこの現象を「地球温暖化」と呼ぶ。) この場合の「refer to」は「参照する」とは少し意味が異なりますね。

Q2: 「mention」を受動態で使うことはできますか?

はい、可能です。「be mentioned」で「言及される、記載される」という意味になります。(例:His name was mentioned in the article. 彼の名前がその記事で言及されていた。)

Q3: 「Don’t mention it.」以外で「mention」が使われる決まり文句はありますか?

「not to mention A」で「Aは言うまでもなく」という意味の表現があります。(例:He speaks French and German, not to mention English. 彼は英語は言うまでもなく、フランス語とドイツ語も話す。)

「refer」と「mention」の違いのまとめ

「refer」と「mention」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. refer (to A): Aに注意を向けさせる、参照させる。詳細な情報や情報源を示す意図が強い。必ず「to」を伴う(基本)。
  2. mention A: Aについて軽く触れる、名前を出す。詳細には立ち入らない。目的語を直接とる。
  3. 深さと意図:「refer」は深く、「mention」は浅く、が基本的なイメージ。
  4. 文法:「refer」は自動詞 (+ to)、「mention」は他動詞。
  5. 類語:「cite」(出典明記)、「quote」(直接引用)、「allude to」(ほのめかす)など、ニュアンスに応じて使い分ける。

語源のイメージ(refer = 元へ運ぶ、mention = 心に留めて口に出す)を掴むと、その使い方の違いがより感覚的に理解できますね。情報源へ誘導したいのか、単に話題に出したいのか、その意図に応じて使い分けることが重要です。

これからは自信を持って、的確な言葉を選んでいきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。