「サーベイ」と「リサーチ」、どちらも何かを「調べる」ときに出てくるカタカナ語ですよね。
市場調査や学術研究の話で耳にしますが、「この二つ、どう違うの?」「どっちを使えばいいんだろう?」と迷った経験はありませんか? 実は、この二つの言葉は「全体像を把握するための調査手法」なのか、「未知の事柄を探求するプロセス全体」なのかという点で、その範囲と目的に大きな違いがあるんです。
この記事を読めば、「サーベイ」と「リサーチ」の根本的な意味の違い、由来、具体的な使い分け、そして「アンケート」との関係性まで、スッキリと理解できます。もうこれらの言葉の使い分けに悩むことはありませんよ。
それでは、まず最も重要な違いから詳しく見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「サーベイ」と「リサーチ」の最も重要な違い
基本的には「サーベイ」がアンケートや測定など特定の「調査方法」や「概観調査」を指し、「リサーチ」が仮説検証や問題解決のための広範な「研究」「探求プロセス」全体を指します。「サーベイ」はリサーチの一部として使われることが多い、と覚えるのが簡単です。
まず、結論として「サーベイ」と「リサーチ」の最も重要な違いを一覧表にまとめました。
これさえ押さえれば、基本的な使い分けは大丈夫でしょう。
| 項目 | サーベイ (Survey) | リサーチ (Research) |
|---|---|---|
| 中心的な意味 | 概観、調査、測量、(主に質問票などを用いた)調査 | 研究、調査、探求、(体系的な)探求プロセス |
| 焦点 | 現状把握、全体像の把握、特定のデータ収集(方法) | 問題解決、仮説検証、知識発見(プロセス全体) |
| 範囲 | リサーチの一部として用いられる調査手法の一つ | 課題設定から結論導出までの広範なプロセス全体 |
| 具体例 | 市場サーベイ、意識調査サーベイ、アンケートサーベイ | 市場リサーチ、学術リサーチ、製品開発リサーチ |
| ニュアンス | 見渡す、調べる(手法)、測定する | 深く探る、研究する(プロセス)、解明する |
| 語源イメージ | 上から見渡す | 繰り返し探し求める |
ポイントは、「サーベイ」は多くの場合、アンケート調査のように、現状や全体像を把握するために行われる特定の「調査手法」を指すのに対し、「リサーチ」は、ある問いに対する答えを見つけるための、より広範で体系的な「研究活動」や「探求プロセス」全体を指すという点です。
つまり、市場の動向を探る「マーケットリサーチ」を行うために、その手法の一つとして「消費者サーベイ(アンケート調査)」を実施する、という関係性になりますね。
なぜ違う?言葉の由来(語源)からイメージを掴む
「サーベイ」は中世ラテン語の「上から見る」が語源で、全体を広く見渡して状況を把握するイメージ。「リサーチ」は古フランス語の「徹底的に探す」が語源で、未知のものを深く掘り下げて探し求める探求のイメージです。
この二つの言葉が持つ「手法」と「プロセス」というニュアンスの違いは、それぞれの語源を探ることで、よりはっきりとイメージできますよ。
「サーベイ」の由来:「上から見渡す」概観のイメージ
「サーベイ(survey)」の語源は、中世ラテン語の “supervidere” に遡ります。
- “super-” は「上に (over)」
- “videre” は「見る (see)」
つまり、元々は「上から見渡す」「概観する」といった意味を持っていました。これが古フランス語の “surveoir” を経て、英語の “survey” になりました。
土地の「測量」や、世論の「調査」、物事の「概観」といった意味で使われるのは、この「全体を広く見渡して状況を把握する」という語源的なイメージが根底にあるからです。
特定の対象について、質問票などを用いて広く浅く情報を集め、全体像を描き出す手法、そんなニュアンスですね。
「リサーチ」の由来:「徹底的に探し求める」探求のイメージ
一方、「リサーチ(research)」の語源は、古フランス語の “recerchier” です。
- “re-” は「再び」「徹底的に (again, intensively)」
- “cerchier” は「探す (to search)」
つまり、直訳すると「徹底的に探し求める」「繰り返し探求する」といった意味になります。
単に表面的な情報を集めるだけでなく、未知の事柄や真実を明らかにするために、深く掘り下げて調査・研究を進めるプロセス全体を指す言葉として定着しました。
課題を設定し、情報を収集・分析し、結論を導き出すという、体系的で綿密な探求活動のイメージが強いですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
顧客満足度調査は「サーベイ」、新製品開発のための市場調査は「リサーチ」。具体的な調査手法はサーベイ、包括的な研究活動はリサーチと使い分けましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
ビジネスシーン、学術・研究分野、そして間違いやすいNG例を見ていきましょう。
ビジネスシーンでの使い分け
市場調査や顧客分析などで使われることが多いです。
【OK例文:サーベイ】
- ウェブサイト上で顧客満足度サーベイを実施した。(アンケート調査)
- 競合製品に関する市場サーベイの結果を報告します。(市場概観調査)
- 従業員の意識サーベイから、組織の課題が見えてきた。(意識調査)
- 会場出口にて簡単なサーベイにご協力ください。(簡単なアンケート)
【OK例文:リサーチ】
- 新製品開発に向けて、徹底的な市場リサーチを行う必要がある。(広範な市場研究)
- 消費者行動に関する最新のリサーチ論文を読む。(学術的な研究)
- 彼は競合他社の動向を常にリサーチしている。(継続的な調査・探求)
- このプロジェクトは、十分なリサーチに基づいて計画された。(事前の調査研究)
「サーベイ」は特定の調査活動、「リサーチ」はより広範で深い調査・研究活動を指しているのが分かりますね。「市場サーベイ」は市場の現状を大まかに把握する調査、「市場リサーチ」は市場全体の動向、競合、消費者ニーズなどを深く探求する活動、というニュアンスの違いがあります。
学術・研究分野での使い分け
学術分野では、「リサーチ」が基本となりますが、「サーベイ」も特定の手法として使われます。
【OK例文:サーベイ】
- 本研究では、質問紙サーベイを用いてデータを収集した。(調査手法としてのアンケート)
- 文献サーベイを行い、先行研究の動向をまとめた。(関連文献の概観調査)
- 全国の大学生を対象とした大規模な意識サーベイが実施された。(広範な意識調査)
【OK例文:リサーチ】
- 彼は長年にわたり、そのテーマについてリサーチを続けている。(研究活動)
- 私の現在のリサーチは、〇〇のメカニズム解明を目的としています。(研究テーマ)
- この分野ではさらなるリサーチが必要とされている。(探求の必要性)
- 実験結果を分析し、リサーチペーパー(研究論文)を執筆した。
学術的な文脈では、「リサーチ」が研究活動全体を指し、「サーベイ」はその中で使われるデータ収集手法の一つ(特に質問紙調査や文献調査)を指すことが多いですね。
これはNG!間違えやすい使い方
範囲や目的を取り違えると、不自然な表現になることがあります。
- 【NG】 新薬開発のために、簡単なサーベイを行った。(新薬開発のような深い探求は「リサーチ」が適切)
- 【OK】 新薬開発のために、基礎リサーチから始めた。
- 【NG】 消費者の意見を知るために、市場リサーチ(アンケート)を実施した。(アンケート手法を指すなら「サーベイ」がより一般的)
- 【OK】 消費者の意見を知るために、市場サーベイを実施した。
- 【OK】 消費者の意見を知るための市場リサーチの一環として、サーベイを実施した。
- 【NG】 彼は文献リサーチ(文献の概観調査)が得意だ。(文献を広く浅く見渡すなら「サーベイ」が適切)
- 【OK】 彼は文献サーベイが得意だ。
- 【OK】 彼は特定のテーマに関する文献を深くリサーチ(研究)している。
このように、調査の「深さ」や「目的」、「範囲」を意識すると、より適切な言葉を選ぶことができますね。
【応用編】似ている言葉「アンケート」との違いは?
「アンケート」は質問票を用いた調査方法そのもの、あるいは質問票自体を指します。「サーベイ」はアンケートを含む、より広い意味での調査や概観を指す言葉です。「アンケート」は「サーベイ」の具体的な手法の一つと言えます。
「サーベイ」と聞いて、多くの人が「アンケート」を思い浮かべるのではないでしょうか? この二つの言葉の関係性も整理しておきましょう。
「アンケート(questionnaire)」は、フランス語由来の言葉で、設定された質問項目に回答してもらう形式の「調査方法」そのもの、あるいはその「質問票」自体を指します。
一方、「サーベイ(survey)」は、前述の通り「概観調査」「調査」全般を指し、アンケートはその手法の一つとして含まれます。サーベイには、アンケート以外にも、面接調査(インタビュー)、観察調査、測定なども含まれることがあります。
つまり、「アンケート」は「サーベイ」を実施するための具体的なツールや手法の一つ、という関係性になります。
「顧客満足度サーベイをアンケート形式で実施する」といった言い方ができますね。ただし、日常会話では「サーベイ=アンケート調査」というニュアンスで使われることも多いです。
「サーベイ」と「リサーチ」の関係性を図解
「リサーチ」という大きな研究・探求プロセスの中に、「サーベイ」という調査手法(アンケート、測定など)が含まれる、という入れ子構造で理解すると分かりやすいです。
「サーベイ」と「リサーチ」の関係性を、図でイメージすると以下のようになります。
このように、
- まず、解決したい課題や探求したい問いに基づき、広範な「リサーチ」(研究・探求プロセス)が始まります。
- そのリサーチプロセスの中で、現状把握やデータ収集のために、特定の「サーベイ」(調査手法)が選択・実施されます。
- サーベイの具体的な方法として、「アンケート」などが用いられることがあります。
この階層構造を理解しておくと、「サーベイ」と「リサーチ」を混同することなく、それぞれの言葉が持つ範囲と役割を正確に捉えることができますね。
クライアントへの提案で「サーベイ」と「リサーチ」を混同した僕の反省
僕も若い頃、マーケティングの提案書でこの二つの言葉を不用意に使ってしまい、クライアントから鋭いツッコミを受けたことがあります。
ある新商品の市場導入に関する提案で、「まずは市場リサーチとして、ターゲット層へのWebアンケートを実施し…」と書いてしまったんです。自分の中では、「市場を調べる=リサーチ」で、「その手法がアンケート」という単純な理解でした。
しかし、提案内容を説明した際、クライアントの担当役員の方から、「君の言う『市場リサーチ』は、このWebアンケートだけを指しているのかね? それだけでは単なる現状把握の『サーベイ』に過ぎないのではないか? 我々が求めているのは、競合分析や市場構造の深掘りも含めた本格的な『リサーチ』なのだが」と指摘されてしまいました。
まさにその通りでした…。僕は「リサーチ」という言葉を、安易に「アンケート調査(サーベイ)」と同じ意味で使ってしまっていたのです。クライアントが期待していたのは、もっと広範で深い分析を含む調査研究(リサーチ)だったのに、僕の言葉遣いがその期待値を矮小化して伝えてしまっていたのですね。
言葉の定義を正確に理解し、相手が期待するスコープ(範囲)と自分の提案内容を一致させることの重要性を痛感しました。
それ以来、提案書などで「リサーチ」や「サーベイ」といった言葉を使う際には、その目的と具体的な手法、そして調査活動全体のどの部分を指しているのかを明確にするように、細心の注意を払っています。
「サーベイ」と「リサーチ」に関するよくある質問
ここでは、「サーベイ」と「リサーチ」について、よくある質問にお答えします。
Q1: 「マーケットサーベイ」と「マーケットリサーチ」はどう違いますか?
A1: 一般的に、「マーケットサーベイ」は市場の現状や特定の側面(例:価格帯、認知度)をアンケートなどで概観的に調査することを指すことが多いです。一方、「マーケットリサーチ」は、市場全体の構造、トレンド、競合、消費者ニーズ、将来予測など、より広範かつ深く市場を探求するプロセス全体を指します。「マーケットサーベイ」は「マーケットリサーチ」の一部として行われることが多いですね。
Q2: 日本語で「調査」と言う場合、「サーベイ」と「リサーチ」のどちらに近いですか?
A2: 日本語の「調査」は非常に意味が広く、文脈によって「サーベイ」にも「リサーチ」にもなり得ます。「意識調査」ならサーベイに近いですし、「原因調査」ならリサーチに近いかもしれません。「調べる」という行為全般を指すため、どちらか一方に限定するのは難しいですね。そのため、意図を明確にしたい場合は、「アンケート調査」「市場調査」「研究調査」のように、具体的な言葉を補うか、カタカナ語を使うのが良いでしょう。
Q3: 論文で使う場合はどちらが適切ですか?
A3: 学術論文の場合、研究活動全体は「リサーチ(research)」と表現するのが基本です。その中で、質問紙を用いた調査など、特定の手法としてデータを収集した場合は、「サーベイ(survey)」という言葉を使うことがあります。「This research employed a survey method…(本研究ではサーベイ手法を用いた…)」のように使われます。
「サーベイ」と「リサーチ」の違いのまとめ
「サーベイ」と「リサーチ」の違い、これでバッチリですね!
最後に、この記事のポイントをまとめておきましょう。
- 範囲が違う:「サーベイ」は特定の調査手法や概観調査、「リサーチ」は広範な研究・探求プロセス全体。
- 関係性:サーベイはリサーチの一部として行われることが多い。
- 語源イメージ:「サーベイ」は「上から見渡す」、「リサーチ」は「徹底的に探し求める」。
- 焦点:「サーベイ」は現状把握・データ収集(方法)、「リサーチ」は問題解決・知識発見(プロセス)。
- 「アンケート」との違い:「アンケート」はサーベイの具体的な手法の一つ。
言葉の定義とその範囲を正確に理解することで、調査や研究に関するコミュニケーションがよりスムーズになりますね。
特にビジネスの提案や報告、学術的な議論の場では、これらの言葉を適切に使い分けることが、内容の正確な伝達と信頼性の確保につながります。
これから自信を持って、「サーベイ」と「リサーチ」を使い分けていきましょう。言葉の使い分けについてさらに知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いをまとめたページもぜひご覧ください。