「to」と「for」、どちらも英語学習の初期に習う基本的な前置詞ですよね。
簡単なようでいて、いざ使おうとすると「あれ、ここは to? それとも for?」と迷ってしまうことはありませんか?日本語の「~に」「~のために」という訳語だけではカバーしきれない、微妙なニュアンスの違いがあります。
この記事を読めば、「to」と「for」の核心的なイメージの違いから、具体的な使い分けのルール、さらには似ている前置詞との比較までスッキリ理解でき、英文 E メールや英会話で迷うことはもうありません。この記事を通して、それぞれの単語が持つ感覚を掴み、自然な英語表現を身につけましょう。
それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。
結論:一覧表でわかる「to」と「for」の最も重要な違い
基本的には、「to」は方向や到達点を示す矢印(→)、「for」は目的や利益、対象を示す範囲とイメージするのが簡単です。「to」は物理的・抽象的な移動や対象を、「for」はその行為が誰のため・何のためかを表します。
まず、結論からお伝えしますね。
「to」と「for」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。
| 項目 | to | for | 
|---|---|---|
| 品詞 | 前置詞 (+不定詞) | 前置詞 | 
| コアイメージ | 方向・到達点(→) | 目的・対象・利益(~のため) | 
| 主な意味 | ~へ(方向・到達) ~に(対象) ~まで(範囲・限度) ~に対して(比較) | ~のために(目的・利益) ~にとって(対象) ~の理由で ~と交換に ~の間(期間) ~へ向かって(方向) | 
| 使い分けのポイント | 矢印のように「向かう先」を示す | 「~のため」という目的・利益を示す | 
一番大切なポイントは、「to」が動きの方向や最終的な行き着く先を強く意識させるのに対し、「for」はその行為が何を目指しているのか、誰(何)に向けられているのかという目的や対象を意識させる点です。
例えば、「I go to the park.」は公園という到達点への移動ですが、「I bought a gift for you.」はあなたという受益者のための行為ですね。
なぜ違う?コアイメージ(核となる意味)から掴む
「to」は一点に向かう矢印(→)のイメージで、到達や対象への結びつきを表します。「for」は何か(目的・利益・対象)を中心とした範囲や方向性のイメージで、その範囲に向かう、あるいはその範囲に関わることを示します。
なぜこの二つの前置詞が異なる意味合いを持つのか、それぞれの単語が持つ核となるイメージ(コアイメージ)を掴むと、感覚的に理解しやすくなりますよ。
言葉のイメージを捉えるのが、使い分けマスターへの近道です!
「to」のコアイメージ:「方向・到達点」を示す矢印
「to」の最も基本的なイメージは、ある点から別の点へ向かう「矢印(→)」です。
物理的な移動(go to school)だけでなく、抽象的なもの(give it to me)、時間(from 9 to 5)、比較(prefer A to B)、適合(key to the door)など、何かが特定の方向へ向かったり、最終的にどこかに到達したり、結びついたりする状況全般に使われます。
とにかく「A → B」という方向性と到達点が強く意識されるのが「to」の特徴です。
「for」のコアイメージ:「目的・対象・利益」を示す範囲
一方、「for」のコアイメージは、何かを中心とした「範囲」や、漠然とした「方向性」です。
その範囲、つまり目的(study for the exam)、利益(good for health)、対象(wait for you)、理由(famous for its food)、交換(pay for the ticket)、期間(for three days)など、その中心にあるものに向かう、あるいはそれに関わる様々な状況を表します。
「to」のような一点への到達ではなく、「~のため」「~にとって」「~に向かって」という、より広い意味合いや目的、関連性を示すのが「for」の感覚ですね。
具体的な例文で使い方をマスターする
「東京へ行く」なら方向・到達を示す “go to Tokyo”、「あなたのためにプレゼントを買う」なら利益・対象を示す “buy a gift for you” となります。文脈に応じてコアイメージを意識して使い分けましょう。
言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。
それぞれの代表的な使い方と、間違いやすいNG例を見ていきましょう。
「to」を使う場合:方向・到達・対象・比較など
矢印(→)のイメージを意識してみましょう。
- 方向・到達:We are going to Hawaii next month. (来月ハワイへ行きます。)
- 対象・相手:Please send this email to Mr. Tanaka. (この E メールを田中さんに送ってください。)
- 範囲・限度:The store is open from 10 a.m. to 8 p.m. (その店は午前10時から午後8時まで開いています。)
- 比較:I prefer coffee to tea. (私は紅茶よりコーヒーの方が好きです。)
- 適合・所属:This is the key to the front door. (これは玄関の鍵です。)
- 不定詞(動詞の原形):I want to learn English. (私は英語を学びたい。) ※前置詞とは用法が異なります
「for」を使う場合:目的・利益・理由・交換・期間など
「~のため」「~にとって」という範囲や方向性をイメージしてみましょう。
- 目的:She went out for a walk. (彼女は散歩に出かけた。)
- 利益・受益者:This book is for beginners. (この本は初心者向けです。) / I made this cake for you. (あなたのためにこのケーキを作りました。)
- 理由・原因:He was punished for being late. (彼は遅刻したために罰せられた。)
- 交換:I bought this bag for 5,000 yen. (私はこのバッグを5000円で買いました。)
- 期間:They lived in London for ten years. (彼らはロンドンに10年間住んでいた。)
- 方向(漠然と):He left for New York yesterday. (彼は昨日ニューヨークへ向けて出発した。)
これはNG!間違えやすい使い方
特に「与える」系の動詞で混同しやすいので注意が必要です。
- 【NG】 I gave the book for her.
- 【OK】 I gave the book to her. (彼女に本をあげた。→ 本が彼女へ到達)
「give」のように直接相手に物が移動・到達する場合は「to」を使います。
- 【NG】 I bought a present to my sister.
- 【OK】 I bought a present for my sister. (妹のためにプレゼントを買った。→ 妹の利益)
「buy」のように、相手のために何かをする場合は「for」を使います。プレゼント自体は後で妹に渡す(give to)かもしれませんが、買う行為は妹のため(for)ですね。
【応用編】似ている前置詞「toward(s)」との違いは?
「toward(s)」も方向を示しますが、「to」が最終的な到達点を強く意識させるのに対し、「toward(s)」は単にそちらの方角へ向かうことを示し、到達するかどうかは問題にしません。
方向を示す前置詞として、「to」と似ているのが「toward」(または「towards」)です。これも違いを押さえておきましょう。
「to」が「学校へ行く(go to school)」のように、最終的な目的地・到達点を明確に示すのに対し、「toward(s)」は「駅の方へ歩く(walk toward(s) the station)」のように、単にその方角へ向かっていることを示します。駅に到着するかどうか、駅が最終目的地かどうかは関係ありません。
例文で比べてみましょう。
- He walked to the park. (彼は公園へ(到着目指して)歩いた。)
- He walked toward(s) the park. (彼は公園の方へ歩いた。)
「to」は公園に着くことが前提ですが、「toward(s)」は公園の方向へ歩いただけで、途中で曲がったかもしれません。
微妙なニュアンスですが、この違いを理解すると表現の幅が広がりますね。
「to」と「for」の違いを文法的に解説
「to」と「for」はどちらも前置詞ですが、取る動詞や文型によって使い分けが必要です。特に授与動詞(give型/buy型)や、目的語の後ろに置かれる場合(O + to do / O + for S + to do)などで明確なルールがあります。
文法的な観点から「to」と「for」の使い分けを整理すると、より深く理解できます。
1. 授与動詞(SVOO → SVO + 前置詞句)
「誰かに何かを~する」という意味の動詞(give, send, show, teach など)は、目的語の順番を変える際に「to」を使います。
- He gave me the pen. → He gave the pen to me.
一方、「誰かのために何かを~する」という意味の動詞(buy, make, cook, find, get など)は、「for」を使います。
- She bought me a book. → She bought a book for me.
これは、動詞の性質が「相手への到達」なのか「相手のための行為」なのかの違いに基づいていますね。
2. It is ~ for A to do / It is ~ of A to do
「Aが~するのは…だ」という構文では、形容詞の性質によって「for」と「of」を使い分けます。
- It is important for you to study hard. (あなたが一生懸命勉強することは重要だ。)← 一般的な性質・判断
- It is kind of you to help me. (私を手伝ってくれるなんて、あなたは親切だ。)← 人の性格・性質
※この構文の「to」は不定詞です。
3. 目的を表す不定詞「to do」と前置詞「for ~ing」
「~するために」という目的を表す場合、一般的には不定詞「to do」を使いますが、特定の用途や機能を表す名詞句が続く場合は「for ~ing」も使われます。
- I went there to see him. (彼に会うためにそこへ行った。)
- This knife is for cutting bread. (このナイフはパンを切るためのものだ。)
文法ルールは複雑に見えるかもしれませんが、それぞれの単語のコアイメージ(to=到達、for=目的・対象)と結びつけると、理解しやすくなるでしょう。
僕が「to」と「for」の使い分けで失敗した海外出張での体験談
僕も、以前「to」と「for」の使い分けで冷や汗をかいた経験があります。
初めての海外出張で、現地の担当者とレストランの予約について E メールでやり取りしていた時のこと。希望の時間帯が満席で、代わりの時間を提案されたんです。
その提案された時間で問題ないことを伝えたかった僕は、焦りもあってか、こう書いて返信してしまいました。
“Thank you for the suggestion. That time is fine to me.”
「私にとっては問題ない」という意味で、無意識に「to」を使ってしまったんですね。もちろん、この場合の「私にとって」は「for」を使うのが自然です。
“That time is fine for me.” が正しい表現でした。
すぐに担当者から「”for me” is more natural here :)」と、顔文字付きで優しく訂正の返信が…。丁寧な指摘に感謝しつつも、基本的な前置詞で間違えてしまったことが恥ずかしくて、画面の前で赤面しました。
「~に」という日本語訳に引きずられてしまった典型的なミスですね。この経験を通じて、単語のコアイメージや文脈で判断することの重要性を改めて実感しました。「私にとって」という対象・関連性を示す場合は「for」の範囲のイメージがぴったり合うんですよね。
皆さんも、日本語訳だけに頼らず、英語の感覚を大切にしてくださいね!
「to」と「for」に関するよくある質問
Q. 「~へ行く」はいつも “go to” ですか? “go for” は使わない?
A. 場所へ行く場合は基本的に “go to [場所]” ですが、「散歩に行く(go for a walk)」や「食事に行く(go out for dinner)」のように、目的を表す場合は “go for [目的]” という形を使います。これは「for」が持つ「目的」のニュアンスですね。
Q. 「~にとって難しい」は “difficult to me”? それとも “difficult for me”?
A. 一般的には “difficult for me” (私にとって難しい)を使います。「for」は対象を示し、「私という範囲において難しい」というニュアンスです。”difficult to me” は文法的に間違いではありませんが、「私に対して難しい(と感じられる)」という少し異なる、あまり一般的ではない響きになります。
Q. プレゼントを「あげる」ときの動詞によって to/for が変わるのはなぜ?
A. 動詞の性質によります。「give」のように物が直接相手に到達する動詞は「to」と相性が良く、「buy」「make」のように相手のために何かをする動詞は「for」と相性が良いからです。これは動詞と前置詞のコアイメージが影響しあっている例と言えますね。
「to」と「for」の違いのまとめ
「to」と「for」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。
最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。
- コアイメージで区別:「to」は方向・到達点(→)、「for」は目的・利益・対象(範囲)。
- 後ろに続く形で判断:「to」の後ろは場所・人・物・時間などが多い。「for」の後ろは目的・利益・理由・期間などが多い。文法的には「to」は到達点、「for」は目的・対象を示す前置詞句を作る。
- 授与動詞に注意:物が直接渡る動詞(giveなど)は「to」、相手のためにする動詞(buyなど)は「for」を使う。
- 似た言葉との違い:「toward(s)」は方向のみ、「for」は期間の長さも表す。
言葉の核心的なイメージを掴むと、機械的な暗記ではなく、より自然に使い分けられるようになりますね。
これからは自信を持って、的確な前置詞を選んでいきましょう。この使い分けをマスターすれば、あなたの英語はさらにネイティブスピーカーに近づくはずです。他のカタカナ語や英語表現の違いについて知りたい方は、カタカナ語・外来語の違いまとめページもぜひ参考にしてください。