「a」と「the」の違いとは?英語冠詞の使い分けを例文で解説!

英語の「a」と「the」、冠詞と呼ばれるこれらの単語、使い分けに悩んだ経験はありませんか?

中学校で習う基本的なルールですが、ネイティブスピーカーでない私たちにとっては、感覚的に掴みづらい部分もありますよね。「どっちを使うのが自然なんだろう…?」と迷ってしまう場面は少なくないはずです。

この記事を読めば、「a」と「the」の根本的なイメージの違いから、具体的な使い分けのルール、さらには冠詞がつかない場合との比較までスッキリ理解でき、英作文や英会話で自信を持って表現できるようになります。この記事を通して、冠詞の感覚を掴み、より自然な英語を目指しましょう。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論:一覧表でわかる「a」と「the」の最も重要な違い

【要点】

基本的には、「a/an」は不特定のもの(たくさんの中の一つ)、「the」は特定のもの(話し手と聞き手が「それ」とわかるもの)に使います。「a/an」は初めて話題に出すとき、「the」は既に話題に出たものや状況から特定できるものに使われることが多いです。

まず、結論からお伝えしますね。

「a」と「the」の最も重要な違いを、以下の表にまとめました。これさえ押さえれば、基本的な使い分けはバッチリです。

項目 a / an the
種類 不定冠詞 定冠詞
基本的な意味 特定されていない「一つ」 特定されている「その」
対象 数えられる名詞の単数形
(初めて話題に出すもの、不特定のもの)
数えられる名詞(単数・複数)、数えられない名詞
(既に話題に出たもの、状況から特定できるもの、唯一のもの)
コアイメージ たくさんある中の一つ、どれでもよい一つ 話し手と聞き手が共通認識できる「それ!」
使い分けのポイント 「初めて話す」「どれでもいい一つ」 「もう話に出た」「状況でわかる」「これしかない」

一番大切なポイントは、話し手と聞き手の間で、その名詞が「特定」されているかどうかです。特定されていなければ「a」(または母音で始まる場合は「an」)、特定されていれば「the」を使うのが大原則ですね。

「特定ってどういうこと?」と感じるかもしれませんが、次のコアイメージを見ると感覚が掴みやすくなりますよ。

なぜ違う?コアイメージ(核となる意味)から掴む

【要点】

「a/an」のコアイメージは「one(一つ)」であり、数ある同類の中から特定しない一つを指します。「the」のコアイメージは「that/those(それ/あれら)」に近く、話し手と聞き手が共通して認識できる特定の一つ(または複数)を指し示します。

なぜこの二つの冠詞を使い分ける必要があるのか、それぞれの単語が持つ核となるイメージ(コアイメージ)を掴むと、ネイティブスピーカーの感覚に近づけます。

理屈だけでなく、感覚で理解するのがポイントです!

「a/an」のコアイメージ:「たくさんの中の一つ」「初めて登場」

不定冠詞「a/an」のコアイメージは「one(一つ)」です。もともと「an」は「one」が弱まった形であり、「a」はさらにその音が変化したものです。

つまり、「a/an」は「たくさんある同類の中から、特定せずに一つを取り出す」感覚を持っています。「ある一つの~」「どれでもいいから一つ」といったニュアンスです。

初めて話題に登場する数えられる名詞の単数形につくことが多いのは、聞き手にとってまだ特定されていない「一つ」だからですね。

「the」のコアイメージ:「それ!」「例の」と特定できるもの

定冠詞「the」のコアイメージは、指示代名詞の「that/those(それ/あれら)」に近いと言われています。

話し手と聞き手の間で「ああ、あれね」「例のやつね」と共通認識ができる、特定された名詞を指し示す感覚です。「その~」と訳されることが多いですね。

一度話題に出たもの(I saw **a** dog. **The** dog was big.)、状況から明らかなもの(Please close **the** door.)、世界に一つしかないもの(**the** sun, **the** earth)、最上級や序数詞(**the** tallest, **the** first)などに使われるのは、どれも聞き手が「それだ!」と特定できるからなのです。

具体的な例文で使い方をマスターする

【要点】

初めて犬の話をする時は “a dog”、その犬について再度話す時は “the dog”。「空にある太陽」は一つしかないので “the sun”。「机の上にあるリンゴ」は状況から特定できるので “the apple” となります。

言葉の違いは、具体的な例文で確認するのが一番ですよね。

それぞれの使い方と、間違いやすいNG例を見ていきましょう。

「a/an」を使う場合:初めて話に出すもの、不特定の一つ

「たくさんの中の一つ」というイメージを意識しましょう。母音(a, i, u, e, o)の音で始まる名詞の前では「an」を使います。

  • I bought a book yesterday. (昨日、(ある)一冊の本を買いました。) ← 初めて話題に出す
  • She wants to be a teacher. (彼女は先生になりたい。) ← たくさんいる先生の中の一人
  • He has an idea. (彼には一つのアイデアがある。) ← idea は母音の音で始まる
  • Do you have a pen? (ペンを一本持っていますか?) ← 特定のペンではなく、どれでもいい一本

「the」を使う場合:特定できるもの、文脈で決まるもの

「それ!」「例の」と指し示せるイメージを意識しましょう。

  • I bought a book yesterday. The book is interesting. (昨日、本を一冊買いました。その本は面白いです。) ← 一度話題に出た本
  • Could you pass me the salt? ((そこにある)その塩を取っていただけますか?) ← 状況から特定できる
  • The sun rises in the east. (太陽は東から昇る。) ← 世界に一つしかないもの
  • He is the tallest student in our class. (彼は私たちのクラスで一番背が高い生徒です。) ← 最上級で特定される
  • This is the first time I’ve visited Kyoto. (京都を訪れるのはこれが初めてです。) ← 序数詞で特定される

これはNG!間違えやすい使い方

特定できるかどうかの判断がポイントです。

  • 【NG】 I live in the small town.
  • 【OK】 I live in a small town. (私は(世の中にたくさんある中の)一つの小さな町に住んでいます。)
  • 【OK】 I live in the small town where I was born. (私は(私が生まれた)その小さな町に住んでいます。) ← 関係詞節で特定されている

単に「小さな町」と言うだけでは、どの町か特定できません。聞き手にとって不特定の「一つの」町なので「a」を使います。しかし、「私が生まれた町」のように、どの町か特定できる情報が付加されれば「the」を使えます。

  • 【NG】 Can you play a piano?
  • 【OK】 Can you play the piano? (ピアノを弾けますか?)

楽器を演奏できるか尋ねる場合、特定のピアノではなく「ピアノという楽器(の種類)全般」を指すため、習慣的に「the」を使います。これは「the + 楽器名」のルールとして覚えてしまうのが良いでしょう。

【応用編】冠詞がつかない場合(無冠詞)との違いは?

【要点】

数えられない名詞(水、情報など)や複数形の名詞を一般的・総称的に言う場合は、冠詞をつけません(無冠詞)。特定する場合は「the」をつけます。「a/an」は単数形にしかつきません。

冠詞「a/an」や「the」をつけない「無冠詞」の場合もあります。これも区別しておきましょう。

無冠詞になるのは主に、数えられない名詞(water, information, happiness など)や複数形の名詞(dogs, books, ideas など)を、特定のものを指さずに一般的・総称的に述べる場合です。

「a/an」は「one(一つ)」の意味を持つため、そもそも数えられない名詞や複数形の名詞には使えません。

種類 使い方
数えられる名詞
(単数)
不特定の一つ a dog (一匹の犬)
特定の一つ the dog (その犬)
数えられる名詞
(複数)
一般的・総称的 dogs (犬というもの全般)
特定の複数 the dogs (その犬たち)
数えられない名詞 一般的・総称的 water (水というもの全般)
特定の状況 the water in this bottle (このボトルの中の水)

例文で見てみましょう。

  • I like dogs. (私は犬(全般)が好きです。) ← 無冠詞(複数形・総称)
  • The dogs in this park are friendly. (この公園の犬たちは人懐っこい。) ← the + 複数形(特定)
  • Water is important for life. (は生命にとって重要だ。) ← 無冠詞(数えられない名詞・総称)
  • Could you give me the water on the table? (テーブルの上のその水を取ってくれませんか?) ← the + 数えられない名詞(特定)

このように、名詞の種類(数えられるか、単数か複数か)と、特定のものを指すかどうかの組み合わせで、冠詞の有無や種類が決まるわけですね。

「a」と「the」の違いを文法的に解説

【要点】

文法的には、「a/an」は不定冠詞と呼ばれ、初めて導入される可算名詞単数形に付きます。「the」は定冠詞と呼ばれ、既出の情報、文脈、あるいは一般的知識によって特定可能な名詞(可算・不可算、単数・複数問わず)に付きます。

もう少し文法用語を使って、「a/an」と「the」の違いを整理してみましょう。

「a/an」不定冠詞 (Indefinite Article) と呼ばれます。「Indefinite」は「限定されない、不特定の」という意味です。これは、聞き手がまだ知らない、あるいは特定する必要のない「ある一つ」のものを指すときに使われます。原則として、数えられる名詞(可算名詞)の単数形にのみ付きます。

例: She is reading a novel. (彼女はある小説を読んでいる。)
→ どの小説かは特定されていない。

「the」定冠詞 (Definite Article) と呼ばれます。「Definite」は「限定された、明確な」という意味です。これは、話し手と聞き手の間で共通の認識があり、特定できるものを指すときに使われます。数えられる名詞(単数・複数)、数えられない名詞(不可算名詞)のどちらにも付きます。

特定できる状況としては、以下のような場合があります。

  • 既出情報:前に一度話題に出たもの。I met a girl. The girl was kind.
  • 文脈・状況からの特定:その場の状況や文脈から「どれ」か分かるもの。Open the window, please. (目の前にある窓)
  • 修飾語句による特定:後ろから説明(限定)されるもの。The book on the desk is mine. (机の上の本)
  • 唯一の存在:太陽、月、地球など、一般的に一つしかないと認識されているもの。The moon is beautiful tonight.
  • 最上級・序数詞:最も~なもの、~番目のもの。The best way, the second floor.

このように、名詞が「不特定か特定か」を文法的に示すのが冠詞の役割であり、その区別が「a/an」と「the」の使い分けの基本となります。

僕が「a」と「the」の使い分けを間違えて笑われた体験談

僕も、冠詞の使い分けでは、今思い返しても顔が赤くなるような失敗をしたことがあります。

大学生の頃、アメリカに短期留学していた時のことです。ホストファミリーとの夕食で、その日街で見かけた面白い T シャツについて話そうとしました。

僕は意気揚々と切り出しました。

“Today, I saw the funny T-shirt in town!”

その瞬間、食卓にいた家族全員がきょとんとした顔になり、数秒後、どっと笑い出したのです。ホストファーザーが笑いながら言いました。

“‘The’ funny T-shirt? Which one? Did we talk about it before?” (「『その』面白い T シャツ?どれのことだい?前にその話したっけ?」)

僕は真っ赤になりました。そう、初めて話題に出す、聞き手にとっては未知の T シャツについて話すのに、いきなり定冠詞「the」を使ってしまったのです。彼らにとっては「どの T シャツのこと?『例の』って言われても分からないよ!」という状況だったわけです。

正しくは、もちろん不定冠詞「a」を使って、

“Today, I saw a funny T-shirt in town!”

と言うべきでした。その後で、その T シャツについて詳しく説明するなら “The T-shirt had…” と続けられます。

頭では理解していたはずなのに、会話になると咄嗟に間違えてしまう…。この経験で、冠詞は単なる文法ルールではなく、話し手と聞き手の間の「共通認識」を示すコミュニケーションの重要な要素なのだと痛感しました。

笑い話で済んだから良かったものの、あの時の恥ずかしさは忘れられませんね。

「a」と「the」に関するよくある質問

Q. 「a」と「an」の使い分けがよくわかりません。

A. 後ろに続く単語の「最初の音」で使い分けます。スペルではなく、発音が母音(ア、イ、ウ、エ、オに近い音)で始まる場合は「an」、子音で始まる場合は「a」を使います。
例: an apple, an hour (h は発音しない), a university (u は子音 /j/ の音で始まる), a book

Q. 固有名詞(人の名前や地名)に「the」がつく場合とつかない場合があるのはなぜですか?

A. 基本的に、人の名前(John)、都市名(Tokyo)、国名(Japan)など、それ自体で特定される固有名詞には冠詞はつきません。しかし、複数形で構成される国名(the United States)、河川・海洋名(the Pacific Ocean)、山脈名(the Alps)、特定の建物や施設名(the White House)など、慣用的に「the」がつく固有名詞も多くあります。これらはルールというより、個別に覚える必要があります。

Q. 「play the piano」のように楽器には「the」がつくのに、「play baseball」のようにスポーツにはつかないのはなぜですか?

A. 楽器の場合は「その種類の楽器全般」を代表する形で「the」が使われる慣習があります。一方、スポーツ名は一般的に数えられない名詞として扱われ、特定のものを指すわけではないので、冠詞はつきません。これも一種の慣用的なルールとして覚えるのが良いでしょう。

「a」と「the」の違いのまとめ

「a」と「the」の違い、スッキリご理解いただけたでしょうか。

最後に、この記事のポイントをまとめておきますね。

  1. 特定・不特定の区別が基本:「a/an」は不特定(たくさんの中の一つ)、「the」は特定(「それ」とわかるもの)。
  2. コアイメージを掴む:「a/an」は「one(一つ)」、「the」は「that/those(それ/あれら)」に近い感覚。
  3. 名詞の種類と文脈で判断:数えられるか、単数か複数か、初めて話に出すか、状況で特定できるかなどを考慮する。
  4. 無冠詞の場合も:数えられない名詞や複数形の名詞を一般的・総称的に言う場合は冠詞をつけない。

冠詞の使い分けは、英語の自然さを左右する重要なポイントです。コアイメージを意識しながら、たくさんの例文に触れることで、徐々に感覚が身についていきます。

これからは自信を持って、的確な冠詞を選んでいきましょう。英語の冠詞についてさらに深く知りたい方は、専門的な文法書や解説サイトも参照してみてください。他の英語表現やカタカナ語の使い分けについては、カタカナ語・外来語の違いまとめページも役立つかもしれません。