すっぽんと亀の決定的な違い!甲羅が柔らかいのはどっち?

「すっぽん」と「亀」、どちらも水辺で見かける甲羅を持つ生き物ですね。

見た目は似ていますが、実は「すっぽん」は亀(カメ目)の仲間ではあるものの、私たちがよく目にする一般的な亀とは全く異なる特徴を持っています。
最大の違いは、甲羅の質と、その恐るべき首の長さ、そして噛む力です。
この記事では、すっぽんと一般的な亀(例:イシガメやクサガメ)との決定的な違いを、見た目から生態、危険性まで徹底的に比較解説します。

【3秒で押さえる要点】

  • 分類: すっぽんはカメ目スッポン科、一般的な亀はカメ目イシガメ科やヌマガメ科などです。
  • 甲羅: すっぽんの甲羅は柔らかい皮膚で覆われ、フチがブヨブヨしています。一般的な亀は硬い甲板(こうばん)で覆われています。
  • 危険性: すっぽんは非常に首が長く、瞬発的に伸び、噛む力が極めて強いため、取り扱いに最大の注意が必要です。
「すっぽん」と「亀」の主な違い
項目すっぽん(ニホンスッポン)一般的な亀(イシガメ・クサガメ等)
分類・系統爬虫類・カメ目・スッポン亜目・スッポン科爬虫類・カメ目・カメ亜目(潜頸類)
甲羅の特徴柔らかい皮膚で覆われる(ソフトシェル)。甲板がない。縁が柔らかい。硬い甲板(こうばん)で覆われる(ハードシェル)
首の特徴非常に長く、瞬発的に伸びる。S字状に折りたたむ(曲頸類)。種によるが、すっぽんほど長くは伸びない。まっすぐ引っ込める(潜頸類)。
鼻の特徴長く尖り、シュノーケルのようになっている。比較的丸みを帯びている。
指(爪)水かきが非常に発達。3本の指にのみ鋭い爪がある。水かきは種による。前脚5本、後脚4本など、指に爪がある。
食性肉食性(魚類、甲殻類、貝類、昆虫など)雑食性または草食性(種による)
危険性・取り扱い非常に危険。噛む力が極めて強く、首が瞬時に伸びるため素手厳禁。種によるが、すっぽんほどの危険性はない。サルモネラ菌には注意。

【3秒見分け法!ここだけ見ればOK】

  • 甲羅のフチが硬ければ → 「亀」
  • 甲羅のフチが柔らかくブヨブヨしていれば → 「すっぽん」
  • 鼻先が豚のように長く尖っていれば → 「すっぽん」
  • 顔が比較的丸ければ → 「亀」

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは甲羅の質感です。一般的な亀が硬い甲板(こうばん)で覆われた「ハードシェル」なのに対し、すっぽんはその甲板がなく、柔らかい皮膚で覆われた「ソフトシェル」です。鼻先もすっぽんはシュノーケルのように長く尖っています。

すっぽんと亀を見分ける最も簡単で確実な方法は、甲羅と顔つきを見ることです。

まず、甲羅が全く違います。私たちが「亀」と聞いてイメージするイシガメ、クサガメ、あるいはミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)の甲羅は、硬いウロコのような「甲板(こうばん)」で覆われています。これを「ハードシェル」と呼びます。
一方、すっぽんの甲羅にはこの甲板がなく、革のように柔らかい皮膚で覆われています。そのため「ソフトシェル・タートル」と呼ばれます。甲羅の縁(ふち)は特に柔らかく、ブヨブヨとした感触です。

顔つきも一目瞭然です。すっぽんの鼻先は、水中で呼吸するために、シュノーケルのように長く尖っています。この特徴的な鼻のおかげで、水底の砂の中に体全体を隠したまま、鼻先だけを水面に出して呼吸することができます。
一般的な亀の顔は、すっぽんほど鼻が尖っておらず、比較的丸みを帯びています。

そして、見逃しがちなのが「首」です。すっぽんは、その甲羅の大きさに不釣り合いなほど非常に長い首を持っています。危険を感じると、この長い首をS字状に折りたたんで甲羅の中に収納します(これはカメ目の中でもスッポン亜目などの「曲頸類(きょくけいるい)」の特徴です)。
一般的なイシガメやクサガメは、首をまっすぐ甲羅の中に引っ込めます(こちらは「潜頸類(せんけいるい)」の特徴です)。

さらにマニアックな点として、足の「爪」にも違いがあります。すっぽんの足は泳ぐために非常に大きな水かきが発達しており、爪は5本の指のうち内側の3本にしかありません。一般的な亀は、前脚5本、後脚4本など、指の多くに爪を持っています。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

すっぽんは警戒心が非常に強く、臆病ですが、危険を感じると瞬時に首を伸ばして激しく噛みつきます。水中での活動に非常に長けており、泳ぎも速いです。食性は「肉食性」が強く、魚や甲殻類を捕食します。一般的な亀(クサガメなど)は「雑食性」で、動きは比較的ゆっくりです。

見た目だけでなく、彼らの性格やライフスタイルも大きく異なります。

すっぽんは、基本的に非常に臆病で警戒心の強い動物です。普段は水底の砂や泥の中に巧みに体を隠し、長く尖った鼻先だけを出して呼吸しながら、獲物が通りかかるのをじっと待っています。
しかし、ひとたび危険を感じたり、捕獲されそうになったりすると、その臆病さが一転、猛烈な防衛行動に出ます。信じられないほどのスピードで長い首を伸ばし、強力なアゴで激しく噛みついてきます。
食性は「肉食性」が強く、魚、エビ・カニなどの甲殻類、貝類、水生昆虫など、動くものなら何でも捕食します。

一方、私たちがよく知るクサガメやイシガメ、ミドリガメなどは、比較的「雑食性」です。植物、昆虫、魚、エビなどを食べます。すっぽんほど攻撃的ではなく、動きも比較的ゆっくりとしており、危険を感じるとすぐに首や手足を甲羅に引っ込めて防御に徹することが多いです(もちろん、種や個体によっては噛みつくこともあります)。

ライフサイクルについては、どちらも変温動物である爬虫類です。水温が下がると活動が鈍くなり、ニホンスッポンやイシガメ、クサガメなどは水底の泥や落ち葉の下、土の中などで「冬眠」します。
春から夏にかけて暖かくなると陸上に上がり、土の中に穴を掘って産卵します。この「卵生」である点も共通しています。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

すっぽん(ニホンスッポン)は本州(青森県除く)から九州に自然分布するとされますが、養殖個体の放流により分布が拡大しています。流れの緩やかな河川や池、湖沼の砂泥底を好みます。一般的な亀(クサガメやイシガメ)も同様の環境を好みますが、クサガメやミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)は外来種(またはその疑い)です。

すっぽん(ニホンスッポン)は、日本の本州(青森県を除く)、四国、九州に自然分布していると伝統的に考えられてきました。しかし、食用やペット目的で養殖された個体が放流された結果、現在では北海道や沖縄、さらには小笠原諸島など、本来いなかった場所にも定着しています。
彼らが好むのは、流れが比較的緩やかな河川、池沼、湖、水田などです。特に、身を隠すことができる砂や泥の底質(砂泥底)を好みます。

一方、私たちが「亀」としてよく見かける種には、実は外来種や、古くに持ち込まれた可能性のある種が多く含まれます。
よく「ミドリガメ」と呼ばれるミシシッピアカミミガメは、北米原産の明らかな外来種です。クサガメも、古く(江戸時代以前とも)に朝鮮半島や中国から持ち込まれた外来種である可能性が高いとされています。
日本固有の在来種としては「ニホンイシガメ」が代表的ですが、こちらは環境の変化や外来種との競合により、生息数を減らしています。
彼らもすっぽんと同様に河川や池沼を好みますが、すっぽんが水底の砂泥を好むのに対し、一般的な亀は甲羅干し(日光浴)のために陸地や流木、岩などに登りやすい環境を好む傾向が強いです。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

すっぽんの最大の危険性は、その強力なアゴと瞬発力です。一度噛みつくと「雷が鳴っても離さない」という俗説があるほど執拗で、大怪我につながるため、素手で触るのは絶対に危険です。一般的な亀も噛む力はありますが、すっぽんほどではありません。

すっぽんと亀の最大の違い、それは「危険性」です。
一般的な亀も、もちろん噛みます。特に大型のクサガメやミドリガメに噛まれれば痛いですし、ワニガメやカミツキガメのような特定の外来種は指を切断するほどの危険性を持ちます。

しかし、日本に普通に生息するニホンスッポンは、それらの危険な外来種に匹敵するほどの「噛む力」と「執拗さ」を持っています
「雷が鳴っても離さない」というのは俗説ですが、それほど一度食らいついたらテコでも離さない習性を表しています。さらに恐ろしいのは、その長い首の可動域と瞬発力です。甲羅の後ろ側を持てば安全だろうと油断していると、信じられない角度まで首を瞬時に伸ばして噛みついてきます。
もし釣りなどでかかってしまっても、絶対に素手で触ってはいけません。厚手のゴム手袋や軍手をしていても、噛み貫かれる危険性があります。

衛生面では、すっぽんも一般的な亀も、どちらも「サルモネラ菌」を保菌している可能性があります。触った後は、必ず石鹸で手を洗うことが重要です。

法規制の面では、ミシシッピアカミミガメ(ミドリガメ)が、生態系への影響から2023年6月より「条件付特定外来生物」に指定されました。これにより、野外への放出、輸入、販売、購入が原則禁止となりました(一般家庭で既に飼育している個体を、許可なく飼い続けることは可能です)。環境省なども、絶対に野外に放さないよう強く呼びかけています。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

すっぽんは古くから日本で高級食材(鍋、雑炊、生き血など)として珍重され、滋養強壮のイメージが強いです。養殖の歴史も長いです。一方、一般的な亀(特にクサガメやイシガメ)は、「鶴は千年、亀は万年」の言葉通り、長寿の象徴や縁起物として、またペットとして親しまれてきました。

日本人とすっぽん、そして亀との関わり方は、文化的に見ても対照的です。

すっぽんは、日本では古くから「食」の対象でした。
特に江戸時代以降、その滋養強壮効果が注目され、高級食材として珍重されてきました。すっぽん鍋(まる鍋)、雑炊、唐揚げ、そして「生き血」を飲むなど、独特の食文化が発展しました。現在でも養殖が盛んに行われており、すっぽんは「食べる」対象としてのイメージが非常に強いです。

一方、一般的な亀は、「長寿と縁起物の象徴」です。
「鶴は千年、亀は万年」という言葉や、浦島太郎の物語に登場するように、亀は神聖な生き物、あるいは縁起の良い動物として扱われてきました。イシガメやクサガメは、古くからペットとしても親しまれてきました。
1970年代以降、ミシシッピアカミミガメが「ミドリガメ」として大量に輸入され、縁日などで売られるようになり、最も身近なペットの亀となりました。しかし、その結果、飼いきれなくなった個体が放流され、深刻な外来種問題を引き起こしているのは、現代の負の側面です。

「すっぽん」と「亀」の共通点

【要点】

どちらも「カメ目(もく)」に属する爬虫類である点が最大の共通点です。そのため、体温が外気温に左右される変温動物であり、肺呼吸を行い、陸上で産卵(卵生)します。

これほど多くの違いがあるすっぽんと亀ですが、もちろん共通点もあります。

最大の共通点は、どちらも「カメ目(もく)」に属する爬虫類であることです。つまり、生物学的な分類上、すっぽんは亀の仲間(スッポン亜目)なのです。

そのため、以下の特徴を共有しています。

  1. 甲羅を持つ:質感(硬いか柔らかいか)は全く違いますが、背中と腹部を甲羅で覆われている点は共通です。
  2. 変温動物である:外気温によって体温が変化する変温動物です。そのため、日光浴(甲羅干し)をして体温を調節する必要があります。
  3. 肺呼吸である:魚類とは異なり、水中で生活していてもエラ呼吸はできません。必ず水面に顔を出して「肺呼吸」をする必要があります。
  4. 卵生である:繁殖は、陸上に上がって土の中に卵を産む「卵生」です。

体験談:その首の伸びにびっくり!

僕が子供の頃、近所の川でフナ釣りをしていた時の話です。ウキが沈み、合わせを入れると、これまで感じたことのないような重い手応え。「大物だ!」と興奮してリールを巻くと、水面に現れたのは魚ではなく、丸くて平たい、直径30cmほどの甲羅でした。

「すっぽんだ!」。

一緒にいた父が慌てて軍手をはめ、「危ないから離れてろ!」と言いながら、釣り針を外そうと甲羅の後ろ側を掴みました。一般的な亀なら安全な持ち方です。
しかし、その瞬間でした。すっぽんは信じられないほどのスピードで首をグニャリと180度近く回転させ、父が掴んでいた軍手に「バチン!」と音を立てて噛みついたのです。
父は驚いて手を離し、すっぽんはそのまま水中に帰っていきました。

もし軍手がなかったら…と思うと今でもゾッとします。一般的な亀のイメージで「甲羅の後ろなら大丈夫」という常識が、すっぽんには一切通用しないこと、そして「雷が鳴っても離さない」という俗説は、あの瞬発力と執拗さを表しているんだと、子供心に強烈に刻まれた体験です。

「すっぽん」と「亀」に関するよくある質問

Q: すっぽんは亀の仲間じゃないんですか?

A: はい、生物学的にはカメ目スッポン科に属する「亀の仲間」です。ただし、甲羅が硬い一般的な亀(カメ亜目)とは異なり、首をS字に折りたたんで甲羅に収納する「曲頸類(きょくけいるい)」であり、甲羅が柔らかい「スッポン亜目」に分類されます。

Q: すっぽんはペットとして飼えますか?

A: 飼育自体は可能ですが、非常に難しいです。成長すると大型になり、強力な水質浄化フィルターが必要です。また、噛む力が非常に強く危険なため、取り扱いには細心の注意が必要です。初心者が安易に飼い始めるのはおすすめできません。

Q: 「雷が鳴るまで離さない」は本当ですか?

A: あくまで俗説(言い伝え)です。それほど「一度噛みついたら執拗に離さない」という習性を大げさに表現したものです。実際に噛まれた場合は、無理に引き離そうとせず、水の中に戻す(すっぽんが安心する)と離すことが多いと言われています。

Q: すっぽんは冬眠しますか?

A: はい、野生のニホンスッポンは冬になると水底の砂泥に潜って冬眠します。

「すっぽん」と「亀」の違いのまとめ

すっぽんと亀、どちらも日本の水辺に欠かせない爬虫類ですが、その生態や危険性には大きな違いがあることがお分かりいただけたかと思います。

  1. 甲羅が違う:すっぽんは柔らかい「ソフトシェル」、亀は硬い「ハードシェル」。
  2. 首と鼻が違う:すっぽんはシュノーケルのような長い鼻と、瞬時に伸びる非常に長い首を持つ。亀は比較的丸い顔で首もそこまで伸びない。
  3. 危険性が違う:すっぽんは噛む力が非常に強く、執拗で、素手で触るのは極めて危険。一般的な亀は比較的温和(サルモネラ菌には共通で注意)。
  4. 食性が違う:すっぽんは魚などを好む「肉食性」。一般的な亀は「雑食性」が多い。
  5. 人との関わりが違う:すっぽんは主に「高級食材」。亀は「長寿の象徴」や「ペット」。

もし水辺ですっぽんらしき生き物を見かけても、その愛嬌のある(ように見える)顔に騙されず、絶対に手を出さないようにしてくださいね。
こうした身近な生き物の違いを知ると、自然観察がさらに面白くなります。ぜひ他の生物その他の記事もご覧ください。