フタホシテントウとナミテントウの違いは模様!益虫の代表格を比較

「フタホシテントウ」と「ナミテントウ」、どちらもアブラムシを食べてくれる益虫(えきちゅう)の代表格ですね。

「フタホシ」はその名の通り星が二つ、「ナミ」は星がたくさん…と思いきや、実はナミテントウにも星が二つのタイプがいて、両者は非常に紛らわしい

最も簡単な答えは、フタホシテントウは模様(斑紋)がほぼ固定されているのに対し、ナミテントウは「並」という名がつく通り、最も普通に見られるテントウムシでありながら、その模様が非常に多様(多型)であるという点です。

この記事を読めば、そっくりな二つのテントウムシの正確な見分け方から、生態の違い、益虫としての役割までスッキリと理解できます。

【3秒で押さえる要点】

  • 模様(斑紋):フタホシテントウは模様が固定(黒地に赤い二紋、または赤地に黒い二紋)。ナミテントウは模様が非常に多様(二紋、四紋、多紋、紅型、黒型など様々)。
  • 紛らわしい点:ナミテントウの「二紋型(赤地に黒二つ)」は、フタホシテントウ(赤地に黒二つ型)とそっくりです。
  • 生態:どちらもアブラムシを食べる益虫ですが、ナミテントウの方がより広範な環境(都市部など)でよく見られます。
「フタホシテントウ」と「ナミテントウ」の主な違い
項目フタホシテントウナミテントウ
分類コウチュウ目(甲虫) テントウムシ科コウチュウ目(甲虫) テントウムシ科
サイズ(体長)約4〜6mm約4.5〜8mm(フタホシよりやや大きい)
斑紋(模様)ほぼ固定(2種類)
・黒地に赤い二紋
・赤地に黒い二紋
非常に多様(多型)
・二紋型、四紋型、多紋型、紅型、黒型など
光沢やや鈍い光沢強い光沢がある
生態(食性)アブラムシ食(益虫)アブラムシ食(益虫)
活動時期春〜秋(成虫で越冬)春〜秋(成虫で越冬)
生息場所草地、畑、公園など(アブラムシのいる場所)草地、畑、公園、街路樹など(より広範)
危険性・害無害(益虫)無害(益虫)。ただし一部地域(海外)では外来種問題あり。

形態・見た目とサイズの違い

【要点】

最大の違いは斑紋(はんもん)の多様性です。フタホシテントウは「黒地に赤二つ」か「赤地に黒二つ」のほぼ2パターンです。ナミテントウは名前(並)に反して模様が非常に多彩で、星が2つ、4つ、19個(多紋)、星なし(紅型)、黒地に赤紋(黒型)など様々なタイプが存在します。

フタホシテントウ(二星天道)は、その名の通り「二つの星(斑紋)」を持つテントウムシです。体長は4〜6mmほど。その模様はシンプルで、以下の2パターンが基本です。

  1. 黒地に赤い二紋:光沢のある黒い上翅(はね)に、赤い斑紋が1対(合計2つ)あるタイプ。
  2. 赤地に黒い二紋:赤い上翅に、黒い斑紋が1対あるタイプ。(こちらはやや稀)

一方、ナミテントウ(並天道)は、「並=普通」という名前がつくほど日本で最もよく見られるテントウムシですが、その見た目は全く「普通」ではありません。体長は4.5〜8mmとフタホシテントウよりやや大きい傾向があり、何より模様のバリエーション(多型)が非常に豊富なのが特徴です。

  • 二紋型:赤や黄色の地に、黒い斑紋が2つ。
  • 四紋型:赤や黄色の地に、黒い斑紋が4つ。
  • 多紋型:赤や黄色の地に、黒い斑紋が多数(最大19個)ある、いわゆる「ナナホシテントウ」に似たタイプ。
  • 紅型(べにがた):赤や黄色の地で、斑紋がまったくないタイプ。
  • 黒型(こくがた):黒い地に、赤い斑紋が2つまたは4つあるタイプ。

ここで最大の混乱ポイントが発生します。ナミテントウの「二紋型」や「黒型(赤二紋)」は、フタホシテントウの見た目とそっくりなのです。厳密には、フタホシテントウはナミテントウより光沢がやや鈍い、斑紋の形が少し違う、といった差がありますが、肉眼での瞬時の判別は困難な場合があります。

行動・生態・ライフサイクルの違い

【要点】

生態的な違いはほとんどありません。どちらも成虫・幼虫ともにアブラムシを主食とする代表的な益虫です。春から秋にかけて活動し、成虫の姿で集団越冬します。

見た目(特に模様)は大きく異なることがある両者ですが、その生態やライフサイクルは非常によく似ています。

フタホシテントウもナミテントウも、成虫・幼虫ともにアブラムシ(アリマキ)を大好物とする、典型的な肉食性のテントウムシです。アブラムシが大量発生する植物(野菜、草花、街路樹など)に集まり、猛烈な勢いで捕食してくれます。そのため、農業やガーデニングにおいて非常に重要な「益虫」として活躍します。

ライフサイクルも共通しています。春に越冬から目覚めた成虫が交尾・産卵し、孵化した幼虫(これもアブラムシを食べます)は、脱皮を繰り返して蛹(さなぎ)になり、やがて成虫が羽化します。年に数回世代を繰り返し、秋が深まると成虫が集団で落ち葉の下や建物の隙間などに集まり、そのまま冬を越します。

生息域・分布・環境適応の違い

【要点】

どちらもアブラムシが発生する場所ならどこにでも生息しますが、ナミテントウの方がより広範な環境(特に都市部の街路樹や公園)への適応力が高いとされています。フタホシテントウは畑や草地でより多く見られる傾向があります。

どちらの種も、アブラムシさえいれば、日本全国(フタホシテントウは北海道〜九州、ナミテントウは北海道〜沖縄)の様々な環境で見られます。草地、畑、公園、庭先など、生息域は大きく重なります。

ただし、両者の出現頻度には少し差があるようです。ナミテントウは、その名の通り「並」であり、都市部の公園や街路樹、ベランダのプランターなど、より人間の生活圏に近い場所でもごく普通に見られます。環境適応力が非常に高い種と言えます。

フタホシテントウも決して珍しい種ではありませんが、ナミテントウに比べると、より自然度が高い草地や畑などで見かけることが多い傾向があります。

ちなみに、ナミテントウはその強力な捕食能力から、生物農薬として世界中に導入された歴史があります。しかし、その適応力の高さゆえに、導入されたヨーロッパや北米では在来のテントウムシを圧迫する「外来種」として問題になっている側面もあります。環境省の資料などでも、こうした生物多様性の問題は指摘されています。

危険性・衛生・法規制の違い

【要点】

どちらも人間に対する危険性(毒性、刺咬性)は一切ありません。ただし、テントウムシ類は敵に襲われると、脚の関節から黄色い液体(アルカロイド系の苦い体液)を出し、独特の臭いで警告します。

スズメバチやカ(蚊)とは違い、フタホシテントウもナミテントウも、人間にとっての危険性や衛生上の害は全くありません。毒針は持っておらず、人を刺すことはありません。アゴも小さく、人を噛むこともありません。

ただし、彼らにもささやかな防衛手段があります。テントウムシを素手で捕まえようとすると、脚の関節から独特の臭いがする黄色い汁を出すことがあります。これはアルカロイド系の苦い(まずい)体液で、「自分はまずいぞ!」と捕食者(主に鳥など)に警告するためのものです。この液体が手についても害はありませんが、臭いがつきやすいので、観察する際は優しく扱うか、直接触れない方がよいでしょう。

法規制の面では、どちらも日本在来種であり、採集や飼育に関する規制は特にありません。

文化・歴史・人との関わりの違い

【要点】

テントウムシは世界的に「幸運のシンボル」とされています。日本では太陽(お天道様)に向かって飛ぶことから「天道虫」と呼ばれました。フタホシ、ナミともにアブラムシを食べる益虫として、昔から農家や園芸家に親しまれています。

テントウムシは、その可愛らしい姿と、アブラムシを食べてくれる益虫としての性質から、世界中で「幸運のシンボル」として親しまれています。英語では「Ladybug」や「Ladybird」と呼ばれますが、この「Lady」は聖母マリア(Our Lady)を指すとも言われています。

日本でも、太陽(お天道様)に向かって飛んでいく習性がある(ように見える)ことから、「天道虫(テントウムシ)」という縁起の良い名前が付けられました。

その中でも、フタホシテントウやナミテントウは、ナナホシテントウと並び、アブラムシ防除の主役として昔から農家やガーデナーに大切にされてきました。特にナミテントウは、その模様の多様性から、国立科学博物館などでも遺伝や生態の研究対象として注目されてきました。

「フタホシテントウ」と「ナミテントウ」の共通点

【要点】

両種は同じ「テントウムシ科」の近縁な仲間です。最大の共通点は、成虫・幼虫ともにアブラムシを主食とする益虫であることです。また、成虫で集団越冬するライフサイクルも共通しています。

模様こそ違いますが、両者は生物学的に非常に近い仲間であり、多くの共通点を持っています。

  1. 分類:どちらもコウチュウ目テントウムシ科に属します。
  2. 食性:成虫も幼虫もアブラムシを食べる、代表的な益虫です。
  3. ライフサイクル:卵→幼虫→蛹→成虫という完全変態をします。
  4. 越冬:どちらも成虫の姿で、落ち葉の下や建物の隙間などで集団になって冬を越します。
  5. 防衛手段:どちらも危険を感じると、脚から黄色い苦い体液を出して警告します。

体験談:模様が全然違うのに、どっちもナミテントウ!?

僕がガーデニングに夢中だった頃、春先にバラの新芽にアブラムシがびっしりついてしまい、頭を抱えていました。「テントウムシ、来てくれ!」と願っていたある日、葉の上に赤いテントウムシを見つけました。

「おお、ナナホシテントウか?」と思ってよく見ると、星(斑紋)が2つしかありません。「これはフタホシテントウだな」と思いました。

その翌日、同じバラの別の枝に、今度は真っ黒な体に赤い点が2つだけあるテントウムシがいました。「なんだこれ?フタホシの黒い版か?」と不思議に思いました。さらにその数日後、今度は星が10個以上ある、まさに「ナナホシテントウ」のような個体まで現れました。

あまりの種類の多さに混乱して図鑑で調べた結果、僕は衝撃を受けました。僕が「フタホシテントウ」だと思った赤地に黒二つの個体も、真っ黒な個体も、星がたくさんある個体も、全部「ナミテントウ」だったのです!

「並(ナミ)」という名前から、全部同じ姿をしていると勝手に思い込んでいましたが、実はナミテントウこそが最も模様のバリエーション(多型)に富んだテントウムシだと知りました。フタホシテントウは、むしろ模様が固定的な方が特徴だったのです。名前と実態がこれほど違うのかと、昆虫の世界の奥深さを感じた体験でした。

「フタホシテントウ」と「ナミテントウ」に関するよくある質問

Q: フタホシテントウと、ナミテントウの「二紋型」は、どうやって見分けますか?

A: 非常に難しいですが、いくつかの傾向があります。フタホシテントウ(赤地に黒二紋型)は、ナミテントウ(二紋型)に比べて光沢がやや鈍いこと、上翅の付け根(前縁)が黒く縁取られないことが多いこと、などで区別されますが、個体差も大きく専門家でないと困難です。生息環境(フタホシは草地性がやや強い)もヒントになります。

Q: ナナホシテントウとナミテントウ(多紋型)の違いは?

A: ナナホシテントウは名前の通り、赤い上翅に黒い斑紋が7つ(左右3つずつ+中央に1つ)で、この模様は固定です。一方、ナミテントウの多紋型は、斑紋の数が7個とは限らず、最大19個まで様々で、斑紋の形や大きさも変異に富みます。

Q: テントウムシの幼虫はどんな姿ですか?

A: テントウムシの幼虫は、成虫とは全く異なる姿をしています。黒や灰色の体にトゲトゲや突起があり、小さなイモムシのような、あるいはワニのような姿です。この幼虫も成虫同様、アブラムシを旺盛に捕食します。

Q: テントウムシは飛ばないのですか?

A: いえ、飛びます。硬い上翅(はね)の下に、薄くて大きな後翅(うしろばね)を折りたたんで隠し持っています。飛ぶときには上翅を開き、後翅を広げて飛び立ちます。

「フタホシテントウ」と「ナミテントウ」の違いのまとめ

フタホシテントウとナミテントウ、どちらも大切な益虫ですが、その「模様」に最大の違いがありました。

  1. フタホシテントウ:模様はほぼ固定(黒地に赤二紋、または赤地に黒二紋)。
  2. ナミテントウ:模様は非常に多様(二紋型、多紋型、紅型、黒型など)。
  3. そっくりさん注意:ナミテントウの「二紋型」や「黒型」は、フタホシテントウに酷似しており、判別が難しい。
  4. 共通点:どちらもアブラムシを食べる益虫であり、生態やライフサイクルは非常に似ている。
  5. 危険性:どちらも人間には無害(ただし警告の黄色い汁を出す)。

庭や公園でテントウムシを見かけたら、その模様のバリエーションに注目してみてください。「これもナミテントウ?」「こっちも?」と、その多様性に驚かされるかもしれません。他の「生物その他」の仲間たちの違いについても、ぜひ他の記事をご覧ください。

参考文献(公的一次情報)

  • 国立科学博物館「かはく」 – 昆虫の分類や標本、ナミテントウの斑紋多型に関する情報
  • 環境省「自然環境・生物多様性」 – 在来種・外来種のテントウムシに関する生態情報