桜餅の「道明寺」と「長命寺」決定的な違いは?食感・歴史・地域で徹底比較

春の和菓子といえば「桜餅」ですよね。

でも、お店によって形や食感が全然違うと感じたことはありませんか?実は、桜餅には大きく分けて「道明寺(どうみょうじ)」と「長命寺(ちょうめいじ)」という二つのスタイルがあり、これこそが「関西風」と「関東風」の大きな違いなんです。

この記事を読めば、その二つの桜餅の決定的な違いがスッキリ分かります。原材料から歴史、そして葉っぱを食べるか問題まで、もう迷うことはありません。

それでは、まず最も重要な違いから見ていきましょう。

結論|桜餅・道明寺・長命寺の違いが一目でわかる比較表

【要点】

桜餅の「道明寺」と「長命寺」の最も大きな違いは、皮の原材料と製法です。「道明寺」は道明寺粉(もち米)を蒸して作るためつぶつぶ・もちもちした食感(関西風)、「長命寺」は小麦粉を焼いて作るためクレープ状でなめらかな食感(関東風)となります。

一般的に「桜餅」と呼ばれるものには、この二大流派が存在します。それぞれの特徴を一覧表にまとめました。

項目道明寺(どうみょうじ)長命寺(ちょうめいじ)
一般的な呼称関西風桜餅関東風桜餅
主な原材料(皮)道明寺粉(もち米)小麦粉(薄力粉など)
製法(皮)蒸す焼く(薄いクレープ状)
食感(皮)つぶつぶ、もちもちしっとり、なめらか
形状俵型や丸型が多いクレープ状(二つ折りや巻いた形)
発祥地大阪(道明寺)江戸(東京・向島 長命寺)

このように、同じ「桜餅」という名前で呼ばれていても、材料も見た目も食感も全く異なる和菓子なんですね。では、なぜこの二種類が生まれたのでしょうか。

桜餅の「二大巨頭」道明寺と長命寺の定義

【要点】

「道明寺」も「長命寺」も、どちらも「桜餅」の一種です。「道明寺」はもち米の粒感を残した皮であんこを包んだもので、主に関西地方で親しまれています。「長命寺」は小麦粉の薄い焼き皮であんこを巻いたもので、主に東京をはじめとする関東地方で主流です。

まず押さえておきたいのは、「桜餅」という大きなカテゴリの中に、「道明寺」と「長命寺」という2つの種類があるという関係性です。「桜餅」という言葉自体は、塩漬けの桜の葉で餅菓子(あんこ)を包んだ和菓子の総称として使われます。

道明寺(どうみょうじ)とは?【関西風】

「道明寺」とは、道明寺粉(蒸したもち米を乾燥させて粗く砕いたもの)を使い、そのつぶつぶとした食感を残した皮で、あんこを完全に包み込んだタイプの桜餅です。

見た目は俵型や丸いおはぎのような形状が多く、皮自体がピンク色に着色されています。関西地方で「桜餅」といえば、一般的にこの道明寺を指します。

長命寺(ちょうめいじ)とは?【関東風】

「長命寺」とは、小麦粉などを水で溶いた生地を薄く焼き、クレープのようにしてあんこを巻いた(あるいは二つ折りにした)タイプの桜餅です。

皮はしっとりとしてなめらかな食感が特徴で、あんこが皮から少し見えることもあります。発祥とされる江戸(東京)をはじめ、関東地方で「桜餅」といえば、この長命寺を指すことが多いですね。

原材料と製法の決定的な違い

【要点】

二つの桜餅の食感を決定づけているのが、原材料と製法の違いです。道明寺は「もち米」を「蒸す」のに対し、長命寺は「小麦粉」を「焼く」という、全く異なるアプローチで作られています。

なぜあれほど食感が違うのか、その秘密は皮の作り方にあります。

道明寺:「道明寺粉」を蒸して作る

道明寺の皮は、その名の通り「道明寺粉(どうみょうじこ)」が主原料です。

道明寺粉とは、一度蒸したもち米を乾燥させ、粗く挽いた(砕いた)保存食のこと。これを再び蒸したり、湯で戻したりすることで、もち米の「つぶつぶ感」と「もちもち感」が同時に楽しめる独特の食感が生まれます。

まさにお餅やおはぎに近い、米由来の和菓子なんですね。

長命寺:「小麦粉」を焼いて作る

一方、長命寺の皮は「小麦粉(薄力粉や白玉粉を混ぜることも)」が主原料です。

生地を水で溶き、熱した鉄板などの上で薄く焼いて作ります。製法としてはクレープやどら焼きの皮に近く、もち米は使用しません。

これにより、しっとりとなめらかで、あんこの風味を引き立てる繊細な皮が出来上がります。

味・食感・見た目・香りの違い

【要点】

道明寺はもち米由来の「つぶつぶ・もちもち」食感が最大の特徴です。一方、長命寺は小麦粉の皮による「しっとり・なめらか」な舌触りが特徴。見た目も、あんこを包む「俵型(道明寺)」と、あんこを巻く「クレープ状(長命寺)」という明確な違いがあります。

原材料と製法が違えば、当然、私たちが感じる味や食感も大きく異なります。

食感の違い:道明寺の「つぶつぶ・もちもち」

道明寺の魅力は、なんといってもその食感です。道明寺粉の粒が適度に残っているため、舌の上でつぶつぶ感を感じると同時に、もち米ならではのもちもちとした弾力と食べ応えがあります。

あんこと皮が一体となって、お米の風味もしっかりと感じられるのが特徴ですね。

食感の違い:長命寺の「なめらか・しっとり」

長命寺の魅力は、その上品な口当たりです。薄く焼かれた皮は非常にきめ細かく、なめらか。あんこと一緒に食べると、皮の存在感が強すぎず、しっとりとした舌触りであんこの風味を引き立てます。

どちらかというと、皮とあんこの分離感を楽しむタイプと言えるかもしれません。

見た目・形状の違い(俵型 vs クレープ状)

見た目の違いも一目瞭然です。

道明寺は、粘り気のある生地であんこを完全に「包む」ため、俵型や丸型に成形されるのが一般的です。あんこは見えません。

長命寺は、薄い皮であんこを「巻く」か「挟む」ため、二つ折りのクレープのような形状になります。皮からあんこが覗いていることも多いですね。

そして、どちらも塩漬けの桜の葉が巻かれていますが、この葉の香りこそが「桜餅」のアイデンティティとなっています。

歴史・発祥地・地域文化の違い

【要点】

桜餅の歴史は、江戸(東京)の「長命寺」から始まりました。その後、大阪の「道明寺」が道明寺粉を使って独自のスタイルを生み出し、それぞれ関東と関西を中心に広まったとされています。

この二つの桜餅、実は発祥の地も時期も異なります。面白いことに、歴史が古いのは意外にも…?

長命寺(関東風)の起源

桜餅の歴史は、関東風の「長命寺」から始まったとされています。

江戸時代、享保2年(1717年)に、江戸・向島の長命寺(ちょうめいじ)というお寺の門番であった山本新六が、隅田川の土手の桜の葉を活用できないかと考え、塩漬けにした桜の葉で餅を巻いて売り出したのが始まりと言われています。

これが「長命寺桜もち」として評判を呼び、江戸の名物となりました。今でも「長命寺 桜もち 山本や」は同じ場所で営業を続けており、関東風桜餅の元祖として知られています。

道明寺(関西風)の起源

一方、関西風の「道明寺」の正確な起源は諸説ありますが、長命寺桜もちが江戸で人気を博した後、上方(関西)に伝わった際に、大阪の道明寺(どうみょうじ)というお寺で作られていた「道明寺粉」を使って作られたのが始まりではないか、と言われています。

道明寺粉自体は、平安時代から保存食として存在していた歴史ある食材です。これがあんこと組み合わさり、関西独自の桜餅として定着していったんですね。

体験談|関東と関西、僕が桜餅に戸惑った日

僕自身、実は関東出身なんです。だから、子どもの頃から「桜餅」といえば、あの薄いピンク色のクレープ生地でこしあんを巻いた「長命寺」のことでした。

大学進学で京都に移り住み、初めての春を迎えた時のことです。和菓子屋さんで「桜餅ください」と注文して出てきたものを見て、衝撃を受けました。

「えっ、これ…おはぎ…?」

そこにあったのは、僕の知っている桜餅とは似ても似つかない、つぶつぶとした俵型の、まさしく「道明寺」でした。塩漬けの葉が巻かれていなければ、桜餅だと認識できなかったかもしれません。

一口食べてみると、またびっくり。皮が「もちっ」としていて、お米の粒がしっかり感じられるんです。「これはこれで、すごく美味しい…!」と。

あの時、「桜餅」という一つの言葉に、こんなにも豊かな地域差と文化が詰まっているのかと感動したのを覚えています。今ではすっかり、春になると「今年はどっちを食べようか」と、両方の違いを楽しんでいます。

桜餅と道明寺・長命寺に関するFAQ(よくある質問)

Q1. 桜餅の葉っぱは食べるべきですか?

これは永遠のテーマかもしれませんが、食べても食べなくても、どちらでも間違いではありません。一般的に、葉の香りを餅に移すのが目的なので、外して食べる方も多いです。ただ、葉の塩気があんこの甘さを引き立てるとして、一緒に食べる方も多くいらっしゃいます。特に長命寺は葉が柔らかいことが多く、道明寺は葉脈がしっかりしていることがあるなど、種類によっても食べやすさが変わりますね。お店によっては「葉は外してお召し上がりください」と推奨している場合もありますよ。

Q2. 関西(大阪)でも長命寺は買えますか?また、関東(東京)でも道明寺は買えますか?

はい、現在ではどちらの地域でも両方のタイプが購入可能です。物流や情報の交流が盛んになり、和菓子屋さんも両方の種類を置くことが増えました。ただし、やはり地域性は残っており、関西では道明寺が、関東では長命寺が主流であるお店が多い傾向は続いています。「関西風」「関東風」と併記して販売しているお店もよく見かけますね。

Q3: 桜餅はいつ食べるものですか?

桜餅は「春の和菓子」の代表格です。桜の季節、つまり2月頃から4月頃までに販売されるのが一般的です。特に、3月3日の「ひな祭り(桃の節句)」のお菓子として、ひし餅やひなあられと共に食べられる文化が定着していますよ。

まとめ|道明寺と長命寺、どちらを選ぶべきか?

「道明寺」と「長命寺」、二つの桜餅の違いを解説してきました。

どちらも「桜餅」でありながら、そのルーツも製法も、食感も全く異なる、非常に個性豊かな和菓子であることがお分かりいただけたかと思います。

どちらを選ぶべきか、答えは簡単です。

  • お米のつぶつぶ・もちもち食感と食べ応えを楽しみたい時は「道明寺(関西風)」
  • クレープのようなしっとり・なめらか食感と上品な口当たりを楽しみたい時は「長命寺(関東風)」

を選ぶと良いでしょう。

地域によって主流は異なりますが、今では多くの場所で両方のタイプが手に入ります。ぜひこの春は、二つの桜餅を食べ比べて、ご自身の好みの「桜餅」を見つけてみてくださいね。

当サイト「違いラボ」では、他にも様々な「スイーツ・お菓子」の違いについても詳しく解説しています。よろしければ、そちらもご覧ください。