サクサクとした食感と、甘じょっぱい醤油タレが後を引く「みりん揚げ」と「歌舞伎揚げ」。
どちらも昔から愛される日本の代表的なお菓子ですが、この二つの違いを正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
「同じお菓子を違う名前で呼んでいるだけ?」と思っていませんか?
結論から言うと、「みりん揚げ」は甘辛く味付けした揚げ煎餅の「総称(カテゴリ名)」であり、「歌舞伎揚げ」は株式会社天乃屋が製造・販売する特定の「商品名(登録商標)」なんです。
この記事を読めば、二つの明確な違い、歌舞伎揚げの特徴である「家紋」の秘密、そして関西で有名な「ぼんち揚」との関係まで、スッキリと理解できます。
それでは、詳しく見ていきましょう。
結論|みりん揚げと歌舞伎揚げの違いが一目でわかる比較表
最大の違いは「言葉の範囲」と「ブランド」です。「みりん揚げ」は、油で揚げてみりん醤油で味付けした煎餅全般を指す一般名称です。一方、「歌舞伎揚げ」は、株式会社天乃屋が製造する特定の商品名(登録商標)であり、「みりん揚げ」カテゴリの代表的なブランドの一つです。
まずは、二つの違いを比較表で簡潔に整理します。
| 項目 | みりん揚げ | 歌舞伎揚げ | 
|---|---|---|
| 分類 | 一般名称(揚げ煎餅のカテゴリ) | 固有名詞(商品名・登録商標) | 
| 主な製造元 | 各お菓子メーカー、PB商品など多数 | 株式会社天乃屋 | 
| 見た目の特徴 | 特に決まった模様はない(多様) | 歌舞伎の家紋(隈取)の刻印 | 
| 基本的な味 | みりん醤油ベースの甘辛い味 | みりん醤油ベースの甘辛い味 | 
| 食感 | サクサク、カリカリ | サクサク、カリカリ | 
| 主なライバル | 歌舞伎揚げ、ぼんち揚など | ぼんち揚(関西圏)など | 
つまり、「歌舞伎揚げ」は「みりん揚げ」の一種、ということですね。
「お茶」と「緑茶」の関係に似ており、「みりん揚げ」という大きなくくりの中に、「歌舞伎揚げ」という有名なブランドがあるイメージです。
「みりん揚げ」と「歌舞伎揚げ」の違いとは?一般名称と商品名
「みりん揚げ」は、米菓生地を油で揚げ、みりんや醤油、砂糖などで甘辛く味付けしたお菓子の総称です。一方、「歌舞伎揚げ」は、株式会社天乃屋が製造する商品の名前であり、同社の登録商標です。
この二つの言葉の決定的な違いは、その言葉が指し示す範囲にあります。
「みりん揚げ」は甘じょっぱい揚げ煎餅の「総称」
「みりん揚げ」とは、特定のメーカーの商品を指す言葉ではありません。
うるち米やもち米を原料にした生地を油で揚げ、みりん、醤油、砂糖などを合わせた甘辛いタレ(蜜)で味付けした揚げ煎餅の「一般名称」です。
スーパーのプライベートブランド(PB)商品や、様々なお菓子メーカーが「みりん揚げ」や「揚げみりん」といった名前で同様のお菓子を製造・販売しています。
「歌舞伎揚げ」は天乃屋(あまのや)の「商品名(登録商標)」
一方、「歌舞伎揚げ」は、東京都武蔵村山市に本社を置く「株式会社天乃屋」が製造・販売する、特定の商品名です。
この名前は天乃屋の登録商標であり、他のメーカーが「歌舞伎揚げ」という名前を使用することはできません。
甘じょっぱい独特の風味とサクサクした食感で、1960年(昭和35年)の発売以来、関東地方を中心に絶大な人気を誇るロングセラー商品となっています。
【核心】見た目と製造元の違い
「歌舞伎揚げ」は天乃屋だけが製造でき、表面に歌舞伎の家紋や隈取を模した「刻印」があるのが最大の特徴です。一方、「みりん揚げ」は多くのメーカーが製造しており、特定の模様はありません。
「歌舞伎揚げ」が「みりん揚げ」の一種であることは分かりましたが、では天乃屋の「歌舞伎揚げ」には、他の一般的な「みりん揚げ」と比べてどのような特徴があるのでしょうか。
歌舞伎揚げ:株式会社天乃屋と「家紋」の刻印
「歌舞伎揚げ」を手に取ってよく見ると、その表面に特徴的な模様が刻印されているのがわかります。
これは、歌舞伎の「家紋」や「隈取(くまどり)」をデザイン化したものだと言われています。名前の由来も、日本の伝統芸能である「歌舞伎」から来ており、この刻印は「歌舞伎揚げ」のアイデンティティとも言える最大の特徴です。
製造元は前述の通り、株式会社天乃屋(あまのや)です。
みりん揚げ:様々なメーカーと形状(ぼんち揚など)
一方、一般名称である「みりん揚げ」は、天乃屋以外の多くのお菓子メーカーによって製造されています。
そのため、見た目や形状は様々です。「歌舞伎揚げ」のような家紋の刻印はなく、シンプルな円形や、ひねった形(「ひねり揚げ」など)のものもあります。
この「みりん揚げ」カテゴリの中で、「歌舞伎揚げ」と人気を二分する有名なライバル商品が、次にご紹介する「ぼんち揚」です。
製法・原材料・味付けの違い
製法や味付けに大きな違いはありません。どちらも基本的には、うるち米やもち米の生地を油で揚げ、みりん・醤油・砂糖をベースにした甘辛いタレで味付けされます。サクサクとした軽い食感が共通の特徴です。
基本的な製法と味付けは共通
「歌舞伎揚げ」も「みりん揚げ」も、基本的な製造プロセスや味付けの方向性は同じです。
生地を高温の油で揚げることで、サクサクとした独特の食感を生み出します。
その後、熱いうちにみりん、醤油、砂糖、各種調味料(だしやスパイスなど)をブレンドした特製の甘辛いタレにくぐらせたり、スプレーしたりして味付けします。
この「甘じょっぱさ」と「サクサク感」の組み合わせが、両者に共通する最大の魅力ですね。
原材料は「うるち米」や「もち米」
主原料もほぼ共通しており、「うるち米(普段私たちが食べているお米)」や「もち米」が使われます。
メーカーや商品によって、うるち米100%であったり、もち米をブレンドして食感に変化をつけたりと、配合は異なりますが、米菓であることには変わりありません。
関西の「ぼんち揚」との関係は?
「ぼんち揚」も、みりん揚げの一種であり、「歌舞伎揚げ」と非常によく似たライバル商品です。主な違いは販売エリアで、「歌舞伎揚げ」は関東、「ぼんち揚」は関西で特に高い知名度を誇ります。
「みりん揚げ」について語る上で欠かせないのが、「ぼんち揚」の存在です。
「ぼんち揚」は、ぼんち株式会社(大阪市)が製造する揚げ煎餅の商品名です。
これも「みりん揚げ」カテゴリの代表的なブランドであり、「歌舞伎揚げ」の最大のライバルと言えます。
関東で「揚げ煎餅」と言えば「歌舞伎揚げ」を思い浮かべる人が多い一方、関西では「ぼんち揚」が圧倒的な知名度を誇ります。
「ぼんち揚」は「歌舞伎揚げ」のような家紋の刻印はなく、表面が少しゴツゴツしているのが特徴です。味付けも、ぼんち揚の方が少しだし(昆布だしなど)の風味が強く、あっさりしていると感じる人もいるようです。
「歌舞伎揚げ」と「ぼんち揚」は、みりん揚げ界の二大巨頭と言えるでしょう。
体験談|「歌舞伎揚げ」の刻印と「みりん揚げ」のシンプルさ
僕は関東出身なので、物心ついた時から「揚げ煎餅=歌舞伎揚げ」でした。
あの赤いパッケージと、お煎餅に押された家紋のような模様は、「これぞ歌舞伎揚げ」という絶対的な記号として記憶に刷り込まれています。
大人になってスーパーのお菓子コーナーを意識して見るようになると、PB(プライベートブランド)や他のメーカーから「みりん揚げ」という名前で、よく似たお菓子が売られていることに気づきました。
試しに食べ比べてみると、衝撃を受けました。
基本的な「甘じょっぱくてサクサク」という方向性は全く同じなんです。
もちろん、メーカーによってタレの濃さ(醤油が強いか、みりんの甘さが強いか)や、揚げ具合(カリカリ感が強いか、サクサク感が強いか)に微妙な違いはあります。
でも、一番の違いは、やはり天乃屋の「歌舞伎揚げ」にしかない、あの「刻印」でした。
あの模様があるだけで、「ああ、歌舞伎揚げを食べているな」という安心感と満足感があるんです。
この経験から、「歌舞伎揚げ」は「みりん揚げ」というジャンルの中で、圧倒的なブランド力を持つ商品なのだと実感しました。他の「みりん揚げ」も美味しいですが、「歌舞伎揚げ」には歴史とデザインが培った特別な価値があるんだなと思います。
「みりん揚げ」「歌舞伎揚げ」に関するよくある質問(FAQ)
「みりん揚げ」と「歌舞伎揚げ」に関して、よくある疑問にお答えします。
「歌舞伎揚げ」の名前の由来は何ですか?
株式会社天乃屋の公式サイトによると、商品の表面に刻印された模様が「歌舞伎の家紋」に似ていることから名付けられたとされています。
日本の伝統文化である歌舞伎のように、多くの人々に愛される商品になってほしいという願いが込められているそうですよ。(参考:株式会社天乃屋)
「歌舞伎揚げ」と「ぼんち揚」はどちらが先に発売されたのですか?
どちらも1960年(昭和35年)の発売とされており、ほぼ同時期に登場したようです。
「ぼんち揚」はぼんち株式会社(ぼんち株式会社)の商品です。関東の「歌舞伎揚げ」、関西の「ぼんチ揚」として、長年ライバル関係にあると言えますね。
「みりん揚げ」は「みりん干し」とは違いますか?
全く違います。
「みりん揚げ」は米菓(お菓子)ですが、「みりん干し」はアジやイワシなどの魚を開き、みりんや醤油、ゴマなどで味付けして干した「干物(水産加工品)」のことです。お菓子のことではありませんのでご注意ください。
まとめ|歌舞伎揚げは「みりん揚げ」の代表ブランド
「みりん揚げ」と「歌舞伎揚げ」の違い、スッキリしましたでしょうか?
「みりん揚げ」は、甘辛い揚げ煎餅という「お菓子のカテゴリ(総称)」です。
「歌舞伎揚げ」は、そのカテゴリの中で最も有名な「天乃屋の商品名」でした。
スーパーでお菓子を選ぶ際、
- 「あの家紋の入った、いつもの味が食べたい!」という時は、「歌舞伎揚げ」(天乃屋)
 - 「とにかく甘辛い揚げ煎餅が食べたい!」という時は、棚にある「みりん揚げ」や「ぼんち揚」
 
というように使い分けることができますね。
どちらも日本茶との相性は抜群です。ぜひ、メーカーごとの微妙な味の違いも楽しんでみてください。
「食べ物の違い」カテゴリでは、他にも様々なスイーツ・お菓子の違いについて詳しく解説しています。ぜひご覧になってください。