土用餅と赤福の違いとは?夏の風物詩と伊勢名物を徹底比較

夏の「土用の丑の日」といえばウナギが定番ですが、特に関西地方や和菓子屋さんでは「土用餅(どようもち)」を食べる風習がありますよね。

お餅をこしあんで包んだその姿は、伊勢名物としてあまりにも有名な「赤福(あかふく)」とそっくりです。

「名前が違うだけで、中身は同じもの?」と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。

結論から言うと、この二つは似て非なるもの。「土用餅」は夏の特定の時期に食べるあんころ餅の「風習・一般名称」であり、「赤福」は株式会社赤福が製造する、あんこに三筋の模様が入った「商品名(登録商標)」です。

この記事を読めば、二つの文化的な背景、形状の違い、そして赤福が「土用餅」として販売される理由まで、スッキリと理解できます。

それでは、詳しく見ていきましょう。

結論|土用餅と赤福の違いが一目でわかる比較表

【要点】

最大の違いは「言葉の範囲」と「時期」です。「土用餅」は、夏の土用(主に土用の丑の日)に、暑気払いのために食べるあんころ餅全般を指す「文化・風習(一般名称)」です。一方、「赤福」は株式会社赤福が製造する特定の「商品名」であり、伊勢で一年中販売されています。

「土用餅」と「赤福」は、どちらも「あんころ餅」というカテゴリに入りますが、その定義は異なります。

項目土用餅(どようもち)赤福(あかふく)
分類一般名称(風習・和菓子の分類)固有名詞(商品名・登録商標)
食べる時期夏の土用(土用の丑の日など)通年(伊勢土産として)
形状・特徴一般的なあんころ餅(丸型が多い)お餅の上にこしあん、「三筋」の模様
文化・意味暑気払い、厄除け、力餅伊勢神宮(五十鈴川)の表現、赤心慶福
主な製造元全国の和菓子店株式会社赤福
主な販売場所関西地方中心の和菓子店など三重県伊勢市(本店)ほか、全国の百貨店など

「土用餅」と「赤福」の違いとは?季節の風習か伊勢の銘菓か

【要点】

「土用餅」は、夏の土用の丑の日に食べるあんころ餅の総称です。一方、「赤福」は伊勢の株式会社赤福が作る、あんこに三筋の模様が入った固有の商品名です。

二つの言葉の決定的な違いは、その言葉が指し示す範囲にあります。

「土用餅(どようもち)」は夏の土用に食べる和菓子の「風習」

「土用餅」とは、特定のブランド名ではありません。

夏の「土用(どよう)」(立秋の前の約18日間)の、特に「丑の日」に、暑気払いや厄除けの願いを込めて食べる「あんころ餅」の総称(一般名称)です。

夏の土用は一年で最も暑さが厳しく、体調を崩しやすい時期。ウナギを食べるのが有名ですが、それと同様に「精のつくもの」として、お餅が「力餅」として食べられてきました。

また、あんこの小豆(あずき)の赤い色には、古くから厄除けの力があると信じられていたため、無病息災を願って土用餅を食べる風習が、特に関西地方を中心に根付いています。

「赤福(あかふく)」は伊勢名物の「商品名(登録商標)」

一方、「赤福」は、三重県伊勢市に本店を構える「株式会社赤福」が製造・販売する、特定の商品名(登録商標)です。

1707年(宝永4年)創業の老舗で、伊勢神宮の参拝土産として、季節を問わず一年中販売されています。

「赤福」は、あんころ餅の一種ではありますが、その独特の形状と伊勢神宮との深いつながりにおいて、他のあんころ餅とは一線を画すブランドとなっています。

【核心】赤福は「土用餅」として食べられるのか?

【要点】

はい、食べられます。「赤福」は「あんころ餅」の代表格であるため、夏の土用の日に食べれば、それは「土用餅」としての役割を果たします。実際、赤福自身も夏の土用の時期限定で、商品を「土用餅」と書かれた掛け紙で包んで販売しています。

では、「赤福」を土用の丑の日に食べたら、それは「土用餅」と呼べるのでしょうか?

答えは「イエス」です。

「土用餅」とは、前述の通り「土用に食べるあんころ餅」という風習そのものを指します。「赤福」は日本で最も有名と言っても過言ではない「あんころ餅」の一つです。

そのため、夏の土用の日に「赤福」を暑気払いや厄除けとして食べることは、まさに「土用餅」の風習を実践していることになります。

実際、株式会社赤福自身も、毎年夏の土用の丑の日とその前後数日間に限り、通常の赤福餅に「土用餅」と書かれた特別な掛け紙をかけて販売しています。

中身は通常の赤福餅と同じですが、伊勢の老舗も「赤福」が「土用餅」として食べられている文化を大切にしている証拠ですね。

形状・見た目の違い

【要点】

一般的な土用餅は、お餅をあんこで包んだ丸い形が多いです。一方、赤福は、お餅の上にあんこを乗せ、五十鈴川の清流を模した「三筋(さんすじ)」と呼ばれるスジ模様が付けられているのが最大の特徴です。

土用餅:一般的なあんころ餅(丸型)

「土用餅」は一般名称であるため、決まった形はありません。

多くの和菓子店で作られる土用餅は、お餅をこしあんで丸く包んだ、いわゆる「あんころ餅」のスタンダードな形状をしています。

赤福:五十鈴川を表す「三筋(さんすじ)」

「赤福」の形状は、他のあんころ餅とは一線を画す、非常にユニークなものです。

お餅をあんこで完全に包むのではなく、お餅の上にあんこを乗せる独特のスタイル。

そして最大の特徴が、あんこの表面につけられた「三筋(さんすじ)」と呼ばれる3本のスジ模様です。これは、伊勢神宮の神域を流れる「五十鈴川(いすずがわ)の清流」を表現しています。

この形状こそが、「赤福」を「赤福」たらしめるアイデンティティとなっています。

文化・歴史・意味の違い

【要点】

土用餅は、夏の厳しい暑さを乗り越えるための「暑気払い」「厄除け」という健康祈願の風習です。赤福は、伊勢神宮への参拝客をもてなす「お茶菓子」として発展し、「赤心慶福(まごころで人の幸せを喜ぶ)」という感謝の精神が込められています。

土用餅:夏の厄除けと暑気払い

「土用餅」の文化的な意味は、「健康祈願」にあります。

餅は「力餅」としてスタミナ源に、小豆の赤色は「厄除け」の力があると信じられ、一年で最も体調を崩しやすい夏の土用にこれを食べて、無病息災を願うという季節の風習です。

赤福:伊勢神宮へのおもてなし

「赤福」の文化的な意味は、「伊勢神宮への感謝とおもてなし」にあります。

1707年の創業以来、長旅を経て伊勢神宮にたどり着いた参拝客をもてなすお茶菓子として提供されてきました。

商品名は「赤心慶福(せきしんけいふく)」という言葉に由来し、「まごころ(赤心)を尽くして、人の幸せ(慶福)を願う」というおもてなしの精神が込められています。

旬・販売時期の違い

【要点】

「土用餅」が夏の土用(主に7月下旬~8月上旬の丑の日)に限定して食べられる季節ものであるのに対し、「赤福」は伊勢土産の定番として一年中販売されています。

二つの決定的な違いは、食べられる時期にもあります。

「土用餅」は、夏の土用の丑の日、およびその前後の「土用」の期間(立秋前の約18日間)に限定されて食べられる、強い季節性を持つ食べ物です。

一方、「赤福」は、伊勢神宮の参拝土産として、一年を通して製造・販売されています。(※前述の通り、土用の時期には「土用餅」という掛け紙で販売されますが、中身は通年販売の赤福です)。

体験談|土用の日にあえて「赤福」を食べる贅沢

僕は関西出身なので、「土用の丑の日」といえばウナギと同じくらい、「土用餅」を食べる習慣が身近にありました。

子供の頃は、近所の和菓子屋さんが「土用餅 はじめました」という張り紙を出すと、「ああ、夏本番だな」と感じたものです。当時はそれが一般的な丸いあんころ餅だとは意識せず、ただ「土用の日に食べるあんこ餅」として食べていました。

一方、「赤福」は、家族や親戚が伊勢旅行に行った時にだけ食べられる、特別な「お土産」という認識でした。あの独特の三筋の形と、しっかりした甘さは、「土用餅」とは違う「赤福」ブランドの味としてインプットされていました。

大人になって伊勢を訪れ、初めて赤福本店で出来立てを食べた時の感動は忘れられません。

最近では、その「赤福」が夏の土用になると「土用餅」として売られていることを知りました。

試しに、土用の丑の日にあえて「赤福」を買ってきて、「今年も暑さを乗り切れますように」と願いながら食べてみました。

伊勢神宮のお膝元で生まれた銘菓で、夏の厄払いをする。

これは、近所の和菓子屋さんの土用餅とはまた違った、何とも言えない贅沢感とご利益(ごりやく)感がありましたね。風習とブランドが融合した、日本人ならではの楽しみ方だなと感じた体験でした。

「土用餅」「赤福」に関するよくある質問(FAQ)

土用餅と赤福に関して、よくある疑問にお答えします。

なぜ夏の土用に「土用餅」を食べるのですか?

夏の暑さに負けないための「暑気払い」と「厄除け」のためです。

昔から、お餅は「力餅」と呼ばれスタミナ源として、また小豆の「赤色」は厄除けの力があると信じられてきました。一年で最も体調を崩しやすい夏の土用にこれらを食べることで、無病息災を願う風習が生まれました。

「土用餅」と「赤福」は結局、同じものですか?

別物ですが、赤福は土用餅の一種とも言えます。

「土用餅」は夏の土用に食べるあんころ餅の「総称」です。「赤福」はあんころ餅の「特定の商品名」です。したがって、夏の土用に赤福を食べれば、それは「土用餅」を食べたことになります。

赤福は「土用餅」として販売されていますか?

はい。株式会社赤福は、毎年夏の土用の丑の日とその前後の期間限定で、通常の商品に「土用餅」と書かれた特別な掛け紙をかけて販売しています。中身は通常の赤福餅と同じです。

まとめ|土用餅は「風習」、赤福は「ブランド」

「土用餅」と「赤福」の違い、明確になりましたでしょうか?

どちらも日本の「あんころ餅」文化を代表する存在ですが、その背景は大きく異なります。

  • 土用餅「夏の土用に食べる」という季節の風習(一般名称)。暑気払いや厄除けの意味が強い。形状は丸型が一般的。
  • 赤福伊勢の「株式会社赤福」が作る商品(固有名詞)。一年中買える伊勢土産の定番で、「三筋」の形に五十鈴川への感謝が込められている。

「赤福」はあんころ餅の代表格であるため、夏の土用の日に食べれば、それは立派な「土用餅」としての役割を果たします。

今年の夏の土用には、近所の和菓子屋さんの土用餅と、伊勢の赤福を食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね。

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