「ブルータビー」と「シルバータビー」、どちらも猫の美しい縞模様(タビー)のバリエーションですが、この二つの色は、実は全く異なる色の遺伝メカニズムによって生まれています。
最も簡単な答えは、「ブルータビー」は黒色を薄めた「青灰色」の濃淡であるのに対し、「シルバータビー」は地色(ベースの色)の色素を抑えて「銀色(白)」にした毛色だということです。
この遺伝的な仕組みの違いが、見た目の印象を大きく左右します。「ブルータビー」は全体的にスモーキーで柔らかい印象、「シルバータビー」は縞模様がくっきりと浮かび上がるコントラストの強い印象を与えます。
この記事を読めば、この二つの毛色の見分け方から、なぜそのような色になるのかという遺伝的な背景、そしてそれぞれの魅力までスッキリと理解できます。
まずは、両者の決定的な違いを比較表で押さえましょう。
| 項目 | ブルータビー(Blue Tabby) | シルバータビー(Silver Tabby) |
|---|---|---|
| 色の仕組み | 希釈遺伝子(ダイリュート)による色の希釈 | 抑制遺伝子(インヒビター)による色素の抑制 |
| ベース(地色) | 淡い青みがかったグレー(クリーム色) | 輝くような銀色(シルバー)または白 |
| 縞模様(タビー)の色 | 濃い青みがかったグレー(ブルー) | 黒、青、赤など(例:ブラックシルバータビー) |
| 全体の印象 | 全体的にスモーキーで柔らかいコントラスト | ベースと縞のコントラストが非常に鮮明 |
| 主な遺伝子 | ダイリュート遺伝子(d)が黒(B)を薄める | インヒビター遺伝子(I)が毛の根元の色素を抑える |
| 代表的な猫種 | ブリティッシュショートヘア、スコティッシュフォールドなど | アメリカンショートヘア(シルバークラシックタビー)など |
【3秒で押さえる要点】
- 色の正体:ブルータビーは「黒色を薄めた(希釈した)色」。シルバータビーは「毛の根元の色を消した(抑制した)色」。
- 見分け方:ブルータビーは「淡い青灰色」と「濃い青灰色」の縞模様です。シルバータビーは「銀白色」の地に「黒い縞模様」(ブラックシルバータビーの場合)がくっきり入ります。
- 遺伝子:ブルータビーは「希釈遺伝子(d)」、シルバータビーは「抑制遺伝子(I)」が働いています。
見た目(毛色・模様)の違い
ブルータビーは、ベース(地色)が淡い青灰色(クリーム色にも見える)で、縞模様がそれより濃い青灰色です。色の差が比較的柔らかいです。シルバータビーは、ベースが輝くような銀白色で、縞が黒(ブラックシルバータビー)や青(ブルーシルバータビー)など、コントラストが非常に鮮明です。
この二つの毛色を見分ける最も簡単な方法は、毛の「ベース(地色)」と「縞(模様)」の色を見ることです。
ブルータビー(Blue Tabby)
ブルータビーは、猫の毛色でいう「ブルー(青)」のタビー模様を指します。猫の「ブルー」とは、実際には黒色を薄めた「青みがかった灰色」のことです。
そのため、ブルータビーの猫は、
- ベース(地色):淡い青灰色(クリーム色に近い淡いグレー)
- 縞模様:ベースよりも濃い、はっきりとした青灰色(ダークブルー)
という色の組み合わせになります。全体的にスモーキーで、柔らかく優しい印象を与えるのが特徴です。
シルバータビー(Silver Tabby)
シルバータビーは、全く異なる仕組みで色が作られています。最大の特徴は、ベース(地色)が輝くような「銀白色」であることです。これは、毛の根元部分の色素が抑制され、白く見えるために起こります。
その銀白色のベースの上に、くっきりとした縞模様が入ります。縞の色は様々で、
- ブラックシルバータビー:銀白色の地に、黒い縞(最も一般的で、「アメショ」の代表色)
- ブルーシルバータビー:銀白色の地に、青灰色の縞
- レッドシルバータビー:銀白色の地に、明るいオレンジ色の縞
などがあります。ブルータビーが「青灰色の濃淡」であるのに対し、シルバータビーは「銀白と、黒や青」といった非常に強いコントラストを持つのが特徴です。
色の仕組み(遺伝的背景)の違い
ブルータビーは「色の濃淡」を変える遺伝子(ダイリュート)が働いています。黒色を青灰色に薄めます。シルバータビーは「色素の有無」を制御する遺伝子(インヒビター)が働いています。毛の根元の色素を抑制し、白く見せます。
なぜこのような色の違いが生まれるのか、少し専門的になりますが遺伝子の働きを見てみましょう。
ブルータビーの仕組み:「希釈遺伝子(d)」
ブルータビーが生まれるには、まず「タビー(縞模様)になれ」という遺伝子(アグーチ遺伝子)が働く必要があります。
その上で、「色を薄くしなさい」という希釈遺伝子(ダイリュート遺伝子:d)が働くと、本来は黒色(ブラック)になるはずだった色素が青灰色(ブルー)に薄められます。
つまり、ブルータビーは「黒インクを水で薄めた」ような状態なのです。
シルバータビーの仕組み:「抑制遺伝子(I)」
シルバータビーも、タビー(縞模様)になる遺伝子が働くことは同じです。
しかし、シルバータビーの場合は、それに加えて抑制遺伝子(インヒビター遺伝子:I)という、非常に強力な遺伝子が働きます。この遺伝子は、毛の地色(ベースカラー)を作る色素の生成を「抑制(ストップ)」する働きを持っています。
その結果、縞模様の部分には色素が乗りますが、ベースとなる部分の毛の根元は色素がなくなり「銀白色」に輝いて見えるのです。
つまり、シルバータビーは「ベース部分の色を消しゴムで消した」ような状態と言えます。
毛色と性格・飼いやすさの関係は?
毛色と性格の間に科学的に証明された直接的な因果関係はありません。性格は、猫種(アメショ、ブリティッシュなど)の特性や、育った環境、個体差によって決まります。
「シルバータビーは活発」「ブルータビーは穏やか」といったイメージを聞くことがあるかもしれません。
例えば、シルバータビーの代表格であるアメリカンショートヘアは活発で遊び好きな性格ですし、ブルータビーが多く見られるブリティッシュショートヘアは、穏やかで落ち着いた性格の個体が多いとされています。
しかし、これは毛色による性格の違いではなく、あくまで「猫種」が持つ傾向です。
現在のところ、猫の毛色(ブルーやシルバー)と性格を直接結びつける科学的な因果関係は証明されていません。
ブルータビーのアメリカンショートヘアもいれば、シルバータビーのスコティッシュフォールドもいます。性格は、その猫が持つ猫種本来の気質や、子猫の頃の社会化期にどう過ごしたか、そして何よりもその子自身の「個性」によって決まるものと考えましょう。
「タビー(縞模様)」としての共通点
ブルータビーもシルバータビーも、同じ「タビー(縞模様)」の仲間です。タビーには主に4つの種類があり、どの模様が現れるかによっても印象が変わります。
色の仕組みは異なりますが、「ブルータビー」も「シルバータビー」も、縞模様である「タビー」の仲間であることは共通しています。
タビーの模様は、主に以下の4種類に分類されます。
- マッカレルタビー(鯖縞):最も一般的で、細くはっきりした縞模様が魚の「サバ」に似ていることから名付けられました。
- クラシックタビー(渦巻縞):マッカレルタビーよりも縞が太く、体の側面に渦巻のような模様(ブルズアイ)が見られるのが特徴です。アメリカンショートヘアのシルバータビーはこの模様が代表的です。
- スポッテッドタビー(斑点):縞模様が途切れて、ヒョウのような斑点(スポット)になっている模様です。
- ティックドタビー:一見すると縞模様に見えませんが、1本1本の毛に色の濃淡(ティッキング)があり、体全体がキラキラと輝くように見える模様です。アビシニアンなどが有名です。
「ブルークラシックタビー」や「ブラックシルバースポッテッドタビー」など、色と模様の組み合わせによって、猫の呼び名はさらに細分化されます。
どっちが人気?希少性と魅力の違い
どちらの毛色も非常に人気があります。シルバータビーはアメリカンショートヘアの代表色として圧倒的な知名度を誇ります。ブルータビーは、ブリティッシュショートヘアやスコティッシュフォールドの「ブルー」単色と並び、その柔らかい色合いで根強い人気があります。
どちらの毛色も、それぞれの魅力を持ち、非常に人気があります。
シルバータビー(特にブラックシルバータビー)は、アメリカンショートヘア(アメショ)の代表的な毛色として、昔から圧倒的な知名度と人気を誇っています。「猫の縞模様」と聞いて、多くの人がこの銀色と黒のくっきりしたコントラストを思い浮かべるのではないでしょうか。
ブルータビーは、シルバータビーほどの派手さはありませんが、そのスモーキーで上品な青灰色の色合いが、「ブルー」単色の猫(ブリティッシュショートヘアやロシアンブルーなど)と共に、根強い人気を持っています。
どちらかが特に希少ということはありませんが、猫種によって出現しやすい毛色は異なります。アメショやスコティッシュフォールドでは両方の毛色が見られますが、例えばブリティッシュショートヘアではブルータビーやブルー単色の方が人気が高い傾向があるなど、猫種による人気の違いはあります。
僕が出会った「ブルー」と「シルバー」の“オーラ”の違い(体験談)
僕が猫カフェで出会った猫たちの中にも、ブルータビーとシルバータビーの子がいました。
シルバータビーの「ギンくん」は、まさに「やんちゃなスター」でした。銀色に輝く毛並みは照明の下でキラキラと光り、黒い渦巻模様がくっきりと浮かび上がっています。彼が動くたびに、そのコントラストが目を引き、とにかく目立ちます。おもちゃへの反応も抜群で、活発にジャンプする姿は「陽」のオーラに満ちていました。
一方、ブルータビーの「ソラちゃん」は、「静かなお嬢様」という印象でした。彼女の毛色は、カフェの少し薄暗い場所だと、淡いグレーの毛布に溶け込んでしまうかのような柔らかさ。縞模様も、ギンくんほどくっきりしておらず、「陰」というか、スモーキーで上品なオーラを放っていました。彼女は大きな音を立てず、静かに窓辺で外を眺めている姿が印象的でした。
ギンくんが「見て!僕、かっこいいでしょ!」とアピールしてくるのに対し、ソラちゃんは「あら、いらっしゃい」と静かに会釈してくれるような、そんな色の違いを感じた体験です。
「ブルータビー」と「シルバータビー」に関するよくある質問
Q: ブルータビーとシルバータビー、どっちが珍しい(希少)ですか?
A: どちらも人気の毛色であり、アメリカンショートヘアやスコティッシュフォールド、ブリティッシュショートヘアなどの猫種で一般的に見られるため、どちらかが極端に珍しいということはありません。ただし、猫種によっては(例えば、シルバータビーがほとんどいない猫種など)、希少性が異なる場合はあります。
Q: 「ブルーシルバータビー」という毛色もあるのですか?
A: はい、存在します。これは、「シルバータビー」であり、かつ「縞の色がブルー」という毛色です。遺伝子の仕組み(抑制遺伝子I)で地色が銀白色になり、さらに希釈遺伝子(d)の働きで縞の色が黒から青灰色に薄まった状態です。見た目は「銀白色の地に、青灰色の縞模様」となります。
Q: 「ブラウンタビー」と「シルバータビー」の違いは何ですか?
A: ブラウンタビーは、地色が茶色(ブラウン)で、縞が黒い模様です。これは抑制遺伝子(I)が働いていない、タビー模様の基本形の一つです。シルバータビーは、そのブラウンタビーの地色から色素を抑制し、銀白色に変えたもの、とイメージすると分かりやすいです。
Q: 毛色によって性格が違うというのは本当ですか?
A: 科学的な根拠は確立されていません。性格は毛色で決まるのではなく、その猫が属する猫種の特性や、育った環境、そして個体差による影響が最も大きいと考えられています。
「ブルータビー」と「シルバータビー」の違いのまとめ
ブルータビーとシルバータビーは、似ているようで全く異なる色の仕組みを持つ毛色です。
- 色の仕組みが違う:ブルータビーは「希釈遺伝子(d)」で黒を青灰色に薄めている。シルバータビーは「抑制遺伝子(I)」で地色を銀白色にしている。
- 見た目の色が違う:ブルータビーは「淡い青灰色×濃い青灰色」の柔らかい印象。シルバータビーは「銀白色×黒(など)」の鮮明なコントラストが特徴。
- 性格との関連:毛色と性格に直接の因果関係はありません。猫種の特性や個体差が優先されます。
- 共通点:どちらも「タビー(縞模様)」の仲間であり、マッカレル(鯖縞)やクラシック(渦巻)などの模様パターンがあります。
どちらも非常に魅力的な毛色です。この色の違いは、猫の遺伝子の神秘そのものと言えるかもしれませんね。ぜひ、他のペット・飼育に関する違いについても、他の記事をご覧ください。
参考文献(公的一次情報)
- 環境省(https://www.env.go.jp/)
- ペットフード公正取引協議会(https://pffta.org/)